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エキスパートレビューアー2025

女性muuebaさん

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何それ愛かよ コミック

ろじ 

恋愛ものだけど人生のいろんな側面をきれいに落とし込んだ作品

「青と碧」のスピンオフ作品。
二人の共通の友人知人で、「青と碧」の要所要所で印象的な言動があった飯田と吉田がメインのお話です。

初対面の二人がお互いの印象を言い合うシーンでは、この時まで会ったことがなかったのかと、奇跡の出会いを見ているような気持ちになります。

お互いに好意は持っていないけれど興味を持っている、言葉による攻め合いというかゲームという感じがして、ちょっとハラハラします。吉田と飯田がつるむようになったと聞いて、「最凶じゃん、やだこわい」と青ざめる青の感想が面白いです。「赤ちゃんには高度な遊びだよね」というのも、好きというよりはまだ手前の、ほんのり「情」が漂っているようで、ややくすぐったい感じがしました。

タッグを組んで花屋を一緒にやろうという提案や、朝まで議論している展開の二人の思い付きや意見も、自分にはない発想でひたすらに感心しながら追いかけました。青と碧の時とは全然雰囲気が違うのが興味深いです。

全然甘い雰囲気がないし、お互いノンケなのに、気がついたら両片想いになっているのがじわじわきます。萌えるというのとは違う、じわじわくる感じです。

吉田が飯田に「誕生日に俺に会いたかった?」と聞き、飯田が吉田に「テレビを口実にそばにいたかった?」と聞くシーンでは、さらに大きなじわじわが来て、一人で読みながら声を出してしまいました。こういう誘い告白のような形もいいなと萌えました。

キスを交わして盛り上がっても、先に進もうとしたところで飯田が「男と寝るのは無理」と拒否し、吉田も「俺も男と寝るのは無理」と返します。強がっているわけじゃなく、そうなんだろうなと素直に思うし、キスもしたいけれどそこまでは想像できないという気持ちもわかります。恋心を自覚して、両想いになって、すぐに肉体関係に発展しない、二人それぞれの考え、姿勢、感覚が丁寧に描かれているのが素敵でした。

BLではありますが、恋愛よりも、生きるとは、仕事とは、大事なこととは、ということを突き詰めた作品であるとも感じました。吉田の何気ない言葉から、飯田が吉田の店のコンセプトに気づいて言葉にして「それが俺が伝えたい花の価値だ」、と吉田がハッとするのは、なかなか胸熱な展開でした。

自分の気持ちが言語化できず迷える飯田のところにやってくる、そっくりの顔をした芸術家の兄。誕生日というきっかけで突然訪ねてきた兄が、飯田の中心に届くような、響くような言葉を投げかけて去っていくシーンは印象深かったです。

告白シーンはまるで喧嘩みたいですが、侍のように言葉を尽くして戦って思いを伝え合っている感じが、すごくかっこよくて素敵でした。

書き下ろしは、恋人になったような、なっていないような二人のやり取りが、ちょっと優しくて、でもわざと堅苦しくもしてあったりして、ほろりとしたりにやっとしたり、ショートながら色んな要素がいっぱいでした。

ラストが急降下

原作上下巻の内容をまとめた作品です。

レンタルお兄さんのアルバイトをしている新は、大学の友人からも愛される癒やしキャラ。
客として現れた潤太は、、甘やかしてほしくて予約を入れた強面の男の子。
頭を撫でてもらって気持ちよくなり、そのまま手で処理してもらうという、なかなか突拍子もない展開から始まります。

最初は、恋心というよりは若さゆえの性欲や、若気の至りといった展開で、恋愛感情が育つエピソードも少ないように感じていました。ところが、途中から何気ない会話を重ねるうちに、確実にお互いが気持ちを寄せ合っていく様子がほんの少しのエピソードから伝わってきて、なんだか両方に切なさを感じました。

レンタルお兄さんと客という関係の枠組みが、バイアスとしてのセーブが効いているようで効いていないことは気になりました。商売を通じた関係と言いつつ、個人の携帯で連絡を取り合っているゆるさは、本当はやっちゃいけないんじゃないかと思ってしまいました。
特に新の方は、お金をもらっていたのに「ただのお客さんと思っていないから(バイトを)辞めようと思った」などと言いつつ、後から受け入れるあたり、少しずるいなと感じました。
潤太が可愛くていい子なだけに、もう少し誠実に本音で向き合ってほしかったです。

