お買い得商品、セール品、中古品も随時開催中
ピアノを弾くかわりにキスをさせてほしい。
読み始めて数ページであっという間に作品の世界に引き込まれてしまう榎田先生マジック!
音楽大学のピアノ科を専攻している学生たちの青春物語なのですが、サラっと読める読みやすさの中にもじわじわと沁みるものあり、かわいさあり、もどかしさあり、葛藤あり…と、榎田先生作品の中ではライトな印象がありながら満足度の高い素敵な1冊でした。
天才型と努力型の組み合わせがすごく良く効いている作品だなと思います。
キスから始まる2人の距離感の変化と、ピアノという芸術系の題材を交えた人間の内面の描き方が自然で上手いです。
クラシックに明るくない方でも問題なく読めるはず!
ちょっと幼さを感じる喋りのコテコテ系関西弁の攻め・凛が登場する度に、ころころと明るい音が転がるようで気持ちが良かったです。
飄々としていて、誰からも好かれる明るく一途な大型犬攻めというのかな。
タラちゃんのことが大好きで大好きで仕方がない!と、1ページ目から好意がダダ漏れの凛が妙にツボにハマってしまった。
それだけではないギャップもあり、非常に好みのキャラクター像でした。
そして、タラちゃんこと設楽の青臭さがとっても良かったのです。
幼い頃から努力をし続けて来た優等生な設楽がどう努力をしても得ることが出来ない、元からのセンスとしか言いようのない才能を自然体のままあっさりと表現する凛への羨望。
打ちのめされてしまうから大嫌いだけれど、どうしようもなく惹かれてしまうものがある。
好きという気持ちを屈託なく自分に向かってストレートにぶつけて来る、大嫌いなはずの凛へのぐるぐると渦巻く複雑な感情の表現がリアルで人間臭くて好きでした。
ピアノの演奏シーンも印象的なものばかりで、読みながら彼らはどんな音を奏でているのかを思わず想像してしまう。
障がい等、難しいテーマもごく自然に優しく溶け込んでいて読み心地が良かったです。
恋や芸術面…音大を舞台に、若者の青春が甘酸っぱさと仄かな苦みを感じる味付けで描かれた、爽やかなママレードのような作品でした。
音楽ものをお探しの方はぜひ。
今回の榎田先生の新装版「明日が世界の終わりでも」に、
この「largo」も収録されていると聞きました。(どういう組み合わせ?と思わなくもないw)
旧版はどちらも、茶屋町さんと依田さんという好きな絵師さんが挿絵を担当されていて
個人的にはそれが魅力だったこともあり、新装版を読むかどうかはまだ分かりませんが、
とりあえず旧版のレビューも残しておきたいと思った次第。
:
ピアノ専攻の音大生二人の、心温まる青春ラブストーリー。
依田沙江美さんの絵も手伝って、雰囲気のある作品になっている。
両親に認められる為にピアノ一色で生きて来たタラちゃんこと設楽、
彼は大学で出会った凛の人柄やピアノの才能に嫉妬して嫌いだと言いながら、
気になってならない。
一方の凛は、最初からタラちゃんへの好意を隠さない…
凛の関西弁や、凛の姉や障害児のエピソードなど、使い方によってはイヤミになるネタが
自然に心に沁みる作品になっている。
ラブストーリーとしては平凡かもしれないが、学生の成長ものとしても
じんわり良い作品になっている。
個人的には彼らの教師の赤澤先生のセリフが、含蓄があって好き。
出てくる音楽は、誰でも知っているような有名曲ばかりで
音大ものとしては、もう少し音大生ならではの曲があってもよかったかな?と思うが、
読み手がイメージしやすいだろうし、優しい作品の雰囲気にあった楽曲ではあったので、
まぁよしとしましょう。
*以下は蛇足な話。
<作中の曲一覧>
・リムスキー コルサコフ『熊蜂の飛行』 プーシキン原作のオペラ「サルタン皇帝」の中の曲。
ジョルジ・シフラの編曲版は、ピアノの難曲としても知られている。
・F.リスト『マゼッパ』 超絶技巧練習曲集、第4曲ニ短調。
タイトルはユーゴーの叙事詩「マゼッパ」による。
・F.ショパン『ノクターン』 No.不詳。
・エリック サティ『ジムノペティ』 No.不詳。
・F.リスト『ため息』 三つの演奏会用練習曲の第三番。 ※第一章のタイトル
・H.ベルリオーズ『幻想交響曲、第4楽章』 作曲者最初の交響曲、4楽章の副題は「断頭台への行進」。
・S.ラフマニノフ『六つの歌曲』作品4 ロマンスと呼ばれる歌曲集、「朝」はその2番。
