お前を俺のものにできるなら手段は選ばない

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表題作東京―臨界点―

神宮寺結人、20歳、大学生
早乙女恭平、20歳、大学生

あらすじ

「家庭教師代はセックスでいいぜ」
神宮寺結人と早乙女恭平の関係は、そうやって始まった。

虐待家庭で育った神宮寺結人が初めて執着したもの、
欲しいと思ったのが、早乙女恭平だった。
高校入学の春、初めて知った清潔な香りの持ち主だ。
高校時代の恭平に近寄る隙はなかったが、
彼の大学受験失敗を機に、
神宮寺はセックスと引き換えに家庭教師を申し出た。
一方、体面ばかりを重んじるエリート家庭で
気持ちを殺しながら生きてきた恭平にとって、
神宮寺との時間は目を逸らし続けてきた自分を知る時間だった。
だけど、そんな関係も恭平が大学に合格するまでの話、
そこから先は知らない他人に戻る…はずが!?

奇跡の恋、完結!!

作品情報

作品名
東京―臨界点―
著者
ハル 
媒体
漫画(コミック)
出版社
大洋図書
レーベル
H&C Comics ihr HertZシリーズ
発売日
電子発売日
ISBN
9784813033516
4.7

(158)

(135)

萌々

(14)

(7)

中立

(0)

趣味じゃない

(2)

レビュー数
17
得点
752
評価数
158
平均
4.7 / 5
神率
85.4%

レビュー投稿数17

「臨界点」の先にあるもの

「東京ー四季 秋・冬編」の続編がきましたね。
一連の流れのストーリーが秀逸。何だろな…この目が離せなくて惹きつけられる感じ。シリアスなストーリーの中にある、未来や希望みたいなものを感じるからでしょうか。エンディングの多幸感に全部感情持っていかれちゃいましたわ。満足感いっぱいです。

重苦しい場面や痛くて切ない場面があって胸がチクチクしますが、物語全体には必要不可欠な要素です。むしろそれがあるからこの作品が最高の高みへと押し上げられていると言っても良いでしょう。
神宮寺の幼少期のこと、早乙女の両親のこと、大学の先輩の暴挙……程度の違いこそあれ、この作品の中で「悪」な存在であり出来事として描かれています。嫌な感情が湧きますが、その「悪」の存在によってその背景を抱えた神宮寺と早乙女のBL展開が映えるのも事実。闇と光のコントラストのさじ具合もまたこの作品の素晴らしさかなと思います。


神宮寺と早乙女の関係も別にノーマルなお付き合いから始まっていなくて、利害が一致した関係から始まっているに過ぎないのですが、神宮寺の元からの執着心はともかく、早乙女の方が神宮寺に侵食されていく感じがすごく良かった。「臨界点」とあるタイトルの理由がまさにそこで、神宮寺と過ごした濃密な時間や記憶が早乙女にとっての臨界点で、彼にとって救いであり拠り所に繋がっているんですよね。

2人の間にいつしか生まれた絆や愛情がこれからどんな形で未来を描いていくのか分からないけど、お互いを唯一無二の存在として認め合う彼らの先行きは明るいものだと信じたいです。


今作臨界点を楽しむには、「東京ー四季」秋・冬編はもとより「四月の東京は…」上下巻を読むことをおすすめします。というのは、早乙女の弟の蓮が両親に見捨てられた背景に触れているからです。知らないと、?ってなるかも。
「四月の東京は…」では蓮の親兄弟サイドの話があまりなかったので、情報が補完されたのは嬉しい。臨界点の本筋にも少なからず影響しているので、先に読むとこの世界観に一層浸れると思います^ ^


物語の始まりから終わりまで1つの映画を見てるようでした。四季の秋・冬編だけでは心許無かったストーリーに深みと重みが加わり、グッと濃密さが増しましたね。一冊に収まっているのが不思議なくらいです。

私は電子で購入しましたが、電子限定漫画…これを電子限定に留めておくのは勿体無いと思います。もしや続きがあるかも?と思わせるドキドキな内容でした。
終わりなのに新たな始まりを予感させる余韻を楽しみたい方は、電子購入をおススメします。

13

心を揺すぶられる

まさに、愛と人生の物語。
2023年 ihr HeartZ 5月号(まさかの最終回だったのですが)で見かけて、ふたりの関係性が気になったので『東京-四季-上』から順を追ってこちらへ。結論、ものすごく好みでした。

表情や仕草、モノローグの一つ一つに、引き込まれました。登場人物たちが息づいていて、厚みがある。演出やテンポ感が素敵で、ゾクゾクしました。
ままならなさと感情・それらの爆発の描写が見事で、神宮寺にも恭平にもめちゃくちゃ感情移入しました。性的なふれあいにもしっかり意味があり、行為を通じて関係が変わるところにどきどきしました。

神宮寺にちゃんとした後見人(初対面で恭平=ケーキをくれた人に気づくところ、ほんと大好き)がいて、ヘビーな中にも人の優しさがある。恭平の境遇も辛いものですが、自分の意志で決定して行動し、決別する様をしっかり描いていて、感動しました。
自分を受け入れ、肯定するのが、逞しい。依存ではなく、自立した上でお互いを欲するのが素敵。