腹をくくって両想いになってからは、潤太がより大きく成長して、リーダーシップを取るように変化していくのが印象的でした。いろんなデートを重ねる様子が愛らしいです。

潤太が抱えるトラブルは、不良ものや学園ものによくある分かりやすい対立です。潤太を慕う後輩たちや、ライバルとして絡んでくる大河、その背後にいる半グレのような男たちが登場します。
前半でも登場し、後半からラストに向かう大騒動の鍵となる不良たちですが、彼らは物語を盛り上げるために配置された「ゲームの邪魔キャラ」のようで、なぜそこまで執拗に絡んでくるのかという人間味が薄いのが気になりました。
さらに、新が拉致監禁されるという深刻な事態になっても、周囲が警察を呼ぶのではなく自力で解決しようとする展開には違和感がありました。「実は新が伝説の裏番だった」という設定で一件落着するのも、少しひねりが足りないというか、水戸黄門の印籠を見せられたような「都合のよすぎるラスト」という印象が拭えませんでした。

周囲の友人や先輩たちの性格描写も少し希薄に感じましたが、これは現代の若者風なのかなと、昔の若者は思いました。

少数派好みの目線からのレビュー

上巻でも思いましたが、とにかく絵柄がきれいで、男性たちがかっこいいです。
厚みがある肉体感がしっかりしてるのに、きれいでかっこいいです。

神評価のとても多く、表紙がきれい、試し読みでおもしろそうと思って上下巻まとめ買いしたものの、上巻で置いてけぼり喰らった気持ちになりつつ下巻も読みました。
少数派好みの目線からのレビューになります。

レンタルお兄さんと客として出会い、恋人同士になった2人のラブラブデートで下巻は始まります。
恋人同士らしいデート、恋人らしい仲良しへの嫉妬、と甘々なエピソードが続きます。
デート帰りの濃厚エッチ、と、恋人同士になったばかりで絶賛、大盛り上がり中、という感じで楽しそうです。

上巻に続いて、理由も目的もぼんやりとした昭和の不良みたいなやつらが登場します。
物語を盛り上げるために必要なのでしょうが、ゲームの途中で出てくる邪魔キャラという感じで、人間らしくないのが気になりました。
潤太にやたらなついている後輩も、登場しますが、これまたなぜに?という感じで、人間味が薄いのが気になりました。

汚いやり口で不良が潤太にせまり、危機一髪となってからの解決が最も違和感、でした。
水戸黄門の印籠なのかな?という感じ。もうひとひねり欲しかったです。
トラブルを経てより強まる絆と愛、というハッピーエンドでした。

置いてけぼりにされた感じ

評価が高く、表紙がきれい、試し読みでおもしろそうと思って手に手に取りました。

レンタルお兄さん、強面で怖がられるから頭を撫でてもらいたいという依頼者、おもしろいなと思って読み始めたものの、そこから先が急展開すぎで驚きました。
若いのでちょっとの刺激でも勃ってしまうのはまだわかるとしても、かわいいからって手をしてあげるというのはいかがなものかと。
エロより心情表現、に重きを置いているので、置いてけぼりにされた感じがしました。

家庭のこと、バイトのこと、気持ちの描写もそれなりにあるのですが、物語のキーポイントのひとつになっている、やたら絡んで来る不良、は、ゲームで邪魔をしてくるモンスターキャラという感じ。
何を思っていてなぜ、ということが全く理解できませんでした。

絵柄がきれい、顔も体も綺麗、エピソードも豊富です。
エロに進むための設定と展開という印象が強めでした。
ノンケ同士なのに、あまりにもためらいがなく恋愛関係に進んでいくのに違和感がありました。

神評価の多い人気作なので、私の感じ方は少数派だと思います。

一直線の好きを向ける青と、悩み抜いて積み上げた好きを抱える碧

原作の持つ繊細な雰囲気を大事に、優しく丁寧に紡ぐ演出がとても心に残る一枚でした。
二人の声や話し方の対比が、原作のキャラクターイメージに見事にマッチしており、萌えと切なさを味わうことができました。要所で効果的に使われるBGMも、彼らの日常を優しく彩っていました。

