末広マチ先生のお話はふんわりとした印象がありましたが、この新作はちょっと重め、深めのお話でした。
冒頭に出てくる意味ありげな「攻略」という台詞、それから仕事の合間で、また、会話で「攻略」という言葉が、何度も出てきます。
2人の仕事に関連する言葉であり、2人の間柄に関連する言葉でもあります。
「攻略」という言葉の使い方、配置の仕方がおもしろいし、わくわくしました。
雪深がアートディレクターをしているチームのイラストレーターが事故で骨折したことから、臨時の手伝いをすることになった他部署の後輩、芽吹。
ただ懐いているだけかと思ったら、実は過去の出会いが彼の今に深く関わっていて...
ということが後々にわかってきます。
そこは大事なところなのですが、過去だけに重きを置かず、日々の仕事、ちょっとしたおしゃべり、じっくり、ゆっくり、2人の関係が、距離が縮まっていく様子が丁寧に描かれています。
ぐいぐい、という表現よりだいぶ控えめ、だけど、積極的に雪深にアプローチをする芽吹。
絶妙かつ心地良い距離感と温度感、素晴らしいです。
ちょっと踏み込んだとき、雪深にかわされそうになったときに発した言葉。
「だって勘違いでもしなきゃ始まりませんよ、恋なんて」
強すぎず弱すぎず重すぎず軽すぎない、絶妙で素晴らしい言葉でした。
読んでいて脳内で、打ち上げ花火を見た気分、すっごく素敵な恋愛への第一歩だと感じました。
ちょっとづつ圧を強めていく芽吹、かわそうとする雪深、という構図ではありますが、2人ともとても誠実、相手を尊重し、きちんと言葉を交わし合っている様子がとても良い感じでした。
恋愛モノの主人公たちとして読みつつ、人間として、好ましい、良い人だと思いました。
風邪で寝込んでいる片想いの相手を訪ねて看病する、というのは恋愛ものあるあるの大イベントで、どうなる?どうなる?とわくわくしてしまいました。
芽吹は雪深のことをいたわりつつ、気持ちも表明しつつ、自分の恋愛感情を抑えて、そちらのほうに話をぐいぐいと進めて行かず、そーっと雪深の寄り添い懐に入って行こうとする様子がとても素敵でした。
そして晴れて両想いになったはずの2人。
なのに、芽吹が同僚と「攻略」について話しているのを耳にしてしまった雪深。
一気に甘々、恋愛浮かれモードにならず、ちょっと足踏みして、ちょっと後ろ向きになって、それからもう1度、今度は言葉をたくさん、たくさん重ねて、丁寧に2人の気持ちの答え合わせをするような告白、とても感動しました。
両想いになってから体を重ねるまで時間が経っているのも良いし、行為がかなりしっかり描かれていつつもエロさよりお互いを求めあい、お互いを大切に想っている、強くて深い情をたっぷる感じられたのも良かったです。
もうひとつの側面で良いなと思ったのは職場のことです。
ゲーム制作会社の仕事は、これまで読んだ漫画や見たドラマなどから、みんな精力剤を飲みながら、体力気力を削って働くブラック企業のようなところを勝手にイメージしていたのですが、雪深のチーム、芽吹のチーム、みんな自分の仕事が好きで、多少の無理は自分の決断でしてて、楽しくがんばっているのが伝わってきたのも良かったです。
恋愛ものだけど、彼らの職場のゲーム制作の仕事のことにも重きを置かれているストーリー展開で、特に雪深のチームの人たちは、みんなゲームの仕事が大好きなんだということが伝わってきたし、仕事を通してお互いに敬意を持ったり、仲良くなったり、趣味を共有したりして、人間関係が構築されていく様も良かったです。
メインの2人以外は脇役でちょろっとしか出番がないような作品もありますが、今作は脇役A、脇役B、という感じではなく、みんなの顔と性格が伝わり、彼らのことにも興味を持ちました。
メインふたりのこれからももちろんですが、職場のみんなとのやりとりも見たいので、続編を熱望します。
原作既読でかなり好き、加賀陽名を江口拓也さんが演じるということでわくわくしながら聴取しました。
飲み屋のシーン、会話が、今時の若者同士という感じがすごく出ていて楽しいです。
その場限り、一夜限りの、隣り合わせただけの適当な会話なのですが、が、2巻まで読んでから聴くと、いろんな「情」を感じてぞくっとしました。
