律の症状は強迫性障害というものなのかな。あまり詳しくないので断定はできませんが。生まれ持ったものではなく、幼少期の生活環境が原因のようなので、素人としては何かをきっかけに少しでも改善されればなぁという思いがつい頭をよぎってしまいますが、彼の叔父も一護もそのままの彼を受け入れて、そういう性格の人間として最後までフラットに接しているところが印象的でした。そうだよね、そんな簡単に治せるものではないよね、と。律のルーティンを理解し、その生真面目さや正直さを愛おしく思い、たくさんの決まり事からはみ出た衝動的な言動に胸を熱くする。そんな一護だからこそ、律が安心して身を委ねられるのだなと思いました。
表紙の雰囲気どおり、ホラー要素多めの除霊BLです。私はホラーが得意ではありませんが読めたので、ホラー苦手な方でも読みやすい作品だと思います。除霊からBLに発展するトリガーはいろいろパターンがありますが、こちらはそもそも霊が煌河の精気を吸い取ろうとするので、天丸がそれに対抗しようとすると必然的にそういう行為になるという感じ。
お互い別に筋金入りのゲイというわけでもないだろうけど、体の関係から始まって共に修羅場をくぐり抜けるうちに相手を受け入れていくのは自然な流れに思えました。天丸の方は最初から煌河を気に入っていたみたいですが。確かに煌河は筋肉もしっかりある男らしい体つきで、行為中も表情が蕩けすぎることもなく、最後まで男性らしさを崩さないところが魅力的な受けでした。
暁と朱里の関係性はもちろんなのですが、読み終わってみて改めていいなぁと思ったのは朱里と真理の関係性でした。お互い同じクズ男に執着して地獄を経験させられた者同士。ようやくその男に愛想が尽きた時、朱里がどん底だった真理に手を差し伸べたことで強い絆が生まれ、お互いなくてはならない戦友になっていく。堕とされた2人は本当に可哀想だったけれど、新たに誕生した友情は美しい歌舞伎町の夜の物語でした。2人がクズ男の記憶など霞むほど、稼ぎまくって名を馳せたことが心底嬉しかったです。こんな濁りきった街でも本物の愛はあると、再び信じることができた朱里と、彼の一番の親友として見守ることにしてくれた真理、それぞれの表情がまた美しいなと感じました。
原作を読んだのは遠い昔なのに、あの時の感情が鮮烈に蘇ってくるような2巻でした。レシェイヌの寵愛と執着っぷり、足弱の戸惑いや出自に関する不安、帰郷願望。そして、灰色狼たちの王族への心からの敬意と愛。単なるシンデレラストーリーではない、とても地に足のついた現実と隣り合わせの眩い世界観、そして深い愛情の物語だったなぁと。
どんなに間接的な証拠を積み上げても、足弱の心の奥底からは自分は本当は王族ではないのではないかという疑問は生涯消えないかもしれません。老人からたくさん教わりながら健やかに育った山での生活も彼にとってはかけがえのないもので、その帰郷願望も生涯消えることはなく、これからもふとした拍子に頭をもたげてくるかもしれません。でも、孤独だった弟王を再び孤独に陥れたくないという想い、灰色狼たちの献身に応えたいという想い、民たちに枯れた土地で苦痛を味わってほしくないという想いは、老人や故郷への想い以上に強く、それが彼を何度でもレシェイヌの元に導くのだろうなと思います。自分の力を信じられない彼が、レシェイヌの言葉で大地に祈りを唱えるシーンに感動しました。
ブームになっていた当時、作者さんのWebページ上で読んでハマった記憶があります。コミカライズされていると知り、懐かしくなって手に取ってみました。そうそうこんな話だったと結構覚えていたので、当時通しで一度読んだだけだったのに強烈に印象に残る作品だったのだなぁと、改めてすごさを感じました。
ある意味シンデレラストーリーとも言えるのかもしれませんが、足弱の故郷の山に帰りたいという願望や、育ててくれた老人への想いは周りが想像するよりずっと強く、小説ではその心情や、周りの希望を踏まえた葛藤がとても繊細に描かれていて引き込まれたことを覚えています。こちらのコミックでも、そういう物語の要となる箇所をしっかり押さえられていて、満足度が高かったです。