『作家・奥田枠の新境地!』
と銘打ちたくなるような、内容も作画も奥田先生の新しい一面を見せつけられた一冊でした。
収録されているのは、短編というには十分過ぎるボリュームと内容のある2作品。
2作品とも「支配」がテーマですが、読み進めると、メインキャラ2人のうちどちらが支配者でどちらが被支配者なのか、どんどん分からなくなります。
一見すると、虐げられ、その後ご褒美をもらう事に悦びを覚えている晃や龍彦が被支配者に見えるのですが、精神的に真に支配されているのは支配を実行するKや龍蔵なのではないかと思えてきます。
『支配者である自分すら自分で支配したい』
なんて、特殊性癖のない者には到底理解できませんが、Kや龍蔵は支配者として被支配者を完璧に支配したいし、常に被支配者を満足させる自分でありたいのです。
それこそが支配者たる自分の存在意義だしアイデンティティだから。
関係が深まれば深まるほど、支配者側の不安や焦燥感は大きくなり、いつか飲み込まれてしまうかもしれない。
Kと晃の結末は、支配者・被支配者として永遠に完璧に完成された関係でありたいという究極の願望の結果なのでしょう。
龍蔵と龍彦はまた違う形の終わり方でしたが、龍蔵はKよりも強い支配者なのでしょうね。
龍彦を一生引き受ける覚悟を固めているので、彼は死ぬまで、あるいは死んでも支配者で有り続けそうな気がしました。
描き下ろしや電子コミック特典漫画も秀逸で、2作品とも非常に読み手を選ぶ内容ではあるものの、読み終えると不思議なほど幸福感を覚えます。
恐らくそれは、Kと晃・龍蔵と龍彦それぞれが、意外なほど純愛だからなのかなと思いますが。
正直言って万人にオススメ出来る一冊ではありませんが、少しでも支配・被支配、共依存、メリバなどに興味がありましたら、読んでみるのもいいかもしれません。
個人的には大好きな一冊です。
傷心で恋愛する事に少し怯えているゲイと、ノンケ(のハズ)の恋のお話。
ノンケの彼がゲイの彼に丁寧に気持ちを伝え、傷を癒やし、穏やかな二人の日々を築いていく物語でした。
ノンケ元カレに振られたばかりのゲイである明。
傷が癒える間も無く、ふらっと立ち寄った古着屋で店員の北条に一目惚れしちゃいました。
お店に幾度となく通いつつも、ノンケだから・・・と半ば諦めていたのに、ある日偶然ゲイバーで北条に遭遇しちゃうんですよ。
そりゃぁ多少は期待もしちゃうってものですよね。。
ふとしたきっかけで、どういうわけか北条と付き合う事になる明だけど、元カレに「やっぱり男は無理」と本能的に拒絶されたトラウマがあるので、なかなか北条の気持ちに正面から向き合えないでいる描写が続きます。
見た目イカつい系で、一見慣れてそうに見えるのに、明は実はとっても純情なんですよね。
すぐに恥ずかしがったりテンパったりする明が可愛くて、北条はどんどん前のめりで明にハマっていっちゃいます。
ノンケ元カレが、寄りを戻そうと何度かアプローチしてくるのがあまりにも身勝手で、明本当に別れて良かったね!!と思いました。
愛があって温かいお話だったんですが、今一つ北条が明に本気になった理由・経緯が分からず、最後まで謎でした。
北条は最初から明の好意に気付いていて、だけど男は恋愛対象じゃなかったから「あんまりいい気はしなかった」はずなのに、ゲイバーには立ち寄るし、自分から明に交際を申し込んじゃうし。
恐らく北条は自分では気付いていなかっただけで、バイセクシャルだったのでは・・・。
あと、北条は時々ものすごく意味深な表情というか、冷たい感じの表情になっていたので、北条にも何か恋愛のトラウマがあったのかなって思ってたんですけど、結局最後までエピソードが無かったので拍子抜けでした笑
全体としては、見た目イカつい系のカワイコな受けが攻めに愛されまくるお話なので、安心して読める一冊です。
夏休みを終え、いよいよ受験勉強一色になっていきそうな楪と常盤。
常盤が志望校を教えてくれないことに楪はモヤっていたけど、同じ大学を目指してくれてると分かって喜んだのも束の間。
常盤が楪に黙って志望校を変えていたことで、大喧嘩になってしまったところで次巻へ続く・・・となりました。
常盤はホント言葉が足りないというか、意味深な態度で楪を振り回している感じで。
楪も楪で思い込みがけっこう激しいタイプだと思うし、そんな中で受験勉強の焦りもあっただろうし、今回は二人の良くないところが出てすれ違っちゃったのかなーと。。
ていうか常盤、志望校変えるの早過ぎない?
