未読の初期作品を読みます!
本作は元々「初田しうこ」名義で1997年に初出されたもの。その後「鹿乃しうこ」名義での2005年新装版。
読んでみると、古さというよりも濃さやクドさが今どき作品とは違うなぁと思う。
まず登場人物がみな主役級に動く。
絵もいい。
絵柄の洗練さはそりゃ現在の方が綺麗だけど、もう初期から目ぢからというか、表情/目/視線/手などなど全てに感情が表現されてる。
漫画の中の人物たちは心にもない事を言ったり、言うべき事を言わなかったり、誤解すれ違いの連続。
超初期のしうこ先生はこの辺をひりつくようなシリアスで描いてたけど、ここではギャグもしっかり入って彼らの泣き笑いの日常と恋愛が描かれてる。
主人公は、エロ漫画家の鉄央、32才。女好きだが2年ほどインポになっている。
鉄央17才の時にデキた息子で15才の遥。
中学からの鉄央の親友であり遥の母・泉の弟、そして鉄央の担当編集の満郎。
遥が恋してる同級生の玉置。
アクシデントから鉄央にまとわりつく桃山。
上巻は、遥を預かることになったがギクシャクする鉄央。
その上、遥が同性の玉置が好きと知って動揺。「ホモ」に過剰反応。
だがしかし、実は満郎は鉄央に長い片想いをしている。
玉置は姉がAV女優になって家庭がおかしくなり、性が怖くなっている。
…とこの辺なかなかシリアス系。
ここにぶっ込まれるアホキャラが桃山なんだけど、やっぱりこの人だけ設定が練れてないのかな、めっちゃ浮いてる。無理矢理な鉄央への恋心とアプローチがドタバタです。
で、このメンツの中で濃ゆい出来事、濃ゆい感情がぐるぐる渦巻くわけ。
BLとはいえ、心の矢印の行き着く先はどこなのか、全く見えないところが実に面白い。
下巻に続く。
Dom/Sub大好き〜という事でこちら。
登録では「電子単話」となっていますが、私が読んだのは表紙絵違いの「デジタルコミックス版」です。全6話完結済。
主人公は塾教師の藤。
少し前から体調不良に悩んでいたが、急逝した同級生の葬儀に参列した後倒れ込んでしまう。
葬儀には7年ぶりに会う同級生仲間の葉須見がいて家まで送ってもらうが…
…と始まります。
藤の家で、葉須見は体調不良はSub性のせいだと言い、自分はDomだから満足させられる、とコマンドを出し始め…
Dom/Sub作品によく見られるのですが、コマンドがはじめから性的なものでプレイ即セックスになる。
藤は第二性の知識がほとんど無くコマンドに手も足も出ない。そのまま挿入までされて、しかも体調は改善。
この展開の速さは賛否ありだと思うけど、結局は葉須見は高校時代から自分はDomで藤はSubと気づいていてずっと藤が好きだった、という後付け。
でもそれが「執着」か?っていうとそれほどでもないと思うし、タイトルの「甘美なごほうび」っていうのもピンとこないかな。
ただ、絵柄や画面から伝わってくるどこかひんやりした風情、静けさが良いと思った。悲恋系や終末物とか合いそうな気がする。
4巻はますます絶好調な仕上がり。
妙な波乱やテンプレ展開に頼らず、それでいて2人のこれからに繋がるエピソードはしっかり描かれ、さらに藤永の更なる仕事の成長も…
BLとしての萌え所もしっかり押さえつつの、BLではないストーリーの方も読み応えあるしワクワクできる。
本巻は、蛍都が中心。ていうか蛍都を取り巻く状況。
正直少々啓発/啓蒙的だと感じるけど、嫌味なく押し付けがましさもなく心に入りやすく描かれている。
つまりは、健常者中心の世界での障害者が置かれる状況や不便、きょうだい児について。
特にろうなん(難聴)者は見た目で障害がわからないこともあるしね。
弟くんとはもっと拗れるかと思ったけど、良い子でしたね。実際この辺はかなり複雑な感情が渦巻くと思う。
藤永がデートに弟くんを巻き込んだのがグッジョブ。
というわけで、蛍都の一人暮らし計画は光が見えてきた感じ。
一方藤永の舞台。
こっちは思ってたのと違う展開。三島は恋愛上の邪魔ではなく舞台上の問題児だった。で、藤永の覚醒で突破する予感…?
いや〜次巻が楽しみです。
〇〇バースって設定や世界観の自由度が高くて、作品ごとに独自色を出せるところが特徴だと思う。
面白かったりわかりづらかったり。作者様の力量/オリジナリティがはっきりわかってしまう怖さもある。
さて、本作はオメガバースと転生ものを掛け合わせた作品。
ノンケの菅田が同性の同僚中原に告られて、逃げる途中で事故に遭って目覚めたら異世界。
同性のαxΩカップルに助けてもらい、戸惑いつつ彼らを見ているうちに価値観に変化が起きてくる。
シリアスになりすぎない部分は、また元の世界に戻れるところです。
オメガバースを知った事で中原を受け入れる心が生まれた菅田は、彼と付き合うことに。
そこで勃発するのが攻x攻攻防。男のプライドがぶつかり合う。
しかし、大きな価値観の揺らぎを経た管田。受けますよ。
すぐ頭を打ってあっちの世界とこっちの世界を行ったり来たり、あっちのラブラブカップルとの会話がコミカルで抜け感もあります。
攻めの中原は優しくて、言葉でも体でもまっすぐ愛を伝えてくる。
最終的には私好みのストロングスタイル!「萌x2」で。
2015年発表のオメガバースアンソロジー。
8作品収録。「発情BL」の続きの作品も数点あり。
以下、収録順にざっと。(作者様敬称略)
「happy brace」七菱ヒロ
運命の番に嫌なイメージを持っているαの遼。だが義理の弟が運命の番だった!
