電子限定かきおろし付
今まで何作かの身体的に障碍のある人物が主人公のBLを読んできましたが、どれもBLファンタジーの中のキャラだなと感じていました。ところがこの作品ではそう感じることはありませんでした。とは言えわたし自身、リアルで知っているわけではないのですが、この物語を読んで今まで気になっていたところも気にならずに読んでいけました。
物語は、大学生時代からの恋人同士のサラリーマンの晃と若手小説家の晴人のふたりが同棲して約2年の日々が描かれています。
受けの晴人が数年前の事故以来、車椅子生活になっています。攻めの晃は暮らしていく中で少しずつ晴人の気持ちを尊重しながら、互いに助け合って生活していく様子が丁寧に描かれています。
セックスはできないんだと思います。それでもふれあっていたいというふたりを素敵だなと感じます。
そんなふたりの元に大学時代の友人、芝先輩が家にやってきます。真面目で堅物だった芝先輩は、まるで昔の晃のように自由気ままに写真を撮りながら旅をしています。ふたりが出会うキッカケをくれた芝先輩はずっとふたりを身近で見てきた理解者であり、苦言も呈します。一緒に生きていく意味を。
でも、誰よりも晃のことを想うからこそ、晴人には秘密がありました。それは事故に会うまでに自由に世界中を旅していた晃をサラリーマンとして縛り付けてしまったことについての罪悪感や、不自由な身体で生きていく辛さ、そして自分で死を選ぶという決断について。
そしてとうとう晴人が緊急入院することになりますが、晃は仕事で出張に行かなくては行けなくなります。一番側にいたいときにいられない辛さ、「家族」になれない苦しさ、誰にも言えない哀しさなどでいっぱいいっぱいになり、晴人もそんな晃を見ているのが辛くて別れを切り出してしまいます。
きれいごとではないふたりの気持ちの揺れ動き、そして芝先輩の助言。白野ほなみ先生は取材をしたり経験したりされたのか、よく描かれているなと感じられました。
晴人と晃は少し距離を置き、自分だけの時間を過ごしながら今だけでなく未来の自分、そしてふたりのことを考えていきます。
タイトルのように「もう少しだけ、そばにいて」と。どんな道でも「ふたりで行こう」と。
この物語には大きな事故による身体障碍、尊厳死、自死について描かれています。
BLはファンタジーであって明るいラブストーリーが好み、という人には向かないかもしれません。でも漫画だからこそ気軽に読めて、こう言ったあまり気軽に話せないテーマについて考えるいい機会になるのではないかとも思います。
とても素晴らしい作品に出会えました。
テーマは繊細だと思いますが決して暗いお話しではありません
だけど胸にドッシリと響くお話しでした
「生活」と「生きる・活きる」という事を考えてしまいます
誰しも?大抵の人かな?は「日々すべき事」と「いつかしたい事」があったりして、その狭間で目の前の日常をこなしていって、そして束の間「したい事」を楽しんだりしていく日常
その基準に「出来るか?出来ないか?」は時間と金銭面を除けばあまり考えない
だけど晴人と晃はそうではない
制約が互いにある生活
それでも彼らが使った「お互いの生活を分け合う」という言葉がとても胸に刺さりました
出来る方がする、という感覚は出来る方からすれば極当たり前だし、きっと驕りもない
だけど一方出来ない方からしたらやっぱりしてもらう、させてる、、、という受け身な事に歯痒さや悔しさが滲んでしまうし、そんな自分にも嫌気がさす
そして出来る方もその想いを察して苦しくなる
どうしようもないようなこの負のスパイラルに風穴を開けてくれる「分け合う」という言葉
この言葉がとても救いになりました
それでもきっと負い目や窮屈な想いはゼロにはならない
そんな晴人にとってあの決断は自分を強く確認できた行為だったんだと思います
「逃げ」とは違う、自分にもまだ自分を「生かす」権利がある事を確認出来た事
事故直後に自分の気持ちの整理も付かない中始まるリハビリや、自分の気持ちはさておき感情をぶつける両親、、、
そんな中において「あの決断」だけは晴人が晴人自身の意思で下せた事故後唯一の事だったのだろうと思います
そこにすぐ行き着く事が目的ではなく、そこが手段として自分に遺されているという事実が大事なんだと感じました
そして晴人らしく、人として「生きていく・活きていく」
その人生を側で「晃らしく生きた・活きた」お話し
巻き込まれ、巻き込んで、、、分け合った人生
今、このレビューを書いていても最後の晴人の作中作著書、エッセイ「まどろみながら君と」が描かれた電子限定の描き下ろしのエピローグを想うと涙が止まらない
晴人の決断を尊重し、彼の人生を晃とともに尊び、想いを馳せたいと思います
ある日突然世界が変わる
自分だけでなく、周りの大切な人達も
当たり前に思えてたものを沢山無くして
恋人の愛ですら苦しくて……
もう読んでて苦しいです。
愛が深すぎて苦しいです。
でも読んで良かった
1人でも多くの人に読んでもらいたい
そう強く思う1冊です。
この重くて苦しい物語の中で先輩の存在がすごく重要で、
大切な人の人生が変わってしまった事は、「あの事故のせい」であり、晴人のせいではないってなんて言う先輩はもう最高にステキで。
あきらの世界旅行の夢の事も、
夢は諦めたのでなく、世界が変わると共に夢も変化しただけで
この変化は今までぼんやりした夢が、形ある夢になってて
それはマイナスの変化などでないと気付くきっかけになってたと思いました。
健常者や異性愛者と比べると困難も多い人生だったと思うけど、でもラストに問われた「悲劇だろうか?」の答えは、これだけ愛し合った2人が悲劇な訳なく、最高のラブストーリーだと思います。
「準備はいいか?」
この最期の言葉の意味を誰かと語り合いたいです。
すごい、、すごすぎる作品でした
ランキングに入っていて何となく夜中に読み始め、
ボリュームと内容の濃さにすごくじっくりと時間をかけて読みました
途中切なくて休憩を挟まないと読めなかった
当事者の2人は、どんな思いで暮らしているんだろう
自分にもまだまだ理解は足りてないから軽率に言うのは間違っているかもしれないけど、生きやすいやさしい世の中になって欲しいなと思った
エピローグがまた中々…無くても終われたと思うけどそこで終わりにせず、2人(晴人)の人生を描き切るという先生の責任?とか覚悟みたいなものを感じた
2人にとって悲劇じゃなければ、幸せな日々ならば、それが全て!
元になった描き下ろしのあきらがすごく素敵だったので本編でも見たかったな〜それがあっての2人の旅の日々なんだなあと妄想します!
SNS試し読みで読んで惹かれ、
その場で電子を購入し、
読み終わった瞬間に紙本をポチっていました。
タイトル「もう少しだけ」の意味が本当にグッとくる。
人生まるごと描いてくれる作品が好きで、
今年一番胸に刺さった。
ずっと手元に置いて何度も読み返したくなる作品です。
車椅子生活になった晴人の不自由な生活や
心情が思った以上に克明に描かれていて、
ほっこりしたタッチなのに
彼が追い詰められていく描写が本当に凄まじい。
そのため、
読者に晴人の秘密をうっすら感じさせるのも
秘密が明かされた時に晴人の選択に納得感を抱かせるのも
すごく上手いなと感じました。
個人的に今作のようなタイプのエピローグが大好きで、
彼らの人生の歩みを感じさせながら、
想像する余白を与えてくれているのがとても良いです。
「もう少しだけ」があそこまで積み重なってくれたのだな、
とわかる皺の刻まれ方に感動しました。