勉強合宿で学力の足りなさに初めて気付いたのだろうか・・・。
学年5位以内常連の楪と同じ大学行こうと思ったら、壁はものすごく高いって最初から分かってたと思うけど・・・。
「距離を置きたい」って、この時期に言われたら勉強どころじゃなくなるだろうし、常盤んl真意がいまいち分かりづらいけど、ちょっと楪が可哀想な展開でした。
5巻までは、何だかんだあっても乗り越えて愛が深まってきていたけど、6巻は不穏な感じで終わっちゃいました。
2027年刊行予定の7巻が最終巻とのことで、おそらくちゃんとラブラブで終わってくれるとは思うけど、楪があんまり泣かずに終わってくれたら良いなぁと思います。
記憶喪失、ほの暗くて切ないバッドエンド、いちゃラブの3作品オムニバス。
三者三様の恋愛模様でしたが、共通していたのはレビュータイトル通り、「目の前の相手が幸せかどうかを決めるのは誰か?」だったと思います。
自分といても幸せになれないんじゃないか。
こんな自分は相手に相応しくないんじゃないか。
同性の自分と一緒にいるより、異性と結婚した方が良いんじゃないか。
同性カップルだと、異性カップルより悩む事は多いかもしれないけれど、同性同士であれ異性同士であれ、相手が幸せかどうかを決めるのは結局、相手本人の心なんだなと。
「多分こうした方が相手は幸せだろう」と思うのは、自分の心を落ち着かせるのに都合が良いけれど、それは相手の心を無視したやり方なんだよなと、読後に改めて感じました。
お互いに、何が自分にとっての幸せか?を分かり合い、その上で相手に向き合った3組のカップルたち。
結末は切なさ混じる幸せだったり、底抜けにハッピーだったり、幸せだけれど悲しかったり・・・いろいろでしたが、皆、自身の決断に納得した清々しい表情で終わっていたと思います。
しっとり静かに、穏やかに描かれた3つの愛の形。
短いながらも味わい深い作品集でした。
子どもの頃から父親に虐待されてきた攻めと、攻めのことを幼少期から見守り、守ってあげていた受け。
受けが進学するのを機に、音信不通になっていた二人が会社で偶然再会し、子どもの頃にしていた「添い寝」習慣が復活して・・・。
受けは、攻めが自分を好きになったのは幼少期からの刷り込みのせいだと思っている。
一方で攻めは、大好きな人に自分の本心や希望を伝えても叶わない・困らせるだけだと思っている。
それぞれにトラウマや後ろめたさを抱えていて、なかなか素直になれないんですよね。
同性同士だし、お互い気持ちをはっきり伝え合っていないから、上手くいかなくて当然と言えば当然なんですが、途中抜き合いしたり車の中で素股したりとかなりお互いに求め合っていたので、改めて言葉にしなくても良いような雰囲気が二人の間にあったのかもしれないなぁ・・・などと思ったり。
攻めは虐待サバイバーなので、受けに対しては依存性的な部分もあったのかもしれないです。
けど終盤、初めて最後までした日の翌朝の攻めの笑顔は晴れやかで、恋人になれた喜びが滲み出ていたので、もうそれだけで十分。。。
初読みの作家様でしたが、作画が丁寧で美しく、最初から最後まで映画のようにワンシーンワンシーンが美でした。
えちシーンもしっとりと美しく、「濡れ場」といった感じで良かった。
本作では攻め・受けとも優しげでおっとりしたタイプでしたが、ワイルドだったりビッチだったりという、作家様が描く違うタイプのキャラも見てみたいです。
オメガバースという世界観の黎明期を描いた作品はまだ多く無いけれど、本作は離島に住む2つの部族(ヨルタとガルナ)を中心に、「発情期があり子を成す事の出来るオメガ」・「オメガに強く反応してしまうアルファ」・オメガの価値・大陸に住まう部族との戦いや混沌を描いたオメガバース黎明期譚です。
1巻ではオメガが高値で売れることにチラッと触れられていたものの、ここまでガッツリと物語のテーマの中心として描かれるとは思っていなかったので驚き。
2巻から一気に作品の世界が広がったように思います。
とは言えまだまだ序章かな?
