fandesuさんのマイページ

神作品

エキスパートレビューアー2022

女性fandesuさん

レビュー数0

ポイント数15

今年度141位

通算--位

  • 神0
  • 萌×20
  • 萌0
  • 中立0
  • しゅみじゃない0
  • 絞り込み
条件

指定なし

  • レビューした作品
  • 神作品
  • 萌×2作品
  • 萌作品
  • 中立作品
  • しゅみじゃない作品
  • 出版社別
  • レーベル別
  • 作品詳細
  • レビューした著者別
  • レビューした作画別
  • レビューしたイラスト別
  • レビューした原作別
  • レビューした声優別
媒体

指定なし

  • 指定なし
  • コミック
  • 小説
  • CD
  • DVD
  • ゲーム
  • 特典
発売年月
月 ~
レビュー月
表示モード

好みど真ん中です

劇的な恋愛は描かれていません。
読み終わった後にじんわり来て、にやにやしたり、ほっこりしちゃったりするお話で、それだけでももう「好き」ってなるのに、これがまた非常にお上手。

日常の中にふっと浮き上がる普段は意識していない寂しさとか、仲良くなりたくてそれなりに頑張っているんだけどどうもすれ違っちゃう『他人感』みたいなものとかが、本からじわーっと染み出してくるみたいなんですよね。
そして、その染み出してくるものは全体的にユーモアが塗されているの。
だから、結構悲しいことを描いていても、傷つかないで読める。
そしてそれが叙情になる(様な気がする)。

田沼さん、もう私、あなた様をロックオンいたしました。
すごく好き。

めちゃくちゃいいよ!

第一話を読み終わったところですが、西田さんファンは必見ですよ!
期待値マックスなんで始まったばっかりだけど『神』点けちゃえ。

出版社あらすじにある様に、主人公の清水って『アフターファイブになるとスーツを脱ぎ、クラブで男を誘う」様な人なんですけど。
でも、それ以上に私がこの清水っていう人のイメージを持てたのは、お話の1ページ目にある『仕事自体が嫌になって来た あんなに本社に戻りたかったのに』『本社は金を稼ぐ快感が皆無だ』っていうモノローグなのね。

ねぇ、いいリーマンでしょう?

そしてもう一人のリーマンは、清水がちょっとした不愉快感を持っている法務部の堅物次長、沖野。清水が常連で踊っている会員制のゲイクラブに、場違いな雰囲気を漂わせながら通ってくるんですよ。
こう言う時、清水って「ヤバい」と思わず「ばれないよね?」的なスリルを快感に変えちゃう。自重しない。

で、清水は別れた男に絡まれている所を助けてもらったことをきっかけに、どうもこの沖野次長は遊ぶためではなく、男と逃げた妻がらみでクラブに通っているらしいことを知ることになるんです。

そんなこんなで、清水はクラブでいたずら心を出しちゃうんですね(何をしたのかは本編をご覧ください)。
こっからなのよ。
ここからが「ああ、西田さんのお話だわっ」って感じなのよ。
期待を裏切らない始まり方!
次が楽しみで仕方がありません。

諸行無常

『神』を付けたのは『卒業生諸君!』の中の、あるシーンに心を奪われたから。
全体の7割くらいの所に出て来るそのシーンは高松と鶴見の3年間の成長を語るものなんですけれど、過ぎ去った時がもたらした成長を誇っているのに、どこか悲しい切なさがあるんです。
たぶん、時というものは過ぎ去って、なくなってしまうからなんだと思ったんですね。
美しい時も、愛おしい時も、全部過ぎ去ってしまう。
そういうのが、すごく心に沁みました。

『寮生諸君!』のスピンオフ、というか、続編って言っても差し支えないお話だと思いますが、そちらを読んでいなくとも楽しく読めます。
でも、読んでいた方がニヤニヤできます。
あ、読む順序はどっちが先でもニヤニヤ出来そう。

