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2015年版を読んだ時はそれほど「泣ける」とは思わなかったのですが、あれから7年。歳月が涙腺を緩くしただけじゃなくて、当時の私が気づかなかった部分で心を揺さぶられたんだと思います。
榎田さんのお話の多くに『死』が出て来ます。それもかなり印象的な形で。
たぶん、私の『死のバリエーション』が豊富になったんだと思うのですよ。自分自身もどんどん近くなるし、それに接する機会も増えますしね。いきなりやってくるものも、期限を決められて嫌でもそれに向けて歩いて行かなければならないものも、つらいとか悲しいとかだけじゃなく、仕方がないこととして受け止めちゃうこと自身の冴えた寂しさみたいなものを感じさせてくれるお話だと、今回は思いました。
このお話が3Pでエロエロだったりするのは、そんな寂しさを抱えて辻は生きていかなければならないから。
財津と菊池は辻の守護天使なんだと思うんですよ……こんなこと書くと神様に怒られそうだけど、でも徹底的に甘やかしてくれるでしょう?
で、寂しいのは辻だけじゃない。
全ての人が「サヨナラ」に向かって歩いて行く訳ですから。
このお話がBLとして書かれたのは、榎田さんからのギフトだからだと思うのですね。守護天使のドリームを見させてくれる、って感じ。
旧版を引っ張り出して比べてみましたが、時代遅れのアイテムを現代のものに置き換えたり、都合の良い『偶然』を整合性のあるものに変えたりしていました。
あと、沢山の『行替えの変更』。
旧版はB6サイズ。これは文庫サイズ。
直したので開いた時の見た目が綺麗なんですよ。字が刷られている所と空白スペースの対比が。
このお話、血やその他液体の飛散が鮮やかなんですよね。だから、本を開いた時の見た目も大切なんじゃないかと、行替え変更に頷けました。
ストーリー運びに大きな変更はありませんが、言い回し等を変えて今回の方がシャープな印象になっていると思います。
榎田さん、やっぱ好きだわ。
2015年刊行の単行本を文庫化した一冊です。
榎田先生の作品に触れるのはこの作品が初めての私。ぶっちゃけヤクザ・暴力団ものは苦手部類です。痛いのとか…ドンパチとか…シノギだカタギだの専門用語とかあるじゃないですか。ヤクザの独特の世界観が異世界過ぎて苦手意識あったんですが、榎田先生の作品には前から興味があったので、苦手分野だったけど挑戦してみました(^ ^)
新しい扉が開きました。
なかなか面白かったです。用語云々や組織的なことの難しさがそんなになくて、思ったよりスムーズに読み進められました。
辻堂組組長の辻と顧問弁護士の財津、そして辻を慕う舎弟の菊池。この3人のセックシーンと、組と詐欺グループ絡みの事件のシーン。これがうまーく合わさっています。
お仕事BLのジャンルになるんでしょうかね、一応。辻が、とある事件に関わることになります。こちらは北野映画のように暴力と死がありありです。やっぱね…痛いシーンはうぐっっ!となりました(泣)でも、刺激は強いけど見応え抜群です。そんじょそこらのヤクザ映画にも劣らないんじゃないかな。BLシーン抜きにして映像化したとしても、見映えすると思います。
事件の黒幕的な存在に、まさかあの人が……状態でした。完全ノーマーク。もうね…見せ方が上手いですよ、榎田先生。濃厚な3Pシーンが霞むほど、ハラハラして読み入っちゃいました。
辻を慕う野々宮の死……あんな良い子がーって。めちゃくちゃ落ち込みました。でもこのエグさが、事件の闇深さを引き立たせるのに一役買っているから仕方ないんですよねぇ。
BLターンも、事件と同じく超濃厚です。どんだけ出汁とったんだってくらい濃厚。辻の乱れっぷりと、普段の組長然としている姿のギャップね!高低差あり過ぎて耳キーンなるわ、状態です(笑)菊池をボコるのが日常化してるのに、菊池にフェラするんだ…って。エロが絡むと菊池には弱い辻のエロ可愛い一面が見れました(^ ^)
変態弁護士・財津も、クセが強い。コイツに指揮権があると設定している時点で、3人のセックス関係が普通のものじゃないことは明白です。3Pセックスシーンは変態じみてるけど、何だかんだで張り詰めた胸クソ悪い事件を癒すオアシスパートでした(笑)
緊張感ある事件パートとイチャイチャエロパートの融合が見事です。ちょっとクスッと笑えるシーンもあったりして(辻とのエロシチュ暗号とか)、緩急の付け方が上手いなーと思いました。
挿絵はないんですが、カッコいい表紙の3人から色々と想像を掻き立てられました。
「衝撃的官能BL!」の帯文言に偽りなし!
