母を亡くし個性豊かな四人兄弟に引き取られた貴史。頑な貴史は、一番反発していた冬杜に抱きしめられ、心を開いていくが……。

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表題作楽園は甘くささやく

穂波冬杜,28歳,翻訳家
穂波貴史,18歳,睡眠障害を持つ少年

その他の収録作品

  • 楽園には立ち入り禁止

あらすじ

母を亡くした十八歳の穂波貴史は、遠縁の四兄妹、穂波冬杜・春臣・夏那・秋那の家で暮らすことに。人づきあいが苦手な貴史を、「穂波家の末っ子」として春臣・夏那・秋那は気遣ってくれる。そんな中、貴史はなぜか一番反感を覚えていた冬杜の優しさに、次第に心を開き始める。ある日、春臣から告白された貴史は、冬杜への気持ちに気づき…!?待望の文庫化。

(出版社より)

作品情報

作品名
楽園は甘くささやく
著者
神奈木智 
イラスト
サマミヤアカザ 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
幻冬舎ルチル文庫
発売日
ISBN
9784344823471
3.5

(10)

(2)

萌々

(3)

(3)

中立

(2)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
3
得点
33
評価数
10
平均
3.5 / 5
神率
20%

レビュー投稿数3

止まっていた時間が動き出すように・・・

傍から見たら物凄く可哀想で不憫な受け様ですが
本人の視点だけ捉えると悲壮感が少なめでとても
読みやすかった作品でした。
10歳頃から精神的に病んでいる母の為に屋敷の中だけで
過ごしてきた受け様が母の死後、遠縁の攻め様所で暮らすことに
人と会話すらした事がなかった受け様は、第一印象が良く無かった
攻め様に何となく反感を持ってしまうがそれすら言葉に出来ず。
攻め様の家は早くに両親を亡くし4人兄弟で暮らしていますが
今まで母との二人暮らしの受け様はかなりの戸惑いを。

でもこの受け様、会話はしないものの考えている事は
かなりやんちゃさんです。悲壮感が少ないのはキャラですね。
個性的な4兄弟と接するうちに受け様の情緒面が少しずつ
成長していきます、二男から告白されてから長男である
攻め様への気持ちが何なのか気づくのですが
その思いを伝える事が出来ないまま二男との出来事で
ギクシャクとしてしまうのですがそれに気づいた攻め様に
二男との事を真剣に考えてやって欲しいと言われ・・・

受け様は精神的な弊害から睡眠障害になっていたのですが
攻め様の近くでなら眠れる事が解っているのに
攻め様への気持ちを意識した途端傍に行くことが出来なくなります。

この攻め様の傍で眠れるのにも受け様が忘れている過去の
出来事に繋がっているのですが後半まで思い出せません。
攻め様は家族にも受け様にも言えない秘密を抱えているのですが
そのせいで受け様の気持ちを知っても受け止めることが
出来ない葛藤を抱えています。

家族が色々な思いを抱えていますが最後は家族の愛に
受け様も攻め様も後押しされるような形でした。
この作家さんの作品はいつもさり気ない優しさがあって
とても良い余韻が残るお話でした。

2

初めての恋。

母を亡くした貴史は遠縁の四兄弟の家で暮らすことに。
幼い頃から母以外の人物を遮断されて育った貴史。
そのせいで人付き合いが苦手で、四人との生活に戸惑うばかり。
満足に眠ることができず、自分の中にある恐怖心が心をかたくなにし、甘えることができない貴史に初めて『欲しい』という言葉を言わせたのは、次男である春臣だった。

春臣は優しく、夏那は明るく、秋那は気遣いを見せてくれる。
けれどこの家に引っ張ってきた張本人の冬杜は冷たい態度のまま。
そんな冬杜にイライラし、動揺させられ、反抗したくなる貴史は、嫌いだと冬杜に言ってしまう。
けれど、冬杜のそばでなら安眠できるというチグハグさ。
そして二人にじれる春臣。
そんな中、遊びにいこうと誘われ出かける貴史と春臣。
春臣は貴史の曖昧な態度にじれ、とうとうキスをしてしまう。
真摯に好きだと告げる春臣、だけど恋人にはなれないとはっきり断る貴史。
なぜなら、気づいてしまったから。
───冬杜が好きだ、と。

春臣もいい男なんですよ。マジで。
自分の欲しい言葉をくれないから、イライラする。
冷たい態度の中に優しさがあるから、動揺する。
自分のことが自分でわからないのに何もかも見通すようなことを言われ、反抗したくなる。
一喜一憂するのは冬杜にだけなんです。
それって立派に恋ですよ、貴史くん。

はじめてだから、わからない。
感情が揺さぶられて、でもわからないから、イライラして、嫌いなんて言っちゃうんだよね。
そんな貴史の純情が切なくいじらしい。

冬杜の負い目と責任は、貴史にとったらとるに足らないことで。
ただ、自分は冬杜を好きでいていいのか、それが大切だった。

開き直った冬杜はもう甘く、この人もある意味天然だなぁとしみじみ思いました。

2

洋館と、トラウマと、家族愛と

18歳の貴史は、たった一人の身内だった母親の死後、
突然現れた親戚の青年・冬杜の家に引き取られることになる。

心身共に不安定だった母と二人、
引きこもるようにして暮らしていた生家と似た雰囲気の洋館。
そこに暮らす冬杜とその兄弟達との賑やかな生活は、
社会とふれ合う経験が極端に少なかった貴史を戸惑わせる。

個性的な冬杜の3人の弟妹達が、それぞれに貴史との距離を縮めようとし、
戸惑いつつも基本的には素直な貴史は、少しずつ成長し馴染んでいく。
そんな中ただ一人冬杜は一定の距離から踏み込ませないように素っ気なく、
貴史は反発を感じながらも気になって仕方がなく、
そして長いこと不眠を抱えてきた貴史は、冬杜の側でならば何故か眠れる……

この貴史くん、モテモテで兄弟のうち二人が彼を好きになって諍いが起こる。
何故冬杜がこんな態度だったのか、その理由や最後いろいろな事情が分かるところは
急ぎすぎというか、ご都合主義な説明調であっさりかたがつき
ちょっと物足りない。

腹をくくって開き直った後の冬杜は、臆面もなくアマアマ(笑)

文庫化にあたっての書き下ろしは、本編のすぐ後、冬杜が仕事部屋を別途借りる話。
もちろん、うるさい兄弟達に邪魔されず、二人だけでイチャイチャする為ですね(笑)

冬杜の仕事というのが、ドイツ文学の翻訳家なんだけれど、
この若さで危なかった家計を盛り返して、このお屋敷を手放さずにすむほどの収入って
えーと、すごいな(笑)
映画化もされた恋愛小説って、「マディソン郡の橋」みたいなのですかね?

全体に、一昔前の少女漫画チックな雰囲気
〜設定やロマンチックさや家族の賑やかさも〜の一冊でした。

0

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