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一穂ミチ先生、初の新書判ノベルズ。
新鮮な感覚というか、下ろし立ての糊の効いたワイシャツのような、
肌に馴染まなさというか、そんな微妙な違和感を感じながら読み終わった。
ただし、これは私という1人の一穂ファンの個人的な感覚であって、
相変わらずエピソードやちょっとした小道具を積み重ねて作られる世界や、
繊細に心情が掬い取られた文章は魅力的で、良作だとは思うのだが…
んー、結構初めの方にH場面が出て来たのが意外だったのもあるのかな?
一穂作品にしてはH場面率は高いです。
:
再会もの…と言えるのだろう。
出来るだけ人と関わらないようにして暮している、グラフィックオペレーターの仁科縁。
ある日彼は、叔父であり上司であり数少ない理解者である訓の誘いで、編集者の岩崎数真と出会う。
飲みの席で数真が語った、目が見えなかった子どもの頃のエピソードを聞いて縁は…
見えなかった子ども時代を過ごしていた数真と、見えているのに分からない縁(ゆかり)。
ふたつの夏を共に過ごした、小さなカズくんとゆかりちゃん。
ちょっと人と異なる感覚を持たざるを得ない二人の世界と、
今の話と過去の話の二つの世界、それらが縦軸横軸になって絡み合って、話が織られていく。
人は誰でもその人それぞれの苦手さやコンプレックスを抱いているものだと思うが、
そういうものが、特徴的な生きにくさを通して浮き彫りになる様は見事だ。
色彩感覚や触覚を大事にしたイメージが、テーマと相まって素敵だし、
「ときめきって温泉が湧くことなんだ」
「見えていても見えていなくても自分の世界の不確かさってあまり変わらない」
「触る、というのはひどく単純な喜びだ」とか、
そうなんだよな~と思って頷いたりハッとする表現が散りばめられている。
縁の叔父の訓も、後書きのエピソードも含めて暖かくてすごくいい。
縁の怖くて閉じている自分の世界が、数真との触れ合いを通して開かれて行くのが物語の核だが、
最後はちょっとドタバタと巻いた感じが否めない。
それがちょっとトリッキーな面白さとも言えるが、もう一章あってもよかったかなとも。
…と、全体に悪くないんだけれど、なんだろう?
個人的に不満なのは、痛みと切なさの心理描写が不足か。
比較的キャラクターにあくがないというか、普通にいい人な感じで思い入れが持ちにくい?
H描写にとってつけた感が否めないこともあるか……
…うん、まぁ、すごく甘いカップルになりそうな予感ではあります。
<おまけ>
*出会いの場面で数真が語っている貧乏な男と盲目の少女の映画は、チャップリンの名作「街の灯(City Lights)」。
*待ち合わせで縁が読んでいたのは、ノーベル賞作家のドリス・レッシングの本だろう。
*作中の暗闇体験はこれだと思う、「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」。
http://www.dialoginthedark.com/did/
*相貌失認は、発達障害との合併をよく言われますが、意外に多い症状で人口の2%とも。
かのルイス=キャロルがそうであったと言われています。
<さらに、ちょこっと…w>
*二回目の時、二回立て続けにいかされて、連続で出したことがないのでビックリしたー
と言って、ものすごくビックリされる…というシーンがある。
こういうのって、すごく伝わっていいな〜♪ こんなところで実は萌えた私でしたww
まず受けの設定、人と関わりを持つのを避けているのに、常習で女をお持ち帰りしてヤってるのが矛盾してる気もしたし…加えて攻めの最初の誘いが 試してみない?的な言い方で(あとから理由があったと説明されるのですが)それでヤっちゃってるのが、わたしにとっての苦手に感じました。
Hシーンに多くページが割かれてるせいか、常の一穂作品に比べ人物の心情やその変化してゆく過程などが掘り下げられてない感がしました。
Hシーンが多いといっても妄想的?BL的?というよりは、BLの範疇ではあるけどリアルを志向している気もして…そこがハンパな気もして…もやもやしてしまい、わたしは、ですが、あまり萌えなくって。
光る描写やぎゅっと気持ちがもってゆかれる箇所もあり(子供時代のやりとりが良かった…)思いが通じ合った箇所では泣けたのに。続いてHシーンが展開したところでさーっと気持ちが冷めてしまいました;
流れ的にもBL的にも、両思いになってのHシーンは必要なんだろうと思うけど、わたしとしてはその箇所のHはもっと心情重視の描写にして欲しかった。「どうしてほしいの」とか「あっ…」とかいう、その、喘ぐとかいらないっていうか。(う、上手く書けません、すいません。もっとこう、精神的なこう…(うまく書けません;
せっかくの新書でしたが…「それなり」ではある、でも攻めにもこと受けにはさほど魅力を感じず再読しないだろう、また一穂作品にしては、という気持ちもしたのでこの評価にしました。
ハイ爺さま
いつもお世話になっております、snowblackです。
レビュー拝見して、そうだ!と膝を打ちました。
今までの一穂作品のH描写は、心で交わるような描写だったのが、随分趣が違いましたね。
煽る言葉や喘ぎがあるのはいいのですが、例えば林檎の同人誌でのそれとは大分違う。
挿絵にもそれは現れているように感じました。
これは、レーベルのカラーなのかなぁ、と漠然と考えておりますが、きっと二作目三作目になれば
その辺一穂先生らしい落ち着きどころが見つかるのかもしれないなーと期待しております。
評価は、私も実は迷いましたが(一穂作品の萌×2は通常神に近いのですが)、初新書ということでw
それでは、失礼致しますm(_ _)m
待ちに待った、ミチさんのスピンオフ作品ではないお話!