面白かったです^ ^
いわゆるヤクザもののBL。美貌の頭が主人公で、忠実な舎弟、主人公を息子のように思う会長、主人公を目の敵にする兄貴分などが登場する、ときけば、なんとなく某コミックを想起したりもします。
作中で取り扱っている内容についても、特殊詐欺とその加害者をとりまくアレコレがメインで、とりたてて目新しいとは言えないものです。
それなのに、ページをめくる手が止まりませんでした。
特に特殊詐欺を仕切るリーダーと主人公が対峙した場面などは、緊迫感にこちらも飲まれ、どうなってしまうのかその後の展開が気になって、到着駅のホームで読みふけるほどでした(電車で読書)。
上からに聞こえたら申し訳ないですが、著者の文章力。とにかく読ませます。それはそうですよね、私もそうだろうなと思って読み始めたんですが、完全に想定を上回る面白さでした。
BLだけにHシーンはあり、みんなオトナだし、タイトルどおり3Pで、とても濃厚でした。
特に最後のエピソードは特濃で、目が離せませんでした。
文章がうまいってこういうことかと、優れた筆致に頭を殴られたような感じです。
私はBL小説をこれまでもたくさん読んできて、いまやHシーンもある意味食傷気味というか、可愛いとかエロいとか最近でも心が揺れた作品もないわけではないですが、無くてもいいんじゃないかくらいに思っていたのに、こんなに食い入るようにぐいぐい読んだのは本当に久しぶりでした。
Hシーンは目が滑ったり、敢えて飛ばすこともあったりするのですが、この作品はそれが出来なかったです。
明瞭に描写される体位に、物理的にこんなことが可能なのかと思いながらも、文章の力に圧倒されてそれどころじゃなく、一文字も読み飛ばせない。ガチ読みするしかなくて、とにかくエロかったです。
程度の差こそあれ、主人公がみんなに愛されるという設定を許容できて、BL内ヤクザ世界も許容できて、一対一の恋愛でなくても大丈夫で、めくるめくエロを味わいたい方にはおすすめです。
(そうでなく気軽に読み始めたとしても、著者の文章力に飲み込まれると思います。私がそうでした)
設定その他読む人を選ぶアクが強い作品ではありますが、一度読むとどうにも頭から離れない。非常に印象深い作品です。
旧版を読んだ際にも読む手が止まらず、この内容を角川文庫で?と驚きつつ読んだこちらの新装版でも手が止まらず。
榎田先生の文章力が読むのをやめさせてくれません。
タイトルの通りthreesomeなお話。
とても官能的ではあるのだけれど、それはただ快楽を満たすためではなく、読めば読むほどなくてはならない必要な描写なのだと感じます。
この3人でなければ成り立たない不思議なトライアングルを軸に、暴力や理不尽、人間の欲や死、孤独と愛がハードな世界観の中で複雑に混ざり合っていく。
言葉にならない情や孤独、哀しみや寂しさを描くのが本当に上手く、読中に何度も胸が掴まれてしまいます。
誰のことも愛したくはないのだと語る男に、それぞれ形が異なる目には見えない何かが付き纏う。
果たしてその先にあるものは?
叶うことなら前日譚となる10×3(短編集「erotica」収録)も一緒に読みたかったと思いつつ、こちらだけでも問題なく読めるかと思います。
旧版をお持ちの方はぜひ読み比べも。かなり読みやすくなっているなと感じました。
愛だの情だの、そんなものに振り回されてばかりいる人間という生き物が時に滑稽で、時に愛おしく思える。
繊細な心理描写と深い人間関係に惹き込まれる作品でした。
最初に一読して評価を付けたのですが、その後、時間が経てば経つほどに自分の中で評価が上がっていった作品です。
作中で起こる事件自体に目新しさは無く、犯人も動機も想像の範囲内といえると思います。
ただ、不器用な男(特に受の辻)が、読了後どんどん愛おしくなってくるんです。ツンデレというか……デレてはいないのですが、愛を知らない辻が二人の男(財津と菊池)に愛されて恍惚の淵で涙する姿に、読んでいて心が震えました。
甘すぎない関係なのに、三人でのセックスは何故かとても甘く思えます。エロさもしっかりあるので、是非読んでいただきたい作品です。