SS付き電子限定版
未来からきたアンドロイドと挫折した小説家の、 時を超えて紡ぐ切ない純愛!!
最近涙もろい私……
今回こそ泣かないぞ!と思いながら読んだのですが、エピローグで涙腺崩壊。これは泣くわ。(いい意味で)ズルイよ!
時を超えて紡がれる素敵な純愛に浸り、素直に感動しました。
人間とアンドロイドが惹かれあっていく姿がごく自然に描かれており、その心の交流が本当に素晴らしかった。
中原流ドラ○もんである本作。
アンドロイドのキースにクスっとさせられる場面もありつつ、一生に一度の恋・身も心も全て相手に捧げる深い愛に心が震えました。
大きくネタバレすると面白くないと思うので、核心に触れないように気を付けて書きます。
「初めましてご主人様」
小説家を諦めたなつめに再び筆を取らせようと、未来の子孫から送られてきたアンドロイドのキース。
突然現れたキースに驚きつつも、次第に受け入れていくなつめ。
なつめは、人との関わりが苦手なネガティブ男子。
だけど、ここぞという時の強さがあり、実は〝隠れ男前〟なんです。
なつめの人として、作家としての成長にも注目です!
そして、物語のキーパーソンであるキース。
金髪碧眼の超絶イケメンで、しかも献身的。
アンドロイド故の空気の読めなさはあるものの、そこは最新AIの学習能力で上書きされ、著しく成長していきます。
色んな感情を知り、どんどん人間味溢れるキャラになっていくキースは、読み進めるごとに魅力が増していくように感じました。
しかしある意味では、アンドロイドらしさは薄まっていきます。
キースが来たことで変わったなつめの人生と、キースと出会ったことで変わってしまうかも知れない未来……
未来を変えてしまうかもしれない焦燥、アンドロイドのキースの気持ちを信じられない不安。
自分の気持ちを押さえつけて、なかなか踏み込めないなつめの気持ちにも共感できました。
「僕が人間だったら好きになってくれたかい?」
アンドロイドである彼の魂の叫び、苦悩、羨望、熱望……そして、例えようのない絶望感。
なつめだけじゃなく、キースもまた悩み苦しんでいたことが分かるからこそ、切なくて切なくて堪らなくなります。
そして、キースは突如として姿を消してしまい……
キースは?
二人の恋の行方は?
未来は?
人間もアンドロイドも、愛する気持ちは同じ。
そこに線引きはないと感じさせてくれるラスト。
ここまでひとりを想うことが出来るのか……と、思わせる深い愛に胸がいっぱいになります。
きっちり伏線を回収する手腕もさすが!
読み終わってタイトルの意味を知ると、いくらでも涙が溢れ出てきます。
ハッピーエンド?うん、きっとそう。
私はそう思う。
優しい編集さん、新たな友人、頼りになる姉、猫たち……と、脇キャラも素敵。(最低野郎もいますが)
真島のスピンオフ読みたいなあ。
笠井先生とのタッグも文句の付けようがなく、カラーイラストを見ただけでウルっときます。
表紙も素敵ですよね♡
とにかく、素晴らしい作品なので中原ファンはもとより、初めての方にもオススメします!
前2作とは違ったテイストですが、本当にいい作品だと思う‼︎
先生初の一人称小説
でもこれは繊細で臆病で頑固な作家、なつめの、二度と戻らない人生最良の日々の眩しさを綴った手記なのです
彼の言葉、語彙で書かれているからこそ、未来からやって来たアンドロイドとの恋に戸惑い、怯え、喜びに花開いてゆく感情の揺れが、切実に伝わってくる
その小さな奇跡が遥か過去のものだと、タイトルから読者はすでに知っていて、物語の終わりを見届けるためにページをめくってゆく
そして、すべての始まりとなった未来の子孫である彼も、タイトルと同じ「拝啓」で始まる手紙を読んで、初めてなつめの言葉を「聞いた」のです
このラストしかありえない、と涙が零れました
来年デビュー20周年を迎えるベテラン先生の新作が、この瑞々しい光に満ちた作品であることが嬉しくて仕方ない
とても大切な作品になりました
作家買い。
作家買いですが、笠井さんが挿絵を担当されているということでテンションMAX。発売を心待ちにしていました。
主人公は小説が好きで、作家を目指していたなつめ。
が、とあることをきっかけに、作家の道を断念しバイトで食いつなぐ日々。
そんなある日、彼のもとに見目麗しい金髪碧眼の青年が訪れる。彼の名はキース。アンドロイドだという。彼はなつめのサポートをするために未来からやってきた、と破天荒なセリフを言い―?