満足です

まずは宮緒さん、このシリーズの完結に心から御礼を申し上げたいです。
このシリーズ、『男の御台所』それも『実は闇組織の首領』おまけに『将軍様が受け』という「ねぇ、すっごいシリアスな文章で綴っているし、江戸ならぬ恵渡世界の構築はとっても凝っているけれど……これ、トンチキ入ってますよね?(クスクスクス)」という始まり方でした。
こういうのって宮緒さんの独壇場ですよね。
いやーん、だぁい好き。

シリーズ化して、巻数を重ねるごとにどんどん大河時代劇になって行って、最終的には神までもが参入した大反逆事件になっちゃって。
この、どんどん風呂敷が大きく広がって行く感じが実に楽しかったです。
で、私がとっても満足したのは、このとんでもなく大きく広がった風呂敷が、この巻でパタパタと綺麗に畳まれたことなんです。

いやホント、読者をのせるのが上手い、上手い。
おまけに人情話でジーンとさせてくれるんだなぁ。
時代劇だからこそ、この人情話が活きるんだと思うんですよ。
捻っていても(なんたって『恵渡』だし)ちゃーんとポピュラーな泣かせどころでは泣かせてくれるの……宮緒さん、すっごくエンターテイナーだなぁ(感嘆)!

私が一番「うぉーっ!」ってなったのは、お話の締めが『登場人物のその後』の記述であったこと。
だってこれ『アメリカン・グラフィティ』じゃん!
なんて粋なこと。
同時に、シリーズが終了する、そこはかとない寂しさも漂っていて、本当に素敵な大団円の書き方でした。
うん、とっても満足したんですよ。

歳をとったので

2015年版を読んだ時はそれほど「泣ける」とは思わなかったのですが、あれから7年。歳月が涙腺を緩くしただけじゃなくて、当時の私が気づかなかった部分で心を揺さぶられたんだと思います。

榎田さんのお話の多くに『死』が出て来ます。それもかなり印象的な形で。
たぶん、私の『死のバリエーション』が豊富になったんだと思うのですよ。自分自身もどんどん近くなるし、それに接する機会も増えますしね。いきなりやってくるものも、期限を決められて嫌でもそれに向けて歩いて行かなければならないものも、つらいとか悲しいとかだけじゃなく、仕方がないこととして受け止めちゃうこと自身の冴えた寂しさみたいなものを感じさせてくれるお話だと、今回は思いました。

このお話が3Pでエロエロだったりするのは、そんな寂しさを抱えて辻は生きていかなければならないから。
財津と菊池は辻の守護天使なんだと思うんですよ……こんなこと書くと神様に怒られそうだけど、でも徹底的に甘やかしてくれるでしょう?

で、寂しいのは辻だけじゃない。
全ての人が「サヨナラ」に向かって歩いて行く訳ですから。
このお話がBLとして書かれたのは、榎田さんからのギフトだからだと思うのですね。守護天使のドリームを見させてくれる、って感じ。

旧版を引っ張り出して比べてみましたが、時代遅れのアイテムを現代のものに置き換えたり、都合の良い『偶然』を整合性のあるものに変えたりしていました。
あと、沢山の『行替えの変更』。
旧版はB6サイズ。これは文庫サイズ。
直したので開いた時の見た目が綺麗なんですよ。字が刷られている所と空白スペースの対比が。
このお話、血やその他液体の飛散が鮮やかなんですよね。だから、本を開いた時の見た目も大切なんじゃないかと、行替え変更に頷けました。

ストーリー運びに大きな変更はありませんが、言い回し等を変えて今回の方がシャープな印象になっていると思います。

榎田さん、やっぱ好きだわ。

典雅さんには感謝の念しかない

楽しかったーっ!
読み終わるのが寂しいので、普段の『読み飛ばし速読』を頑張って封印し、出来る限りゆっくり読んだのですが、どんなに頑張ってもいつかお話は終わってしまうのです。
現実社会にはエンドレスの幸せってのは存在しない。
解っているけど、でも、このお話は終わらせたくない。
ずっと浸っていたい。
だって本当に楽しいんだもん。

