イラストあり・電子限定ショートストーリーつき
作家買い。
鹿嶋さん作品はファンタジーものも多くありますが、今作品は現代日本が舞台。そしてオメガバースものです。
すめらぎ製薬の御曹司の明臣が主人公。
大企業の御曹司でイケメンで体格も良く有能。誰もが彼をアルファだと思うが、だがしかし彼はオメガだった。そして彼には結婚歴があり、子どもが二人いる。二人の子どもを溺愛している明臣だったが、彼はバツイチ。子どもたちの父親とは離婚している。
明臣の元夫はアルファの英汰。
彼もまた優秀なアルファで、高校時代の同級生だった。高校時代、明臣は英汰に仄かな恋心を抱いていたが英汰がアメリカに渡米してしまったことで二人はそれきりになってしまった。
が、数年後、明臣は英汰に再会する。自身のお見合い相手として―。
オメガバースものってシリアスなものとか切ない、痛いお話は多いですが、今作品は非常にコミカルに進むストーリーです。英汰と明臣はケンカップル、っていうのかな。会えば喧嘩ばかり、素直に自分の想いを相手に伝えることができない、そんな二人。そして、その二人の掛け合いが非常に面白いのです。
明臣は素直に英汰に甘えることができない。それは彼のプライドが許さないから。英汰に美味しいものを食べさせたい、だから上手に料理ができるように特訓する。けれど、それを素直に英汰に伝えることができない。素直じゃない。
視点は途中切り替わりますが、その多くは明臣視点。なので明臣がどれほど英汰に惚れ切っているのか、読者には手に取る様に分かるんですね。なのでツンツンツンな態度を英汰に取っていてもそれが愛情の裏返しだということが分かるので、そんな彼が可愛いのなんのって。
一方の英汰も。
もうね、王道の両片想いなんです。二人とも相手が大好き。
けれどそれを上手に伝えることができない。読んでいて笑えるし、可愛いし、でもハラハラもするし。
そしてそんな二人の緩衝材になるのが二人のお子たち。
可愛いの、すんごく。そしてしっかりしてる。子どもたちは自分の親たちがお互いに想っていることを見抜いているので、ナイスサポートをしていきます。
全体としては凄くコミカルなのですが、英汰と明臣のすれ違いとか、勘違いとか、そういう部分もきちんと描かれているので締めるべき部分があるために中弛みしないストーリー展開。なので、最後まで一気に読んでしまう。
鹿嶋作品には豪胆な受けさんて多く登場しますが、今作品の明臣もカッコいい!
ビジュアルが、というか、その中身が。一生懸命で、でもその一生懸命さをこれ見よがしに出すことはなく、そして愛情深い。かと思うと、嫌なこととか嫌な奴には一発喰らわせる強さも持ち合わせている。
お互いにもう少し素直になれば…、と思うところは多々あれど、それもこれも相手を愛しているからこそ負担になりたくない、嫌われたくない、という思いから来ているのでそんなところも健気で可愛い。
オメガバースものならではのシリアスさはほぼありません。
明臣が、自身がオメガだと知った時ですらコミカル。そして、温かい。
切ない系のオメガバースものを読みたいときには不向き。
思わず声を出して笑ってしまうシーンも多々ありますし。
でも、ほんわか温かなオメガバものってなかなか稀有な存在かと思われます。そのコミカルさと、温かさ、そして恋する男たちのすれ違いやモダモダが満喫できる一冊。鹿嶋作品はほぼ読んでいると思いますが、かなり好きな1冊になりました。
あ、あと小禄さんの描かれた挿絵がナイス。
ガタイの良いイケメンさんたちが眼福。そして濡れ場がエロかった…!
