蛮王という言葉から暴虐な王を想像していましたが、破天荒ではあるけれどとてもからっとした性格で、付き合いが長くなればなるほど憎めないような、案外本質的には誰からも好かれるタイプの王なのが、いい意味でイメージを裏切ってくれました。幼い頃から他人を救うために自由を奪われてきたミルザを外の世界に連れ出してあげてほしいと切に願いましたが、彼にとっては今の生活も切っては切れないもので。2人なりの着地点が見つかってよかったです。アスラの闇や呪い、周囲の純真なミルザへの執着などはもっと掘り下げてもよかったかな、ラストが性急だったかなという感は否めませんが、1巻という短さで綺麗にまとまっていたと思います。
やっぱり『カラオケ行こ!』の面白さを求めて読んでしまうんですよね。そうするとこの続編は下巻まで大きな山場もなく、ぬるっと終わってしまったなというのが正直な印象。そもそも狂児と聡実の関係性をそういう目で見ていないので、ハグによって関係性が変わってほしかったわけではありません。明確な答えが出ないまま終わらせるのもありだとは思う。けれど、BLに振り切らないなら『カラオケ行こ!』レベルの秀逸なシュールギャグで何度もくすっと笑いたい。それが、最後までシリアスなんだか軽いんだかBL感を出したいのかよく分からない空気のままだったなぁと。ヤクザのおじさんたちが面白かったから、彼らの登場シーンを増やせばもう少し笑えたかも?などと考えてしまいました。
またこの2人の掛け合いを読めて嬉しいです。塩野が異動になってエリート街道を昇りつつある中での遠恋。仕事で来ている時に多古井に冷たいのはプロ意識がなせる業なのかなと思いきや、ただの痩せ我慢だったと知り微笑ましかったです。現実の警察組織はまだまだホモソーシャルな部分も残っていて同性愛に寛容ではないんじゃないかというイメージですが、こちらは皆フラットな態度でいてくれて温かい空気が素敵ですよね。周りに筒抜け過ぎやしないかとも思いますが、そこはお愛想。起きる波乱もリアリティはありませんでしたが、なんやかんや最後に2人の絆が確かめ合えるので気付いたら楽しんでいました。年上でおじさんな見た目の多古井がちゃんと可愛いのはすう先生のテクニックと塩野の愛のおかげですね。また続編が読みたいです。
律の症状は強迫性障害というものなのかな。あまり詳しくないので断定はできませんが。生まれ持ったものではなく、幼少期の生活環境が原因のようなので、素人としては何かをきっかけに少しでも改善されればなぁという思いがつい頭をよぎってしまいますが、彼の叔父も一護もそのままの彼を受け入れて、そういう性格の人間として最後までフラットに接しているところが印象的でした。そうだよね、そんな簡単に治せるものではないよね、と。律のルーティンを理解し、その生真面目さや正直さを愛おしく思い、たくさんの決まり事からはみ出た衝動的な言動に胸を熱くする。そんな一護だからこそ、律が安心して身を委ねられるのだなと思いました。
表紙の雰囲気どおり、ホラー要素多めの除霊BLです。私はホラーが得意ではありませんが読めたので、ホラー苦手な方でも読みやすい作品だと思います。除霊からBLに発展するトリガーはいろいろパターンがありますが、こちらはそもそも霊が煌河の精気を吸い取ろうとするので、天丸がそれに対抗しようとすると必然的にそういう行為になるという感じ。
お互い別に筋金入りのゲイというわけでもないだろうけど、体の関係から始まって共に修羅場をくぐり抜けるうちに相手を受け入れていくのは自然な流れに思えました。天丸の方は最初から煌河を気に入っていたみたいですが。確かに煌河は筋肉もしっかりある男らしい体つきで、行為中も表情が蕩けすぎることもなく、最後まで男性らしさを崩さないところが魅力的な受けでした。
暁と朱里の関係性はもちろんなのですが、読み終わってみて改めていいなぁと思ったのは朱里と真理の関係性でした。お互い同じクズ男に執着して地獄を経験させられた者同士。ようやくその男に愛想が尽きた時、朱里がどん底だった真理に手を差し伸べたことで強い絆が生まれ、お互いなくてはならない戦友になっていく。堕とされた2人は本当に可哀想だったけれど、新たに誕生した友情は美しい歌舞伎町の夜の物語でした。2人がクズ男の記憶など霞むほど、稼ぎまくって名を馳せたことが心底嬉しかったです。こんな濁りきった街でも本物の愛はあると、再び信じることができた朱里と、彼の一番の親友として見守ることにしてくれた真理、それぞれの表情がまた美しいなと感じました。