大陸の人間であるゼンや、ヨキの兄で現ヨルタ族長カナン、ヨキの幼馴染で銀髪美丈夫のルーカスなど、登場人物も増えてますます続きが楽しみになりました!
また、2巻では作者様があとがきに書かれている通り、バドルとヨキの成長が見て取れます。
これまでのバドルは、孤島の中でガルナだけを外敵から守っていれば良かったけれど、これからは大陸側の他部族と出来る限り争いを避けつつ、お互いWin-Winな形で共存していくことを求められるでしょう。
やるべきことや考えなくてはならないこともきっと格段に増える。
しんどくて潰れそうになる時もあるだろうけど、そんな場面ではきっとヨキが支え力になってくれるんだろうなと思います。
大陸側とのいざこざが3巻で決着するかは分からないけど、いずれヨキがご懐妊・ご出産する時期もやってくるでしょうし、続きを楽しみに待ちたいと思います!
部族・オメガバース・肉体美・年下大型わんこ攻めが好きな人はぜひご一読を❤️
好きになった人は異性愛者だった。
好きになった人が異性と結婚した。
これだけで、同性愛者からしたら恋を諦めるには十分なのに、それでも諦めきれなかった楓は、片想いし続けた5年間、相当苦しかったと思う。
日常生活で関わりがなければ、まだ耐えられたかもしれない。
けれど相手は同僚で仲も良くて、親友みたいなポジションの三園。
恋心を捨てられないまま、友達のように近くにいないといけないなんて・・・本当辛い。
離婚し、少しずつ楓と距離を縮めようとしてくる三園に対して、楓が不安感や怖さを抱くのは仕方のないこと。
楓にしてみれば、恋愛において誰かが自分を好きになってくれることは奇跡に近くて、まして相手が異性も好きになれる人なら尚更信じきれないわけで。
「同性を恋愛の意味で本気で好きになるわけがない」と自己防衛してしまうのは無理もないです。
三園がバイセクシュアルだったことと離婚したことで、二人の間に流れる空気感が一気に恋愛モードに流れていくけれど、楓の葛藤に対して最初は三園が無頓着だったのがイラっとしました。笑
三園のアプローチの仕方がね、本当「恋愛強者」という感じだったもので(笑)
『え、俺の気持ち伝わってるよね?』
『なんで応えてくれないの?』
みたいな。
これまで恋愛イージーモードで簡単にくっついたり別れたりしてきたんだろうなぁという感じでした。
そんなんじゃ楓の心は手に入れられないよ・・・と終盤までモヤモヤ。
最後の最後に正面から気持ちを伝えたことで、やっと私の溜飲も下がりました。笑
本編はエチはもちろん抜き合いもなく、キスまでです。
気持ちが通じ合うまでのお話だから、それはそれで自然な流れかなと。
でもやっぱり二人のイチャラブが読みたいので、続編があればぜひ愛の溢れるエチまで読みたいです。
ピュアで誠実な恋愛関係になった美津留と静一の高校生カップル。
1巻はキスと、美津留が静一に手でしてあげるまでの関係だったけれど、2巻は恋人としてもう一歩進む一冊でした。
付き合いたての時って、相手にどこまで自分をさらけ出すか・どこまでわがままを受け入れてもらえるのか、そういう距離感がまだ掴めていない時期ですよね。
せっかく付き合ったのに、友達だった時より距離を感じたり、自分は本当に好かれているのか不安になったりして。
美津留も静一も、少しタイプは違えど同じように迷っていて、それは相手のことが本当に大事だから迷って悩んでいるわけで。
一方的に自分の気持ちや要望を押し付けず、ちゃんと自分で悩みつつ話し合って解決していくという、誠実のお手本のような二人でした。
静一は幼い頃に母親を亡くしていて、祖母と二人暮らしという、少し哀しい過去を持っていましたが、それが静一の独特な奥ゆかしさや影を作っていたのだと思うと、何だか切なかったです。
ただ、そういう時にはいつも美津留が温かい言葉を静一にかけてくれて、その姿に読者で読み手も一緒に癒されるのですよね。。
美津留は春の太陽のように暖かくて、優しさあふれる人。
初めて二人が体を繋いだ時も、優しさと愛でいっぱいでした。
二人のやり取りを見ていると、意外と静一の方が思い切りが良く、男気溢れていて、二人とも健全な男子高校生なんだなぁと感じます。
兎にも角にも、終始「透明」というカラーに満たされていて、これからどんな風に人生が色付いていくのだろう?と想像せずにいられない二人です。
とっても素敵なカップルなので、高校卒業後や、20代・30代、おじいちゃんになってからの二人についても読みたいです。
ピュアで真っ直ぐな高校生ラブが好きな人はぜひ読んでみてください♪
いやーーーー最高でした。ページを捲りながら、何度震えるような声を漏らした事か・・・。
ダヨオ先生の作品はどれも好きですが、この作品は断トツで好き!
