上下巻まとめての感想です。
人が豹になる設定に、古のテレビドラマ『闇のパープルアイ』を思い出しつつ、なんか激しい物語なのかな? と思ったらそんなこともなく、ぼんやりとした概念商業BLをまんま絵に描いたような話でした。
絵がめちゃめちゃ綺麗です。豹がけっこうリアルに豹! って感じで、特に膝関節の辺りとか首筋のところとかが最高です。動物好きにはたまらないと思います。
一番好きなシーンは源慈の膝の上でごろんごろんする豹化琥士郎のところです。リアル豹なのに表情がでれんでれんに融けてる。精悍な野性動物のはずなのに、極めつけの駄犬みたいな顔になっちゃって。そんな情けない様に覚える、背徳的な喜びよ……。
ストーリーは上記の通り概念商業BLストーリーなので、端から端まで既視感がすごくて、しかしここまで何処かで見たネタを豪速球でビシバシ投げまくって来るのは逆に凄いのかもしれない……数打ちゃ当たるならぬ数打ちゃ蜂の巣ってやつだ……と正直自分を奮い立たせて頑張って読みました。ぶっちゃけ、頑張らないとちょっと難しかった……。
豹、だと思っていた琥士郎が実は天使のようなものだと発覚したところで、私は考えるのをやめました。これは考えるな! 感じろ!、系のお話なのね!? 固いことは抜き抜き! 固いものは抜き抜き……。そういうことだったのかぁ。
と悟って以降は楽しく読めました。
人生に疲れて息抜きと癒しを求めている、動物好きで疑似親子萌えの癖をお持ちの方におすすめです。
冒頭の主人公・飛馬はちょっと変わった子なのですが、親友? の海東は輪をかけた変人ぶり。
高校時代から、海東は飛馬のことがとても好きなのですが、大胆にも飛馬にキスをねだりめちゃめちゃチュッチュしまくる癖に、飛馬と一生付き合えないと思い込んでいます。
いやいやいや、全然気の無さそうなノンケの友達にキスをする方が勇気要ると思うけど、何故そんな頑なに告白しないのか? それでいて、飛馬に彼女が出来たら祝福する気は大いにあるというのは……訳がわからないw
そんな海東の不思議くんっぷりに中盤まで惑わされたので、終盤になってやっと想いが通じたあとは、もしや一生ぶんの幸せを使い果たして、階段か崖を踏み外して悲劇エンドになるのではないかと、びびり散らかしました。
そんなオチにならなくて良かったです。続編も読みます。
「一目惚れ」というテーマで書かれた作品なのだそうです。
一目惚れに理屈はないので、攻めも受けも相手のどこが好きとかどうして好きとかいう描写はあまりありません。
だって、好きになったもんはしょうがないんだもん!!!!!
という訳で、そういう描写が少ない代わりに、攻めや受けがどのような人生を歩んで来たらこういう人物になったのかということの描写が豊富でした。
好きになるのに理由が要ると思う人には向かない物語かもしれません。
個人的にツボだったのは、攻めの梶さんから見た受けの凛太くんの第一印象が明かされたくだりです。
まあなかなか酷いw
でも客観的に見ると、その時の凛くんは確かにそういう感じかもしれませんねー。
そんな残念な出会いでも好き!! ってなってしまうのだから、一目惚れというものは厄k……げふん、素晴らしいものです。
読みやすい文章で、サクサク読めました。