イラスト入り
小説
「わたしにください」続編。
色んな感情が溢れ取り留めのない文章ですみません。
なんて悲しい両想いなんだろう、と思いました。
私は前作を読んで、2人のすれ違いはスタートで躓いてしまっただけ、誤解を正せばすれ違いも修正できるとライトに捉えていました。けれど森尾の罪意識はそんなもんじゃなかった。こんなに長く強く自分を責め続ける攻めを初めて見たかもしれません。
痛々しささえ感じるほどの罪意識。
どこまでいっても許されようとしない。
愛すれば愛するほど、許してほしくて、許されたくない。
愛すれば愛するほど、自分の犯した罪の大きさを実感し打ちのめされる。
森尾の罪意識に終わりがないのです。崎田がどれだけ言葉を尽くしても、崎田が許しても、森尾自身が自分を許せない以上永遠にループが続く。皮肉なことに崎田を愛し続ける限り、罪も同じようについて回るのですね。
救いはどこにあるのだろうか?
愛とはなにか?許すとはなにか?
森尾と崎田が答えを求め続けた時間がとても切なくてどうしようもなく泣けました。
森尾の兄は
"(森尾は)存在するだけで傷つける側"
"恵まれるということはそれだけ他人を踏みつけることだ"と言います。
今作では森尾が記憶に留めることすらなかった過去が襲ってくるのですね。
森尾が罪の意識もなく送っていた"日常"は、
だれかにとっての"最悪な日"だった。
兄の指摘通り、森尾は無意識に人を傷つけてきました。
(森尾がクズすぎてゾッとする展開だった;;)
そして被害者の復讐・恨み・嫉みの矛先は……。
崎田に恋する前の森尾ならそんな過去を晒されたところで気にも掛けなかったでしょうね…。
けれど崎田に恋をして、崎田を通じて多大な苦しみを痛感して、今は感情を持っている。
因果応報なのですが、自分のクズさを目の当たりにして自分を追い詰めていくのがシンドイです。
そういう点では崎田のほうが強かった気がします。
前を向く力がある。
変えようとする努力がある。
でもそう強くなるキッカケを与えたのは森尾なんですよね。
森尾の存在に傷つけられた人もいるけど、助けられた人もいる。
けれど森尾は自分の負の面ばかりに苛まれて気付こうとしないほど拗らせてしまって。
崎田が真っ正面から向き合ってぶつかるのを、森尾は……。
愛=罪
愛が深ければ深いほど罪も深くなる。
こんな悲しい両想いありますか?
なんて大それたモノを抱えてるんだよぅ。
崎田は好きだから許せると言う。
森尾は好きだから自分を許せないと言う。
じゃあどうすれば許されるのか?
一体誰が何を許すというのだろうか?
サブタイトルに『ー 十八と二十六の間に ー』とあります。
ずっと前にも後ろにも動けなかった時間が動き出すまで8年。
動くキッカケとなったのが崎田の怒りだったのが個人的に印象に残りました。
思い返せば崎田は森尾に責めるような感情をあまりぶつけてないのですね。
早めの段階から手放しで許されてしまって森尾自身で自分を詰るほか無かった。
本音でぶつかりあってようやく少し許せたのかな。
タイトルの伏線が回収されて号泣しました。
そういう意味だったのか…!ですよ~(;////;)
ずっと後ろ向きだった森尾から前向きな言葉が聞けて良かったです。
※余談ですが
購入を予定してる方は特典小冊子が付くうちに是非。
本編再会後(崎田視点)の部分を森尾視点で書かれているのでより理解が深まります。
また本編では恋人エッチがないけど(解せぬ!)、その辺りは小冊子で読めました。
レイプという事実が二人の恋愛の必要条件だったか否か。
中々ショッキングな仮説だけれども、前巻でうっすらと感じていた疑問。
今巻ではその答えが明らかになります。
