離れていても辛いし、傍にいても苦しい。

  • 電子書籍【PR】
  • 紙書籍【PR】

表題作僕に愛を語るな

加納冬偉,美容室のオーナー
西野雄祐,全国チェーンのレンタルショップ店長

その他の収録作品

  • 僕に愛を語るな After
  • 笑って云えますように

あらすじ

西野と叶は元恋人同士で、離れていた期間はあるが、この五年お友達として過ごしてきた。しかし、飢えた心に衝き動かされ再び身体を重ねたことで互いの感情が変化し始める。長い年月を経て二人が辿り着く、愛の行く末は――。

西野と加納は元恋人同士だが、今はお友達だ。真面目な性格の西野は昔も今も、恋愛を軽く楽しむ加納に振り回されてばかり。平静を装っているが、西野は過去に捕らわれたまま、今の関係を割り切ることができないでいた。そんなある日、加納から今の恋人について相談された西野は、ささくれだった感情を抑えられず、試すようなことを口にしてしまう。「あんたと別れた後…おれ、誰ともしてないよ」この一言から二人の関係が歪み始めて…。一生に一度の恋をしたとき、人は本当の苦しみを知る―。

作品情報

作品名
僕に愛を語るな
著者
結城瑛朱 
イラスト
小山田あみ 
媒体
小説
出版社
ムービック
レーベル
DolceNovels
発売日
ISBN
9784896018301
2.6

(30)

(5)

萌々

(5)

(2)

中立

(10)

趣味じゃない

(8)

レビュー数
9
得点
61
評価数
30
平均
2.6 / 5
神率
16.7%

レビュー投稿数9

言葉を尽くし、時間をかけて

この作品の構成は、

「僕に愛を語るな」前半・雄祐(受け視点)/後半・敬(攻め視点)
「僕に愛を語るな~After~」(三人称)
「笑って云えますように」(ダイジェストSS)

となっています。最後のSSは物語の全容が把握できるように描かれていて、本編のおさらいとして楽しむことができました。

雄祐が最初で最後だと覚悟していた、敬との恋。別れてから五年後に再会した二人のお話です。

地元で顔を合わせるようになった二人は、様々なシチュエーションで対話を積み重ねていきます。作中に散りばめられた対話のシーン一つ一つが、お互いのかけがえのなさを確認していくプロセスであり、物語のメインとなっています。なので、そこが楽しめなければ致命的かと思われます…。

東京で美容師の敬と出会った頃、専門学校生だった雄祐は「漠然と」映像作家になりたいと思っていました。ところが敬と恋に落ちてしまい、彼を失うことが最大の恐怖となっていきます。(←仕事はどーでもよくなってく)

他方、思春期に経験した家庭内のトラウマから、高校卒業後すぐに住み込みの美容師として働いていた敬にとって、雄祐との関係は女遊びの一環。雄祐は恋人が、敬は仕事が最優先だから根本的に噛み合うわけがない。

女と浮気してもしれっと雄祐のもとへ帰ってくる敬。付き合って二年が経ち、一緒にいるのが苦しくなった雄祐は別れを切り出しますが、承諾した敬は、雄祐と別れてしまってからその存在の大きさを思い知ることになります。当時、二人が別れを選ばざるを得なかったのは、それぞれの孤独と向き合い、気持ちを整理するための冷却期間を必要としたからでしょう。

個人的に作家さまの描く恋愛一筋な受けが苦手なのですが、本作の雄祐もまァ、煮え切らない男なんですよ。ずっと敬から身を引くこと、寝ないことを固く心に誓っているのに、再会してからもやっぱり彼からの頼み事は断れないんです。(特にえっち。)

作家さまは二人の対話を言葉と身体(セックス)の両方で描いていらっしゃいますが、BLらしさが生かされているなーと思うのは、雄祐が言葉で語り合うことよりも、敬に抱かれることで身体の方がしっかりと説得されているところ。頭では敬を拒絶しているけれど、身体は明らかに彼を求めているのがよくわかる。

色事に奔放で独り寝ができなかった敬ですが、彼がその悲しい理由を打ち明けた相手は雄祐、ただ一人でした。愛する人への執着が強くなるほど憎しみや孤独が深くなるということを知っている彼は、愛を語るのをやめて、せっせとエッチで雄祐を気持ちよ~くさせてあげるんです。