どんなキャラが出てくるのか
またどんな素晴らしいエピソードの数々が!?と
心躍らせながら読み進めました。
(気持ちを落ち着かせようとしてもそんなの無理)
会話・感覚等、抜群のセンスで
やっぱりぐいぐい惹きこまれて行くのですが
縁の病気、私はこれが想像出来なくて
縁の苦しさがわからなかったのです;
とても丁寧に例えを用いて説明して下さってるんですけども。
ここをしっかり捉えられていたら
どっぷりハマれた気がします(泣)
あくまでも私の場合ですが…。
普段のそつのない社会人からかけ離れた
好きなものを楽しそうに熱く語る姿、
縁に関係を迫る時なのに「寂しい顔したから」と
微妙な変化にも気が付くところ、
そんなに高価じゃなくても、縁に毎日使うものをプレゼントしたくなるとか
泣く縁を気遣って気持ちを尊重して
後は黙って抱き締めてくれるところとか、すごく数真が好きだー!!!
ベタかもしれないけど私は優しい男が好みなのです…。
これだから、縁も惹かれたんだと思う。
病気の事で臆病になり、今まで人に執着する事も無く
関係する人間は誰だってどうでも良かったから
さらっと女とも寝てしまえたのに。
自分自身で変えようとも思わなかった変化に気づき
(宅配にちゃんと応対するようなったとか)
叔父の訓からも指摘されるほどに…。
この訓が良い味出してて、縁への愛情が非常に伝わりました。
すべてわかった後
二読目、三読目でまたこのカップルが好きになりました!
素知らぬ顔をして話していた数真が
本当はどう思っていたのかとか、ぎゅっとくるのです。
本編後、ミチさんのブログに掲載されているSS
『ノットオンリーミー』を読むと
数真をいびる(?)訓が素敵なんですよ☆
ムクさんの優しい挿絵が合っていたのですが
一か所、後半バスルームでのフ○ラシーンは
もう数真がシャワー止めてるはずじゃないかな…??
違うかな;
なんにしても、塗れたシャツから透けるティクビも
恥じらいながらゆっくりたくし上げる扇情的な姿もたまりません!
昔の事もあっての気持ちの盛り上がりだと思えたので
私はあんまり心情描写に物足りなさは感じませんでした。
Hシーンがいつもより多目なのも
「ミチさんの作品でこんなに読めるとは贅沢かも!?」と。
…単純過ぎですね;
というわけで神寄りの萌×2です!!
江名さん
早速読んでいただけましたか♪嬉しいです!
たぶんまたブログにアップして下さったり
同人誌でお目にかかれるかと思います!
とてもマメに書いて下さって、ファンにはたまらないのですよー。
そしてどのお話のSSでも、どのキャラでも
絶対にその人物像がブレないというのが素晴らしすぎます!!
ミチさんは“SSの女王”だと私は思っておりますw
短くても満足させてくれて、
でもまたもっと読みたいと貪欲になってしまいます。
ミチさんのそういう才能が枯渇する事はないんだろうなーと
またうっとりしてしまうんですよ☆
コメントいただきまして、誠にありがとうございました!
東雲月虹さん、こんにちは~
『ノットオンリーミー』読みました!