とある憤りからゴミ扱いのレイプをした相手、崎田路への罪悪感で彼を観察するうちに恋に落ちた攻の森尾。一度は告白したものの、言葉は届かず、それでも友達として崎田の傍で胸を焦がしては、過去の自分を悔いる日々。
そこへ前巻ラスト近くで登場し、二人をひっかき回していた臼井がまさかの森尾のレイプ被害者その2だったことが判明。被害当時の年齢なんと14歳。
しかもそれを森尾はすっかり忘れており、しれっと同じバスケ部に所属していた…。
ただでさえ、やらかしているのに、攻の過去のあまりのクズっぷりに思わず慄きます。
臼井のあれこれは当て馬感情ではなく、森尾への怨恨・路への同族嫌悪から生まれたものだったようです。
この事実の発覚に、路は多少の混乱はありつつも、片付けの魔法(?)で意外とあっさり苦しみを乗り越えます。
一方最もダメージを負ったのは他でもない元凶の森尾でした。
決定的に自分を許すことができなくなった森尾は、路からの好意を受け取ることなく路の傍を離れました。
好きだから、大切だから、自分みたいな存在が傍にいてはいけないという理由によって。
ここからが、好きだけど絶対に付き合わない攻VS生涯この攻しか愛せない受の8年間の長期戦。
8年間…長いです。
森尾の親友黒田だけでなく、読者としてもそろそろ森尾を許してあげたいタイミング。
とは言え何年経ってもこの攻はどこか愚かなのです。
会う気はないのに完全に連絡を絶つわけでもなく。
再開すれば、ためらいながらもデートを用意する。
告白されれば、後追いのように好きだと告げるけど、自分を許せないから付き合えないと言う。
なかなかの自己中っぷりに最後は路くんがキレました。
そして現実を突きつける。
「レイプがなかったら森尾は自分を好きにならなかった。見向きもしなかった。」
泣きながらそれを認める森尾。
やはり答えはこれでしたか。
だから、二人が結ばれるにはその事実丸ごと、愛も罪も表裏一体にして森尾は永遠に受け止め背負わなければいけない。
それが路の言う、「自分といると森尾を幸せにできない」という言葉。
「自分を許せない攻」と「相手を苦しめても傍にいたいと望む受」。
お互いの勝手な「ごめんなさい」が溢れていて、最後のシーンでは胸がパンクするかと思いました。
が、同時に既にこれが8年かけてたどり着いた、彼らの幸せの形なのでは?とも思いました。
罪だったり、許しだったり、葛藤だったり、躊躇だったり、見方を変えれば愛だったり、偶然だったり。
そういう過去と未来を全部ひっくるめて、森尾と路の幸せと定義しても良いのではないかと。
2人が2人でいることによってしか生まれない複雑な彩りは一言で言えば幸せと呼べるのではないかと。
なので、路はああ言っていたけれども、この物語は十分お互いがお互いを「幸せ」にしているハッピーエンドだと思います。
レイプから回りだした歯車。
自身の卑劣さの自覚、正当化の感情を源に生まれた恋愛感情。
アンビバレンスな行動と態度。
一生モノの悔恨。
どこを取ったってよくあるBLではないです。
でもそこに、少しだけ痛いけれど、ちゃんと心に残るモノがある。
心に響かせるパワーがある。
甘々ハピエンとかそういう既存の面白さとは別の何か。
そういうモノと出会える機会はそうは多くないと思うのです。
そういう希少さをひっくるめて「読み応えのある作品」だと思いました。
勝手にですが、前巻で一番痛い部分は乗り越えたと思っていました。
何なら、後は巻き返しだけ~♪くらいの浮かれた気分でいたんですよね。
そしたら、想定外に今作もしんどくて「何でなのおおおおっ!」と悶絶する羽目になりましたよ。
もうこれ、あまりに切ないし何より哀しすぎる・・・!
