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2009年発表作品。
テロ、CIA、ヤクザが絡み合う骨太作品。
CIAが追っている日本人テロリスト・ファルコンの情報を得るという目的で、元傭兵の鬼塚の元にひとりで送り込まれたキャリア組の立佳(はるか)。
だが、ゲイの鬼塚に情報の交換条件などと脅されて、あれよと体を奪われて…
ファルコンこと小泉と傭兵時代の同僚だった鬼塚。
小泉とは寝てない。だからこそ愛憎が複雑になっていく…という構成がいい。
BLとしてのカップリングは鬼塚x立佳で、命よりもスリルというワイルドな男に対しての家で祖母や母にかしずかれる草食系のエリート。
…という表象と裏腹に、死をも恐れぬ傭兵上がりは本当は優しく愛されたいし、薄味の菜食とお見合い話に飽き飽きしている優男は本当は朝から肉が食べたいしめちゃくちゃなセックスに憧れている。
立佳は初めて鬼塚を包んだ相手。
だから、裏切りで仲間を殺したファルコンを追い続けた10年よりも、あっさりとしかしくっきりと心に立佳が刻まれて。
ファルコンにテロを依頼したのは誰なのか。
強姦まがいのはじまりだったのに、なぜすぐに立佳が聖母みを出したのか。
この辺はちょっと説明が足りないですが、ベースに流れるファルコン/小泉のゆがんだ愛憎が物語に深みを与えています。
元々こういう警察ものが好きなのもあって、とても面白かった。「萌x2」で。
元傭兵とキャリアとテロリスト。
まさに“ハードボイル”チックな登場人物たちです。
いきなり警視庁テロ対策課勤務の立佳は、上司から「一人で行ってこい」と元傭兵の鬼塚へ会いに行きます。
行ったら行ったで速攻「裸になれ」って言われて。
うわぁ~、何という鬼畜な攻めさまだ……と、そこから先「どうなるんだ?」と心配したけれど、きっちり自分の足元やら気持ちやら見えてて、しっかり男前で庇護されるようなやわな受けちゃんじゃなかったのがよかった。
きちんと対等な二人! っていうところがツボでした。
そして家庭環境からか、大人しいんだけど腹の中ではブラックなことを考えている立佳のギャップも結構好み。
読む前だったら、題名の『狂犬』は鬼塚って思いこんでしまいますが、実はそうじゃない……というのもツボ。
テロリスト・ファルコン(小西)が日本国内に潜入したらしいため協力を依頼された、
元傭兵の鬼塚と警察庁警備局テロリズム対策課の阿達立佳(あだちはるか)のお話。
テロリストの情報を引き出すために、ゲイの鬼塚の前に一人で向かわされた立佳は、
職務に忠実であろうと、言われるままに無防備な姿をさらしてしまいます。
さらに鬼塚の巧みな誘導で、からだを差し出すことにもなってしまうのですが・・・
これまでのぬるま湯の中のような生活に欲求不満を抱えていた立佳は、鬼塚の傍らにいることによって充足を覚えるのでした。
狂犬と言われるほどに恐れられている鬼塚ですが、
自身のトラウマやポリシーがあり非情にはなりきれません。
その点ファルコンは異常とも思える非情さで、数々の殺戮を行ってきています。
彼らが出会い、支えあい、対立し、別れた長年のいきさつと、
鬼塚が立佳と出会い、守りあって過ごした短い期間が、
DVや爆弾テロ、警察の暗部などを絡めて展開されていきます。
鬼塚がコルト・ガバメントに執着しているなど、拳銃絡みのお話でもあるかと思います。
そして一番のキーワードは、主要キャラ3人(鬼塚・立佳・小西)のトラウマだと思います。
トラウマに狂わされた小西と、正面から向き合い克服しようとする二人。
お互いの欠けた部分を補いあえる存在を見つけられた鬼塚と立佳はめでたしめでたしでしたが、
きっと後悔しているであろう小西の哀しい人生に、少し同情も感じました。
そういえば、狂犬狂犬と言いながら、鬼塚は“大きな犬”といったイメージで、
決して狂っている感じではありませんでした。
狂っているといえば小西の方だと思うのですが、彼は犬的なイメージはありません。
で、立佳ですが、意外と彼のほうが狂犬なんじゃないかと・・・
プッツンした感じの仔犬に見えるのですが・・・
