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表題作わたしにください

森尾祐樹,高校生,クラスの中心的存在
崎田路,高校生,学級委員長

その他の収録作品

  • あの子がほしい
  • あの子にあげたい
  • 世界の隅っこで、ひとり(書き下ろし)

あらすじ

クラスメイトのほとんどから名前も覚えてもらえていない「学級委員長」の路は、自分とは何もかも正反対で、クラスでもカリスマ的人気の森尾が嫌いだった。
もちろん森尾も、路のことなど歯牙にもかけてはいなかった。
ところがある事件をきっかけに、路は森尾に組み敷かれ、その体をめちゃくちゃにされてしまう。
突然の憎しみをぶつけられ、森尾が自分を嫌いなことに、思いがけず傷つく路だったが──。
多感な高校生たちの、切な痛い恋と葛藤を描いた衝撃作!

作品情報

作品名
わたしにください
著者
樋口美沙緒 
イラスト
チッチー・チェーンソー 
媒体
小説
出版社
白泉社
レーベル
花丸文庫
発売日
電子発売日
ISBN
9784592877479
4.1

(107)

(66)

萌々

(19)

(3)

中立

(8)

趣味じゃない

(11)

レビュー数
21
得点
423
評価数
107
平均
4.1 / 5
神率
61.7%

レビュー投稿数21

心と身体、憎しみと愛、絶望と希望

大人しく真面目な「学級委員長」と、人気者のクラスメイト。
「強姦」と言う、とてつもない失敗と痛みを経て、二人の関係がいかに変化して行くかー。

今作ですが、強姦がとても重要なファクターとなります。
主人公は繰り返し輪姦されますし、陰湿で酷いイジメも受けます。
痛々しいなんて言葉じゃ済まされない、とてつもなく苦しいお話なんですよ。
もがき苦しむ主人公の心情描写が凄絶で、読んでいてただただ圧倒されるんですよ。
だからこそ、この作品を通して作者さんの訴えたかった事に、強く心を打たれる。

本編を読んでる間はこらえることが出来たのに、あとがきを読んだら一気に泣いちゃって。
作者さんの訴えたかった事ですが、「もがいてももがいても助けは来ない。それでも必死にあがいてれば、不意に差しのべられる手がある。その事を書きたい」なんですよね。
私が樋口先生の作品に惹かれる理由って、強いメッセージ性だったりします。
それぞれの作品に、私達に訴えかけて心を揺さぶるメッセージがある。
今作も容赦無しで苦しい作品でしたが、このメッセージ故に、読後感は優しくあたたかいです。

ザックリした内容です。
クラスメイトから名前も覚えてもらえない「学級委員長」の崎田路。
人気者で存在感のある生徒・森尾を、自分と正反対だからこそ嫌っているんですね。
そんなある日、不幸な誤解とスレ違いが重なった事により、教室で森尾に強姦されてしまう路。
森尾から向けられる憎しみや侮蔑に深く傷付きますがー・・・と言うものです。

実は最初の1/3くらいですけど、とてつもなく痛いです。
主人公である路ですが、不幸なスレ違いから怒りをぶつける形で、森尾に強姦されます。
その後、担任教師からイタズラされ、それが他の生徒にバレた事で酷いイジメを受けるようになる。
更に、彼に目をつけた他の生徒達からも、輪姦されるようになる。

不祥事を揉み消そうとする大人達も、子供故の残酷さで傷付けて喜ぶクラスメイト達も、性欲発散の為の道具にする生徒達も、もうとにかく酷いです。
これ、しんどいのが、路の心情描写の凄絶さなんですよね。
リアルさなんですよね。
もう、容赦無く書かれてる。

どれもこれも心を抉ってくるんですけど、個人的に一番しんどかったのが、実は輪姦シーンでして。
助けが来る事を祈りながら読みましたが、助けは来ないのです。
路は道具のように扱われ、心も身体もズタズタにされる。
一度ならず。
繰り返しになりますが、この時の路の心情描写がただただ凄絶で。
自分は大きな筒で、崎田路じゃない。だから傷付かない。
そう、自分に繰り返し言い聞かせる。
いやもう、あまりにショックで涙すら出てきやしない。

