原作を読んだのは遠い昔なのに、あの時の感情が鮮烈に蘇ってくるような2巻でした。レシェイヌの寵愛と執着っぷり、足弱の戸惑いや出自に関する不安、帰郷願望。そして、灰色狼たちの王族への心からの敬意と愛。単なるシンデレラストーリーではない、とても地に足のついた現実と隣り合わせの眩い世界観、そして深い愛情の物語だったなぁと。
どんなに間接的な証拠を積み上げても、足弱の心の奥底からは自分は本当は王族ではないのではないかという疑問は生涯消えないかもしれません。老人からたくさん教わりながら健やかに育った山での生活も彼にとってはかけがえのないもので、その帰郷願望も生涯消えることはなく、これからもふとした拍子に頭をもたげてくるかもしれません。でも、孤独だった弟王を再び孤独に陥れたくないという想い、灰色狼たちの献身に応えたいという想い、民たちに枯れた土地で苦痛を味わってほしくないという想いは、老人や故郷への想い以上に強く、それが彼を何度でもレシェイヌの元に導くのだろうなと思います。自分の力を信じられない彼が、レシェイヌの言葉で大地に祈りを唱えるシーンに感動しました。
ブームになっていた当時、作者さんのWebページ上で読んでハマった記憶があります。コミカライズされていると知り、懐かしくなって手に取ってみました。そうそうこんな話だったと結構覚えていたので、当時通しで一度読んだだけだったのに強烈に印象に残る作品だったのだなぁと、改めてすごさを感じました。
ある意味シンデレラストーリーとも言えるのかもしれませんが、足弱の故郷の山に帰りたいという願望や、育ててくれた老人への想いは周りが想像するよりずっと強く、小説ではその心情や、周りの希望を踏まえた葛藤がとても繊細に描かれていて引き込まれたことを覚えています。こちらのコミックでも、そういう物語の要となる箇所をしっかり押さえられていて、満足度が高かったです。
女装はするけれど心は女ではないゲイの千歳と、ゲイバーで働いているとは知らずに彼と知り合う凌の距離が、じりじり縮まっていく過程がとても丁寧に描かれていて、ノンケとゲイの恋愛としてリアルでした。凌が千歳から影響を受けて、職場で部下に対して当たり障りのない振る舞いをしていた自分を振り返り、ちゃんと上司らしく接しようと変わる努力をする描写も素敵でした。女装は確かに偽りの姿でもあるけれど、千歳の真っ直ぐな性格はネット上でもゲイバーでも、プライベートでも変わらない。そういう姿に凌は感化されたんだなぁと。なんとなく女装する方が受けだろうと想像してしまいますが、最後にそれを裏切ってくれたのもよかったです。
お互いに抑えられない衝動をぶつけ合う、というストーリーでどこまで描き続けるのかな?とさすがに気になりました。最初から振り返ってみるとほとんど進展していないですよね。フェロモンの描写も匂い立つ様子がありありと伝わりはしますが、ファンタジー感も強くなってきた気が……(オメガバースの時点で十分ファンタジーなのですが)。私が親だったらいくら今はそれしか方法が見つからないと言われても自分の未成年の子供が友達とそういう行為をしていると知ったら何が何でも止めると思うし(友達を傷付けさせないためです)、2人を取り巻く周囲のリアリティのなさもやっぱり引っかかりますね。西央の過去は分かりましたが、今の2人を理解するのにここで挟む必要があったのかよく分かりませんでした。
シロさんが喪中になったことで冒頭は少ししんみりした雰囲気が根底に漂いながらも、けっして失ったばかりではなくて、いろんな周りの人たちとの繋がりで得たものの方がたくさんあることに気付く過程がすごく素敵でした。あれだけ養子縁組を嫌がっていたケンジに何の誤魔化しもない真っ直ぐな想いを伝えて受け入れさせたシロさんは、本当に愛を表に出すことを躊躇わなくなったなぁと。昔の彼ならここまでできませんでしたよね。ケンジの気持ちも分かるけれど、現実的なことも考えて今できる最善の道を押したシロさんに感動しました。男やもめは寂しくなりますから、これからも定期的にお父さんを招いてあげてほしいですね。鮎料理のオンパレードがとても美味しそうでした。