出会いは高校ですが、まるで子供の時から一緒にいるようなやりとりをする様子が印象的でした。
学年1位の秀才でありながら、碧の前では赤ちゃんのように懐く青。その甘えるような声のトーンと、友情あふれる青春のやり取りがすごくいいです。

碧は自分が同性愛者なんじゃないかとずっと悩んでいます。赤ちゃんのような青が好きな気がするのは、赤ちゃんが好きな気持ちだけじゃないかと言い聞かせながら悩んでいる、悩める青少年という感じです。どうしても一歩踏み出せないまま卒業の日を迎えてしまいます。卒業式の日に碧から「なんか俺に言うことないの」と催促し、それに対して青が「卒業してもたまに会ってほしい」と返すのが、またまた微妙かつ絶妙でした。

大学生になり、碧が周囲の勧めで彼女を作ったことで一度は交流が途絶えますが、二人の思い込みの激しさを友人に指摘され、お互いの気持ちが友情以上だと確信したりしなかったりで、距離の取り方にずっともぞもぞキュンキュンする展開が優しいです。

社会人になり、24歳になった彼らが月に一度、必ず会社を定時で上がって会うことにしているのも素敵です。同僚に写真を見せて「彼氏ですか?」と聞かれ、「別に珍しくないだろう」と言われて「そうなのか」と考えるようになる碧。
「もう怖がるのはやめる。お前といるのが楽しい。だから彼女はいらない」
そう口火を切った碧に対し、青が思わず「碧くん好き」と告白するシーンはすごく好きです。

両想いになった後も、「成績に一回も勝てなかった仕返しだ」とばかりに返事を先延ばしにする碧と、早く返事が欲しくて何回も催促する青の、何とも可愛いやり取りにはニヤニヤしてしまいます。騙し討ちのようなキスから、二回、三回、四回と数えながらキスを重ねていくのも、声の表現によってまた甘く優しく感じられました。

また、脇を固めるキャラクターたちが本当に魅力的です。特に陸上部仲間の吉田くんや、碧の後輩の新卒の女性。彼女たちの話し方のトーンやセリフ回しがとてもいい味を出していて、素晴らしい演出だと思いました。
相手に告白してもらって、自分は受け入れたという形にしたい碧のずるいというか後ろ向きなところも分かります。それを理解して、最後に大きな花束を作ってくれる吉田くんの友情には、自分の青春時代とは違えど泣きそうになるほどの感動がありました。

一直線の好きを向ける青と、悩み抜いて積み上げた好きを抱える碧。
両想いになった後も、同棲へのハードルを一つずつ丁寧に描いているのが素晴らしい、素敵なドラマCDでした。

青と碧 コミック

ろじ 

丁寧に大切に進めてきた2人の関係は未来もきっとずっと素敵

青春、友情、恋愛感情。関係しているけれど簡単に混ぜることができない要素を、マーブルに混ぜていったような物語です。

異性愛が普通とされる中で、「では同性愛は異常なのか?」という問い。そういうのもあるとわかってはいても、自分では認めづらい思春期の葛藤が描かれています。


青と碧が高校を卒業する時、碧はちょっとずるいです。青に「なんか俺に言うことない?」と問うことで、「卒業してもたまに会ってください」と言わせます。本当はなんて言ってほしかったのでしょうか。勇気を出したけれど出しきれない二人の、甘酸っぱいとはこういうことを言うのだろうなというやり取りが愛おしいです。

大学生になって、高校の時ほどの密度と濃度はないけれど「友達」付き合いを続ける二人。この年頃では当然の「彼女がいないのはおかしい」という風潮や、悪気なく紹介してくれようとする友人の存在によってギクシャクしてしまうのが切ないです。どっちも悪くないし、どっちも勇気が出ないけれど、そんな年頃なのだと思います。大多数と違うことを認めるのも勇気がいりますし、ずっと大事にしてきた友人との関わり方を変えることで、友情すらも壊れるのではという恐怖もあったでしょう。

二十歳になっての高校の同級生飲みというエピソードもすごくいいです。久しぶりの吉田との友達トークもいいですし、相変わらずの絶妙な後押しもいい。高校生、大学生と成長してきて、二十歳で飲酒もできる大人になったという明確な線引きがされているのもいいです。緩やかですが、確実に時を経ているのを優しく感じることができます。そしてその時もちょっとずるい碧ですが、喜んでしまう青とのやりとりがちょっぴり切なくて萌えます。

