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探偵青猫(6)(表題作 「ネペンテスの袋 序章・其の壱~其の参」)

tantie aoneko

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表題作探偵青猫(6)(表題作 「ネペンテスの袋 序章・其の壱~其の参」)

硝子蝙蝠,怪盗
青猫恭二郎,探偵,男爵

同時収録作品ネペンテスの袋

青猫恭二郎,探偵,男爵
女賊ネペンテス(女性)

同時収録作品夜の骨牌(上・下)

小林虎人,探偵助手
洵,虎人の幼馴染

その他の収録作品

  • あとがき
  •  

あらすじ

緑川伯爵のもとに引き取られていた洵(マコト)クンの様子が最近おかしい。異常にいち早く気付いた虎人(トラト)クンは、半年前からだと言う。原因は洵クンの家庭教師にあると察した青猫は…。洵クンと虎人クンの恋を見守る青猫と鶯。そして、因縁の宝石”マリアの涙”を巡り、過去の妄執に囚われた女賊ネペンテスとの対決が始まった‼︎
待望の完結編を大幅描き下ろしで収録‼︎
世界一我が儘な探偵が社交界を舞台に怪盗と解き明かす愛の謎‼︎

作品情報

作品名
探偵青猫(6)(表題作 「ネペンテスの袋 序章・其の壱~其の参」)
著者
本仁戻 
媒体
漫画(コミック)
出版社
芳文社
レーベル
花音コミックス
シリーズ
探偵青猫
発売日
ISBN
9784832286344
4.6

(20)

(14)

萌々

(5)

(1)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
7
得点
93
評価数
20
平均
4.6 / 5
神率
70%

レビュー投稿数7

やっぱり最後は硝子蝙蝠が持っていくのね

 成長した虎人と洵と青猫の複雑な関係もまたいいですね。3人とも後の2人を愛していて、単純な嫉妬で片付けられないところがややこしいけれど、この3人らしくて好きです。この3人は情が深いから、今後も3人で上手くやれると思います。後半の硝子蝙蝠と女賊ネペンテスと青猫の対決は、濃厚な腐臭が漂うような物語でした。こちらも蝙蝠と女賊の関係、蝙蝠と青猫の関係が鍵となっており、前半とは異なる大人の三角関係です。永遠に相手を愛するためにとる行動がそれぞれ違うところが面白い。この1冊でお腹いっぱいになりました。

0

グロテスクなエロチカ

6巻。
一応ラスト巻です。2つの物語収録。

「夜の骨牌」(上)(下)
再び大人の虎人と、同じく大人の洵(まこと)の切なすぎる物語。
自殺未遂の果てに、男娼だった過去や青猫に愛された記憶を失い、緑川伯爵の家で暮らす洵。
しかし、言葉の家庭教師に襲われて快楽と共に全てを思い出し、自分は汚れているからもう虎人と会えないと言い出す。
舌ったらずな洵の一生懸命な言葉の切なさ。
「対のカルタは1つじゃない」
これがこの「探偵青猫」の大きなテーマの1つのような気がする…
ともかく、洵が大好きな虎人は、星座の模様でいっぱいの星空の下でしっかりと洵を抱き締める。

「ネペンテスの袋」序章、其の壱〜参
こちらはまた趣向が変わった物語で、女賊ネペンテスと青猫、そして硝子蝙蝠の対決。
そしてこれは「黒蜥蜴」だと思いました。
1巻の最初のエピソードだった「マリアの涙」を奪いにくる黒江夫人ことネペンテスだが、これは女性には少しキツい物語だと思う。
稀代の女賊ネペンテスも老いて色恋が効かなくなってきて、自身の非情さも弱り…
彼女のやり口はその愛液に毒を仕込むことだから、男と抱き合わないと彼女の犯罪は成立しない。
やってくる硝子蝙蝠の言葉の辛辣さ!
しかしながらこのネペンテス。女性に見えないんですよね…
このラストの1編はコミカルさは全くなく、非常にまた非情にシリアスでありまるで映画を見たような読後感です。
この1編によって、一層「探偵青猫」に凄みが出た。神寄りの「萌x2」で。