初めて聴いてかつ大好きな江口さんのBL出演作は受けを演じられていて、その受けがとても似合っていたのですが、その後いろいろ聴いた出演作では攻めも多くて、どちらも違和感なく、かわいく、かっこよく演じられているのがすごいと思います。
肉体的、精神的な攻守をあまり表に出さない演技、色気たっぷりの演技、逆に淡々とした演技、どれもすばらしいです。
今作も、徐々に変化、表していく「情」が素敵でした。
現実味がない創作色が強いお話に、人間の情が強いキャラクターたち、がうまくマッチしていて、突拍子もないお話なのに、自然にその世界に引き込まれていきました。
千葉翔也さんの夜泉もとてもあっていて素敵でした。
死神の先輩としての夜泉、密かな想いを隠している夜泉、想いが隠せなくなってきた夜泉、淡々としているときと、気持ちがあふれちゃっているときの、落差がすごくて、色っぽくて、かわいいです。
2人が話すときのテンポ、バランス、がとてもよくて、2人の声質や演技はもちろん、演出もすばらしいと思いました。
あれこれあった後の2人の、内心と本音のやりとりが、照れたり感情的になったりしてとてもかわいいです。同時に、恋愛感情とともに性欲がしっかり出ているのも、それが伝わってくるのも、素敵なところでした。
続きもCD化してほしいです。
評価ランキング上位に入っていたので初読み作家さんでしたが購入。
絵が綺麗で、一話ごとのエピソードも結構しっかりして、1巻で円満なハッピーエンド、というきれいな着地をしていた作品だと思います。
個人的にはエピソードを詰め込みすぎているように感じました。
キャラクターの心情や内面よりできごと、エピソードを綴っている印象で、出来事、続の出来事、また次の出来事、という感じで話が慌ただしく進んだ印象を受けました。
ドラマの1シーズン分のプロットを1冊にしたような感じで、2巻か3巻にして、ページ数を多く使って1つ1つの出来事をもっとじっくり、心情表現も含めて描いていたらもっとよかったのではないかと思います。
別の角度から見ると、エピソードがしっかりしているので、ドラマ化したら、今作の良さがより引き立つのではないかと思います。
特に最後の大円満のエピソードはドラマチックで、BGMやエンドロールがついて動いている画面が脳裏に浮かぶくらいでした。
今作は物語としては面白かったけど、情緒的な部分が好みではなかったのですが、絵柄も綺麗で、1冊にこれだけのエピソードを満載された三島ピタリ先生に興味を持ち、他の作品も読んでみようと思いました。
表紙の3人の様子を見ただけでにやにやが止まらない、かわいらしさ満載の番外編でした。
最初から最後まで兎にも角にもすんごくかわいいです。
樹と小夜の愛の巣に小夜の従兄弟・獅音がやってきて、小夜に懐きまくりべったりで、樹を敵対視する、というわかりやすい3人のわちゃわちゃ。
状況や台詞によっては、胸が痛むエピソードなのですが、この3人の、それぞれがそれぞれに対する、三人三様の台詞とやりとりが、とんでもなくかわいいです。
かわいい、かわいい、と連呼してしまって語彙が少ないみたいですが、かわいい、としかいいようがないので仕方ありません。
獅音が学校に行けなくなった理由、抱えている問題、重すぎず、でもしっかりと描かれているのもいいところでした。
獅音に対する樹、小夜、それぞれの考えと姿勢、見守り方も、2人の良さがよく表れていて素敵でした。
幼馴染だったり、元同級生だったり、親戚だったり、「自分のほうがよく知ってる」と自認、主張する当て馬の登場は定番中の定番だと思いますが、どうしても、誰かが嫌な気分になったり、つらくなったりしがちなのに、3人ともわちゃわちゃしつつも、情が深くて、心根が優しくて、気持ちがよかったです。
読み終えて しばらくしてもニヤニヤが収まらないほど可愛らしい一冊でした。
番外編その2、獅音メインのスピンオフ、もっともっと読みたくなりました。
拒まない男のスピンオフということで購入。
前作は人間臭い人たちの情がいっぱいの映画を見終えたような気分になる良作でした。
今作はさらに人間臭い人物たち(いい意味、悪い意味、どちらもで)が登場し、さらに情がいっぱい(こちらもいい情、悪い情、どちらも)の作品でした。
あらすじも一切なにも確認せずに購入したら、まさかの続き物で、気づいたときには、深いため息をついてしまいました。
続きが気になりすぎる!
