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表題作いとしの悪党

大学に無断で通うフリーター 田上新太郎
起業家志望の最高学府大生 中垣行人

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

先見に長けて計算高く、ひねくれ者の田上。裕福で純粋な行人を傷つけてやろうと近づくが、思いがけず懐かれてしまい…!?

(出版社より)

作品情報

作品名
いとしの悪党
著者
李丘那岐 
イラスト
ヨネダコウ 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
幻冬舎ルチル文庫
シリーズ
空を抱きしめる
発売日
ISBN
9784344826748
3.7

(36)

(5)

萌々

(23)

(5)

中立

(0)

趣味じゃない

(3)

レビュー数
8
得点
132
評価数
36
平均
3.7 / 5
神率
13.9%

レビュー投稿数8

これもまた割れ鍋に綴じ蓋

『空を抱きしめる』のスピンオフですが、それを読んでいなくてもいけちゃいます。
ちゃんと作中でどんな関係があったのか言及されていますし、それの主人公も登場しますが、話を知らなければわからない、という関与の仕方ではないので全然無問題♪

前作の表紙も青と黒の基調がとても雰囲気の良い表紙でしたが、今回も構図といい茶を基調にしたグラデで描かれたこの表紙!とても素敵です!!

ひとりの主人公は、元女優の母と売れない画家の父を持ちながら、商才にたけた祖父の血を引いているのか、自分が恵まれた金に不自由しない環境にあることをきちんと知りながら人を喜ばせる為のそして金も儲かる起業をしたいと考えている、大変に人あたりのよい大学生・直人。
もうひとりは、会社経営の家であったのに経営が破綻し家族がバラバラになり、借金とりに追われ、親にも見捨てられ施設に入り、頑張って勉強し進学校に入るも事件を起こして保護観察処分になり中退。その後、保護士の元で1年生活したあとに、詐欺師まがいの事とジゴロのような事で男をあしらいながら、大学に潜り込み聴講していた直人と同じ歳の田上。
この田上が、前作の主人公・郁己のトラウマを作った相手となります。

直人が大学の講義で気になる学生がいる。
その彼と偶然、中庭でフルートを吹いているときに出会い声を交わす。
おっとりとした直人に攻撃的な否定的な言葉を発するその男・田上を直人は不快に思うどころか、興味がわき何かにつけて彼にまとわりつくようになる。
意見の交換をしても、夢見がちな自分の意見に大して、現実を突きつける田上、とその会話は非常に心地よいのだが、田上は呑気な金持ちは憎む存在といつか直人を傷つけてやりたいと思うのでした。
そうして、田上は直人を騙して金を巻き上げ姿をくらまします。
しかし、再会は思いもかけず早くやってきます。
それは直人の執念勝ちでありましたが、再会しても田上を攻めるでなく、一緒に起業する仲間に誘うのでした。
そうして、直人が社長、田上が副社長となり、夢を実現するのを応援する会社を立ち上げるのです。

よい意味で直人がポジティブです。へこたれません、そして甘え上手です。
田上は、根負けした形になるのでしょうが、いつか成り上がってやるという野望の割に、詐欺を働いていた割には、結構堅実で地道で、騙された男たちも未練が残るほど、酷いやつなのに愛されていたということがわかります。
きっとどこか憎めないところがあるのかもしれませんね。それは彼が真面目だったからなのかもしれませんw
直人の案を二人で検討し、田上が現実のレールに載せる。
この二人のコンビは、後に新社屋建設で関わった郁己が漏らすほどに、ビジネス面でだけでなく性格的にも「割れ鍋に綴じ蓋」お神酒徳利コンビだったということがわかります。

恋愛面については直人が非常に淡白です。
亡くなってしまった元婚約者に愛情を深く抱いていたのかと思えば、実はそうでなかったりします。
彼にとって恋愛とは、すべての一切合切を含めてのものでなくてはならなかったのかもしれません。裏を返すとひょっとして一番貪欲だったのかも?
ラストの展開、田上が身を引こうとするところでようやく気がつくほどののんびり天然さんなので、そう思ってしまいました。
田上は脅しで襲うぞ、とは言いますが毒気を抜かれてしまうものが直人にあるし、きっとこの関係を崩したくないから手が出せなかったようですね。
郁己の事があったから臆病になっている部分が、彼のいいところかもなんて思えます。

