• 紙書籍【PR】

表題作The end of youth ~あいの、うた~

小日向力/高校生・バーのマスター/16歳・26歳
田頭眞一/高校生・ミュージシャン/17歳・27歳

あらすじ

田頭は一時アイドルとして成功した。一枚目のシングルは大ヒットしたが、その後のCDは鳴かず飛ばず。ミュージシャン
としての才能は皆無だった。スタジオミュージシャンとして日々を送る田頭は昔の栄光を忘れられず、仕事がほとんどない
現在も音楽の世界から足を洗えずにいた。そんな時、高校時代のバンド仲間・小日向に再会し…。

作品情報

作品名
The end of youth ~あいの、うた~
著者
宮本佳野 
作画
宮本佳野 
媒体
漫画(コミック)
出版社
蒼竜社
レーベル
プラザCOMIX Hollyセレクション
発売日
ISBN
9784883863747
3.4

(22)

(4)

萌々

(6)

(10)

中立

(0)

趣味じゃない

(2)

レビュー数
9
得点
74
評価数
22
平均
3.4 / 5
神率
18.2%

レビュー投稿数9

世界観に浸れる

原作の小説は、大好きな木原先生の作品の中でも一番か二番か、それくらい好きな本でした。こちらのコミカライズでは、一冊の小説で二組いたうちの一組のお話だけが書かれています。
お話はどんなものかというと、タイトル通り。若いうちに成功をしてから年と反比例するように転落していった田頭の話。チクチクします。どこにでもあるわけじゃないけどどこかにありそうな……差はあれど夢破れる人はきっとたくさんいますよね。
こちらのコミカライズ、本当に原作のイメージをそのままにしたみたいな感じで、どうしようもないような、悲しいような、でもそんな中に愛が見えて……もう……もう……すごい。
この本だけでももちろん楽しめますが、原作のその後の〜を読むとより良い。幸せになれます。原作もこちらのコミカライズも、とにかく田頭と力の物語が本当に素敵で、ずっと好きで忘れられません。

2

青春期の終わり

木原先生の原作は未読です。
しかしながら、宮本佳野先生と木原音瀬先生の「親和性」の高さに驚きます。

主人公は、売れないミュージシャンの田頭。
バンドでデビューし、売れずに解散後ソロになっても売れず、俳優の仕事は入るが音楽に固執して事務所からも見放されつつある…
そんな田頭が10年ぶりに高校時代バンドを組んでいた小日向と再会し、小日向の弟・力(ちから)との日々を思い出す、という展開です。
売れずに鬱々としている田頭よりも、力の存在感が圧倒的です。
高校時代の力はちょっと変わった少年で、周りと相容れず生き辛そうで。
力は兄の友人である田頭に惹かれて田頭にまとわりつきます。でも田頭も力が理解できない。
なんとなく中途半端に話を聞いたり、キスさせたり、でも力を本当の意味で受け入れないのです。
そしてバンドの中で自分だけがスカウトされ、友人を裏切る形で皆と疎遠になっていく。もちろん力とも。
小日向と再会したことで再び力とも顔をあわせるのですが、力はかつての田頭の態度を怒っている。
そんな時田頭は枕営業のような関係を持っていた男に裏切られ…
すがるように力の元に行くが、今度は力が田頭を受け入れない。
この辺、さすがのコノハラ節だなぁ。
しかし、この「痛み」も宮本佳野流の静かで繊細な作風で描かれると、ただの痛さだけではない余韻というか情緒のようなものが立ち現れてくる…
そして、固執していた音楽と離れる田頭と、孤立を抱えながら詩を書き、激情を持て余して夜を彷徨った日々を経て田頭を抱きとめる男になっっていく力の姿。
青春の挫折とこれからの永い時間の予感を鮮やかに見せて圧巻です。素晴らしかった。
カバー下に木原先生のあとがき・解説があります。

3

好きということの力

全然的外れなのかもしれませんが、と前置きしておいて。

眞一には音楽、力には詩というどうにも譲れないほど大切なものがある、というのが共通点なのでしょうか。自分を捧げたものをみんなに認めてほしいと思うか、自分だけのものとするのかが二人の違いなのかな?