ホントに典雅さんにはお礼を言いたい。
ふたつのお話とも、ラストのオチもほっこりする様に考え抜かれていて、読者に対する典雅さんの優しさをまたしても感じました。
幸せな気分にしてくれてありがとう。

腕の良い形成外科医(開業医)でイケメンなのに、帯にある様に『32で童貞処女のうえ、恋人でもない男性の局所は何本も触ったことのある僕』乙坂真白先生が、ひょんなことから新人俳優の神永怜悧と知り合いひとめぼれをし、無名の怜悧の推し活を頑張ったり、推し仲間との友情を育んだり、信じられないけど怜悧も懐いて来たり、もっと信じられないけど怜悧から告白をされたりするお話です。
両想いになった後に怜悧が売れ出して更に推し活に励んだり、なかなか会えなくなったのであんなことをお願いされて恥ずかしかったけどやっちゃったり、マネージャーに付き合いを止められそうになるけれど割とあっという間に解決しちゃったりもします。

そう、傍目からだと早い段階でうまくいっちゃってるんです、このふたり。
なのになぜこんなに面白いのか!
……『若いアンドレ攻め×脳内ぐるぐる自虐受け』だからだな、たぶん。
照れずに読めて、やりすぎてもしらけない『甘々』があるんですよ。

32歳の真白先生が20歳の怜悧に合わせて若者言葉を使うかどうか、考える場面が何度も出て来ます。これが異様に可笑しい。
それ以外に出て来た私お気に入りのパワーワードを挙げさせてください。

『鏡張りの部屋で裸で創作ダンスを踊り狂っている姿を見られたに等しい恥ずかしさ』←読んだ瞬間に吹いた。そりゃめちゃめちゃ恥ずかしいわ。

『役者の恋人の鏡』←これだけならなんてことない言葉なんだけど、出て来たシュチュエーションから考えるとかなり可笑しいこじつけ。

『文鳥砲』←文鳥が飛び出すんだよ!真中旬や神永怜悧のいる世界は、ゴシップすら可愛い♡

もっと沢山あります。
みなさんの眼でお探しください。
楽しいよ。

変わらないところと変わったところ

かなり昔、インタビューかなんかで榎田さんは「BL(当時はそう言っていなかったと思うんですが)かどうかなどということは考えていなかった。ただ書きたいもの(ニュアンスとして、私は『書かねばならないもの』的に受け取ったんですが、そんな感じの言葉だった様に思います)を書いていた」という様な事を、デビュー当時の想い出として話していた様な記憶があります。
いや、私の記憶なんて本当にあてにならないのですが。

で『書かねばならないものとは何か?』って言ったら『死』なんじゃないかと思っているんですね、私は。
『死』という喪失を書く。
対比として『生』が鮮やかに浮かび上がって来る。
『生』を書くということは、当然の如く『エロス』を書かねばならない。
だから榎田さんはBLというジャンルの書き手なんだろうな、と私は思うのです。
このお話もやはりその流れの中にあると思いました。

神の声を伝えるため塔に自ら閉じこもる事を自分の宿命と思っている100歳超えの風読みは、ある意味、静かに死んでいっている状態なんだと思うのですね。
実際に彼は生きている実感が薄い。
気にかけてくれる友人がおり、村人からも慕われているのに、彼は生の喜びを感じていないみたいです。

そんな彼が、自分たちの社会の外で暮らす『(人に)アラズ』と呼ばれる部族の若者に、ひょんなことから恋をしてしまう。
すると世界がビビットに色づくのです。
自分の鼓動も大きく鳴り始めるのです。

この『生の喜び』その後、賢者となり神と対峙した後の『絶望』。
この対比のキレッキレさは「ああああああ、榎田さん!榎田さんのお話だわっ」と、歓喜に震えるくらいでした。
榎田節、万歳!