攻めの時田がめちゃくちゃかっこいいです。
クールで飄々としてて、エッチも上手いし遊び慣れてる印象だけど、実は優しくて、押しつけがましくない思いやりがあって、根はけっこうアツいタイプ。
花村の大繩練習の面倒を見てくれた時も、一生懸命に頑張る花村を揶揄う若者に対して(間接的に)反撃してくれたりして、『目標に向かって一生懸命努力する・頑張る』人に対しては本気で向き合ってくれるタイプの教師なんだろうなぁと思いました。
対する受けの花村は、恋愛経験・性経験のいずれもほぼ無しという初心者だけど、天然無自覚誘い受けの才能ありまくり。
無自覚に煽ったりエロかったりして、思いがけない反応に時田がドキドキしてしまうのも納得です・・・。
そして何よりこの作品が素晴らしいのは、両想いなんだな・・・って分かってから、ちゃんと二人が恋人になるまでのじれったい時間を丁寧に描いているところ!
序盤は余裕綽々だった時田が切羽詰まって花村に詰め寄り、告白したシーンには全私がスタンディングオベーションでしたわ・・・(感涙)
おまけページ読むと、時田は本当に大好きな人には溺愛系なんだと分かってニヤケが止まらないです。
最初から最後までキュンキュントキメキっぱなし間違いなし!の最高な作品です!
おすすめ❤
付き合い始めて4年。
大学が別々になって遠距離恋愛になってしまった一歩と時緒だけど、時緒のキャンパスが変わるのを機に同棲を開始します。
会いたくてもすぐには会えなかった2年の時を経て、やっと一緒にいられる事に幸せを噛みしめる二人だったけれど、時緒の大学の友達である花吹くんが、何やら時緒に好意がありそうで・・・。
花吹くんはじめ、時緒の友達たちのノンデリ感は、大学生なら当たり前な感じで理解できなくはない。
突然アパートに押し掛けるとか、急に「泊まらせて」とか言っちゃうところとか。
でもそれを差し置いても花吹くんのしつこさは面倒だったな・・・。
引っ越し先のアパートの住所を勝手に調べたようで、酔っ払って押し掛けるとか、「付き合っている人がいるから、前みたいに家には呼べない」と時緒が誠実に説明したにも関わらず、「またお前ん家で飲みたい」と言っちゃうところとか・・・。
いくら好きでも、相手が本気で嫌がっているのにそれは無いだろうという感じで、すごく印象が悪かったです。
多分この先、一歩と時緒が付き合っていると知って、良い友達に戻っていくんだろうけど・・・。
忘れ物を届けるという名目で時緒不在時のアパートで偶然一歩と会い、一歩が「時緒の彼女の弟です」という嘘をつかなければならなかったのは悲しいし、腹立たしかった。
まぁ恋人関係って公にしないといけないものではないし、詮索されたくない相手には本当の事は言わなくても良いんだけどね・・・。
分かってるけど腹立たしかったですわ。
終盤で、高校時代の二人の同級生で良き理解者である秋田くんが登場して、さらっと一歩の心情を察して優しい言葉をかけてくれたことに救われました。
秋田くんの言う通り、「浮かれてなんぼの時期」なんだよ・・・。
けどまぁ、同性同士で付き合っていくって、こういう事が続いていくんでしょうね。相手に迷惑をかけないように、っていう心配の連続。
みんながみんな、秋田くんのような理解者になってくれるわけではないので。
この作品はピュアな雰囲気で、ぱっと見、あまり重たくない第一印象を受けますが、意外と考えさせられる内容になっていると思います。
5巻で花吹くんがどう絡んでくるのか、二人がどんな対応をするのか、楽しみに待ってます。