今作のメインCPの受け、山吹富、過去に大変なことがあり、それ以降、逃げることが習慣化してしまい、どんどんと悪い事態となっています。
セフレにストーカー、アウティングされたり、バイト先の店長に脅迫、身体の関係を求められたり、さらにはもっとひどい目にあったり、ここまでひどい目に遭わせなくても、と途中で読むのがきつくなりました。
ひどい目にあって、投げやりになって、セックスに逃げがちな山吹富ですが、根本的にお人よしで、ひどいことしてきた相手、しそうな相手でも、いい人そう、いい人だ、とすぐに信頼してしまうところにとてもハラハラしました。
過去の関係と、今の関係、それぞれの相手の仕事のこと、いろんなエピソードがが次々と出てきます。問題もたくさんあって小さな解決はあっても円満とはいえない状況で、1巻は終了しました。
山吹富が幸せになるハッピーエンドが読めることを願って、2巻発売を心待ちにしています。
続編を入手したので久しぶりの再読。
人間臭い人たちの情がいっぱいの映画を見終えたような気分になる良作です。
漫画のキャラクターのような(本当に漫画だけど)なんでも知っててできる有能、かつ多くの客に頼られ慕われる美形のコンシェルジュ、白石律。非常に優秀であり、どんな無理難題も「絶対に拒まない男」として有名という設定にまずきゅんきゅん、わくわくします。
お相手が探偵で、調査で知り合い、見学から優秀な助手となり、身体から入ったものの、第三者のおしゃべりによって両想いだと自覚するというエピソードにさらにきゅんきゅん、わくわくします。
キャラクター設定、エピソード、台詞まわり、どれをとっておドラマティックで、お話の先が読めなくてどんどんひきこまれます。
探偵がかわいがっていたのに死んでしまったペット、ハムラッシュ、がところどころ、出てくる緩急のつけ方も素敵です。
身体から入ったけれど、両想いになって、浮かれたこともしちゃったりして、あまあまな展開かと思いきや、仕事がらみ、過去のこと、で暗雲が立ち込めてきます。
それぞれが抱えている過去、どうやって向き合っていくか、ということを丁寧にゆっくりを描いています。
2人のベッドシーンがたくさんありますが、エロさ全開のセックスだったり、ただ抱きあって眠るだけだったり、情熱的に体をつなげた後に静かに語り合ったり、いろいろな過ごし方が、それぞれに違っていて、それぞれに素敵でした。
巻末の「もうひとりの拒まない男」もとてもいい話でした。
物語を実は裏で進めていた探偵さんと、昔の律のお話。
こういう種明かし的な前日談は、本編の味わいをより深くしてくれて楽しいです。
たつもとみお先生のこじらせた男性、情感が重ための恋愛物語は、もろ手を挙げて好き、とは言えませんが、どの作品も惹きこまれます。
好みどんぴしゃり、ではないのに、新作が出るたびに買わずにいられない、というすごい求心力のある作品を生み出している作家さんです。
としのさ夫夫の1巻は、両想いで一緒に暮らしているとしのさ夫夫の、拗らせた恋愛感情と表現が、とても重く、特に年上夫の言動がネガティブすぎて、読んでいてかなりしんどくなりました。
双方ともお互いを深く愛しているのに、それが伝わらない、そして、揉めるたびに乱暴に体を重ねるという歪んだ愛情交換、という拗らせぶりが、つらかったです。両依存でもない、プレイでもない、お互いに向けている深い愛が伝わっていないもどかしさ、切なさがありました。
さて、想いを伝えあい、確認しあって、2人名義で住居も買い、大きくなった猫のシャノアとの3人家族のような穏やかな暮らし、潤也を取り合い、膝枕の位置でけん制しあう、啓司とシャノアの様子など、とても穏やかで胸が温かくなる光景から2巻が始まります。
両想いになっても不安な気持ち、不機嫌をコントロールできない啓司がやっぱり読んでいてしんどかったです。しかし2巻は年下の潤也の懐の広さ、包容力のすごさに感動しつつ、啓司、もうちょっとがんばれ、もうちょっと素直に、応援する気持ちで読み進めました。
シャノア脱走騒動による、会社の部下、マンション住民とのエピソードでは成長を感じて拍手をしたくなったり、気づいたら、すっかり啓司を見守るおばちゃんの気持ちになっていました。