・J.S.バッハ『主よ、人の望みの喜びよ』 教会カンタータ「心と口と行いと生活で」BWV147の
第6曲と第10曲に登場する有名なコラール。 ※第二章のタイトル
・F.ショパン『英雄ポロネーズ』
・C.ドビュッシー『月の光』 ベルガマスク組曲の第三曲
・W.A.モーツアルト『ピアノ・ソナタ、K545、ハ長調』 初学者の為のソナタと言われる曲。
・F.ショパン『木枯らしのエチュード』
・F.リスト『愛の夢 三番』
・G.F.ヘンデル『オンブラ・マイ・フ』 オペラ『セルセ』(Serse)第1幕の中のアリア(Largo)。
歌詞の初行からこの名で知られる。意味は「今までになかった木陰」。
※第三章のタイトル
<ミ♯について>
他の方のレビューやコメントで話題になっていたミの♯について、少し補足します。
ピアノの鍵盤のような平均律(1オクターブ=ある音から2倍の周波数の音まで、を
12等分した音階)ですと、ミ♯とファは同じ音ですが、
純正律(周波数の比が整数比になる純正音程を用いる音階)では違う音。
また音楽の文法上は、調性によってそれは厳密に区別されてます。
例えば、ハ長調(C-dur)の4番目の音はファ、でもピアノの鍵盤では同じ音を弾きますが、
嬰ハ長調(Cis-dur)の3番目の音はミ♯と表記され、音名でもそう読みます。
絶対音感があると言っても、
単音で聞かされてミ♯とファを区別できる耳の持ち主がどれ位いるのか?分かりませんが、
(音の流れとして捉えれば、弦楽器をやっている方はこの辺はかなり意識していると思います。)
タラちゃんは絶対音感があるという表記があるので、
彼がそれくらい鋭敏な耳を持っているということを表そうという意図で
こういう表現を使っているのではないか?と思います。
なんだろうな。
流されるままに読んだという感想なのですが
それが心地よく読める作品でした(ノ∀`)
コッテコテの関西弁もキライじゃないです。
音大生の受。小さい頃からピアノ一色の人生だった
目の前に現れた攻は、生まれながらの天賦の才を持っている。
それが憎い羨ましいと思いつつも・・・から変化する気持ち~というところですね。
不自然でなく、ながれるままに関係は蓄積し
最終的にという最後。
浮気~・・・にしても、浮気というなればもう少しと思ってしまうのは
読み込みが足らないんでしょうか。。
何はともあれ、受のことが好きでしかたないワンコ攻が心地いい作品でした。
淋しい受はワンコに癒されるwそれがまたイイ
音大生の設楽六実と桜田凛。二人ともピアノ弾き。
逞しい身体で屈託ない性格、関西弁の陽気な凛はみんなの人気者。
がさつな雰囲気なのに類まれなピアニストとしての才能を持つ凛に、六実は嫉妬し疎みつつも惹かれることを止められない。
…なんだか依田さんの漫画を読み終えたような、それほどまでにこの作品にはしっくりくるイラストだったなあ。
底抜けに明るい大型ワンコの凛なんだけど、怒ると獰猛だったり、実は少し暗い翳があったりで、ほんと典型的な依田さんキャラじゃないですか。
漫画でもっかい読みたいよ!
出てくる曲がどれも難易度の高い曲ばかりで、これらをすべて見事に弾ききる凛の演奏が聴いてみたい~となってしまうところ、さすがの榎田さんです。
タイトルがラルゴなので、アヴェマリアのことかなと思ってたけど、最後の最後でタネあかしが。この辺もお見事です!
音大に通う設楽六実は、同じ科の桜田凜のことが嫌いだ。
必要以上に懐いてくるところも、人に「タラちゃん」なんて変なあだ名を付けるところも、音大生らしからぬ恵まれた体格も、きらきらしたピアノの才能も全部。
大嫌いなのに、惹かれてしまう。
凜に好かれているのをいいことに、自分のためにピアノを弾くことを要求した六実。
それに対して凜は報酬としてキスを求めてきて……
音大生もの。
プライドの高い主人公の六実は自分よりピアノの上手い凜のことが大嫌いだけど、なぜか凜は六実が好きだとひたすら懐いてくる。
大嫌いだけど、気になって仕方ないっていう葛藤とか主人公の意地っ張りぷりが楽しかった。
正直六実はプライドが高くて素直になれないダメなヤツなんだけれど、その万能でない人の悩みや揺れ動きはリアルに共感できる。
流されるように浮気?して僕を許せって言ってしまう彼の弱さと強さ、その時のいつもへらへらしている攻のキレっぷりにはときめかされます。
いろいろなシーンで演奏されるクラシックの名曲もきらきら作品を彩っています。