まったく、直人がいい性格です。
作中で、フルートを吹くときの気持ちとか、それにこだわる元婚約者の妹なんか出てきますが、その時の直人の気持ちは綴られてないので一体彼はどういう気持ちで吹いていたのかな?
決して亡くなった恋人への思慕ではなかったはず。もし、それが言葉にされない彼の隠された本当の心だとしたら、一体なんだったのかな?
と、あれやこれやと推測してみたり・・・
田上が郁己に嫌がらせで送った指輪・・・同時に直人にも作ってたんですね♪
恋愛はあっさりしているのですが、気持ちの推移がとても自然で、とてもよかったのです。

6

悪党を凌駕するほどのポジティブ受け様

関連作の「空を抱きしめる」のスピンオフ、前作では大型ワンコが命一杯大好き
アピールしている姿が萌えましたが、今回はそれとは対極にあるような攻め様が登場。
前作の受け様の兄貴的存在だった攻め様ですが、かなり屈折して捻くれていて、
思わずあの人が主役なの?なんて驚いてしまいましたけど、蓋を開ければ前作よりも
惹きこまれる内容でかなり楽しませて頂きました。

子供の時からお金で苦労していて、決して幸せな生活を送ってこなかった攻め様ですが
その影響なのか、そもそもの性格なのか、ホントに悪党系の男です。
詐欺まがいの事を繰り返し、お金を引き出して姿をくらます、それもハニートラップ(笑)
男相手だと面倒が少なくてサクサク騙しているんですよね。
世の中お金が全て、それ以外はいらないなんて思ってけど、本当に欲しいものが
手に入らないから、お金でって気がする攻め様でしたね。

対する受け様は、筋金入りのお坊ちゃま系、お金の苦労なんてしたこともないし、
そのせいなのか何事に対してもかなり淡泊的なんです。
その受け様が、初めて欲しいと思う相手が攻め様なのですが、自分に無いものを求める
究極の相手ではないかと思います。
二人でいる事で未来が大きく広がっていける、BESTなパートナーなのですが、
攻め様は、受け様の事が初対面から苦手、受け様は初対面から好意を抱く。
そんな攻め様にぐいぐい自分から距離を縮める受け様は、ある意味最強。
1度は、攻め様に騙されいなくなられるが、探し出して捕まえてしまう受け様。
受け様に狙われた攻め様はもう、逃げられない感じでしたね。

ビジネスのパートナーとして、共に歩き始める中で、攻め様はドンドン受け様に惹かれ
でも、思いが叶う事が無いと初めから諦め、逆に好き過ぎて受け様に手酷い事を
してしまうからという切羽詰まった思いでつれなく受け様を突き放す。
天然系で、思いのほかニブイ受け様ですが、攻め様を手放す事など出来ないと
押して押して押しまくり、結局意地っ張りで素直になれない攻め様の心を捕まえる。
ツンデレと言う可愛い感じには思えないけれど、攻め様はある意味ツンデレ気味。
受け様の明るさ天然さが攻め様の影の部分を凌駕しちゃってる話で面白かったですね。

4

悪になりきれなかった悪党

『空を抱きしめる』のスピンオフです。
田上が18歳の頃に故意的に郁巳を傷付け、
阿万崎工業を辞め数年後からのお話ですが
冒頭は田上視点ではなく、
大学でも目立つ存在の裕福なお坊ちゃん・行人視点です。

祖父が資産家、父親は売れない画家、
母親は元女優という環境の中お金に困った事もなく
周りのやっかみと羨望を受けながらも
男女共に興味を惹かれる人物がいない行人が
唯一気になっていたのが、受講時に自分より前に座る男。
誰とも話さず質素な服装で真面目に講義を聞く姿は
他の学生には見られない真剣さでした。

行人が構内の外れでフルートを拭いていると
偶然居合わせた田上と話す機会が訪れ
それから行人は嫌がられながらも
田上を知りたい気持ちに抗えず
接触を試みるのですが…。

捻くれ者の田上の過去はどうだったんだろうと
『空を抱きしめる』でも思いましたが
本来であれば私は田上のような男は好ましくありません。
いくら貧しい思いをして苦労したからといって
人を騙してお金を得る事が許されていいはずがないのに
田上の向上心と機転の利く様子に感心させられてしまいました。
努力もせず、ぬくぬくと暮らす金持ちから
小金程度もらって何が悪いというある種の開き直りは
田上だから説得力がある気がしました。
罪悪感がまるで無いわけではありませんし
自分に言い聞かせるあたり、憎めないのです。
田上視点もあるからこそ安心して読み進められました!
郁己を傷付けた事を後悔していたのも知れて良かった…。

