怪我をすると無性にしたくなるんだよ――

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表題作そして世界は色づいた

殺し屋 クロコ(ビィ)
施設出のフリーター 佐藤あきら

その他の収録作品

  • 二色メルトダウン
  • あとがき

あらすじ

佐藤あきらにとって、深夜のコンビにバイトはパラダイスだ。なぜなら、ひとりの夜を過ごさなくてすむから。ある日、あきらはわき腹から血を流して蹲っている常連客を助けた。いつも黒いコートに黒いサングラスの、どこからどう見ても堅気とは思えない男。黒豹を連想させるその男は腹の傷を自分で縫っちゃうようなヤバい奴だ。その上、あきらはその男に無理やり身体を奪われて――!?
(出版社より)

作品情報

作品名
そして世界は色づいた
著者
橘りたか 
イラスト
高星麻子 
媒体
小説
出版社
大洋図書
レーベル
SHYノベルス
発売日
ISBN
9784813012320
4.2

(19)

(8)

萌々

(8)

(2)

中立

(1)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
2
得点
79
評価数
19
平均
4.2 / 5
神率
42.1%

レビュー投稿数2

無色のようでいて…

2011年刊ながら、ちるちるニュースで見掛けて興味を持ったので通販で取り寄せてみた。

正体不明の黒づくめの男は、助けてもらった初対面のコンビニバイト店員・あきらを押し倒す行為が動物的本有みたいなものだとか、その後何故か彼の住むアパートに住み着いたりと、ヤバい奴のはずなのに掴み処のなさから宇宙人みたいな感覚だった。
序盤からして唐突な出だしな割りには、敢えて物語の波を抑えているような感覚に戸惑ったが、読んでいるうちにあきらの思考を追う形に慣れていくと、次第に話に引き込まれていった。

あきらの周りを厚かましくてアクの強いキャラクターが取り巻いているのだが、あきらとの阿吽の息が合うのと、作中の文章とが同調するような不思議さがある。
モラトリアムな田中、拾った黒づくめの男、ヤバい出自には絶対に触れてはいけないオカマキャラのクルミと厄介度の差があるにも関わらずに、淡々と接する事ができるあきらに皆ほだされていくのが分かり、人情味も伺える。
最初は元カノの珊瑚だけは好きになれないだろうと思っていたのに、いつの間にか彼女のワガママさも許せてしまっていた。

各章に色の名前のサブタイトルが付いている事から、小説タイトルには真っ黒だったクロコ(黒づくめ男=後にあきらが命名した)がどう染まっていくのか?って意味合いも含まれているのか、又は個性の強いキャラクター像をイメージしたものなのかは判断しかねるけれど…
アンダーグラウンド調をオブラードで包んだ感じではあるが、読後感は良かった。

3

一つの印象だけで収まらない変幻自在さ

この作品に、色々とまんまと(?)裏切られましたw
まず、あらすじを読むと何だかはすっぱなフリーター男子と殺し屋の組み合わせ。
きっと内容も、多少ハードボイルドを含むアクション系のものなのかな?
そして、イラストは、高星さんのきれいな絵でしょ。
この方の描く主人公少年のイメージが綺麗なはかなげな上品な少年というイメージがあって、このあらすじから受けるフリーターのイメージが全然しない。
殺し屋も美麗?
だから、この作品が一体どういうモノなのか計りあぐねて、こうだろうな?というイメージを持っていたものが、ことごとく覆されたというか・・・
SHYノベスルのイメージとも違う?
実にそういう意味で、色々と先入観をことごとく裏切られたものとなったのでした。

施設を出て保育士の専門学校を目指す”あきら”は一人暮らしですが、一人の夜が怖いのです。
だからコンビニの深夜バイトを入れてなるべく一人にならないようにしている。
そんなある日、コンビニの常連が怪我をしてうずくまっているところを見捨てておけず連れ帰ってしまうと、何故か押し倒されてしまい、その日から彼があきらの部屋に居候するように。
彼の職業は殺し屋。
彼がいつも黒いコートを着ていることから、「黒いコート」と呼んでいたのを聞き違えられて、いつの間にか「クロコ」という名前が。
あきらの幼馴染で元カノの珊瑚、クロコの仲介人であるというオカマのくるみちゃん、バイト仲間の田中など、そんな仲間が脇を固めて、クロコとの奇妙な同居生活が展開されていくのです。

クロコはなんだろう、犬っぽくはないんだけど、それでも全部読み終わったあとの雰囲気は黒い大型犬のような気がします。
豹とか獣のようと、仕事関連の人々は言いますが、あきらに関しては犬?
なつくのをためらっているようで、それでもしっかり餌付けされ、密かにしっかり懐いているような。
本人自体も、仕事が仕事だけに葛藤があるようでいて離れがたい、居心地がよく感じてしまっている。
そんな雰囲気がありありと伝わってきます。

主人公のあきらは、最初本当にはすっぱな雰囲気を漂わせていたので、やんちゃなのかと思えば、すごく真面目なんです。
スれてない!
クロコに関しても、最初押し倒されても決して嫌悪感はない。
夜が一人は怖いからという理由はあるかもしれないが、孤独同士何か惹き合うものを感じたのでしょうか。
元来が面倒見の良い性格なんで、危ない仕事をしているクロコが放っておけなかったのでしょうね。
だから、いくらかほだされ型のような気も・・・

この二人のエチシーン、全然甘くありません。
エロさもほとんど感じません。
回を重ねるとそれなりに、、とは感じるのですが、それでも色気はあまり感じない。
作者さんが遠慮しているのか、それともあまりエロの必要を感じていないのか?
色恋のエチでないから、という感じもしないでもないです。
むしろ、家族愛に近いような。
あきらは、寂しいからそうなんだろうな、とも思えます。

殺し屋という設定の割に、その複雑なあたりは割りと踏み込まないで軽く仕上げてあります。
ラストのハイライトシーンなど、裏組織の人間をやってしまって、色々と問題ありなんでは?と思うのですが、意外にも簡単に片付いている。
仲介人のくるみちゃんの存在も、よく深く考えればヤバイでしょ?
元カノの珊瑚に至っては、男かと思うような口調で登場し、時々誰がしゃべっているの?とまで(汗、)
色々深く追求すれば、? な部分もあるのですが、それは物語ですから。

重いけど軽い、切ないけど明るい、それは主人公の性格が物語のカラーを決定するので、そうなって当然なのかもしれません。
本当に、つかみどころにはっきりとした輪郭を感じることができなくて、捕まえてもスルっとぬけていくような、変幻自在の形をした物語でありました。(自分の感じた印象)
作者さんがweb公開していた作品を加筆修正した、商業初作品になるそうです。
今後に期待ですね。
高星さんのクロコがステキでしたよv

4

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