一緒にいることで愛の六割が楽しければいいじゃないか。
おれ以外は全部棄てろ。
そしたら、残りの四割を気持ちよくしてやる。

(↑数字に弱いのでいまいちピンときてない)

以上が敬の提案。雄祐も自分の抱えた矛盾や独善性を痛いほど自覚してはいるんですけどね…。あとは彼の決断次第なのですが。(←いかんせんグズグズなタイプ)

攻めがちゃらんぽらんなようでいて実は達観した人物なので、二人の未来には希望を感じます。先が見えなくても共にいること。そして時間をかけることを厭わないこと。何かを信じ続けることなのかな、愛って…。

しかし超長尺ラブだった。濃いのかくどいのか、読むのもレビューを書くのもスゲー時間がかかって疲れました…。

サラッと読めて、スッキリできるものをお求めの方には大変不向きな作品ですが、愛について真剣に考えてみたいなんていう奇特な方には、もしかしたら奥深い作品となるかもしれません。

小山田あみ先生のイラストにも楽しませていただいたので、挿絵に「萌え」プラスで。

1

苦しくても一緒にいたいと思う

結城さんは自分に合う作家さんだと思っています。
一ページの字数が多いのも。
面倒くさい漢字やらスルリとは読めない漢字(顫える←ふるえる)やら使われるところは、ハッキリ言って必要性がないとは思っていますが。(我武者羅とか伽藍堂とか、どこのチームかと思ってしまった)
ノベルズの二段組作品なのですが、あとがきまで二段なんて初めてです(苦笑

********************
受けは東京から帰って五年、地元でレンタルショップの店長を務める西野、31歳。

攻めの加納は37歳の美容室オーナー。
年齢不相応な格好も似合ってしまう女たらし。
********************

視点は『Side NISHINO』、『Side KANO』という風にここからはこちら視点ですよーという風にわかりやすくなっています。
一人称です。
表題作の他に二編収録。(この二編は三人称)

序盤は西野視点で、彼は19歳です。
ここで西野が加納に対して抱いてしまった想いそのままをわたしも味わってしまいました。
これが、「はい?」となった方にはこの厚さと二段組は苦行かも…

知り合って12年という、幼馴染みでもないカップルには驚異的年月設定です。
しかし、その辺りが男同士の恋愛だなあと感じます。
男女ならば結婚を視野に入れるから、そんな待ったり囚われていたりは出来ないと思いますし。
西野が19歳の時に始まった関係は二年で一度終わり、その五年後地元に戻ったふたりは再会し、そしてこの五年間はつかず離れずの友人関係を続けています。
それでも西野の生活のちょっとした隙に、加納との思い出やら囚われている記憶が存在していて、あー、西野はこの十年まったく変わらない気持ちを隠し続けていたんだなあと切なかったですね。
加納と一緒にいた頃のドーナツが食べれなくなってしまったとか、ほんの小さいことの積み重ね。
加納は過去の西野の嗜好だとか考え方だとかをしっかり覚えていて、それをちょっとした時に差し出してくるわけですが、加納の本意がわからない西野には心を乱されて無神経に感じるのは仕方ないことかな。
これってやっぱり、西野が加納を振り切れていない表れだから。

西野視点の時はひたすらこちらまで切なくて仕方なかった。
そして加納視点は、子供の頃に存在を抹殺され、そして心の成長を止めてしまったかのような、臆病さと赤裸々さがありました。

加納が母親に囚われていてそれを無自覚に今日まできたこと、それをやっと気づくことが出来て、十年経ってやっと西野のしてくれていたことにも気づけた。
「俺をやるから、おまえをくれよ」という加納のセリフがあるのですが、加納はやっと自分を差し出す恐怖よりも知らずに去られる恐怖を自覚したんだねと胸が熱くなりました。

体を繋げるシーンはありますが、エロティックさは皆無に近いです。
ふたりの必死さを前面に出しているため、する前は「だめ」とか怒ってても始めちゃえばそんなのどこかへいってしまっている(そういう作品も好きではありますが)というようなセックスではありません。
抱いても不安、抱かれても不安というお互いのギリギリラインが本当に良かったです。

万人受けするかといえば、それは無理だなあと思います。
読み返すのはキツイなとも思います。
ただ、このキツさは自己保身だとか自分の見たくない心の奥だとか、そういう生身のものが書かれているからで、それを見たくないなあと思っている時には読めないなあということです。
ふたりの感情の発露が多くて読んでいて本当に苦しく感じましたが、読んで良かったです。