1

夢の終わり

「夜の骨牌」
また少し未来のお話しとなります。
三十路の青猫とあんなことこんなことを知ってしまった小林青年。
そして体だけが大きく、心は純粋なままの洵。
身に降りかかる浅ましい行為に苦しむ洵に昔日の記憶が蘇り、青猫への贖罪、虎人への背徳感。
たった一人とではなく情を交わす「探偵青猫」の世界で、心の寄り添う対となる相手が必ずしも一人ではない。
説明の難しい気持ちの部分を鶯の説得で感覚的に理解出来た洵と虎人のこれから。
そうして青猫が、自分がそうされたように、虎人と洵を見守り続けて道を照らす先人の役割をきちんと担っている姿に、どきどきとほんわかした気持ちが入り混じって嬉しい気持ちになってしまいます。

「ネペンテスの袋」
青猫と硝子蝙蝠。そして硝子蝙蝠の昔の女、ネペンテスを交えたトライアングル。
瑞々しい気持ちの変化を厭い蝙蝠を捨てたはずが舞い戻ってきた理由。
生きていれば必ず老いる。
その、いずれやってくるグロテスクな姿に怯える女の性と、そんな事に思い悩むこと事態を呪ってしまうネペンテスのジレンマ。
美しいものをこよなく愛する蝙蝠の心を繋ぎ止める術を、ネペンテスは捨てることで心の平穏を得た。
青猫は逃げることで、同じように不安を解消した。
ネペンテスと青猫の恋のさや当てのはずが、蝙蝠を交えてそれぞれの思惑へと変化し、蝙蝠が誘ったのか、ネペンテスが元々望んでいたのか。
若い青猫を場外へ追い出し、蝙蝠とネペンテスのお互いが持つ未練を断ち切る為の、多分、最善の方法。
蝙蝠の掟にこだわり、それを覆す唯一無二を求めて差し出されるもの。
悲しみと絶望に、より美しさを感じる結末に酔いしれてしまいました。

何故か、ずっと続くと思っていたのですがこれで完結となります。
再読して、話しの巧さに引き込まれ新鮮な気持ちと懐かしい気持ちで読み終わりました。

3

難しい!しかし素晴らしい!!

複数の視線による交錯する愛情。
1巻に登場した洵くんと宝石:マリアの涙に関連する話が収録されています。

【夜の骨牌(かるた)】
1巻で苦難の末、幸せを掴んだ洵(まこと)くんに再び重くのしかかる過去。
引きとられて5年、緑川夫妻のもとで健やかに暮らしていた洵を待ち受けていたのは家庭教師からの凌辱。
それをキッカケに封印されていた男娼だった過去の記憶が甦り自分を汚い人間だと自らを責めるように。
洵を苦しめるのはあの暗闇ともいえる日々の中、青猫を愛し愛された眩い想いを忘れてしまった申し訳なさと今、想う虎人への罪悪感。

忘れてしまうということはゼロに戻す作業であって、そのままではプラスにはならない。
そこを越えて洵くんが何かを得ることができるように青猫と鶯が一肌脱ぐわけですが…。

ここで『対(つい)は一つとは限らないという』という青猫シリーズのひとつの主題が若いふたりが次へ進むためのおまじないのように語られます。
洵を抱きしめる虎人の想いや、そんな二人を見守る青猫と鶯の姿に涙が溢れてとまりません。

人は相手によって見せる姿、映る姿が違う。

それぞれの対の相手の光に照らされ違う輝きを見せる…一般的に複数の相手というのは疑問視されがちですが、いっぱい好きな人がいて両立しててもいいじゃないという青猫の理屈に夜空に浮かぶ洵と虎人の固く結ばれた手が重なり妙に納得してしまうのです。
独占したい気持ちも嫉妬も存在しつつ愛情を共有し、それが救いになり希望となるなら不可思議な理屈も有りですよね。

虎人くん、彼もまた屈辱的な幼少期を過ごし
てきたのですが青猫との小さな物語の数々と想い、洵への想いが、強くて素敵な若者へと成長させてくれたようで、すごく嬉しいです。