ある意味、前作よりしんどい内容ですよ。
ただ、人を許す事。許される事。そして、愛する事。
もがき苦しみながら二人がたどりついた場所に、すごく心を動かされたし感動もしました。
これ、何で「-十八と二十六の間に-」になんかなぁと思ってましたが、この八年間と言うのは、森尾にとって必要な時間だったんでしょうね。きっと。
この二人を見ていると、愛とはとてつもなく身勝手で、なのにこの上なく純粋で、また救いでもあるんじゃないかと思えてくる。
森尾が神様に願い続けた「欲しかったもの」には、涙が止まりませんでした。
でも、かなりしんどいので、痛いのが苦手な方は最初から避けて下さい。
で、すでに素敵なレビューをあげてくださってるので、個人的に印象深い部分のみ語らせてもらおうと思います。
えーと、今作ですが、前作に引き続き・・・と言うより、更に二人のスレ違いが深刻だったりします。
前作で路をレイプした森尾。
路への想いを素直に認めた事で、逆にひどい罪悪感に苛まれるんですよね。
これが、もう本当に切なくて。
私は攻めザマァが好きなんですよ。
森尾みたいな攻めと言うのは、徹底的に痛めつけてくれていいと思ってるんですよ。
それが、こう、森尾のあまりの自分に対する厳しさに、何かもう「自分を許してあげてよ!」と言いたくなってくる・・・。
森尾にとって路は純粋でキレイな存在で、自分は汚して傷付けてしまうだけと言う、強迫観念にも似た強い思い込みがあるんですよね。
で、路は路で、森尾が自分と居てくれるのは、同情や罪滅ぼしでしか無いと勘違いしている。
スタートがスタートだった為、互いに相手を気遣いすぎて、一歩を踏み出させない状態と言いますか。
また、路のレイプによるトラウマがですね、かなり深刻なんですよね。
似たような状況に陥ると、戻したりマトモに動けなくなってしまう。
いやこれ、そんな路を見る度に、自分を強く責めてそばに居る資格は無いと絶望する森尾。
もうとっくに許しているのに、どうしても自分ではコントロール出来なくて、森尾を心配させる事で自身も傷付く路。
このトラウマって、厄介なんですよ。
普段は忘れてるつもりでも、本当に一瞬でフラッシュバックなんかが起こるんですよね。
身体が覚えてる。
私は足に包丁を落とした事があるんですけど(ネタじゃないです。ガチです)、それ以来、血が一切ダメですもん。
血を見た瞬間、足元からザッと震えが登ってきて失神しちゃうんですよね。
簡単には、忘れられるもんじゃない。
要は何を言いたいかなんですけど、自分の意思でコントロール出来るものじゃないと思うのです。
ましてや、まだ高校生の路がそんな簡単に乗り越えられるものでは無い。
しかし、その路の反応が、森尾を追い詰めてしまう。
こう、あまりに哀しい。
哀しすぎる。
いや、攻めが簡単に許されて受けと幸せになろうものなら「甘いよ!」と腹が立つのに、ここまで自分で自分を責めてると「もういい加減、罪悪感を捨てろよ!」と、今度は許さない事にもどかしくなってくる。
だって、本当に切なすぎるんだって!