社会人になってからは2人とも月一の定時退勤、食事会が楽しみ、という付き合いに変化します。
その温度感を、碧の後輩の反応で表現しているのもいいです。高校、大学時代の友人、吉田とは違いますが、この後輩の女性は芯が通っていて正直でまっすぐで、碧にいいパスを出しています。

月一の食事会でも、やはりずるい碧。優位に立って、青からのアプローチを待ち続けています。初めて青が強い言葉を使うシーンは、すごくいいです。「碧くんと会えなくなるのは絶対やだ!なんでいつも試すようなことばっか言うの?」
今までたくさん青から気持ちをもらってきたことで、ようやく覚悟を決めた碧の、ちょっと遠回しな告白が素敵です。それを受けて、思わず「好き」と言っちゃう青はかわいいです。

両想いになった後も、やはり青に対してはちょっとずるい碧。でも確実に歩み寄っている様子が甘くてかわいくて、すごく萌えます。

両想いになってからの先も、ゆっくり丁寧に描いているのがすごくいいです。ずっとまっすぐ一直線な青に対し、いろんな悩みや苦しみを経て、けじめをつけてから先に進みたい碧。
飯田、ありさ、後輩女子、高校・大学・社会人のいろんな仲間たちに報告して、それぞれの形で応援されていることがわかるのも、情感豊かで素敵です。

ちょっと適当な吉田がずっといいやつで、まっすぐな性根なのがわかるし心地よいです。同性愛の香りがほんのりするだけの会話で、「きもいこと言うなよ」と吐いてしまう碧に対し、「自分の吐いた言葉で傷つくの自分じゃないの?本気じゃないなら言わないほうがいいよ」と真顔で平穏な言葉で伝えてくれます。吉田は積極的な応援はしませんが、まっとうな言動の友達は応援する、というスタンスです。ずっと気づいていてずっとそっと応援して、碧の恋が成就した後は大きな花束を贈った吉田がとてもいいです。出番は少ないですが、物語で最も魅力的な青年だったと思います。

ゲイカップルで同棲して、「何が悪いの、いいでしょ」と全方向フルオープンにするのではなく、一つずつ、一方向ずつ丁寧に大切に進めていく二人が素敵ですし、未来もきっとずっと素敵で幸せだろうと思いました。

一冊の中に物語やエピソードがとてもたくさん入っているのに、詰め込みすぎな感じも駆け足な感じもしない、すごく素敵な作品です。

隣りの コミック

腰乃 

何度読んでも何度もおいしい

腰乃先生のデビュー作。
最近、「隣りの」のドラマCDを聴取する機会があり久しぶりに読み返しました。

腰乃ワールド、と表現したい独特の間、会話、オノマトペが、最新作よりは色薄目なのは、腰乃先生ご自身によるものか、初代編集者の指示によるものか、などと深読みしながらの、再々読でしたが、何度目でも楽しい作品です。

コンビニ店長と恋に落ちる男

まるで映画のヒロインのような登場をする男性。でも部屋を追い出された間男。
コンビニ店長との出会い、不器用な2人の、優しい交流が恋に発展していく様が、綺麗で愛らしいです。
かわいいけど、エッチシーンはかなりがっつりしっかり、擬音も紙面いっぱいで、迫力があります。

熱の線状

どこにでもいそうな高校生男子たち、ちょっと悪い先輩からのちょっかいがあったり、友情と性欲と恋心がごっちゃになったりします。
末長く幸せに暮らしましたとさ、とおとぎ話のようなラストではなく、2人が今、楽しく幸せになる、そんなお話です。

誤解の先

こちらも、どこにでもいそうな高校生男子たち、先輩後輩のお話です。卒業式で好きでした、と涙の告白をし、きれいな思い出だったはずが10年後に身長差逆転して職場で運命的な再会をします。
恋心の再燃と、雪によるアクシデントで、2人きりになった場面で、延々と語り合う様子に萌えます。
終わり方も、さあこれから2人は、と読者が期待させる感じなのが楽しいです。