成長し始めた啓司がちょっとした失敗をしたことで、次は潤也がやや暴走。
2人してモラハラぽい発言をしあって、愛し合っているのに、素直に甘え合えない、どちらかが尖っている様子にハラハラします。
たつもと先生の描く人物、物語でなかったら、読むのをやめてしまっていたであろうエピソードが続いて、やっぱりしんどい、でも、やっぱりさすが、たつもと先生、となりました。
2人のその後の話だけでなく、潤也が寝込んだことで、2人が出会ったころのことを思い出すエピソードも素敵でした。
ネタバレになるので詳細は記しませんが、出会ったときに手渡された潤也の名刺を、啓司がそのままずっと持っていたことがわかるシーンには目頭が熱くなりました。
潤也の誕生日エピソード、2人の関係は進んでいるけれど、啓司の部下たちとの関係がほんのちょっとだけしか進んでいない、でも、残業をしないで済むように協力するというエピソードもすごくいいなと思いました。
誕生日で改めて27歳という年齢差を感じてしまう啓司、そんな啓司に「啓司の命が尽きるまで一番いい状態で管理して俺の手で最後まで送る、それは幸せな完走だから」、「その時に思い知ればいい、俺の愛を」と優しい笑顔で伝える潤也、顔を赤らめて「それは執着じゃないのか」とやはり少し後ろ向きな啓司に対して、潤也が「愛だよ」と言い切るシーンには涙が出ました。
ドラマティックで大盛り上がりするエピソードはないけれど、2人が日常を積み重ねていく様子を見守り続けることができてよかったなあと感動する2巻でした。
完結だそうですが、機会があったら続けてほしい作品です。
あとがきでたつもと先生が、King Gnuの「三文小説」の歌詞が、閉鎖的な中に慈愛が充満していて潤也みがあってとてもよい、と記されていて、納得、と膝を叩きました。
BGMとして聴きながらの再読も楽しんでみようと思います。
作家買いで、レビューも読まず、試し読みもせずに入手しました。
里つばめ先生の描く、情が深いのに、軽やかさを感じる、透明感のあるお話の数々が好きです。
弟きっかけの姉の事故死とお葬式、ブラック企業勤めで心身が壊れる、など、里つばめ先生の作品では珍しく、陰の要素が強い導入でした。
そこからの帰郷先での光景、会話、交流、変化・・・
極限まで濃度が高まったヘドロのようなものが、徐々に、徐々に、ゆるんで、流れて、きれいになっていくのを眺めているような気がしました。
田舎によくありそうな人間関係、お年寄り、若者、家族、近隣関係の中、1人だけ普通の中に埋もれ切れていない特異な人物、それが、寺の息子、僧侶の然。多くの陰を抱えて帰郷した真智の幼馴染でした。
それぞれ内に抱えている重荷がありつつ、近隣住民として、幼馴染として、同窓生として、つながりがあり、日常が流れていきます。
2人がお互いのことを想っているということは、直接的な言動ではなく、そのほんの端々に漂うように表現されています。
キスシーンも、言葉なく、ただ2人がキスをしている様子がいろんな角度から2ページたっぷり使って描かれているのも、情緒がありました。
それぞれの抱えているものの、家族の問題、を、それぞれの消化、浄化されていく様子もとても情緒があり、そして考えさせられました。
想いが伝わりあってからも、ゆっくりじっくり丁寧に愛を高め合う様子がとても素敵で、2人が体を重ねるシーンも、欲望、は感じず、ただひたすらに暖かくて強い情愛を感じました。
神谷さんのBL出演作を探していて見つけた作品のパート2
1巻に引き続き、リアルティのないシチュエーション、エピソードがつづられています。
芸能ものはこれくらいリアルティがないほうが逆にいいと思っていたのですが、2巻はちょっと鼻につくところが多くて胸やけ気味になりました。
恋人同士になった2人と双子の妹とメンバーがわちゃわちゃ仲良くなっていて、そこにシンのファンと、若手芸能人が絡んで来る、わかりやすい当て馬展開。
両想いになってすぐに肉欲まみれにならないシンの大人ぶりが好印象でした。