あらすじ的にケンカップルか???と思いきや、攻めは受けにベタ惚れで受けはプライドの高いツンデレな両片思いカップルだった。
攻めが「受けは自分を好きじゃない」を前提に行動していたり気を遣いすぎて全部が空回りしたり誤解に繋がっていくのがもはやコントだった。
お互いに初恋で一途に童貞同士だったのに本当に焦れったい道のりでした。
スパダリアルファが初夜まで童貞なの萌えますね。
初デートで童貞には刺激が強いとか言って湯上りの受けが直視できなくなってる攻めが可愛かった。
やっとこさ思いが通じ合った時に二人して顔をくしゃくしゃにして泣きながら抱き合ってるシーンも良かった。思いが通じて泣く攻めが性癖なのでたすかる。
タイトル通り名2人ですが、本当に想いが通じるまでが長い(笑)ハイスペックな2人、対等だからこそ張り合うのは解る。想いを言葉にしないからすれ違うすれ違う。でも、胸の内は複雑で…特にオメガの明臣、境遇から英汰を意識しても素直になれないのは解る。だけど無意識で惹かれてるから英汰の言動に敏感で心揺れる様に胸が痛くなりました。英汰も言葉が足りないけど明臣に相応しくなりたい一心だから憎めなくて。やっとで想いが通じた時の想いが溢れた告白は感動でした。子供達も可愛くてね〜正にキューピッド。すれ違い大好きな方オススメです♡小緑選択のイラストも色っぽくて綺麗だった✧*。
この本をよんでいるうちに、先日経験したわたくしごとを思い出しちゃったんで、まずそれについて書きたいんです。前置き的な部分が長くなっちゃうんですけど。
私、お仕事がらみで、利害の異なるAとBの間を仲裁、と言うか、調整をしなきゃならない事になりました。で、先日Aの人と『それぞれの言い分をどこまで妥協できるのか』というお話をしている際に『勝ち・負け』という言葉が口から出ちゃったんですね。『妥協する点の多い方が負けで、少ない方が勝ち』っていう意味だったんですけれど。そしたらAの人から「Fさん、仕事は勝ち負けじゃあありませんから」と苦笑されちゃったんです。
「いや、勝ち負けだよ」ってあたしは思うんです。
口には出しませんがね、大人なんで。
「人生のほとんどが勝ち負けで説明できるんだよ」って。
そんな私は、このお話の明臣に激しく共感しちゃうんですよ。
相手に惚れさせたい。
相手が大したやつであればあるほど勝ちたいから。
明臣も英汰も大企業の御曹司。
生まれ育ちが良いだけではなく努力家で、コミュ力も半端ない。
で、自分の力を自覚している。
だからこそ『努力と勝利が合言葉』なんです。
勝たねばならんのです!
ふたりの意地の張り合いがとてつもない可笑しみを生み出すことや、最終的に子どもたちの機転で元鞘に納まるなど、古き良きアメリカンコメディを踏襲しているなぁ、と思います。読んでいてとても楽しいし、笑える。
それだけじゃなくて、私、笑いながら結構考えちゃったりもしたんですよ。
ジェンダーについて、考えたのね。
なんでそんなことを考えたかと言えば、やっぱり男性同士だから。
『受ける』方が『守られる者』という常識が、この物語世界の中でも存在しているんです。
明臣は英汰に守られたい訳じゃない。
でも、アルファがリーダーの特性を持つ者ならば「守りたいのだろうな」と察することができるほど、明臣は聡明なのです。お話の途中で「華奢なオメガの方が良いのかな?」なんて思ったりもして、傷ついたりもします。
でもそんな弱気を自分の矜持で振り払い、突進し続ける明臣……
これはある意味、いじらしいよ。
常識が求めるものとは違った意味で、可愛いよ。
そして最後に気づくのは「この人になら負けてもいい(ただし、時々)」。
これって『愛の発見』ってことだよね。
強気受けがお上手なアクタさんにピッタリのお話だと思いました。
いやー、面白かった。
初読み作家。
すれ違いの積み重ねで、お互い素直になれない。
利口な娘が鎹になって、再婚させようと頑張る。
頭が良いけど、性格がどこか幼くて親になり切れないオメガの明臣。
表に出さないけど、明臣に振られたトラウマ持ちのアルファの英汰。
考えすぎて、妄想に振り回されて、すれ違う二人が凄く面白かった。
あんまり面白かったので、他の作品も読んでみたいと思うほど。