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表題作花と手錠

警備会社の執行役員 篠宮宇内・28歳
SITのエース 小野啓示・28歳

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

警視庁捜査一課特殊犯捜査係通称SITは、立て篭もり事件や誘拐、企業恐喝など特殊な事案”生きている”現場の最前線で作戦行動に従事する部署だ。ある日、幼児人質篭城事件が発生し、その現場で、小野啓示は篠宮宇内と十年ぶりの再会を果たす。世界に名だたる「篠宮グループ」会長の孫であり、警備会社「オクタヴィア」の執行役員である篠宮は高校時代、恋人だった啓示を裏切り、手酷く捨てた男だった──。複雑に絡み合う愛と憎しみの果てに待ち受けるものとは…。

(出版社より)

作品情報

作品名
花と手錠
著者
橘りたか 
イラスト
あじみね朔生 
媒体
小説
出版社
大洋図書
レーベル
SHYノベルス
発売日
ISBN
9784813012399
3.1

(9)

(1)

萌々

(5)

(0)

中立

(0)

趣味じゃない

(3)

レビュー数
2
得点
25
評価数
9
平均
3.1 / 5
神率
11.1%

レビュー投稿数2

複雑な愛憎心理

受け様攻め様共にまるで運命の悪戯のように過去に囚われて          
そのままどんな思いも消化できないまま年月がたち
再び憎しみと愛に翻弄されるストーリーでした。          
非常に重い設定なのに読み終わっても余韻はあるのに
痛さや暗さはあまり感じなかったように思いますね。             
攻め様は、子供の時に母親から無理心中を迫られあと一歩で
SIT隊員だった受け様の父親に助けられますが
その後母親は自殺し、自分を助けてくれた受け様の父親を
逆恨みだと解かっていながら憎しみの対象にします。
受け様は、同じく中学生の頃変質者に監禁凌辱されており
救出される時に己の父親が目の前で殺されるという
生涯忘れる事の出来ないトラウマを抱えています。
そんな二人の出会いは高校で攻め様は憎い刑事の息子と
分かっていて傷つける為に受け様に近づきますが
人形のような受け様に同情と庇護欲を掻き立てられ
それ以上の感情を持ってします己に憤りを感じ徐々に壊れて・・・・
受け様は唯一の救いが攻め様になってしまいましたが
過去の攻め様と自分の父親の事を知り・・・・
そして互いから逃げるように、忘れるように10年。
再び運命の歯車が回り出すように絡み合う二人です。
この二人は決して拭いきれない負をお互いが抱えています。
互いに破壊衝動傾向が強くてアブナイ関係ですが
どうやら負の倍増と言うことにはならないようです。
互いが相手にとってのストッパー的な役割がありそうです。
攻め様の「嫌いじゃない」「憎んでいるだけ」って言う
台詞に込められる感情が切なかったですね。

4

白黒つけなくてもいいんです

受け、攻めともに壊れています。
受けは性犯罪の被害者であり、救出にきた父親を、犯人に殺されている!
攻めは富豪の外腹で、一族にうとまれ、精神的に追い詰められた母に無理心中をせまられる。
攻めの目前で母は取り押さえられ、直後、自殺してしまう。自分が「助けて!」と言ったから、母は死んでしまった!でも、子供だったから、ひとに怒りをぶつけるしかなかった。自分を助けてくれた警察官に・・・。おまえのせいだ、と。
高校で出会うふたり。攻めは受けがあの警察官の子供と知っている。

読み始めた時、「攻め、なんちゅう八つ当たりや、ガキっぽい!」と思っていました。受けをいじめるのもたいがいにしや・・・。でも読み進めるとう~ん、攻め篠宮はねじくれて、ひねくれて一回転してしまったような・・・。
壊れた人形のような受け、小野を痛ましく思い、彼が自分だけに心を開いてゆくのにほの暗い喜びを覚える、でもそんな自分を許すこともできない。
小野は篠宮の暗い瞳にもうひとりの自分を見る。トラウマから他人とふれあうことはできないのに、篠宮とはセックスだってできる。いや、無意識に篠宮とのセックスで、忌まわしい記憶を塗り替えようとしている。
決別の時、篠宮は言う「お前を憎んでいる。もてあそぶために近づいた」
だけど、フラッシュバックに苦しむ小野に「この先お前が見る悪夢は全部俺の夢だ」と暗示をかける。
憎んでいる、八つ当たりと知っている。いとしいと思う、でもそんなこと許されない。十八の少年の胸中にどんな嵐がうずまいていたのだろう。
十年後、有る事件をきっかけに、再会。警察官と警備会社役員として。
かわらぬ毒舌をはきながら、小野に対する執着を隠せない篠宮。反発しながらも、小野は思う。あの頃確かに自分を支えてくれたのは篠宮だったと。
ふたりの壊れっぷりにはげしく萌えます!
傷つけたいのも事実、断ち切れぬ恋情も真実。その重さに十年まえは逃げ出したけど、いまは両方抱えて生きてゆく。白黒つけるだけが人生ではない。すべてかゼロかなんて決められぬこともある。十年という時間、二人を取り巻く人々が、小野と篠宮をすこしずつ、ずぶとくたくましくしたのだとおもう。
小野女王様(笑)が好きです。セリフの一つ一つに身もだえしそう。
事件の推移も興味深かった。
設定が「ありえなぁい!」と叫びたいほど重かったけど、事件と二人のかかわりのバランスがよく、作品として良い出来だと思いました。
小野を兄か父(いや、オカンか?)のように見守ってきた勝又くんが、またいいかんじです。
初読みの作家さんですが、アタリでした!

3

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