行人が、そんな田上と真逆の性格と環境で
田上は本当に迷惑そうだったんですが
とにかくめげない!!!
いくらいい顔をされなくても
経営の議論で正論をぶつけてくる田上と一緒にいるのが楽しくて
どこまでも前向きでした。
金持ち特有の余裕といえばそれまでですが
来るもの拒まず去るもの追わずだったのに
田上だけは裏が無いと信じて…。

私だったら立ち直れないかもしれません。
350万もの大金と共に消えられたら。
探す理由が自分にはあるからと
行動する行人の意思の強さに感動すら覚えましたし
本当に田上にはそんな価値があるのかとか
色々考えさせられました。
「また逃げてもまた追いかけるよ」って
執念にも似た決意に感服せずにいられません!!
田上がもう白旗を上げてしまったのも納得ですww
陽と陰、真逆な二人が組んだら怖いものは無し!!

行人の祖父の言葉がとても胸に響きました。
〝人生は大きな川だ。
自分にとって確かな何かを手にしていれば
どこに流されたって大丈夫だ。
手放すものを間違えるな〟
それをちゃんと実行出来た行人は幸せですね。
勿論、捕まってしまった田上も!!

私にとって苦手な内容なはずなのに
読後感も良くてとても楽しかった!!!
やはりヨネダさん効果でしょうか…ww
田上が訳アリ臭全開でとても色っぽかったです!!
(行人は優しさが滲み出て綺麗でした☆)
神寄りの萌×2です!!

3

善より悪が人を魅了する

最初、ヨネダコウさんの挿し絵目当てで購入したこのシリーズ。
「空を抱きしめる」も年下攻めの王道っぽくて良かったですが、こちらの話の方が個人的に好みでした。

攻めの田上は貧困な家庭に生まれ、その劣等感と負けず嫌いの性格から事件を起こしてしまい、現在は金持ちからお金を騙しとることを繰り返しています。
そんな時に出会ったのが、受けの行人。家が資産家で、容姿にも恵まれ、友人も多い。常にマイペースで、恵まれていることを当然に受け止めている幸せな人物。
そんな行人は田上にとって大嫌いな人物だったのに、なぜか懐かれ、追いかけられてしまいます。

田上はまぁ、悪いヤツで性格も歪んでいるんですが、根底にあるのは愛情への飢えだと思うんです。
両親に与えてもらえなかった愛情を誰より求めている孤独な寂しやがり屋なのに、プライドの高さからそれを素直に表せない。
内面を知れば知るほど支えてあげたくなる、本当は可愛らしい人です。

対して、行人は・・・・この子、かなりの大物です。
田上に対しての好意も恐らく可哀想という気持ちからでは全然なく、自分が一緒にいたいから。田上といれば、楽しいことが沢山できるからという期待で田上を追いかけますが、実際二人の相性はバッチリ。
-多分、本能なんでしょうね。たまに「何でこの人を選んだのだろう?」というお話もありますが、この2人はビジネスパートナーとしても恋人としても本当にお似合いなので、お互いに惹かれあうのがとても自然に感じられました。




--ところで、この本のタイトルは「いとしの悪党」ですが・・・、これ、どっちを指しているんでしょう??
ふつーに読めば、当然田上のことだと思いますが、前作の「空をー」でも思いましたが、行人も田上以上のかなりのクセ者の気が。
だからこそ、田上と惹かれあったのかもしれませんが。
ラスト、田上が「騙すなら責任持って最後まで騙せよ?」と言ってますが、この2人はお互いに上手く騙し合っているのかもしれませんね(笑)

2

二人芝居を見ているよう

読了してから「空を抱きしめる」という作品のスピンオフだと知り、途中で出てきたキーパーソンのくだりがアッサリしていたのはそういうことかと納得しました。この作品だけでも完結しており、しっかりと読み応えがあって面白かったです。

二人芝居を見ているような不思議な緊張感のある作品でした。ヨネダコウさんのイラストが素晴らしく、さまざまな距離感で過ぎていく二人の日々が淡々と描かれている物語に非常にマッチしていると思います。エロは控えめですが、個人的にとても好みで印象的でした。

2

この作品が収納されている本棚

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