路と言うのは真面目で大人しく、また強いコンプレックスのかたまりなんですよね。
彼が森尾を嫌う理由ですが、読んでると羨望の裏返しなんじゃないかと思うのです。
自分が努力しても手に入れられないものを、易々と最初から持っている森尾。
また、森尾が路に対して強い苛立ちを向けるのも、自覚しきれないほのかな恋心の裏返しなんだろうと。

この二人、出会ったのがもっと後だったら、ここまで手痛いスレ違いにはならなかったんだろうなぁとも思うんですよ。
森尾のした事は、誉められたもんじゃないのです。
ただ、多感な時期の、「学校」と言う特殊な環境と若さ故に、ブレーキが効かなかった。
そして路もまた、若さ故の未熟さで、ここまでズタズタになってしまった。
もう少し世渡りが上手ければ。
ズルくなれれば。

読んでいて、もどかしく悲しくて仕方ない事ばかりですよ。

と、かなり痛いし苦しいパートを経て、ようやく見える希望の光。
輪姦されている路に森尾が気付き、助けに入りと続きます。

実はここからも、二人の仲は近付いたかと思うと離れと、簡単には上手くいかないです。
ただ、どん底でもがいていた主人公が、少しずつ少しずつ救われと、ここに得も言われぬ喜びを感じます。
深く感動するのが、これほど傷付いていても、主人公が前に進もうとする事なんですよ。
そして、そのキッカケになるのが、森尾の差し伸べた手だと言う事。

先に、あとがきで泣いたと書きましたが、あがき続けていれば、不意に差しのべられる手がある。
傷付くだろけど、それでもいい。頑張ってみよう。
優しい人間になろうと、路が決意するシーンにすごく心を打たれて。
そう、決して一人じゃないんだよと。

ところで、ご存知の方が多いとは思いますが、今作で完結はしません。
来月刊行の続巻で完結です。
二人はやっとスタートラインに立ったばかりで、まだ結ばれてすらなかったりします。
一応、キリがいいラストなので、来月まで悶え苦しまなきゃいけない感じではないですけど。
あと、本当に痛いです。
イジメとか強姦とか地雷の方は、とても読めないと思う。
でも、本当にすごい作品だと思う。
読む事で、人によってはガラッと意識が変わるんじゃないでしょうか。

ところで、何が一番驚くって、これをデビュー前に書いてたって事ですけど。
そう、デビュー十周年と、おめでとうございます!
イベント目白押しで、もうワクワクですよ。
とりあえずは、来月の続巻を楽しみに待ちたいと思います。
今回は路に光が当てられましたが、次巻で森尾のターンですかね?

19

萌え的にも精神的にもシンドイ

これは感情の言語化が難しい…。
振り幅が広くて萌え的にも精神的にもシンドかったです(;ω;)
うん。でもこの痛みが突き刺さる感じは個人的にかなり好き。

苦手な方にご注意して頂きたいのは、
輪姦や虐めの描写がそれなりにあること。
攻めからも酷い仕打ちがあること。
容赦ない描写がシッカリはいっています。

前半は受けが道具のような扱われ方をして目を背けたくなる痛々しいシーンがありました。
けれど後半に入ると高校生の切ない片想いがメインになってきて、これがめちゃくちゃ萌える!!

あらすじに【多感な高校生たちの切な痛い恋と葛藤】とあるように
転んで、傷ついて、泣いて、臆病になって、また立ち上がる高校生の恋にグッときました。
個人的には刺さる設定も多かったのでシンドイけれど読んで良かったです。


受け:崎田は視力が弱く小柄な体躯。
生まれつき身体が弱いのがコンプレックスで周囲を羨み、性格を卑屈にさせています。
悪いことはすべて人のせいにする。自分の弱さすら他人のせい。これには少々辟易しました;
当然(という言い方もアレですが)友人もおらず、自分の存在価値を見出せずにいます。

攻め:森尾は体格も能力も恵まれた側。
カーストでいえば涼しい顔でトップにいるタイプの人間です。

崎田は自身の弱さが原因で森尾にめちゃくちゃ嫌われてしまうのですね。
そして怒りまくった森尾から手酷く強姦されてしまう。
以降、崖を転がるように起こる不幸の数々…。
教諭からの強姦未遂・卑猥な虐め・輪姦。

