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男が好きなんだから仕方がないじゃないか――
数年前に購入して、今でもたまに読み返しては余韻に浸ってます。何処か、不思議な魅力がある作品です。
発売してからかなり年月が経っていますが、これからこの本に興味を持つ方への参考となれば( ¨̮ )
可愛く優しいパステルの表紙とは裏腹に、テーマは「死にたがる人」などという中々に重い1冊。
山田さんのイラストも線が細く、描く人物も皆飄々としているためキャラの表情の可愛さと不気味さがより際立っていると思います。ハマる人はハマるし、そうでない人は微妙。人を選ぶ作品だと思います。
私はこの不気味で鬱々としている雰囲気が大好きでした。
【不実の友、不実の男】
恋人の弟と期間限定の同居をするお話。
この恋人がひどい笑 主人公が不憫…かと思いきや主人公も割と強か!笑
最後のページで歪み愛が伝わってきてなんだかんだお似合いのカップルなのかな〜。
【誰かと夏】
この本の中で一番好きでした!
にこにこと笑顔を絶やさず純粋で元気いっぱいな男子高校生と、30~40代のくたびれたオジさんが旅行に行く話。
ただのカップルの旅行かと思いきや…なるほど!ワ〜〜闇深い…!!
男子高校生の純粋さに、ゾッとします。
夏の猛暑日で日差しがキツい描写なのに生気が無い雰囲気が気味が悪くて…好きです。男子高校生の、大人になってもう戻ってこない感もたまりません。
【ひゅーすとん】
「ひゅー すとん」とよく呟いていた弟が、ひゅーっと飛び降りてすとん、と死んでしまい残された兄の話。
ここでもう重い笑 ひゅー すとんって語感が可愛くて不気味です。
でも、これは救われたお話なのかな。兄が一生弟のことを忘れられなさそうな感じが凄い。幸せとか不幸せとか、そういう概念ではもはや無い感じが良いです。
【つめたい恋人】
恋人と心中した後に生き残ってしまった男の子話。
死んだ恋人が幽霊でずっと付きまとってます。
死にたがる生き人と、死んで欲しくない幽霊というシンメトリーな感じが面白いです。
見えてるのに話せるのに、触れられないのが逆に凄く苦しい。幽霊の方が生きることを望んでるのがこれまた…
【中土井さんの孤独】
闘病中の恋人の帰りを独りでいつまでも待つ主人公と、近所の男子高校生の話。
なんだろうな、優しさって時に酷く残酷ですよね。
この物語の優しさは、思いやりと愛が詰まった最凶の呪いって感じがします。
振り返ると、この物語は「死」をテーマにしているけど…死もある意味では救いだもんなぁ。となんか納得しちゃいます。
作者さんの、本当にこの世界で起きてそうだけど普通に生活してたら気づかなくて見つけられなさそうなテーマというか、よくありそうだけど思い浮かばない感じのお話が好きです。ひゅー すとん とか。
面白いという表現があっているのかは分かりませんし、終わったあとの虚無感に似た脱力感は他では味わえない。しみじみと、好きなお話ばかりです。
淡々と飄々と、なんだかんだこのお話のキャラクター達はこれからも生きてそうで、でもふとした時に振り返ると跡形もなくなっていそうな不安定さがずっと心に残ります。
何年経っても自分の中で異色の作品、という意味も込めて神評価つけさせていただきます。これからもきっと思い出したように読んでは忘れないんだろうなあ。
ふゅーじょんぷろだくとの「性癖108TYPE」で知って、何か読んでみたかった作家さん。
こちらがテーマ的に面白そうだったので買ってみました。
死にたがる人達のお話を集めた短編集とのこと。
登場人物達がたまたま同性愛者で恋愛関係がたまたま男同士だったって感じの描かれ方なので、BL読みたくてこれを読むとちょっと違うなぁという作品集なんですけど、こういうものが読みたくて読むなら自分的には好きな類いの1冊です。
「死」っていうのは要するに「逃げ」の最終手段な訳ですから、死を考えてみることによって気持ちが楽になったり、やっぱり逃げたくない!と前向きになれたり、踏ん張れたりすることもあると思うのですよね。(実行=自殺することは肯定しかねますが)