というお話。
キースが未来からやってきたのは、なつめの子孫が送り届けたからだという。なつめの作家としてのサポートをするために。はじめはもちろん信じられなかったなつめだけれど、美しく、そして完璧に自分をサポートしてくれるキースに少しずつ心惹かれていくー。
んー。
中原先生と言えば=おやじ。
そんなイメージが個人的に強いのですが、今作品はその「おやじ」は封印され、つまりおやじギャグも、オッサンが言うねちっこいエロセリフも封印されています。通常の中原節を期待して手に取られる方には若干肩透かしを食らう作品かな。
けれど、自然、動物、そしてもちろん人。
表紙の美しい男性がキースですが、彼が抱いているのは今作品に登場する猫ちゃん。猫ちゃんの存在を通して、世界に生きるすべてのものに向ける愛情にあふれ、非常に優しい作品でした。中原先生のお人柄が出た。そんな感じ。
アンドロイド。
未来からやってきた。
ということで非常にファンタジー色が強い作品ではあるのですが、この作品が描いているのは深い愛情と生きる権利。そして自分らしく生きていくことの難しさと、支えてくれる人がいることの強さ。ファンタジー色の強いバックボーンに相反するように、リアリティに溢れた内容なのです。
キースが未来からやってきた理由。
なつめは作家として再起できるのか。
そしてアンドロイドであるキースと、なつめの恋の行方は。
優しく、ゆったりと、そして途中ハラハラさせる展開と、読者をグイグイと引き付ける展開は中原先生ならではか。なつめの将来への葛藤とか、不安とか、そういったBL的な展開も素晴らしい。
が。
うん。
もうね、最後が素晴らしい。
正直、素敵な作品ではあるがもう一声ほしいなあ、と思いつつ読み進めていたのです。なのに。
最後のオチに、一気に持っていかれました。
完敗です。
『拝啓、百年先の世界のあなたへ』。
このタイトルの意味が、最後の最後で描かれています。
キース×なつめの恋は、メリバと感じる方もいらっしゃるかも。けれど二人が、相手を想う深い愛情に思わず落涙しました。そしてこの二人をサポートしてきた人物たちにも。
もうめっちゃ良かった。
展開としてはシリアスベース。
キースが紳士ゆえに(中原先生らしい「おやじ」も良いが、こんな紳士攻めも良い…!)非常に穏やかに進んでいくストーリー。
キースはアンドロイドゆえに「あっち」の機能がないんです。なので性的な接触はたびたびあるものの最後まではなし。
なのにさー。
あんな機能がついてくるとかさー。
(どんな機能か、ぜひともご自身の目で確かめてほしいです)
くすっと笑える描写もあるので、そのバランスも秀逸でした。
笠井さんの挿絵も相変わらず素晴らしかった。
もうキースの美しさに圧倒されます。カラーの口絵も良いのですよ…。
キースはなつめと出会ったことで人として生き始めた。
なつめもまた、キースと出会い時間が動き始めた。
まさに割れ鍋に綴じ蓋。
愛情を描き切った、素晴らしい神作品でした。
ちょっと、言葉が出ません。
あまりに素晴らしくて。
あたたかくて、優しくて、胸がいっぱいになる作品でした。
多くの方に読んでいただきたい。
本当に読んで良かったと思った作品のひとつになりました。
小説家として駆け出したものの、心半ばで自信をなくし、筆を折っていたなつめ。
時が止まったようだったなつめの人生を動かした、なつめの子孫の手によって未来から転送されて来た、アンドロイドのキースという強烈な存在。
そんな彼と過ごす何気ない毎日が、生活の中にある物や音、香りや季節を交えて綴られていく。
描かれているのは、本当にごく普通の生活なんです。
日常の中の何気ない「いいな」がたくさん詰まっています。
ただ、なつめが人間で、キースが未来から来たアンドロイドなだけ。
プロローグ。
始まりから切ないものが溢れ、確かに彼がいたこと、どうしようもなく1人で寂しいこと、色褪せない愛おしい気持ちを抱えたままなことが、表現は淡々としていて穏やかなのに、痛いほど胸に伝わってくる文章にこの時点で惹きつけられます。
なんて綺麗な文章なのか。ため息が出てしまう。
降り積もる雪、地面を覆い隠すほど散り乱れる桜のような彼への想い。
中原先生の比喩表現が本当に美しいです。
姿を消してしまったキースへの溢れる想いを、文字にしてひたすらに綴る。
