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新興宗教を信仰する母と暮らす「宗教2世」の東春一(はるひと・攻め)と、幼少時に新興宗教の神、燈主様の「器」とされた賽原永真(とうま・受け)の伝えることと、わからないことをわかろうとすることを考える、大きな意味での救済ラブストーリーでした。
東親子の関係は、繰り返し読めば読むほど、はがゆくなりました。春一に宗教活動をして欲しい母と、宗教の思想を拒絶する春一。宗教関係の話をしていないときは何気ない会話や日常が送れているようなのに、 そこだけがわかりあえない。自分の正しさをわかってもらおうとお互いがもがいて苦しくなっている様子が辛かったですね。
そして春一は心の中にもう一つ「どうせわかってもらえないと諦めようとしているもの」をかかえているわけですが。
何百何千と様々なラブストーリーを読んできましたが、恋愛とは何か?ということを改めて考えましたね。結論はまだ出そうにありません。
わかってもらえないという孤独
わかってもらえた安心感
ちょっと私の中で「わかる」がゲシュタルト崩壊しそうになってますが、
お互いが同じ形や思いじゃないと一緒にいられない、という訳じゃない
違うことをお互いがちゃんとわかってればいいのかもしれないなと思いました。
ちなみに、春一と永真と友人2人で、2回、事を起こすのですが、その時その時で、ちゃんとした大人の力を借りていたのが、何か良かったです。大人を当てにすることができて、大人も信頼に応えられてるって描写はなかなかないんだよなぁと、思いました。
色々考えることができて、とても面白かったです。
戸ヶ谷新先生の作品を購入するのは初めてで、表紙の満面の笑みと蛾のイラストに惹かれました。
onBLUEの作品はわりと尖った今までにないBLを紹介してくれるので、宗教とアロマンティックが物語の核にあるというのもきっかけのひとつです。
攻め春一は宗教2世でアロマンティック、受けの永真は宗教の神様の器、同級生のふたりの物語です。ボーイズがラブするだけじゃない、なんなら片方はラブできないけれど間違いなく愛の物語でした。
物語は母親に無理やり連れてこられた新興宗教の集まりにクラスメイトが神様として拝められていたのを知るというかなり特殊な出来事からはじまります。
その夜に自宅を燃やそうとしているそのクラスメイトを見つけ、止めたことによって今まで交流がなかったふたりがその日をきっかけに仲良くなっていきます。
子どもは親を選べないとよく言います。愛して守ってくれるはずの親にとって都合のいいように子どもを導こうとしている宗教や親の強要は、読んでいて辛くなります。ただ自分がいる、ただ愛してほしい、それだけを認めてほしいのに。
もちろん、宗教によって心が落ち着いたり助けられたりすることもありますが、子どもを利用するのは間違っていますよね。子どもが親の心の平安のために犠牲になるなんて。
ふたりはそれぞれ誰にも言えなかったことや、クラスメイトの中で生き辛い思いなどを語り合い、認め合っていきます。いままでできなかったこと(肉を食べたり、高校生らしく話したり遊んだり、性的欲求を爆発したり恋をしたり)をし、永真は諦めていた人生を取り戻そうとしていきます。また、春一の友だちとも仲良くなっていきます。
そしてひとり、ふたりじゃ考えつかなかったことを友だち4人で、そして信用できる大人を見つけて、親と宗教の呪縛から逃げ出します。子ども以上に親は弱くて、大人だからこそ誰にも相談できず、神様に頼る以外に辛い事から逃げられなかったんだと感じました。
表紙と作品の中に永真の周りに蛾が描かれているシーンがあります。
「蛾」という漢字は、「虫」に「我」と書くので、自己中心的な言動への警告を意味すると考えられています。「飛んで火にいる夏の虫」とは蛾のことで、光である永真に思慮なしの信者である大人たちが表現されているのではないでしょうか。永真が蠟燭となって顔が溶けてなくなっている絵には哀しくなってしまいます。でも最後にはその蛾も……。
春一のアロマンティックについてはわかりやすく説明されています。彼は性衝動もあるし、恋愛感情がなくても心穏やかにいられるパートナーと一緒に暮らせるタイプのようなので、BLとして安心できるハピエンになっています。
この作品はBLというエンターテイメント以外にも深く考えさせられるテーマがいくつもあり、とても読んでいて刺激を受けました。
「知らないと、傷つけたかどうかも知れない」
「違うことは絶望じゃない」
「全部同じになることはできない」
