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「チョコストロベリーバニラ」に続く、でりこさんの竹書房2冊目のコミック。
エロエロだった前作と異なり、こちらは言わば間接的3P?
様々な理由から成就が叶わない恋を、近しい第三者を抱く/抱かれることで間接的に満たす登場人物たち。
そんな代償行動に走る様が複雑に絡み合い、実にエキセントリックな群像ドラマを作り出しています。
表題作は、寝取る・寝取られ関係を通じ愛し合うこじらせ五十路おじさんたちの間に、ある若者(ペーパーによると32歳)が絡んでくる三角関係モノ。
学生時代の先輩後輩で、今も同じ大学で教鞭をとる山代と奥園。
「寝取られる側」の山代も、自身の恋人や妻を通じ奥園と関係することに快感を覚えている点に、彼らの関係の異常性があります。
「本当に欲しいものほど手に入らなければいいのに
始まらなければ終わりもありませんから」
この言葉が二人の関係の全てですが、果たして何が彼らをここまで屈折させたのか。
元々の性癖か、
愛しすぎて失うことを恐れたのか、
何事にも秀でた後輩・奥園に、平凡な学生・山代が引け目を感じていたためか。
多くは語られませんが、様々な理由が積み重なりここまで来た二人の姿にはある種の切なさを感じます。
そんな二人に絡んでくるのが、探偵事務所の調査員・空木。
奥園に片想いする彼は、依頼人である山代に迫り、山代とキスした唇で奥園を誘う。
自ら進んで二人の関係に加担しようとする空木は、奥園同様に代償行動で愛を得ようとする人物です。
奥園がそんな空木に自身を見たのか、真意は分かりませんが、彼の登場により二人はこれまでの関係に一区切りつける。
「君が僕の恋そのものだった」
山代のこれまでの生き方を、そして今後を思うと、この言葉には非常に重みがありました。
まっとうにハッピーエンド、かと思いきや新たなNTR関係が始まる可能性を匂わせて終わる、最後まで人を食ったような空気感がとてもクール。
全体を通して余計な心理描写や解説は省き、読者に想像の余地を残すアプローチが非常に好みでした。
同時収録作の「写真」「告白」「骨(描き下ろし)」は、表題作よりストレートに切ない系の話。
昔馴染みの死をきっかけに暴露される、友人同士の身体関係。
亡くなった方の友人は、元々は主人公に片想いしていたけれど、もう一人の友人に抱かれ続けるうち彼のことを……
不毛な関係を続けながら老いていく、両片想いのすれ違いが何とも言えない哀愁を誘います。
二つの三角関係の物語に、コミカルな読みきり(乳首見ながらのオナニープレイw)が良い箸休めになっており、最初から最後まで楽しめる一冊でした。
彩景さんの新刊ということで楽しみにしていました。
そして表紙が!何とも素敵です。本でキスシーンを隠している二人に、それをじっと見つめる男。全体的に暗いトーンで、本とソファーの色だけが鮮やかすぎるのもまたこれ意味深でいいよなあ…。さて、内容はすでに書いてくださっているので感想を。
表題作『犬も喰わない』
初めはストーリーがちょっと理解しづらかった。ん?この人とこの人はどういう関係?って思ったりしたのですが、そこを乗り越えるとどっぷりこの本の持つ世界に引き込まれました。
歪んだ形でしか繋がってこれなかった男たちの不器用さが良かった。これだけ長い年月、一人の男を愛し続けるってすごい純愛だなって。そこにもう一人男が加わることでその関係が崩れる。でも、みんなお互いに愛情が溢れているので読んでいて応援したくなる。
『中年思春期』
彼女に振られたオッサンと、その彼に恋する可愛い顔の年下の男の子のお話。でりこ作品の『風俗狂いですが~』を彷彿とさせるお話で、この年下の彼が可愛い。鼻提灯に爆笑してしまった…。
『写真』
これまた歪な恋の話でした。
報われない、二人の男たちのぞれぞれの恋心がすごく良かった。最後の、正毅の行動に泣いた。やっと一緒になれた、素直になれない男たちが救われたと思う。
個人的にオジサン萌えってしないのですが、このオジサンたちは長い年月をかけて拗らせてきた人たちなので、どれだけ相手に執着してるのか、と思うと激しく萌えてしまった。
それと彩景さんてちょっと癖のある絵柄かなと思うのですが、絵柄が綺麗になったなと感じました。出てくる男たちの色気にKOされました。
帯の「歪んだ大人の三角関係」に偽りのない、まさに彩景ワールドといった作品でした。
老いても追いつ追われつ終われぬ恋。
雑誌で最終回を読んでしまい着地までの経過を辿る読み方になってしまったのですが結末を知っていてなお、先を急ぐ読み方の自分の焦りに苦笑。
探偵事務所の調査員:空木は大学教授:山代から彼の妻の浮気調査を依頼されます。
調査の結果、浮気相手は同じ大学に勤める教授:奥園。
学生時代、奥園は憧れの先輩だった山代の持ち物を盗み、相手を寝とることで山代の傍らに居続けていた。
山代もまた自分に執着する奥園を見ることに喜びを見いだします。
両想いであるにもかかわらず奥園に寝取らせるためだけに人とつきあう山代…緩衝材を間に触れあう、はた迷惑なオッサンふたり。
去られたくないから始めない、終わりに向かうから始めたくない、という容易に拭いきれない確執は過去、奥園に失恋した空木が絡むことによって化学反応を起こします。
彼らの間に交わされる会話はとろけるように甘いものはなく言葉自体は湿度のない乾いたものなのに台詞まわしが思わせ振りでいて、そそられます。
山代が倒れて入院したことをキッカケに山代と奥園がこれまで続けてきた間接的な関係はひとまず終わります。
山代にフラれた奥園は山代への想いは尽きないけれど愛せる、と空木を口説きます。
この台詞、めっちゃ不誠実なのにズバリ真実をついていて、すごく納得させられます。
眉のひそめ方や探るような目線のバリエーションが多くてあからさまでない喜怒哀楽が表現されていて三人三様の個性が生き生きしていました。
普通のハッピーエンドではないかもしれないけれど、あの折り合いのつけ方に現実味が残ってすごく良かった。
若いとあやふやにするくらいなら振ってくれ!!っていうドギツイ強さが潔さに繋がるけどオッサンはあのくらいモヤッッとしている方が人生の年輪を感じる(笑)
奥園が見るであろう空木の体に山代がたくさんの情事のあとを残す執着のうねりにクラクラしました。
それでも山代は空木と最後までしていないといいな~と思ったりもします。
カバーを広げて1枚絵にすると絶妙な位置に奥園がいます。
抑えた色調の中で帯の煽り文句がビビッドなカラーで縦書き、さらに口許を隠す本のカラーと一致してるのがまた好みでした!!