それはまるで、ヘテロとゲイの愛の違いのようだと思いました。みんなに祝福されて結ばれたいと願うことと、愛さえあればいいと思う人と、そういう違い。
なんとなく、眞一と力は恋愛という関係よりもっと深いところで共鳴している共に生きていくための仲間?同志?のような関係なのかなと思いました。人生のパートナー、みたいな。もっと臭い言い方をすれば、魂の片割れ、みたいな。イロコイとは違う、もっと深いものを感じました。
力が詩を書き続けていたように、眞一もまた音楽を続けることをやめられません。本当に好きなものはたとえ何があったって、やめることなんてできない。夢が破れても裏切られても、誰に認められることがなくても、才能がないのをわかっていても、それでもやめられない。どんなにみっともなくても、切り離したら自分でなくなるから、やらずには生きていけないほどの。
それほどの好きなものというのは、好きすぎて身近にあるのが当たり前で、もう身の一部になっているから却って自覚するのが難しいのかもしれません。

眞一と力も、好き、とかそういう次元じゃないんじゃないかなぁ。好きか嫌いか、とかそういうのを越えて、運命の伴侶なんじゃないでしょうか。なんか、性別とか環境とか、すべての制限を越えて結びつくんじゃないかと思うくらいの強い絆を描きたかったのかな?と思いました。

もうこのお話、BLとか関係ないんじゃなかろうか・・・

と、そんなことまで考えてしまいました。

自分が本当に愛しているものと運命の伴侶と結ばれるお話。眞一と力が殻を捨てて、自分自身に還るお話だと思います。
ラストはとても希望に満ちているし。骨太ないいお話でした。

0

まるで宮本さんのマンガのようです

木原氏の原作既読ですが、この本は木原作品の中でも今一つ主人公達に共感できない中途半端な位置づけの作品でした。
しかし、宮本さんの漫画になって、必要なセリフ・モノローグが抜き出されてそこを追うことで、ぐっと自分の中に入ってきたような気がします。

眞一が、歌手としてもう売れずに、体を売って曲を使ってもらうような堕ちた生活をしている、妙にプライドだけは捨てられない、そんな現在を生きているところ、10年ぶりに会った高校時代の同じバンドの仲間の優に会ったことで、当時眞一に激しい執着をしていて、その存在をウザく思っていた弟の力と再会することで話が進みます。

力は今でいうところの、他人とのコミュニケーションがうまくとれない多分発達障害の一種ではないかと自分は推測しているのですが、、、
兄よりも、どんなに近しい人よりも、言いたいことをズバっと言った眞一を気に入り、彼とキスしたいと願うようになるのです。
眞一は、そんな力をうっとうしく思いながらも、だんだんと彼といるのが心地よくなり、しかし、芸能界スカウトを受けたこと、大学受験のことなどで、縁を切ってしまうのでした。
再会した力は、率直な物言いで眞一を避けます。
しかし、頼るものも、弱音を吐く相手もない彼にとって、やはりどんなに邪険にされても力の元は心地よいものでした。

本当の事しか言わない力、きれいな心を持ったままの力。
そんな彼を愛していると言う眞一の心は、真実なのか?

ひとまずこの漫画では、この本編で終わりになっています。
この二人についてのその後は、小説本編でわかるようになっていますので、そこへつなげると、より理解して小説を読むことができると思います。
それにしても、この作品宮本さんの絵がほんとうにぴったりです。

5

どちらが大人なのか・・・

原作、読んだと思います。でも、ほとんど忘れてる。
で、ergoで連載されていたこの作品も読んでいました。未完だったので、どうするのかなと思ったら、完全版が出てくれて、よかったよかった。

通して読んでみて、「これはやっぱり続けて読むことで、彼らの抱える複雑な気持ちを理解しやすくなるなぁ」と思った次第です。

力と眞一という、まるで正反対のような二人が、ぶつかり合いながらもなぜ引き合ってしまうのか?
私は二人の根本が同じだからではないかと思ったのですが、いかがでしょうか?

自分の思うままに生きようとして、自ら生きにくくしてしまっている高校時代の力。
若い頃はどうにかうまい具合に生きてきたけれど、それは流されていた部分が多く、現実に直面し挫折を知ることにより、今になって自分の思いに正直になろうとしている眞一。
今度は眞一が自らを生きにくくしています。

正直に生きていくことの難しさ、でもそれを一番自分が求めているんですね。
全てをリセットしてこれからの人生を力にゆだねたと思った眞一が、やっぱり音楽を切り離せなかった最後のシーン。
また一から始めればいいんだねって思いました。
青い時代が終わり、一歩大人になったっていうわけですね。

3

この作品が収納されている本棚

マンスリーレビューランキング(コミック)一覧を見る>>

PAGE TOP