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表題作年下の彼氏

鴻島涼平 アルバイト塾講師・大学生 20歳
石田楓 塾講師 27歳

あらすじ

「俺の彼氏になって下さい」──七つも年下の大学生に告白された、塾講師の石田楓(いしだかえで)。賢い大型犬のように優しく頼もしいバイトの鴻島涼平(こうじまりょうへい)に、密かに片想いしていた楓は、喜びより戸惑いに混乱する。始まったものには、いつか必ず終焉がくる…。甘い蜜月の中で、楓はひとり予感に怯えるが!? 諦めていた恋が成就する、嵐のような幸福と不安──恋愛の光と影を繊細に綴る、純愛ラブストーリー。 
出版社より

作品情報

作品名
年下の彼氏
著者
菱沢九月 
イラスト
穂波ゆきね 
媒体
小説
出版社
徳間書店
レーベル
キャラ文庫
発売日
ISBN
9784199004827
3.4

(51)

(11)

萌々

(11)

(19)

中立

(10)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
15
得点
166
評価数
51
平均
3.4 / 5
神率
21.6%

レビュー投稿数15

年下攻めの良さだけではなく、年上受けの良さもぎゅっと詰まってる

健気に頑張るワンコ系もいいんですが、年下攻めの醍醐味ってやっぱり年下だけど同年代の子たちより大人っぽくてかっこよくて、受けの抱える色々な問題まで一緒に抱えようとしてくれるような、包容力のある子だと思ってます。
受けを守れる強い大人になりたくて、一生懸命背伸びする。でも、やっぱり自分の思ったようにはいかなくて、年上の受けに甘えるような形になってしまうこともあって歯痒くてやりきれなくなっちゃう。
そんな攻めに死ぬほど萌えます…特にそういうおいしさを際立たせるエピソードとして、受けに年上の元彼なんかがいると本当にサイコーです。

攻め二人の三角関係の場合、当て馬の攻めは最後に結ばれる攻めと対比されるので、正反対の性質であると物語が引き立ちますよね。
この作品では案の定大人の落ち着いた元彼が現れて年下攻めをとことん悩ませるのですが、そこが本当に年下攻めの苦悩萌えがぎゅっと詰まっててサイコーでした。
また、年下攻めの今彼と年上攻めの元彼が受けを介してバッタリ遭遇した時に元彼の鉄板台詞の「…宗旨替えしたなんて聞いてないぞ」がばっちり聞けるので、ほんと期待裏切らない作品です。
ネガティブで控えめな受けが大丈夫だったら絶対に楽しめる、おすすめの年下攻めBLだと思います。

4

幸せは悲しく寂しい

うーん、何だかいろいろ考えさせられる作品でした。。
これは人を好きになって、考え方が変わっていく、人生が変わっていくあるカップルの様子を丁寧にえがいたお話です。
たまたまこれはBLで相手が男だというだけで、同性でも異性でも人を愛するということはこういう事なんだろうと思います。

前に読んだ同作者さんの「同い年の弟」がとてもよかったため購入。
300ページを超える読みごたえです。でもすごくよかった。
前に読んだ時に感じた「丁寧さ」が健在で、なんてないお話なのに急がずゆっくり読みたくなる作品でした。
実はむか~しこの方の本を読んだときはあんまり合わなくて^^;それから長い間読んでなかった作家さんなのですが、他の作品も探して読みたいなぁと思います。

内容は題名通りズバリ、27歳で塾の講師である楓と同じ塾でバイトをする大学生の鴻島の歳の差カップルのお話。
鴻島は留学で一年間日本を離れていて、2人が再開したところからのお話です。

楓は自分のために大きく世界を動かそうとはしないキャラ。
悪い意味ではなく、昔付き合っていた彼氏にも献身するばかりで、両親は亡くたった一人の妹を嫁に出した今は、実家でたった1人で静かに余生を送ろうと思っています。
生まれてから学校も仕事も同じ町で暮らす楓と対照的に、鴻島は「移動本能」のあるキャラで、日本を自転車で旅し、カナダに恐竜に惚れて留学してしまうという行動力のある人間。

楓は鴻島とメールのやりとりをしているのですが、送られて来るメールから恋心が募るのがすごくよく伝わってきます。
「どうしてこんなに好きになったんだろう」というシーンがしみじみとしていて素敵。
好きになるのが早い!って作品もたくさんあるけど、最初鴻島ってどんなキャラか伝わってこず、留学先から来るメールだけです。