よく考えよう
だらしなくて浅慮な上司とそれにつけこむしっかりものでゲイの部下のお話です。
やってることはしっかりがっつりセクハラと売買春行為なんだけど、描写もがっつり多めなのですが、終始ほんわかした雰囲気が漂ってます。ラストのコマの表情が見えない2人のやりとりに、この先のあれこれを想像して笑顔になりました。

隣りの
コミックス表題のお話なのに巻頭でも巻末でもない配置。出版社、編集者の意図はなんだろう、などと考えてしまいます。
単なるお隣さんとして出会った2人が、ベランダ越しに会話を重ね、いつしか朝食を共にするようになり親しさを増していき、お隣さんから友達になりますが、ノンケの沢田がゲイの東大寺のことが好きかも?と迷ったり考えたり、様子に萌えます。ノンケだから知らないゲイのこと、調べたり歩み寄ろとしたり、たどたどしく、ぎこちなく、一生懸命な様子がとても愛おしいです。
沢田が東大寺に告白した際、ノンケなのに、と返された沢田が放った「心が動いたらダメなのか」という台詞には、胸がキュンと締め付けられました。

幸せなら手をつなごう
隣りの、で、沢田に横恋慕してちょっと無茶して成敗された同僚の小西と上司のお話です。
小西が自分の招いた事態、とはいえ、真意の読めない涌井課長に翻弄され、「自分で動かなくてよくて楽」などと言われ良いように扱われてしまう姿には、流石に同情してしまいました。
言葉足らずで、変なところだけ器用な2人が、心と言葉が寄り添わない身体だけ先行していく様子はまるでコントのようです。

隣りで
隣りの、の沢田と東大寺、東大寺の元セフレ、今友達、沢田に横恋慕してた小西と、沢田と小西の上司涌井、みんなが登場する、楽しく萌える描き下ろしです。

キャストが素晴らしい

ドラマCDで出会って原作をスピンオフ含めて全購入して読み、またドラマCDに帰ってくるという、ぐるぐる巡回する味わい方が楽しい作品です。

羽多野渉さんは、心の奥底が読めない、暗い情熱、影と陰のある正体の読めない男性を演じる第一人者だと思っています。壱都は能天気で明るくてかわいらしさがありつつ、怖いほどの得体の知れない情熱を持っています。売れっ子一流芸能人で超多忙なはずなのに、自らと長年片想いをしていた芳史との妄想エロエロBL同人誌原稿を完成させ、さらに印刷所に持ち込んでしまうという、極端な決断力と行動力、執着心がある複雑怪奇な人物を、魅力的に演じておられました。

鈴木達央さんは、モノローグ含めてとても台詞が多かったのですが、壱都に対する気持ちや情が、友情から恋愛感情に変化していく過程を丁寧に表現されていました。悩んだり迷ったりしつつ、男らしく相手に、そして自分に向き合う芳史を、素敵にかっこよく演じておられました。

原作の2人のやりとりや関係の変化、両想いの恋人同士になってからの温度感の変化を、羽多野さんと鈴木さんの声と演技により、さらに情感豊かに感じられ、より萌えることができました。

脇を固める素晴らしいキャストも、この突拍子もない物語に説得力を与えていました。遊佐浩二さん演じるマネージャーは、すべてを理解した上で職務に忠実で、その臨機応変さがすごいです。ちょっと冷たい感じもありつつ、バカな壱都を冷静に分析して、いろいろひっくるめて受け入れてしまう感じは、さすが遊佐さんだと思いました。巻末のおまけエピソードはマネージャーが壱都の同人誌を紹介するという演出で、遊佐さんの声で聴くとさらにおもしろく感じました。
安元洋貴さん演じる印刷所の先輩は、登場シーンが少ないですが、要所要所での台詞がナイスパスという感じで、印象深いです。

キャストのフリートークもとても楽しかったです。鈴木さんと羽多野さんのトークはもちろんですが、個人的には安元さんと遊佐さんのフリートークは、その後のスピンオフでメインCPとなりますし、大好きな某地獄と極楽が出てくるアニメの名コンビでもあるので、とても楽しかったです。

描き下ろしまで盛沢山の楽しい一冊

ドラマCDで作品を知り、スピンオフ含めてまとめ買いするほどはまった作品です。
猫野まりこ先生のラブコメは、はずむようなテンポの良さが楽しく魅力だと思っているのですが、今作は初期の作品ということもあり、そのテンポが今ほどなめらかではない感じがします。絵柄も展開も少し古くて、そんなもろもろが、初期の猫野まりこ先生作品を味わっているということを感じられて、とても楽しいです。