神宮寺の記憶力の高さが、天才の裏付けだけでなく、かけられた言葉に繋がり、ドラマに活かされていて切なかった。

相手への愛を強く感じました。
神宮寺の執着や気遣いが最っ高なのはもちろんですが、恭平も強く想っていて。
episode4で、恭平が神宮寺を抱きしめる回想が描かれるところは震えました。一度通り過ぎた時点の、画面に映っていないところで、恭平が神宮寺に愛を示す行動をしていたことが明かされ、胸がいっぱいになりました。じゃあ、episode2後半以降のあれらの場面は、これを受けての行動だったの?と読み返したときの見方が変わりました。この演出は憎い。

神宮寺と恭平が、大好きなふたりになりました。
晴れやかな結末で、幸福感でいっぱいになる読後でした。
濃密で、大満足で、何度でも読み返したいです。

<余談>
私は紙媒体派なのですが(見開きで読みたいため)、電子特典が14ページの描き下ろし漫画であると知って、とても悔しい思いをしています。かなり分厚い一冊だったので、単行本として入りきらなかったのだと思いますが、そのページ数差は強いですね。紙は紙の購入特典もらえて嬉しかったのですが。
読みたい気持ちで二重購入の揺さぶりをかけられております。

10

ネタバレなしで読みたいふたりの限界

シリーズ最新作。
気になっていた「東京―四季―」の神宮寺と早乙女のお話。
今作では頭のいいふたりの「限界」と「記憶」がテーマになっている気がしました。

「東京」シリーズはどれも辛く苦しい子ども・青年の話です。今作では神宮寺も早乙女も虐待を受けています。ネグレクトに性的虐待、教育虐待。肉親から愛されず、愛と性と自分の欲求が分からず、いろんなことを諦めた人生を送っています。
そんなふたりが出会ったことによって起きる化学反応をこの1冊でたっぷりと読めます。

BLの単行本って割と「物足りない!」「もっとじっくり読みたかった!」と思うことが多く、「東京―四季―」でもやっぱり神宮寺と早乙女の話をもっと詳しく読みたかったので、この1冊でふたりの出会いからハピエンまでくわしくふたりのことが読めてよかったです。物足りないと思うことなく満足できる内容になっていました。
特に神宮寺の子どもの頃のお話があることによって、彼の人間性が出来上がった理由がよくわかります。

個人的にネタバレなしで読んでもらいたいので、ここで詳しく書きません。
え?あれってそうだったの?と思えるストーリーになっているので、ぜひそれを楽しんでもらいたいです。

ただ、ふたりが出会っていろいろあっても最後にふたりの笑顔が見られてホントに嬉しく思いました。
個人的にはシリーズで一番好きな作品になりました。

そして、きっとこの作品を読むことでまた最初から東京シリーズを読み返したくなります。
ああ、このシリーズを読み続けてよかったです。

10

東京―臨界点―

続きが読めて幸せです
お話とても良かったです

四月、から読み返しこの臨界点まで読み終えると多幸感に包まれます

ハル先生のお話はとてもリアルで嫌な人間が出てきます
嫌、というか弱いというか
それがとても人間味溢れていて、腹立たしくありだからこそ主役が引立ちます

本当に重厚なストーリーで、繊細な心情描写が光ります

この二人が、しっかり結ばれたことが本当に嬉しい
最後に、兄弟再会できたであろうところで終わっているのがたまらないです

どこかの予約特典で読めるとのこと
間に合うかしら‥
素敵な世界を堪能させていただきました

願わくば、これからはそれぞれのカップルの幸せで平凡な日常をたまに覗かせていただきたい

本当に素敵な作品でした

9

読み応えある1冊!でもシリーズで読んでね♡

『東京―秋・冬―』では恭平と神宮寺のことがよくわかりませんでした。
短かったしね。
情報量が少なかった。
いやー、二人とも印象が変わった!

恭平は出来る弟の蓮のこと、どう思っているのかな?
やっぱり嫉妬とか恨みの感情が強いのかな?と思っていたけど、そんな単純なものじゃなかった。

それは同じ冷酷な境遇に生きる同志のような気持ちだったり。
すぐに目を逸らして逃げる自分への自己嫌悪だったり。
対して、逃げずに行動を起こした蓮への憧憬。
大変な時に何もしてやれなかった(してやらなかった)という、本人が言うところの「後悔と罪悪感」。
でもとにかく、恭平は蓮のことが大好きなんだよね!
このことは恭平にとっても蓮にとっても本当に救いだ。
そして読み手の私の心も救われたよ。

改めて、「サイコ」…サイコパスって何だっけ?と調べてみると、サイコパスとは「反社会性パーソナリティ」で、主な特徴としては利己的・自己中心的、他者に共感出来ない、平然と嘘をつく、良心が欠如、罪悪感が皆無……などがあるそう。
神宮寺は本当の意味ではサイコパスではないですね。
ある一面を表した渾名なんでしょう。
ただの、一目惚れ拗らせてなりふりかまわず手に入れようともがく、一途でかわいい男です。

神宮寺の下の名前は結人。
まぁなんて不似合いなと思っていたけれど、電子書き下ろしを読んで納得。
恭平と蓮を再び結び付け、和真と神宮寺も交えて新たな関係に結び合わす立役者になるのね。

この後、4人は早乙女家に復讐することになるんだろうか?
全員が本当の意味で幸せになって欲しいと切に願います。
そんな姿が見られる続編を、切に切に熱望いたします!

8

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