この短編集も死にたい人がぞろぞろ出てはきますが、どのお話も結果的には「呪縛」からの解放を経て「昇華」とか「再生」といった前向きな方向に繋がっています。
ただそうは言ってもやっぱり後ろ向きと背中合わせなお話ばっかりなので、暗い話が平気な方にだけオススメします。
『不実の友』『不実の男』
学生の頃死にたかった男の話
『誰かと夏』
死にたい男と死にたい少年の話
『ひゅーすとん』
弟を自殺で亡くした兄の話
『つめたい恋人』
恋人と心中して生き残ってしまった男の話
『中土居さんの孤独』
離れ離れになってしまった恋人から届くメールを読むためだけに生きている男の話
面白かったという表現も微妙だけど、どの話も面白かったです。
個人的には、最後の中土居さんにかけられていた呪縛が一番キツいなと思う。
こういう優しさはホント良くない。
『誰かと夏』は少年の行く末がちょい気がかりな終わり方。
彼の呪縛もとけてると良いけど、読んだ限りではよく分からない。どうなんだろう。
重い内容のわりには軽やかに感じる何とも言えない飄々とした空気感が読後に不思議な余韻をくれます。
他の作品も読んでみたくなるくらいには好きな作風。
評価迷ったけど、好き度で判断して萌×2としました。
ただ「性癖108TYPE」の萌えポイントに共感して読んでみたくなった作家さんなので、萌え足りない感はガッツリ燻ってます。
※ネタバレ有です。
表紙に惹かれて購入(^-^)v
話が不思議すぎてうーん……という感じでした。
◆不実の男(不実の友)◆《自信家な男×ナイーブ男》
一週間も帰ってこない恋人(倉敷)の代わりに帰ってきたのは、恋人の甥(謙太郎)だった。
その甥と体を重ねた池田は あるものを発見してしまい──。
((゜_゜) ……世界に入りこめなかった ← orz
展開があまりにも早すぎて、ぇえ!!? 驚きの連発……
倉敷がタラシ過ぎて、池田に言いたい……
ゆるい性格男(倉敷)のどこが良くてつき合っているのか謎……(´・ω・`)わからん。
◆誰かと夏◆《借金を抱えてる男×高校生》
電車に揺られ旅行先へ向かう 羽田と高校生。
二人には旅行を楽しむ以外の別の目的があって──。
この話好きですw(°▽°)
いやー最後の最後で「死ぬのは怖い」と泣いてましたね羽田さん♪ 高校生の前で泣くなよ (*´∀`)ふふ
高校生の「あなたと─」の部分、もー 切な過ぎる!!
◆ひゅーすとん◆《弟が好きな男×弟似の男》
3年前に弟をなくし、曲作りがすすまないムラさん。
だが、そんなある日 弟に似ている人物─上荻と出会い──。
自分の思いから目を反らし続けた結果、愛する弟を追い込んでしまったムラさん……(つд;*) 切なぃ
すれ違う兄弟とか…… ぅう。
◆つめたい恋人◆《この世にいない男×あの世に行きたい男》
二人で海に行き、あの世にいくはずだった須賀と馬淵。
しかし、馬淵だけが助かってしまい──。
◆中土居さんの孤独◆
重い病気で外国へ渡った想い人から中土居さんへメールが届く。そのメールの内容がいつからか変わってしまい─
……そんな ある日、向かいに住んでいた友坂 晴明と再会する──。
全体的に暗めな話が多かったように感じました。
なので、今回は 中立です。
山田酉子さんの本はカバーデザインがきれいなので、どうしようか迷いながらも、結局買ってきてしまう。
このカバーもきれいだ。
寂しげで、わけありげな、細い首の男の子達。
絵としては好みなのよね。
死と深く絡み合った短編は、好みの物もあれば、そうでもなかったりもして、、、。
個人的には、死にたがり高校生のお話「誰かと夏」と、触れられない恋人のお話「つめたい恋人」がよかった。
後書きによると、作者様はクソ野郎のクズ男がお好きなそうで、その辺の男の趣味の相違が、個人的な当たりはずれとなって現れるのだなと、納得。
辛抱ならず手に取りました。
退廃的というか刹那的というかニヒルというか(このあたりは単行本通して死というものがテーマとしてあるからかもしれません)、誰かと誰かの幸せがうんぬんかんぬんといった分かりやすい内容ではなく、イメージがふわ~っとしています。