抗えなさを身をもって知り、弟と番う。
「籠の中」ロッキー
Ωである事を嫌い、運命を嫌い、でも受け入れる。みじめさすらもたらす番の存在だけど、優しい相手で良かったと思うくらいには幸せなんだろう…
非常に静かで諦めを感じさせる作品。
「反逆のつがい。」桐式トキコ
Ωを隠していたのに、避けていた部下に知られしかも項を噛まれる!これはこの後どうなる?高谷が尽くすαになればいいけど。
「三角の頂点」安眠
Ωの発情期の体液で作るアロマを作っている会社員の嶋(β)は、Ωのミヤの採取を担当するが…。
こんな短い話で入り組んだ人間関係と本性が錯綜してます。えっという結末が面白い。
「華玩具・序」楽田しょうこ
カタブツの次期当主・青周のお手つきにさせようと娼館から連れてこられた召使のΩ少年・紫怜。青周は紫怜を性の相手ではなく働くスキルを教えようとする。しかし…
αの方が制御が難しいというお話。
「君といつもの試着室」茶古ねぢを
傲慢な俺様α・一(にのまえ)が出会ってしまったのはテーラーの廉。廉はΩでタチ派。初めて攻められて突っ込まれていながら傲慢さは変わらずの一にゾクゾクの廉です。
「Monopoly」菊の助
出会った運命の番にはβの彼氏がいたが当然奪う。勝者α、裏切られたΩ、退くしかなかったβの苦い物語。
「咲き初めの焦燥」暮田マキネ
素っ気ないβだったはずが実は遅咲きのΩで運命の番。気持ちが定まるまで3年も待ってしまったがやっと。
茶古ねぢを先生面白い!安眠先生は独創的。
また、ロッキー先生はアプローチが良いです。この短編は萌x2。
総合「萌」で。
ポストオメガバースの世界…それは医療が発達し、Ωであることが学業にも就労にも恋愛/結婚にも障害にならなくなった世界。
あれから20年。
本作は、α専用校に通うセレブ・四菱光が主人公のクスッと笑える可愛らしいラブコメです。
光は伝統的αらしくミスターパーフェクト。
ただ成績ではいつも2位。1位の芦原量一に激しくライバル意識を燃やしているのだ…いるのだ?いや真相は全く逆で、光は芦原に恋をしていて本当は仲良くしたいのに、なぜか口からは真逆の罵倒ばかりしてしまう。自分でもどうしていいのかわからなくて世話係のしのぶに泣きつくポンコツぶり…
ところが、少子化により兄弟校のΩ専用校と併合することになり、芦原がポメガ(ポッと出のオメガ!)に盗られたらどうしようとなって、いきなり自分の特殊体質を使って告白!となる光。
ところが芦原は光の気持ちを知っていて、なんやかんやで2人は温度差はありつつ両想いのお付き合い。
光は相変わらず恋が絡むとポンコツ全開。でもなぜか憎めない。芦原も光のそんな所に癒されたのでしょう。
芦原はクールで冷静に見えるけど、ちゃんと光の良い所を見ています。
芦原の冷静さがどこからきているか、その重い背景もアクセントとなっています。
併合でやってくるΩたちの予想はずれの実態も面白かった。
絵柄は綺麗で読みやすい、ストーリーのテンポも良い、ギャグもちょうど良い。総合「萌x2」で。
江戸時代の人外ストーリー「ねこまた。」から派生した物語の第3巻。
家屋の守り神「ねこまた」を作り出す神様のような存在「アタリ」と、ねこまたの「クロ」が人間界(現代日本)をお散歩する物語。
優しくって切なくて。胸が締め付けられるような世界観。
人は熱いものを食べる時はフウフウするんだよ。
女の人の服は不思議ギミック。
子供は風の子。
恋するひとの言葉はダブルミーニング。
無人販売店で売ってるものは実は信頼。
イヤを言える自分を取り戻す瞬間。
小さな親切に帰ってくる小さな感謝。
その全てに通底するのは、いのち、その生と死。
アタリは神様のような存在かもしれないけど、実際は何事にも干渉はできない。捨てられた子猫にも、疲れ切った父親にも、ナイフを買おうとする少年にも。
そして過去を忘れられずに泣くクロにだって。
自分が、誰かが、自分で気づいていくしかないのです。
仁は元気そう。人柄もよく育って、アタリだけじゃなくてクロも見えるようになるといいな。