芸能モノはたくさんありますが、売れっ子芸能人と、印刷所の人間という組み合わせは、後にも先にも見たことがなくておもしろいです。
高校時代の親友が大人になって再会という展開はたくさんありますが、自身と高校時代からの片想い相手との濃厚エチエチ妄想BL漫画を、売れっ子で超多忙の生活をしながら同人誌として完成させて、しかもそれを同人誌にするために印刷所に持ち込み、その印刷所のスタッフが片想いの相手、というエピソードも展開もかなり突拍子もなくておもしろいです。

再会から再び交流を深めていく2人。
芳史が好き、ということがダダ漏れの壱都。
壱都の好き好きアピールで次第に壱都に惹かれていく芳史。
温度差のある両片想いになっていく様子は楽しく、そして萌えます。

芳史にかっこよく告白したかった、と嘆く壱都ですが、自分と芳史を題材にしたエロエロ同人誌の印刷を依頼しているのが芳史の会社なので、何をいまさら、という感じで、奇天烈な男だなと思います。
一般人には理解不能な情熱と言動を、高校時代からの付き合いがあるとはいえ受け入れてしまう芳史は、懐が深いといえばいいのか、彼もまた負けず劣らず、壱都を受け止める度量があるなと感じます。

芳史の誕生日に初めて体を重ねた2人、その後、お互いへの気持ちが深まっていく様子も素敵です。
芳史は壱都の扱い、あしらいが徐々に上手になっていき、恋人同士らしい軽口が増えていく様子に萌え、次はもっとエッチで想いが通じるようにと芳史自ら体の準備をするようになり、難航して体調を崩してしまう様子に萌えました。

1冊の作品ですが、高濃度でエピソードがたくさん詰まっています。季節感が夏コミ、冬コミで表現されているのもおもしろいです。

続巻含め、壱都の同人誌を売っている即売会、私も行きたいです。
壱都の妄想同人誌が紹介されている描き下ろしまで、盛りだくさんで楽しい一冊でした。

弟への重くて深い「情」がすさまじい

とても複雑な家庭環境の兄と弟がメインのお話です。
誰が悪い、とか誰がいい、とか、誰が加害者、とか、誰が被害者、と、白黒割り切れない、いろいろな要因、影響が、何重にも折り重なっています。

三木眞一郎さんが長兄の篠宮雅紀を演じておられるのですが、家族の中の立ち位置、それによる悩みなどもあるのはわかりつつ、とにかく怖い人、というのが最初から最後までの印象でした。
みんなに認められ、頼りにされ、モデルをするほどの美貌を持ち、責任も果たしている長兄が、長年、心の奥底に秘めて、隠して、煮詰まらせてきた弟への重くて深い「情」がすさまじいです。
立場が違えば稀代の詐欺師、教祖様、になっていたのではないかと思うような、陰の魅力があります。三木眞一郎さんの声が、演技が、じわじわと聴取者の耳を通じて、心に沁みを作っていくような強い印象がありました。

緑川光さん演じる篠宮尚人は、兄の雅紀からの重くて深い「情」を押し付けられ、心身の自由を奪われ、一部の思考力を失っていく様子が、とてもリアリティがなくて、そして、逆にとてもリアリティがありました。中盤までは、あまりにも兄の雅紀の思うままに操られすぎて、浅慮で愚かだと思っていましたが、物語が進むにつれ、これだけの重くて深い「情」を全身全霊どっぷりと浴びせられ続けたら、こんな風になっても仕方がないと感じるようにもなりました。

母、姉、もう1人の弟、それぞれの家族が、それぞれの関与をしており、それぞれの決断をする様子もかなり鮮烈です。

ドラマCDで作品を知り、コミックスを発行されている全巻を購入したはいいけれど、積読になっています。
感情表現が多い作品を好むのですが、今作は、その感情表現がとても濃く、どろどろねっとりしているので、読みたいけどなかなか手が出せない、数ページ読みかけて、ううん、やっぱり、と手を止めてしまうことの繰り返しです。
強烈に重たくて、でも、とても気になってしまう求心力があります。
読者、聴取者を選ぶ作品だと思います。