森尾の友人・黒田だけは虐めから庇ってくれたけれど、
崎田は庇われる惨めさすら苦痛でキツくはねのけてしまいます。
それがますます森尾に嫌われる結果になり…。

ある日、またも輪姦されそうに追い込まれた場面でなぜか森尾が助けてくれました。
その一件をキッカケに森尾と少し縮まる距離。
崎田は今までの卑屈さを反省し、自分を変えようと努力をはじめてーーーと展開します。


うわ~!もう…なんだろうな。
完璧な人間なんていないのですよ。ましてやまだ未成熟な高校生。
これとにかくシンドイ。萌え的にも精神的にもシンドイ。
友人の黒田は兄貴肌のひたすらイイコで読み手としても存在に救われました。

崎田は無自覚だけど、幼い頃からずっと森尾に憧れてたのですね。
けれど次第に可愛さ余って憎さ100倍的な方向にいってしまう。
奇しくも森尾に強姦され、同級生に輪姦され、
そこで初めて森尾への感情に気付くのが切な痛い(;ω;)

森尾も森尾で、崎田が輪姦されそうな場面を見て気付くのです。
それまで強姦したことをなんとも思ってなかったけれど、いかに非道な行為だったのかを。

森尾が崎田に恋をした過程は描かれていなかったのですが
最初は強姦への贖罪もあって崎田を見守っているだけだったのが、
自分が犯した罪を丸ごと許してくれた温かさに包まれたからなのかな?と。

崎田が自分を奮い立たせる姿や、森尾に嫌われ傷つく場面は
切な痛くて何度も涙腺が崩壊しました(;ω;)
でも傷つき萌え属性持ちには刺さりに刺さりまくった…。
攻めが受けを嫌う設定も個人的に萌えを感じるので更に。

本編のあとに
森尾視点の「あの子がほしい」
崎田視点の「あの子にあげたい」
というSSがあるのですが、
お互い好きで好きでどうしようもないくらいなのに
清々しいほどすれ違っててこれまた萌えるのですよ!!!
挿入手前までしててキスして手を繋いでるのに、ですよ!?
なんでそこまでしてて両片想いしてるのよーーーーー!(床ローリング)

そう。この2人は始まりが強姦だったばかりに
すれ違いや誤解を生むのが切ない…苦しい…萌える…。

崎田が輪姦のトラウマに苦しむと、森尾は罪悪感でいっぱいになる。
そんな森尾に気付いてても、崎田は森尾の側にいたくて解放してあげられない。
好きで仕方ない恋心は純粋なのに仄暗い影もついてまわるのが萌え的にシンドい。

すれ違いは圧倒的に言葉が足りないんですが、
臆病になって中々素直になれない高校生の姿も堪らなく萌えます。
個人的に後半は高校生BLの尊さすら感じながら読んでました+゚。*(人;///;)*。゚+

続編はただただ幸せなのがみたいけど…多分色々あるのでしょうね。
また傷ついたりしないか少し読むのが怖いですがその先にハッピーがあると信じて!
両片思いの気持ちが繋がる瞬間が楽しみです。

13

性格と”トラウマ”が受け入れられるかが重要。


まず初めに、”強姦”というワードに嫌悪感、地雷がある人にはオススメしません。
これがかなりの鍵となるので注意です。

私は電子で読んでなかったので初読みです。尚且つ1日で読み終えてしまいました。
それを踏まえてどうぞ!!


この巻だけじゃ終わらなかったーー!!
来月(12月)に続編(?)が出ることは知っていたのですが、勝手に番外編とか短編集かなーと思っていたのですが終わり方的に続きますよね。。

今回のお話は受攻共に性格に難ありです。
私はふたりの性格についてお話しますね。
序盤の受けさんの性格には正直驚かされました。卑屈です。とっても。努力しているのを皆知らないくせに。こいつら俺(僕)を良いように使いやがって。みたいな。。
自分に対してにこやかに話してくれる人(この人はとてもいい子)に対して卑屈さが勝り、手を跳ね除ける人です。
ここも評価の分かれ目ですね。私はストーリーが纏まっていれば性格とか気にしないので平気でした。
この性格からの因果応報といいますか、受けが侵したものに対して罰が重すぎますが、だからこそ残る”トラウマ”今回は”強姦”が重要ですね。
この”トラウマ”が小さすぎると話の内容に違和感が出てしまうので仕方ないことだと思います。