いろんな人がいていろんな考えがあるから、それを恐れずに、でも互いに話し合って少しでも理解し合えたら素敵な世界になるな、なんて考えて読み終わりました。
神様に奉られた高校生と宗教二世の同級生の救済BLだとばかり思って購入したのだけれど、その同級生がアロマンティックであるとかその友達がゲイだとかでなんでまた風呂敷を広げてしまうんだろう、散漫な印象になるだけじゃんと余計な心配をしつつ読み返しました。
地頭が良くないわたしにもキーワードは
偏見とか、信仰の意味とか精神と肉体の自由とか言葉、対話、愛の種類、仲間、ファミリー、性
だとぼんやり分かってくる。
でも上手くまとめられないし、まず第一コミックス1冊分の厚さしかないわけで作者本人も綺麗に過不足なくまとめられたとは思ってないだろう。
せめて数巻要るでしょ。
初出の登場人物がアクションを起こし話が進んでいくのは総集編を見ているような気すらしてくる。
続編があるのだろか。
にもかかわらず作者の熱意ははっきり伝わってはくる。
こちらも興味を持ち学習したいとも思えてくる。
ー恋愛的指向と性的指向は二つの異なる概念です。
アロマンティックの人がみなアセクシャル(誰にも性的に惹かれないという性的指向)ではありませんー と彼らは記事を読んで勉強する。
わたしはまだネットで軽く調べる段階にも至っていない。
が疑問がすぐ浮かぶ。
ハルイチと永真は付き合い始めたのだが、ハルイチはアロマンティックだがアセクシャルではない、とすると性欲発散は決まった相手としかすべきではないという世間の常識は理解出来ないのでは?
2人は脆い関係なのかしら??
疑問には知識を増やすしかないんだろうな。
カルト教団が題材ということに興味を惹かれ作品を手に取りましたが、教団の描写に引っ掛かりを感じることが多く素直に作品に入り込めませんでした。
例えば神聖化されている燈主様(教祖)の永真がなぜ普通に高校に通えているのか、永真が肉食を禁じられているのに燈母様として崇められる彼の母親が信者の前でも普通にステーキを食べていることに教団内でどう整合性をつけているのか、燈主様に畏敬の念を抱いている春一の母が永真をファミレスなんて庶民的な場に誘えるものなのか…等、そういった疑問が教団の得体の知れない不気味さに繋がっているわけでも無くただただ疑問にしか感じられませんでした。
カルト教団が題材ということでサイコホラー的な内容を期待していると拍子抜けするかもしれません。
私のように教団の細かな描写が気にならなければ、人間ドラマとして大いに楽しめると思います。
ただ結末も、この瞬間の当人たちが幸せならそれで良しという意味ではハッピーエンドなのでしょうが、解体後の教団の後始末や信者たちの行く末を考えると一抹の不安が感じられ、単純に祝福して良いのか分からず何とも言えない読後感でした。
宗教2世が、ある日集会に連れていかれ、教祖がクラスメイトだったことに気がつくという、衝撃的な冒頭。
そこから2人の交流は始まり、やがて教祖にさせられ、虐待のような制約された生活を送る永真を助けようと、クラスメイトたちで奮闘するお話でした。
恥ずかしながらこちらの作品で、「アロマンティック」という言葉が存在することを知りました。
ちなみにアロマンティックとは、誰にも恋愛感情を持たない人のことを指すそうです。
宗教2世の春一が、それでした。
そして、春一に救われた永真はそんな春一を好きで、パートナーとして一緒にいたいと思う。
そんな結末でした。
宗教という強烈な題材のインパクトにかき消されがちかもしれませんが、相手のことを「分かりたい」と伝えること。
それから、相手に諦めずに伝えようとすることの大切さを、改めてこちらの作品で認識しました。
大人になるとどうしてもこの作業って、諦めがちだったりしますよね。
(少なくともまりあげははそうだった)
でもそういった忘れていたものをこちらの作品を読んで、ふつふつと思い出しました。
BがLをしているかと問われると、正統派ではないかもしれません。
が、多様性が叫ばれる昨今。
ほかの友達ともちょっと違う好きで、なんか特別。
こういった愛のカタチがあってもいいし、ゲイでもなんでも自由でいいのではないかと思いました。
ただ、相手も自分と同じ考えなのだということはなく。
相手の自由を奪うことはないように。
常に、相手のことを知ろうとしようとする気持ちが大切であることを忘れずに。
最後の「僕は人間だ!」のスピーチに涙。
そしてカバー裏の永真の「好き」欄に、外出と肉って書いてあったのが、エモしでした。
そっか。
あれから永真、肉が好きになったんだね、、、(感慨深げ)
また1作、すごいお話を読んでしまいました!!