2話めに入った空木の勤務先の先輩:庄司とバイト高校生:椎名くんの話がすんごい可愛くて笑えました!
おっぱい見ながらオナニーできるんだ…高校生偉大だ!
写真】【告白】【骨】
昔馴染みの大悟、乙彦、正毅。
想いを寄せている大悟が妹と結婚することになった乙彦。
いかにも繊細そうな乙彦の想いを知っていながら体を繋ぐ正毅。
骨になってやっと素直に口にできる想い…堂々と抱きしめられる…愛してる、より「お前にはやらん」の一言が染みます。
表題作は大学教授ふたりと若者の三角関係。
スピンオフや過去話が入り混じっているので、まとめて時系列順に。
大学教授ふたりが同じ高校の学生だった頃、奥園は決して告白はしないけれど、山代の持ち物を盗んだり、関係を持った相手を寝取ることで間接的な関係を保つ、歪んだ愛情を抱いていた。山代は、奥園の気持ちややっていることに気づいているが、それには触れず、表面上の友人付き合いを続けていた。
奥園は山代に対する執着を持ち続け、同じ大学に職を持ち、結婚した山代の妻も寝取る。
カフェの店員だった空木は、時々話をする店の常連客・奥園に想いを寄せていた。告白するも振られるが、10年後探偵になった空木は、山代の依頼で妻と奥園の不倫関係を調査することになる。
探偵になった空木は変わらず奥園が好きで、寝取り癖のある奥園に自分への興味を持たせるため、山代と共謀して肉体関係を持つ。案の定、山代と関係を持った空木に奥園はコンタクトを取ってくる。
一見、寝盗り癖のある奥園がいちばん病んでいるように見えるのですが、実際にいちばん病んでいるのは山代で、次点が空木なんだと思います。
病んだ三角関係の結末は?
他に収録されていたのは、空木と同じ探偵事務所に勤める同僚と、可愛いのに変態なバイトくんの話。表題作が病んでるので、明るいなーと思いました。
あとはまったく別の話で、幼なじみのオッサン3人の、これも入り組んだ三角関係(四角?)の話が入っていました。
なんていうか、このマンガ1冊読むと、普通のBLマンガ10冊読んだくらいの充実感があります。綿密に計算された三角関係はすごいなぁ。『チョコストロベリーバニラ』とはまた違うかんじの、アダルティな三角関係でした。
ひたすらに萌え萌えってわけでは決してない、読後深く息を吐き出したくなるような本。
彩景でりこさんの作品を読むのは初めてで、完全に表紙とオジサマに惹かれて購入。個人的には物凄いアタリ。オジサンもいいとこの二人が高校の頃からずっとこんな歪んだ純愛を繰り広げられていたと思うと胸熱。奥園が好きなのに、好きだからこそ山代との関係を築き、奥園が必死で山代のモノとなった空木を奪おうとするのを楽しそうに眺める山代が本当に歪んでる。
でも何となく最後はいい感じの関係に戻れて良かった。是非山代も必死出して奥園から奪って欲しい。
個人的には写真/告白の方が好きかもしれない。
両想いなのにそれを伝えられないでいる二人。正毅にとっては乙彦は大悟を好きでなければならないから、遠回しにしか誘えない。
金がないから泣きついた相手が何だかんだで義弟の大悟じゃなく正毅って所に要らぬ妄想が入る。例え千円でもいいから正毅に抱いてもらいたかったんだと思うと、遺骨は正毅に持っていてもらえて本望なんだろうなと。
それと結局最大の萌えは喋り方。
別に特別何か方言が入っているわけではないんだけど、登場人物かなりの年だから回想シーンの若き日の喋り方が少し堅いんだけど、綺麗な顔と古い喋り方に一番萌えた(笑)
やっぱりオジサン達の不器用な恋は物凄い萌える。若かりし頃に思いを馳せるのも楽しいし、今の落ち着いた二人もいい。正毅と乙彦はこれからなんの理由も大義名分もなく一緒にいられるのか、良かった。