【ネペンテスの袋】
硝子蝙蝠の恋人だった女盗賊ネペンテス。
彼女は硝子蝙蝠の『特別』である青猫恭次郎を手に入れようとします。

女賊は過去、飽きられることを恐れ硝子蝙蝠の元を自ら去りましたが、それは硝子蝙蝠にとっても彼女に対する興味を失わないという点では都合が良かったのではないかと思います。
手に入れたもの(人)に飽きて捨ててしまう人種は確かにいます。
それでなくとも人の気持ちはずっと同じのままでいるというのは難しい。

青猫もまた、かつて女賊と同じ行動をとった…そして今また、硝子蝙蝠の手に掛かり永遠の存在となるという野望(夢)を抱くネペンテスと青猫。
硝子蝙蝠を挟み、青猫の心情とネペンテスの苦悩をリンクさせているのか…いやぁ、ホントに難しいです、この話。
結局ふたりは硝子蝙蝠の『本当』を知りたかったのだろうか?

モノローグがこれでもか!!と頭に雪崩れ込んでくるのですが、それは女賊ネペンテスとしてなのか、ひとりの女性としての心情なのか、ちゃんとつかみきれていない私です(笑)
BLにおける『女』という存在はとても微妙なのですが彼女はとてもエグくて大胆で魅力的でした。
アクが強すぎて彼女に集中するあまり、青猫から意識が逸れがちになりましたが(汗)
読むたびに印象が変わります。

この巻で終わりかと思いきや、どうやら続いてくれるようで安心しました。
青猫中心に硝子蝙蝠、鶯、早乙女伯爵、虎人、洵くん、、ついでに蜂王子刑事も、彼らの『対の骨牌』のエピソードをのんびり待ち続けることにします。

5

傑作でした

探偵青猫シリーズの完結編です。
感無量でした。
一巻からイチオシで大好きだった虎人くんが見事なイケメンに成長してた…!といっても二巻だったか三巻だったか、青猫の「夢」のなかにすでに成長した虎人くんが登場してたのですが。やっぱりあの夢は、夢ではなかったんだね。
ただ、虎人くんは、成長してもド凶悪な目付きのままで良かったと思います。目付き良くなりすぎ!いや文句はないんですがw
苦悩する虎人くんにはハゲ萌えました。ガキの頃のほうが甲斐性があった、ほんと鶯の言葉通り。でも、少年虎人が老成しすぎてたから、青年虎人の苦悩が逆に染みました。悩むのは大人への階段ですね。
二人を見守る青猫と鶯にも萌えました。

ちなみにこのシリーズの世界観は、登場人物総光源氏化って感じです。
みんながみんな、複数の男女と「本気の恋」をしてるんですよ。ただ、光源氏に紫の上がいたように、それぞれの登場人物に紫の上的な相手がいたりもします。
虎人くんにとって、洵くんかそれに当たる。
青猫にとっては鶯がそれに当たるのかな。
早乙女男爵には、青猫父が…
硝子蝙蝠は、ネペンテス?それとも青猫?
こんがらがりまくった「みんな穴兄弟♪」ってノリのシリーズなんですが、この作品のキモはそこじゃないのもポイントなんですよね。
これだけみんな穴兄弟でありながら、モラルの崩壊を描いてるんじゃなく、きっちりした「愛」を描いてるんですよ。
それは、最終話である『ネペンテスの袋』できっちり証明されます。
これ、誰のセリフをも誰のモノローグをも「そのまんま」に受け止めてはいけないお話でした。
囁く愛は、いったい誰に向けての愛だったのか。
誰がどんな誤解をしていて、なにを望み、なにを得たのか。
心の表層で求めていたものと、心の奥で求めていたものの違い。
どこまでが計算だったのか。どこまで自覚があったのか。
文字数があったら、一ページごと一つのセリフごとに、誰得な持論を語り倒したいぐらいなんですけどね…w

作者の本仁戻さんが「とても苦しみました。歳をとるごとにシンプルなものの奥にある複雑なものに惑わされて、ろくでもありません。」と書かれてましたが、確かに説明できない感情をここまで濃縮して詰め込もむのは、本当に大変なことだっただろうと思います。しかも、言葉通り出口はシンプルなんです。素晴らしいものを生み出されたと思います。
シリーズ通して傑作でした。

5

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