で、深く感動したのが、二人がたどり着いた答え。
この二人、深刻なスレ違いを経て、離ればなれになります。
八年もの間。
26才になって、再会した二人の選んだ道ー。
路ですが、森尾と出会った事により、自身の中の愛と深く向き合うんですよね。
路の出した答えは身勝手かもしれないけど、それもまた愛だと思う。
許す事も愛なら、苦しめると分かっていても共に居るのも愛だよ。
いや、正解なんて無くていいし、正しい愛し方なんて分からない。
ただ、信じる事が大切なんだろうなぁと。
どうか、森尾が願った通り、優しく路を愛し続けられますように。
あ~~~~天才だな~~~~と思いながら後半はずっと泣いてました。
攻めの強姦からスタートした奇妙な関係は、まるで普通の高校生みたいにお互いの両片想いへと変化して、束の間の幸せで楽しい時間を過ごすようになって、でも「どこかズレてる」攻めが、その自覚していなかったズレのせいで、日に日に受けを強姦してしまったことへの罪悪感が大きくなっていくのがどうしようもなく苦しかったです。
受けを傷付ける相手に向ける感情が「同族嫌悪」になってしまうのはめちゃくちゃ苦しいですよね。
過去に攻めに傷つけられた子たちが、仲睦まじくしてる二人を見て「どうしてそれは俺じゃなかったんだろう」となるのも、そういう子たちの気持ちが痛いほど分かるのに「選ばれたのが俺でよかった」と思ってしまう受けも、あまりにも人間らしくて、誰かだけが悪いわけじゃないんだよなと痛感しました。
膨らんだ罪悪感に、他の感情をすべて塗りつぶされて、前にも後ろにも進めなくなってる攻めは、本当に「意気地なし」ですが、それでも、自分がいなくなった後の受けに「楽しい予定でたくさん埋まって欲しい」とスケジュール帳を渡して、約束を守れなかったと花火のムービーを送って、それがたとえ罪滅ぼしでもそういう不器用な優しさを見つけようとしてくれる受けと出逢えて本当によかったね……と思います。
樋口先生の書く受けは本当にいつも強くて美しくて、傷つけられて苦しんで理不尽な思いをしても、いつもで自分で世界を変える努力が出来るから大好きです。
今回も、「ゴミくずみたいにされたって、俺は立ち直って生きてきた!」の一言が最高すぎて、ぼろぼろに泣きました。
傷つけたくないと怯える攻めに、「傷つけられたって、俺は立ち直るから信じて!」と言う美しさよ……
誰だって、人生のどこかで取り返しのつかない失敗をしていて、あの時に戻れたらきっと違う未来を手に入れられたと妄想することをやめられないけど、その行動がなければ開かなかったルートも間違いなくあって、スタートを間違えたからこそ始まった二人の関係も、誰かに許されて、誰かを許して生きていくことを思い出せたことも、大切に思える二人の新生活が幸せであふれているように願うばかりです。
レイプ被害者の路と加害者の森尾の恋に決着がつく、『わたしにください』の続編です。
路は森尾のことを許しているので、このまま幸せが続けばと思っていたのですが、そう簡単にいかないのが樋口作品。
まさか、この因果が森尾の過去から続いていたとは……
森尾の過去のクズっぷりが酷い。
14歳の子どもをレイプしておいて、本人はすっかり忘れているとか……クズ過ぎる。
かつての被害者は、今度は加害者に。
まさに、負の連鎖ですね。
臼井が路にしたことは許せないけど、臼井は森尾を許さなくてもいいと思う。
臼井の姿は、もしかしたら路の未来だったかもしれないと思うと、やるせない気持ちになりました。
前を向いて歩き始めた路と、ネガティブ自己嫌悪の森尾。
近付いたと思った2人の道が、すれ違って離れていくのが切なくて切なくて。
道を違えてしまった2人の別離には胸が詰まる思いでした。
償う時間、
未来を掴む勇気、
愛し方、
……「わたしにください」な思いがたくさんありました。
路目線で描かれる後半は、路の一途な想いが浮き彫りに。
強い想いと、森尾を揺さぶる路の叫びに涙が溢れました。
〝愛する資格〟って何でしょうね?
そんなものあるのかな……
きっと、自分自身で自分を許さない限り前には進めないんですよね。
森尾の誠実さが路を苦しめるところが辛いですね。
愛は信じることだと思う。
そして、許し許されること。
傷つけ合ってここまできたけど、きっともう大丈夫だと思えるラストに、胸がいっぱいになりました。
最後まで諦めない路の強さ、成長に感動。
かつてのいじめっ子・大村と路の関係が良かったです。
どうか、臼井にも幸せになっていて欲しいなあ。
森尾が頑なで、最後の最後まで気を抜けない展開にハラハラしてページを捲る手が止まらなかったです。
読ませる力を感じる作品でした。