1巻からその片鱗を覗かせていましたが、幼く見える藤沢はいざという時結構はっきりものを言えて、大人びた綾瀬の方が藤沢の言動に一喜一憂したり、悩んだりすることが多いようで、見た目と中身の逆転が面白いです。実際綾瀬はそれなりに経験があることが明かされましたが、中身のない経験は本気で好きな子の前では役立たず。素直だからこそ出てしまう、触れ合うことに驚いての「気持ち悪い」とか、咄嗟に押し退けてしまうとか、相手に気に入られたい、流されてもいいか、という妥協がないありのままの藤沢の言動に振り回される綾瀬が、時に可哀想でもあり、滑稽でもあり。ぎこちなさが消える日が来るといいですね。
2巻が高評価レビューの嵐なのを見ると、私はまだまだ頭が子供なんだなぁと痛感しました。分かりやすいハピエンばかりを求めているわけではなくメリバも好きだし、バドエンや別れる結末にも抵抗はありません。でも、この2人にはなぜか明るいハピエンを無意識に期待してしまっていたんだよなぁ。
隆裕のジャックへの接し方が1巻とあまりにも違っていたのが一番冷めてしまったポイントでした。字も読めない、日本語も分からない、外国に住むどころか行ったことすらないジャックを日本に連れてきたのにサポートも他人任せで、たまにしか会ってやらない、恋人になる覚悟も結局なかったってどうなのよ、と思ってしまいました。その上、父親を慕う気持ちをかなり拗らせていて、死なれて悲しいのは当たり前だけど、それでもジャックの手を自分から取りに行くことはないのね、と残念に思いました。高評価の方は隆裕の気持ちを分かってあげられる、心が大人な方なんだろうなと思います。
久しぶりに西田先生の作品を読みましたが、改めて稀有な作家さんだなぁと思いました。洗練された絵の漫画が溢れる現代においては大変失礼ながら画力が高いタイプの作家さんではないし、台詞やモノローグに含みを持たせる描き方でもなく、メインキャラはお兄さんというよりおじさんという方がしっくりくる人物が多いのに、ストーリーでここまで魅せてくれるのって実はめちゃくちゃ貴重なんじゃないかと思います。
がたいも良く、白人らしい整った顔立ちというハイスペックなジャックが、蓋を開けてみれば読み書きもおぼつかない、恋愛もよく知らない男だったのは完全にギャップ萌えでした。彼の生い立ちを考えると可愛いなんて言ってしまうのは不謹慎だけど。でも、隆裕も読者もそんなジャックを愛おしいと思わずにはいられない。せっかく掴んだ自由ですから、ジャックにはぜひ日本で温かな人生を取り戻してほしいと願いますが、2巻でどう転ぶのか少し不安も。バナナ◯ィッシュも彷彿とさせるので、こちらの2人にはハピエンを期待したいですね。
会川先生の作風にあまりシリアスなイメージがなかったのですが、こちらは結構重めの話でとても刺さりました。兄に恋する主人公・シューヘイ。最初はどこかで義兄弟であることが明かされるんだろうと勝手に決めつけていましたが、正真正銘実の兄弟で驚きました。たくさんBLを読んできた私でも、性別のことは置いておいて兄妹に恋する感情というのは理解が難しい。長らく離れて暮らしていたならまだしも、幼い頃から同じ親元、同じ空間で生活してきた相手に恋する感覚というのはどうにも掴みきれません。
それでも、自分でコントロールできるわけじゃないんだから、本人はそういう運命だったのだと受け入れるしかない。シューヘイの立場に立つと、どんな道を選択しても苦しく、何度辛い想いをしてきたのかなと心が痛みます。そんなシューヘイを受け入れる選択をしたサトル。彼の本音は誰にも見えない。大事にしてきた可愛い弟と一生会えなくなるくらいなら、という気持ちなんでしょうか。彼は間違った選択をしたと部外者が決めつけることもできないし、ただただ本人と神のみぞ知る気持ち。シューヘイはサトルに打ち明けたけれど、サトルが本音を誰かに打ち明けることは生涯ないかもしれません。でも、サトルが自分でシューヘイに手を差し伸べる選択をしたのなら、周りがとやかく言う権利はないと思いました。
若手俳優と少女漫画家という少し珍しい組み合わせ。そこはかとなく少女漫画の雰囲気が漂うので、BLファンタジー感は強めだったかも。悠人は人当たりもよく礼儀正しくて、スキャンダルとは無縁で俳優街道をどんどん駆け上がっていきそうですし、稔も原作者という立場を利用することなく悠人と接していて、お互いいい人という印象が濃かったです。逆に言えばもう少しいろんなやりとりを見せてくれた方が、より人間らしさを感じられて面白くなったんじゃないかなと。年齢差が気になったり、作家への愛が恋愛的好意に変わる説得力があまりないところが引っかかったりしました。これからじっくり相手と向き合って、深いところまで知っていけるといいですね。
最初の『赤くて甘い』が2017年の発売ですから、息が長いシリーズになりましたね。しっかりボリュームがありますが、3組のその後をバランスよく描いていて少しオムニバスチックです。どのカプが好きな方も配分を不満に思わず楽しめる構成となっていました。いろんなカプのBLを描かないといけないので自然とホストをやっている時の描写は少なくなり、プライベートの彼らをたくさん拝めるのが楽しいですね。もちろん本編ありきですが。
タマとミヤの濡れ場も社会情勢が反映されていたりして面白かったです。この2人の軽快なやりとり、好きだなぁ。ミヤは奔放でもちゃんと可愛さを保っているのが嬉しいですね。芽玖先生の作品は今までストーリーにがっつりハマることができなかったのですが、線も魅力的ですし、濡れ場の画力も高くてこれからの作品も読んでみたい先生だなと思いました。