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表題作今、風が梢を渡る時〈前編〉

鴇浦智巳,17歳,旧制高校一年
沢良木犀,17歳,旧制高校1年

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

旧制三高の寮を舞台に描く、感動の青春模様
大正時代。貧農の息子だが神童と呼ばれ、村長の養子となった沢良木犀。だが、義母や義兄に虐められ、他人との間に距離をおく寡黙な青年になっていた。
男ばかりの寄宿舎で、白皙美貌の沢良木は同室の男に襲われかけ、部屋替えが行われた。新しい同居人は鴇浦智巳。大阪・堺の裕福な薬商人の次男で穏やかで誠実。沢良木を貶める噂も聞き流す。
共に医学を志す二人の、京都三高の寮生活を通して、暖かい心の交流を描く感動作。いじめ、嫉妬、暴行の果てに…?

作品情報

作品名
今、風が梢を渡る時〈前編〉
著者
かわい有美子 
イラスト
笠井あゆみ 
媒体
小説
出版社
小学館
レーベル
パレット文庫【非BL】
シリーズ
今、風が梢を渡る時
発売日
ISBN
9784094212341
4.6

(14)

(10)

萌々

(3)

(1)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
3
得点
65
評価数
14
平均
4.6 / 5
神率
71.4%

レビュー投稿数3

文芸作品を読んでいるよう。

時代は大正。舞台は京都帝国大学予科である三高の寄宿舎。兵庫の寒村出身で小作農の四男だった沢良木犀(さわらぎせい)は成績優秀だったため、当時村には居なかった医者になるべく村長宅へ養子に出されていた。首席で第三高等学校に合格した彼は、寄宿生活を始めることになる。

鴇浦智巳(ときうらさとみ)は堺で成功した商家の次男で、鷹揚で誠実な人柄の好青年。彼もまた医者を目指し寄宿生活をしていた。沢良木が落とした鉛筆を不意に踏んで折ってしまったことが気掛かりで、新しい鉛筆を携えて沢良木の部屋へ謝罪しに行ったことがきっかけとなり、お互いの存在を認める。

沢良木は女性のように美しい容貌のため、義兄に手をつけられそうになったり、寄宿では同室の相手に夜這いされたりと意図せず男の劣情を煽ってしまうことから、非常に警戒心が強くなかなか他人に心を開かない性格だった。それ以上に、成績が落ちれば援助も途絶え医者の夢もままならない。必死に勉学に励むだけの日々だった。

とある事情で鴇浦が沢良木と同室になると、程よい距離感で接してくれる鴇浦に沢良木は徐々に心を許していく。鴇浦の元同室で、一度社会に出てから帝大予科に入学した年上の日比野と三人でミルクホールへコーヒーを飲みに行ったり、写真館で一緒に写真を撮ったり(それがカバーイラストとなっています)、かき氷を食べに行ったり。女っ気はないけれど、ささやかながら友情を育んでいく様子が仔細に描かれていて当時の風俗も知ることができます。←地味に時代モノ萌え

鴇浦は沢良木を性的な目で見る輩に対して蔑みの思いを抱き、彼を護ろうとする。けれど沢良木の白いうなじや、細い腕や胸を目にするといけないものを見てしまった気持ちになっている自分に気付いてもいる。鴇浦は沢良木への思いから目を逸らすのですが、ある日沢良木の身に危険が及び…。

二人は一体どうなっていくのか、続きが気になって仕方がない前編です。

4

大正の風薫る日本語が美しい1冊

時は大正、処は京都。
あちらを向けば黒の詰襟にトンビを纏う者。こちらを見遣れば腰からインク壺を下げた着物に袴姿の者。
木の板がカタカタと鳴る木造二階建ての洋館と、男ばかりが集まった寄宿舎。
カフェ、ミルクホール、コーヒー、白玉が乗った氷水。

ああー、好きです。この独特の雰囲気がたまらない。
大正という和洋が入れ乱れた戦前のレトロでロマンチックな時代を背景に描かれる、医者を志す学生たちの物語です。
こちらの作品からかわい先生の名義が変更になったとのことですが、もう20年ほど前の作品なのですね。
現在の作風はもちろん、個人的にこの頃のかわい先生の書かれる文章がたまらなく好きで。
文学的というのでしょうか。
景色だったり、人となりを表すものだったり…ちょっとした所作のひとつひとつまで、豊富な語彙で綴られる日本語の表現がとにかく美しいんです。
知らない場所だけれど、文字を目で追いながら思わず想像したくなる。
繊細で美しい文章の虜になってしまいます。

タイトルに前編とある通り、前後編からなるこちらの作品。
穏やかで誠実な鴇裏と、泥中の蓮のような白皙美貌の沢良木。
とある事情から同室となった2人の両視点で、寄宿舎で暮らす青少年たちの青い日常がぽつりぽつりと語るように描かれています。
先述の通り、情景や心理描写が繊細なのが本当に魅力的です。
キスも無ければ手も繋ぎません。まだ恋とも愛とも呼べない、色もついていないほどにとてもとても淡い関係の2人です。
ですが、ボーイズラブとはこのことだなと思いながら上巻を読み終えた自分がいました。
多くの方に読んでいただきたい名作です。
どことなく同作者様の「猫の遊ぶ庭」と似た空気を感じるのは舞台が同じく京都の学校だからなのかもしれません。
(猫の〜も素敵な作品なので、こちらもぜひ)

しかしながら、2023年現在では既に絶版となっていて、どうやら電子書籍化もされていないようですので、中古で入手するか図書館で借りるしか方法がないようなのが悔やまれます。
お見かけの際はぜひ一度手に取ってみてください。

1

神か萌えかで迷いました。傑作ですよ、これは

大正時代の寄宿舎モノです。『空色スピカ』『流星シロップ』の原点だなァと思いました。
たんたんと綴られる学校生活のなかに、過剰でくどい心理描写は存在しません。だけど、それが逆に、淡くて切ない恋心を浮き彫りにしてる感じ。
萌えか神かで迷いました。めちゃくちゃ面白かったです。かわい有美子さんはスゴイ!幅広いよ!
なんていうか、地に足がついてる感じがたまらないんですよね。BLにありがちな荒唐無稽な設定はどこにもありません。登場するのは等身大の男の子たちばかり。大正時代という時代背景ならではの、主人公たちの心の動きが繊細に描かれてます。それがとても心地よかった。素晴らしい作品に仕上がってました。
ほろり、心の奥が震えるような涙が出ちゃいました。

ちなみにエロなし、キスなしです。でも、におい系ではないです。
萌える作品にはそんなの関係ないですねぇ。
下巻に続きます。

10

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