5

め、めんどくせえ…(でも嫌いじゃない)

37歳と32歳。
かつての恋人で現在は友人関係にある二人が、紆余曲折の末また恋人になるまでの話です。

とにかく何事においても噛み合わない二人。
ヨリを戻すかについても、その他のことについても意見が合致せず、ディベートか禅問答か?というくらい最初から最後までずーーっと語り通し。
それが2段組の構成で続くので、人によっては面倒臭い、理屈っぽい、ポエムのようで寒い(仮名遣いが独特です)などと感じるかもしれません。

私も上記のように感じはしたものの、このウダウダ感は割と気に入りましたw
どこまでも平行線で、不毛な感もある会話の応酬ですが、相手を理解すること、理解してもらうことを諦めずに言葉を尽くし合う関係性に、ある意味誠実な愛情が見えるというか。

互いの噛み合わなさを、愛の力や身体関係などではなく言葉によって埋めようとする、という姿勢が最後まで貫かれていたところが興味深かったし、ようやく折り合いをつけたラストには長年付き合った二人ならではの甘さがあって良かったです。

また小山田先生の挿絵の二人がすごくいい男で、それで印象がだいぶ良くなっている感もありw
特に加納は出で立ちから表情からこれぞ加納って感じで(口絵の西野にすがるイラストがすごく好き)素晴らしかったです。

独特の仮名遣いが読みにくかったのと、
ラストの濡れ場でまで延々語っていたのがなければ神評価にしてたかも。
ようやく抱き合っているのに…!
語りの合間に行為描写が入っている感じで全然入り込めなかった(泣)。
冒頭の初体験のシーンや、前半の受けの誘い→放心状態の事後シーンの方が、簡潔にまとまってる分よっぽどエロかった気が。

色々と癖の強い作風ではありますが、実験的な作品として面白かったです。

6

一度離れて

また巡り会う物語。

若い時の、奔流のような恋に怖じ気づいて、一度は離れてしまった二人が、
大人になり、いろいろ経験を積んで
ようやく、最初の恋を受け入れるお話。

って、このフレーズ、2~3日前にも書いたな。
今週は「若さ故の激情に怖じけづき、一度離れて、くっつく話」週間のようです。
ノベルスの2段組、分量はかなりな物ですが、加納サイドの話になってからは、ひたすら加納が西野を追いかけ回す話なので、ザクザク読んでしまった。
この話、元はサイトでの連載って事で、このグルグル加減が腑に落ちた。

小山田さんのイラストの加納が、すごく加納。
西野も、イメージ通り。
イラストに萌+1。
でも、独特の漢字使いに萌ー1で、さしひき萌一つ。

2

合わないとわかりきってる作家さんは、もう二度と読むまい、と決意を新たにしました。

『しゅみじゃない』に限りなく近い『中立』です。

この作家さんは、実はもうかなり前になりますが、同人時代に読んでいました。とは言うものの、ずっと追いかけて読み続けていたというのではありません。いくつ読んでもいいと思うものがまったくなかったし(技量ではなく、私の好みの問題です、たぶん)。

ある意味馴染みのある作家さんだったので、一応商業も読んではみましたが、やっぱりダメでした。
とにかく、根本的に相性が悪いとしか思えません。作風そのものが好みじゃない。

そこまで『合わない』作家さんの作品をなぜ、というと、まあ偶然の巡り合わせです(率直に言えば間違えて買・・・)。

新書の新刊は、無視するにはあまりに勿体ない、と読んだのですが、キャラクターもストーリー(エピソード)も、そして文体や言い回し・漢字遣いも(これは同人のころから変わんないけど、ホント読みにくい。個性のつもりなのか?)、いちいち神経逆撫でされる感じで、非常にツラかったです。
もともと私が、病んでる中でも特にこういう系統のキャラクターは受け付けないというのもあるでしょう。

しかし結城さんの作品は、タイプは違えどうっとうしい(と私が感じる)キャラクターばっかりなんですよね(もちろん、私が読んだ限りはですが)。
その中でも、これはいちばんダメでした。

読後にまず感じたのは『勇気ある撤退も必要だな・・・』でした。貧乏性でなかなか難しくても、BL読んでこれほど気分が悪くなるくらいなら、『読まない』という選択肢もアリだな、ということです。

ひとことで言うなら、読まなきゃよかったと感じた作品でした。

6

この作品が収納されている本棚

マンスリーレビューランキング(小説)一覧を見る>>

PAGE TOP