私自身が、こういった『雰囲気で読むタイプ』の話が割と好きであることや、短編集ながらも統一されたテーマ性が見えることもあり非常に満足しております。ストーリー自体も表紙から想像していた空気感と差異はありませんでした。
ただ“受け一人に対し攻めは必ず一人で浮気は御法度”というタイプの方にはおすすめしがたいです。いかんせん性に対してゆるめなので。
そしてテーマが【死】ですから(決してネガティブな内容ではありません、扱い方としては軽いかなと思います)、少しでもそういう匂いのするものが苦手な方は、避けた方が賢明です。
驚いたことに表題作【不実の男】は書き下ろしでした!(笑)
【不実の友】
高校時代の俺よ、あの瞬間に既視感を覚えました。
なんでしょう、誰しもにあると思うのです。あの当時の自分が今のこの自分の現状を信じられるかどうか、というような感覚。
それが別に大した変貌や変化がなかったとしても。例えば就職だったり、恋愛もそうですが人間関係なども。当時の自分からは考えられないような今、とか。池田が呟くノスタルジーは誰しもの胸の内にあるなと。
精神的に熟れていない謙太郎と、過去に似たような経験を持つ池田のふたりは結果的に傷をなめ合うような感じになってしまいましたね。浮気すんなよ、というのもありましたがひとつ屋根の下できっかけなんて些細なことです。仕方がないと思いました。謙太郎曰く、池田はキレーでドキドキしてしまうんですもの。
【不実の男】
池田の不実が可愛いものだなと思ってしまいました(笑)
いやダメなのでしょうけれどもね。でもデスマデスマって会社籠ってたはずの謙太郎が仕事じゃなくって合コンってそんなこっちは我慢(結局しきれませんでしたが)していたのに、ひどい話です(笑)
おそらく普段ならコンパにしろ飲み会にしろ、気にするほどでもないのでしょうが、なに嘘つくのは良くないのですね。パフォーマンスだったとしても池田が機嫌損ねても仕方がありません(笑)
ただ、謙太郎の池田に対する絶対的な自信はたしかに可愛いのです。独占欲というよりも、信じているんでしょうね。そして謙太郎はゲイでないと言い張るのに、池田のことを愛しているんですから。
【誰かと夏】
短編集内でもっとも 背徳的だな… と感じました。
序盤から不穏な空気は漂っているのですが、だからか一層男子高校生に色気があっていっそこわいほどです。絵にこわさはないのに、雰囲気というか、目でしょうか。笑っているのに笑っていないような。
羽田さん、残酷です。彼の横顔がおとなびて見えたのおそらく、もう死を共有する相手じゃなくなったからなのではないでしょうか。今もきちんと、生きているのかな。
【ひゅーすとん】
後悔先に立たず。
いつでも最善のことが出来るならそれより良いことはありませんね。でもなかなか難しい。
ムラさんが前を向けて、過去を振り返れて、よかったと思います。
【つめたい恋人】
いつになれば恋人は成仏するのか、それとも結局彼らの本望であった心中を叶えてしまうのか…。
でも須賀は馬淵に生きていてほしいのだから、馬淵がなにか生きるためのよすがにできるものを存在を見つけないとなりませんね。そうじゃないと繰り返してしまう。今は須賀のことしか、心中を遂げるはずだったことしか、考えていないから。
それまで、須賀は見守ってくれているんでしょうか。寂しくはないのに、けれども物悲しいと思いました。
【中土居さんの孤独】
なんとなく「…そうなんだろうな」という予測はありました。でも良い。
諦めてぼんやりと、でも恋人が中土居さんに生きていてほしいからわけのわからない内容でも送り続けようと、したその意思を汲んでいるんでしょうね。辛い。
祈りと呪いの言葉の洪水のコマがとても好きです。もしかしたらなにか単語になるのでは、と探して探して、でも洪水ですからきっとこぼれたり落ちたり、わき出す途中だったりするのでしょうね。
孤独の終わりが新しい恋であって、よかった。諦めじゃなくて、よかったです。
ミニシアターで上映されるような映画を何本か見たような気持ちになりました。
萌えたかどうかで問われると難しく、迷った末の評価なのですが、ひとつひとつに満足しております。良かった。