初めにこのプロローグを持って来るのかと、後から読み返してじんわりしてしまう。
こちらの伏線回収も綺麗なんです。
現在から、2年前のキースとの出逢いと日常を回想する形で進む物語です。
突如として現れた美しい金色の髪と碧い瞳を持ったアンドロイド。
アンドロイドと人間という組み合わせといえば、切なくてたまらないものという印象がありますよね。
こちらの作品は切なさ一辺倒ではなく、ほのぼのとした日常だったり、クスっと笑ってしまう表現があったりして非常に読みやすく上手いです。
キースとの生活によって、なつめが良い方向に成長し変化していく様が、ゆっくりと、美しいけれど親しみやすさもある、流れるような文章で描かれていきます。
この、まず現実ではあり得ないファンタジーな設定を自然に読ませてしまうのだからすごい。
気が付けば、キースとなつめが普通に暮らしているんです。
なつめがただいまと言い、キースがお帰りと返し、猫を愛でながら一緒に食事をしている。
とてもあたたかくて幸せな光景ですよね。
この辺りで私は、キースがアンドロイドなことを忘れてしまうことが何度かありました。
作中に「ずっと閉まっていた隣の家の窓が開いたみたいだ」という表現があります。
この表現が私はすごく好きだなと思って。
キースと出逢って、閉じていた窓をふと開けてみたら、加村に、真島に出会うことが出来た。
新しく物語を紡ぐことが出来た。
家族が増えた。季節が変わった。
いつしかキースのことが好きになっていた。
キースがなつめを愛するようになることも、なつめがキースを愛するようになることも、窓を開けてふわりと入って来る風のように、ごく自然なことだったような気がします。
人とアンドロイドならではの不安と葛藤、すれ違いも描きながら、季節の移ろいと共に、彼ら2人の心と愛情が育っていく様子が穏やかで美しいんです。
人に近付いてはいるけれど、決して人ではない存在。
自分が何者なのか問い続けていたキースに人を愛する心をくれたなつめ。
人と、人と同じ心を持ったアンドロイドの違いとは?
そこに身体以外の違いはないのかもしれません。
あとがきで中原先生が、どうしてもこのラストにしたかったと書かれていますが、私はこのエピローグが好きです。
彼らにとって1番のハッピーエンドだと思います。
エピローグを読んで涙が自然と溢れて、タイトルを改めて読んで、またじわりと涙が溢れる。
決して悲しい涙じゃないんです。
言葉選びや日本語の表現も美しくて、今作を読んで好きな言葉がまたひとつ、ひとつと増えました。
大好きな作品になってしまったな。
笠井あゆみ先生のカラー口絵も素晴らしかったです。
ちゃんときなことチビ丸がいるんですよ。
個人的ですが、下半期ベスト5に入る1作かもしれません。
多くの方に読んでほしい、とてもあたたかく優しい、人を想う美しさと一途な愛を描いた物語でした。
最近の中原先生作品はどれも当たりで、鳥人ものもオメガバも神にしていました。
こちらの作品も某先生がSNSで素晴らしいとおっしゃっていたので、とても楽しみにしていました。
で、先にレビューで確認して察してしまって、結末に覚悟を持って望んだんです。チキンなので心に準備が必要なのです。
結果…凄く良かったです。
今年に入ってからかなりの本を読みましたが、私の中で心を揺さぶられる作品となりました。
読者は2つの不安に遭遇すると思います。
1つ目はアンドロイドのキースはなつめのいる時代にいつまでいられるのか?
2つ目はなつめとキースの平穏な生活はいつまで続くのかです。
なつめと一緒に時には不安になって、時には悲しみ、時には安堵し、時には喜びます。一人称で進むので他の感情が入って来ないのも、抑制が効いていてクライマックスへの盛り上がりに繋がるのです。
BL作品だからなつめはキースと恋をします。ではアンドロイドのキースは恋が出来るのか?それがこの作品の肝でもあるわけです。
そしてエピローグまで読み進めると、なつめとキースの恋がどの様なものだったか理解出来るでしょう。
もうね、なつめとキースの恋の結果に号泣しました。絶対に悲恋ではないんですよ…。
こんな愛もあるのかと余韻に浸ってます。
今も文章のひとつひとつを思い出して落涙しながら書いてます。
こんな素敵な恋のお話を読めて幸せでした。
中原先生ありがとうございました。
今年度の珠玉の一冊になりました。