教えてくれてありがとうございます。
ああ~好きでした、すごく!!
ああいうエピソードが後半いくつもこの本にプラスされていたら、
嬉しかったのになぁ~
ムムム・・・と思ってしまった事も過去の話と流してしまえると思うのに~~
もっとラブラブなふたりが読みたい(*゚▽゚*)
って、こうやって、一穂ファンの方々はおウチに同人誌が増えていくのですねw
わたしもそのうち増えて、置き場に困るようになったりするかな~~
なんにしても、教えてくださってありがとうございました♪
登場人物の微細な心の変化を抜群な文章、構成で描いている切なくてどこかほのぼの
心にじんわり臆病な恋心と切なさが染み入ってくる作品だと思います。
それにイラストは小椋ムクさんとくれば、まさに最強タッグなのでしょうが、
個人的にはじんわり&もしかしたら涙もじんわりくるかもしれないこの手の繊細な
それも、障害をテーマにした作品は苦手かも知れません。
なんだろうね、どこか素直に作品の良さを受け止められないと言うか、目が見えないとか
人の顔を認識できない記憶できない主人公たちの幼い日の出会いから、
大人になって20年も過ぎて再び再会してからのストーリー。
この最強タッグの作品はとても素敵だと第三者的には思うけれど個人的には左程惹かれない
あまり一般には馴染みのない特殊な障害を持っているため、
他人に興味を持たずに生きてきた28歳の主人公・縁(受け)と、
子供のころ全く目が見えなかったけれど、
手術により視力を得た、縁より2つ年下の数真(攻め)。
このふたりの、再会の物語。
まだ、小学生1年生と3年生だった頃のふたり、
全盲の「かず」に本を読み聞かせた「ゆかりちゃん」の話が、間に語られます。
この「かず」が賢くてしっかりしているのにとっても愛らしくて、
話す言葉とか、もう堪らなかったです。
子供時代のみで一冊読みたくなるくらい。
でも、そんな「かず」に愛情を持てば持つほど、
大人になった「数真」とのギャップにはムムム・・・となってしまう自分がいました。
26歳になった数真は一見、自分がかっこいいのをちゃんと分かっているようなタイプで、
言葉を口から淀みなく出せる、優しいけれどちょっと軽めな人。
彼があと10歳くらい年がいっていたらタイプだったかもしれないのだけれど
(その違いは自分でもよく分からない・・・)、
なんかどーーにも好意を持てないまま話が進んでいってしまって、ちょっと困りました。
最初の方で女性のカラダについてどうだこうだと熱っぽく語る数真が、生理的に嫌で、
そのよくないイメージをずっと引きずってしまったのかな・・・。
(まぁ、その繋がらない感じを縁と読者に感じさせたくて、
きっと敢えてあの「数真」が一穂さんによって創られたのだとも思うのですけれど・・・)
そして後半は後半で、
障害故に数真を切り離そうとする縁に気持ちを乗せられなくて、またまたムムム・・・。
いや、
縁の障害をちゃんと認識できないでいるのがそもそもの原因なのだと思うのですが
(顔はダメだけど、首や服は分かって・・・とか、う~??となってしまう・・・)。
縁が頑なになればなるほど、
じゃあ、全盲の人はどうなるの?という思いが頭をもたげてしまいました。
人はだれでも世界は自分が中心だし、
比べて解決しないことなんて山ほどあるし、自分だってそうなのだけど、
全盲でも「かず」はかわいそうじゃなかった、尊敬していた、大好きだった、
という気持ちも縁には確かにあるに。。。
その想いよりも、縁の弱さや脆さの方が勝ってしまうのが、ちょっと悲しかったのかな。
そういうところこそが生身の人としての魅力かな、とも思うのですけれど・・・。
色々言ってしまいましたが、
上記以外のところは読みやすかったですし、好きなところも沢山ありました。
子供時代のお話と、
停電のところ、数真が見えるようになった最初の頃のことを語る場面は特に好きです。
叔父である訓さんに、サラッと数真との夜を話してしまう縁の一面も好き。
もちろん、訓さんはもっと好き。
もうちょっと細かな(エッチじゃなくて普通の)エピソードがあって、
お互いに惹かれ合うのも十分納得だなぁ~ともっと強く思えたら嬉しかったし、
最後のエッチは、一度区切って後日談としてくれた方がいい気持ちで本を閉じられたかも、
とも思います。
でも、完璧っ!と思わないからこそ次に期待、楽しみ~~なのかなと。