「あ、ちょっと変わったかも」と思ったのは、クライマックスで風読みが自分の恋する人ではなく親のない子どものことを第一に考えた行動を取ったこと。
なんか『成熟した大人』を感じたんですよ。魚住くんや芽吹が『死』に向き合ったやり方とは違う感じを。
なんて言ったら良いのかなぁ……「次世代のことを考えちゃう感じ」とでも言うか「結果として死んでしまったとしても本望、という気持ちがゆったりしている感じ」と言うか……うーん、上手く言えん。
そこに、榎田さんがBLのお話を発表されなかった年月の長さを感じちゃいました。

何はともあれ、とても満足しました。
あとね、私の行きつけの本屋では結構売れている様で、嬉しいのです。
榎田さん、いつでも良いですのでまたBL、書いてくださいね。

最後まで読めて良かった

「売れ行きによっては続刊が出ないかも」的な噂があったので、ひやひやしておりましたが最後まで読めて良かったです。おまけにバツバツ張りまくっていた伏線も見事に回収されたのには、作者さまに拍手を送りたい。私は熱さがあって、文章が好みであればお話の矛盾はあまり気にしない質ですが、かなり大きく広げた風呂敷が見事に畳まれたのは読んでいて気持ちが良かったです。

私がこの巻に『神』を付けたのは、次世代が主人公の番外編がグッと来たからです。
心の中に空洞を持つ大人達や、家族の中で疎外感を感じてしまう子どもの話は、私の心の奥の方のあまり触って欲しくない処にグイグイ来ました。
こういうの、久しぶりです。
同じことを書いても、クル文章とそうじゃないのがあるんですよね。
やられました。

蛇足ですが、
リアル社会で戦争が激化している所為で、読むことに後ろめたさを感じた部分があります。月並みな言い方ではありますが『平和であること』は全てにおいて重要なのだなぁ、と感じました。

こんなに鮮やかだったっけ?

作者のファンなので(っていうか、このジャンルに引き戻され、浴びる様に読む癖がついちゃったきっかけは榎田さんだと思う)大洋図書版は既読です。当時読んだ時も面白いと思ったのですけれど、今回再読して吃驚したのはお話としての手際の良さなんです。

清巳の変さっていうのは当時読んだ時と変わらないイメージでしたが、倖夫の背景についての描写が目が覚めるくらい鮮やかなんですよね。
どんなタイプのロクデナシなのか、どれだけ荒んでいるのかが、短い描写で解る。
だからこそ、倖夫が清巳から与えられるものに中毒を起こす理由も納得できるし、2人の関係がそれだけじゃダメで、もう一皮むける必要があるのも一瞬で理解できるんです。

文章に無駄がない。
とてもスリム。

何度も申し訳ないんですが、前からこんなでしたっけ?
大洋図書版を探して読み比べないとあかんな。

萌えという点で

「沙野さんのお話には評価を高くつけすぎるんじゃないか?今作こそは控えめにしよう」って思っていたんですよ。「ファンタジーはそれほど得意じゃないしね」って。
でも結局、途中で異様に盛り上がってしまった……闘っていたわけじゃないんですけど、敗北感が凄い。

何にそんなに盛り上がっちゃうかと言えば「ダメよダメダメ」なんじゃないかと思うんですね。沙野さんはそういう状況を作り出すのがとても上手い。
それはいわゆる『禁忌もの』や『NTR』なんかの場合もあるんだけれど、今作は『大義』と『思慕の念』が対立しちゃった時の心の揺らぎが丁寧に描かれていて、私はそれに激しく萌え上がっちまいました。

古今東西、敵を好きになってしまう話は多々あると思うのですけれど、なんたってBLですからね。体を触れ合わせなければならない理由があるので、シオンも(クッキリは書かれていないけれどたぶん)リカルドも「好きだからやるのではない」という言い訳を延々と繰り返しながら、互いに関りを深めていくことになっちゃってるんですよ。

これが切ないのなんの!
萌えツボ、ど真ん中だわっ。

そして、決定的だったのは臍ピですよ。
なんてエロいのでしょう……沙野さんは天才だと思う。