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とても良かった。ネタバレなしで読むのが良いと思う。めちゃくちゃ泣きそうになっていたところで、ん?となって、ピタっと涙が引っ込んだ。少々トンデモ展開と言えるかもだけど、ラストは感動の涙があふれた。長く余韻に浸れるお話。
メインは優梧と留加という幼なじみの同級生二人で、物語の始まりは中学時代から。甘やかされて育った留加はわがまま三昧、優梧はいつも留加の世話を焼いているような関係性。揃って同じ高校に合格した二人は、恋人として付き合うことに。
高校時代の描写は、留加視点の一人称で、読むのがしんどい場面も多い。というのも、留加は優梧が女子と話すだけで嫉妬に狂い、束縛が尋常じゃない。毎回メールも全部見せて留加をなだめる優梧は、本当に忍耐強い。
今しか見ていない留加と、将来を見据えて今は我慢のときだと考える優梧は、些細なことですれ違い、ケンカが絶えない。思い合っているのは伝わってくるけど、若さゆえのお互いの理解不足というか話し合い不足というか。
そうして、ついにキレてしまった優梧の一言で、決定的な別れが。
で、次の場面は十六年後。高校教師になった優梧視点の物語が始まり、三崎という生徒とゆっくり仲を深めていく。留加と似ているところ・違うところを探しながら、過去を振り返っては自分と向き合い、三崎と向き合い。
一方で、三崎のセリフには小さな違和感があちこちに散りばめられている。また別方向へのミスリードも同時進行でいくつか置かれていたりして、先の展開への仕掛けが面白い。紙の本なら、ページをめくる手が止まらない!と言いたくなるやつ。
全ての種明かしがされた後は、すっきり爽快、そして感動。約二十年分ではあるけれど、人生をまるっと見せてもらえたような満足度。きっとこれから先は大丈夫だろうと思える安心感。この無敵設定最高だと思う。