後半受けさんの性格が90度程変わるので「え、あ、ここまで変われたのね。」となりますが、卑屈さは健在です。もう、これは”トラウマ”も相まってるので多少の違和感で留まりました。

さて、攻めさんですが、ちょーっとどこで好きになったのかわかりにくかったかな?これは次の巻でわかるのかな?期待してます。
こちらも性格に難といいますか、執着ですね。一度好きになったらなりふり構わずという感じです。
優しいのですが、嫉妬や受けへの罪悪感がない混ぜになって暴走し結果自分も受けさんも傷つけてしまうという感じです。


私は樋口先生の文章が大好きなので(受けどん底からの〜というのも好きです。)多少贔屓目ではありますが買って良かったなと思います。
普通に心が痛いなという描写もあるのでそこを含めて吟味してください!
私は勿論次巻も購入します。特典もゲットするつもりです。
次の巻では彼らの成長が見られるのではないかとワクワクしています!

12

樋口先生らしい

致命的なネタバレはなしです。
あらすじやキャラクターについては他の方が詳しく書いてらっしゃるので、サラッといきます。

第一印象は、樋口美沙緒先生の萌ポイント剥き出しできましたね…ってかんじ。
個人的には大好きです。
樋口先生の好きなパターンなのか、こう…序盤からの受けの境遇がめちゃめちゃ辛い。そこから徐々に報われていく感じ。
今回は日本の学校が舞台ですが、主人公のアウェイな感じは樋口美沙緒先生の有名作パブリック・スクールと似てるかも。
ただこの序盤の切ない・辛いモード…今回はモブによる無理矢理シーンもあったりするので、辛さマシマシです。
わりと露骨ないじめもあるので、苦手な人は苦手かも。

こんな言い方するとアレですが、かわいそうな受けや切ないのが(報われていくの含め)好きな人は好みだと思います。
ただしんどさレベルはまぁまぁ高めなので、人にはちょっとおすすめしづらいかもしれませんが笑
下巻…続編?が楽しみです!

7

足りない子どもたち

暴力やレイプを肯定するわけではなく、ただ、可哀想で不幸で優しい受けがたまらなく好きな人間には刺さりすぎる話でした。

一番最初に怒りにまかせて受けをレイプした攻めが、途中から受けを好きになってまるでヒーローのようになるのですが、本当は昔から好きだったとか、最初にレイプした時から好きだったとかじゃなく、レイプは本当にただのレイプでしかなく(愛情があったとしてもレイプはレイプですが)、あとあと好きになって、「ああなんで俺はあんな最低なことをしてしまったんだろう」とどうしようもない後悔を抱くのが残酷ですよね。
せめて、別の感情が勝っていたとしても少しくらい好意があれば救われたかもしれないのに、受けをいじめる人間に腹を立てながら、でも自分もなにも変わらないなと思うのが卑下でもなんでもなく事実としてある。
そう反省するなら手を出すなよと思うのに、どうしたって、感情がショートすると衝動を制御できなくて言葉を尽くすより先に手が出てしまう攻めを馬鹿だなあと一蹴出来ないのが、樋口先生の書かれる人間の魅力なのかなと思います。

樋口先生のインタビュー記事で、この話の登場人物は何かしらが足りない、とおっしゃっているのを見て、登場人物たちの歪な感情がしっくりきました。
誰かから見て、完璧で、なんでも持っているように見える人間も、どこかなにかが欠けていて、そのせいで少し生きづらかったり、どうしようもない失敗をしてしまったりする。
そんな彼らが、欠けている部分をなにかで埋めるのか、埋まらなくても生きていく術を身につけるのか、噛み合わない攻めと受けの会話も含め、続刊でどうなるのか楽しみです。

暴力もレイプも同意のない性行為もすべてダメだからね!!!!と思いながら、それらをトリガーにして進む話は同時に絶対に穢されない美しいものを見せてくれるので、べしゃべしゃに泣きながら読みました。

7

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