那智が最初は勢いで2回目はわざわざ、シンのために作ってあげる料理がカレー、というのが等身大の高校生らしくてとてもかわいいです。
2人の初体験、内心と台詞による事細かな実況中継は、聴いていて照れて照れて、それからお腹いっぱいになりました。
原作がそうなんだろうと思いますが、そこまで言葉を連ねないと表現できないものかな?と残念に思いつつ、主演おふたりの声が存分に楽しめたのはよかったです。
嫉妬にかられたシンによって無理やり、めちゃくちゃにされた翌朝に、那智自ら同棲を持ち掛けるエピソードにはかなり、びっくりでした。相手がシンだから良いけれど、相手がモラハラ、DVタイプだったらとことん離れられなるタイプだろうなと思ったからです。
甘々、という展開にはならず、情緒不安定気味のふたりが突っ走り、シンの後輩や那智の先輩が絡んでちょっとややこしくなったところで、片方は本音を口にしなくなり、片方は内緒の行動をして、創作物じゃなかったら、この後は破局しかないという波乱の展開でした。
那智がシンのピンチ?にかけつけるシチュエーションも、アイドルがファンに囲まれて建物から出られない、スタッフだけ先に逃げてる、というありない内容で、なんかほかにもっとなかったのかな、と残念に思いました。
ハッピーエンドなのだろうけれど、1巻よりリアルティのなさ、話を進めるための無理やりなシチュエーションが増えていて、聴き続けるのがかなりしんどかったです。
しかしメインのおふたり、それから豪華な脇のみなさんのお声が素敵だったので、それなりの楽しく聴き終えることができました。
神谷浩史さんのBL出演作を探していて見つけた作品。
過去の悲しいできごとから鬱々とした気持ちを内に抱え続けている那智。
想いを綴った詩を見つけた双子の妹が勝手にアイドルグループKIXの新曲の歌詞一般募集に応募、採用されたものの、歌詞を一部、変更されていたことに気づき、憤ります。
妹から聞き出したメアドでKIXボーカルのシンに連絡をとったことから、つながりがでてきて・・・、というお話。
那智の弱さ、勝手さ、短慮さ、短気さが随所に出ていて、聴いていてかなりしんどかったです。よく言えばピュア、なのでしょう。今時の表現だとメンヘラちゃん。
こういうところがかわいい、と思うのか、いらつくのか、は好みの問題になってくると思います、が、万人受けする性格ではありません。
他にも過去の神谷さんのBL出演作をいくつか探して聴いていますが、この頃の神谷さんは、感情に流されやすくてちょっと浅慮、よく言えば純な受けの青年役が多かったように思います。今作の那智もそんな青年。
少しだけ年上のアイドルグループKIXのボーカル、シンは、そんな那智に最初はいきなり喧嘩腰でメッセージを送りつけられ、面と向かえば憎まれ口ばかり、なのに、おもしろがって自分から近寄って繋がりを持っていくうちに惹かれて行きます。
芸能界の荒波を乗り越えて人気グループになっているだけあって、シンだけでなく、KIXのメンバーみんな年齢より大人、お兄ちゃんぽくて包容力があってやさしいです。那智とは別のタイプですが彼らもピュア。そしてかわいいです。
那智がシンの活動の手伝いをしたり、ファンに囲まれて身動きできなくなったシンのところに那智が突撃したり、そもそも最初の一般公募で採用された歌詞提供者というだけなのにメンバーとメアド交換してたりと、エピソードがいちいちリアルティがなく、漫画チックなのがとてもいいと思いました。
アイドルもの、業界ものはこれくらいが夢があっていいのです。
シンが那智に「公共の電波で告白してやる」という脅し方も、売れっ子アイドルだからこそできる、すごい愛の告白で、かつ、リアルティがないところがすごくかっこよかったです。
脇役の声優さんたちがとても豪華だったのも楽しかったです。
オネエメークアップアーティストに安元さんの存在感がすごかった。
それから、突出してすごいと思ったのは平川さんでした。
平川さんは、すごいいい人の役が多いように思いますが、今作では冷たい井戸の底から何かが這い上がってくるかのような得体のしれない怖さが出ていて大迫力でした。BGMが穏やかで綺麗目なのもいい演出で迫力がありました。