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ai to kizuna to kakumei no hanayome
作家買い。
『砂楼の花嫁』の、シリーズ4作目です。今シリーズはタイトルに数字が振られているので順番が分かって親切だなとか思いつつ。
あとがきで遠野先生も書かれていらっしゃいますが、シリーズ1作目の『砂楼の花嫁』が刊行されたのは2008年。長きにわたり続編が書かれている人気シリーズで、私もすごく好きな作品なのですが。
個人的な好みで申し訳ないのですが、前作でハミードに恋人(って言って良いのかな)ができましたが、その恋人が女性というのがどうにもこうにも残念で、それ故に今作品も読もうかどうしようかちょっと悩んだんですよね。いや、ごめんなさい。
でも、円陣さんの描かれたこの表紙!
いやー、これは買っちゃうでしょ…。美しい!
ということでレビューを。ネタバレ含んでいます。ご注意ください。
イズディハール、そしてハミードのものに、一通の招待状が届く。
その招待状は彼らがアメリカの大学に留学していた時の学友だった人物の婚約披露パーティ。義理もあって、彼らは秋成を伴いそのパーティーに赴くが、そこで秋成は一人の人物に再会してしまう。
それは年下の又従兄弟のワシル。
両親亡きあと母親の祖国・ザヴィアにあるローウェル家に引き取られた秋成だったが、そこで冷遇され続け、挙句の果てに直系の孫ではなく遠縁にあたるワシルに家を継がせた秋成の祖父母。
さらに秋成はテロリストとしてザヴィアから永久追放されている身だったため、ワシルとは接点がなかったが、そのワシルにこともあろうに身体の秘密がばれてしまい―?
という、秋成のピンチから物語はスタートします。
さすが遠野先生というべきストーリーにぐっと引き付ける描写で、一気に物語の世界観に引きずり込まれました。
で、ここから怒涛の展開が始まります。
ワシルとの再会で秋成の過去をいったん魅せ、そこから始まるのはザヴィアで起こったクーデタ―。ワシルは名家・ローウェル家と、祖父母を置き去りにして自分だけ国外に逃げ、秋成に救いを求めてきた。秋成は、国に残ったままの祖父母を心配してザヴィア二行くことを決意するが―。
これね、何が凄いって、1作目からの伏線がきちんと回収されていること。
秋成の軍人としての過去とか、シャティーラに残ることになった経緯とか、そういうものの裏側が描かれているんです。なので、今シリーズがお好きな方にはたまらない造りっていうのかな。いろいろな角度から、今シリーズを堪能できる感じ。
反対に言ってしまうと前作未読の方には今一つ話が分かりづらい側面があるので、未読の方は前作から読まれることをお勧めしたいです。
秋成がザヴィアで出会うクーデターの仕掛け人である軍人さんとか、あれだけ秋成を冷遇し続けた祖父母が実は…、という展開は非常に良かった。彼らは一本筋が通っていて、自身の信念がある。カッコいいです。
が、うーん。
まずワシルね。
彼がクソ過ぎて萎えた。
序盤秋成に対して行う卑劣な行動とか、クーデターが起きて真っ先に逃げるとか。
そのワシルに救助を依頼されたからといって、手を差し伸べるなんて、秋成、アンタできた男だよ…。なかなかできる事じゃない。でも彼は守るものがなくなってしまったわけで、これから暴走しないといいな、とか思いつつ。
そして祖父母の救助に関しても。
秋成が彼らを救済したいと思う、その感情が今一つ理解できなかった。あれだけの過去を抱え、それでいてなお祖父母を慕う感情があるという、秋成の優しさとか素晴らしさを描いているのかもしれませんが、今作品の根っこにあたる部分に共感できなかったのが残念。
さらに秋成を溺愛しているイズディハールの存在があるので、どんなピンチに陥っても安心、というバックボーンがあるためか、秋成のピンチに緊張感が伴わないのも萎えポイントかも。個人的には秋成とクーデターのリーダーの大佐とのいちゃこらがあったらよかったな。
総じて秋成と、そしてイズディハールがひたすらカッコいいという萌えポイントで、ごり押しした感のある作品だったように思いました。秋成の男性を主に打ち出したときのカッコよさは半端ない。イズディハールの妻、という立場ゆえに秋成が「女性」であるシーンもそこそこありますが、やっぱBLなんでね。こういうカッコよさに萌える方は多いんではないでしょうか。
さて。
終盤でとある悲しい出来事が起きます。このエピソードって、遠野先生ははじめからこうしようと思って書いてたのかなあ…。跡継ぎが必要な立場の人、が主人公なのでこういう結末もありなんかなあと思いつつ、ちょっと切ない気持ちにもなりました。
個人的にはハミードを幸せにしてあげて欲しい。
何なら3Pでも良いんだけど、今シリーズ的にはそれはないんだろうな。
あ、あと、円陣さんの挿絵は今回も神過ぎて悶絶しました。