好きだと自覚してから数ヶ月経った時に留学してしまい、ずっと会えないのにどんどん好きになる。でもそれが不自然でないんです。
1人で家で孤独を味わう楓と、カナダの大自然の中で孤独を感じる鴻島。
彼はわくわくしながら、大自然の中で味わう孤独は悪くない孤独だと送ってきます。
こんな孤独な大自然にいても自分のことを考えてくれている、そんなメールがいっぱいあふれるほどに好きになっていったんだなあと思う。

くっつくのは早いのですが、幸せに身を任せきれない楓はどこか幸せを受け入れられず常に不安があり、鴻島もそれに気づいています。
両親をなくして妹と身を寄せて生きてきた楓は、大切な人ができるのは悲しいことだと思っています。幸せに来る終わりを常に考えています。

幸せなのにすごくせつないお話です。特に楓の子どもの頃と今とこの先の孤独まですごく丁寧に描かれています。
「孤独」や「寂しい」という負の感情をすごく綺麗に書いているんです。
孤独はつらいけど受け入れないといけない時もあること、そして共存できること。
それは大人になってわかったんでしょうけど、苦しくもあり悲しいけどある意味で真理だと思います。

止まって生きている楓と明日がわからないから楽しいと言う鴻島ですが、次第に楓は「飛び出したい願望」のある鴻島は自分がいると足かせになるのではと思い始めます。

一緒にいるとためにならないのでは、という話はたくさんありますが、でも鴻島は軽く受け流さないで、そんなの大丈夫なんて簡単に言わないで、
「あなたが好きだから、本当に好きだから、今の自分に価値や力がないとわかっている」と素直に認められるところが本当に真摯ですごいと思う。

難点をあげると、鴻島が結構な魅力的キャラなのでなかなか直視するには眩しいこと^^;やりたいことが出来たら我慢出来ないという彼は、旅行が好きで写真が好きで、人と触れ合ったりまだ知らないことを知るのが大好きで、どんなことにもわくわくしていて真っすぐ走りぱなし・・・
なかなか人間、こんな風にはなれないよ~と思います。

お話自体はなんてないです。なんで300Pも?って最初は思うのですが、ただ2人の人生観の変化をものすごく綺麗に描き切っています。
最初と最後では明らかに楓という人間の人生感が変わっています。

何もかも終わる前提に幸せを味わう楓は妹に「自分の人生に参加していない」と言われます。
そんな風に凪のように生きてきた自分が今鴻島のために揺れていること、でもこの揺れをなくしたくないと楓は変わっていきます。

そして鴻島も変わっていくんですよね。悩みなんてあるの?というタイプ(失礼ですが)だったのですが、彼は楓とは正反対の孤独を持っている。
ふらふら出て行っていつか帰ってこなくなるかもという空想癖と移動本能のある鴻島にとって、同じ場所で居続ける楓は「必要な場所」となります。

またすぐに海外に行こうとしていた鴻島もまた、楓を好きになって考え方ややりたいことが少しずつ変わっていくのが読んでいてわかります。

「アイニードユー」って言葉が本当にぴったりくる2人でした。
こんなにずっしり全編通して、キャラの行動よりも気持ちを味わえるお話って珍しいのではないかと思います。誰かにおすすめしたくなる作品でした!

2

鴻島亮平……素晴らしい年下攻めです!!!!!

数年前に購入して、何度か読んだのですが
この度また読み返してみたくなりまして。
塾英語教師・石田楓(受け)が、優しいけれどネガティブで
自分の幸せは二の次三の次と思うようなタイプだったし
「違う、やめて。嫌なのそれ、もう駄目なの」という言い方が好ましくなかったのですが
そこまで幸せに臆病で、自分のせいで鴻島の将来を壊してはいけないと
恋はいつか終わるものだと幸せの最中に思ってしまう気持ちが
今ならわかる気がしました。
両親と祖母を亡くしてしまい、可愛い妹もフランス人と結婚して
滅多に会えない日々の中で
幸せに貪欲になれと言う方がもしかしたら間違っているのかもしれないです。

塾でバイトをしていた、明るくて誰とでも仲良くなれて健全で
優しさの感情を全て詰め込んだような鴻島亮平。
自分に無いものを持った彼に惹かれていた楓は、
高校時代に先輩の辻と付き合っていて
体の関係も勿論あったのですが
自分から好きになって、性的欲求も込みでどうこうして欲しいと思うのは
人生の中で鴻島たった一人なのです。
バンクーバーに一年間語学留学しに行っていた鴻島からは
毎週のようにメールが届きそれだけでも幸せだと思っていたら
予定日よりも数日早く、しかも楓の自宅に突然現れて
直接「ただいま!」と言うのです……可愛い……。

わりと早い段階から二人は互いの想いを告白して
めでたくお付き合いすることになるんですが
楓の後ろ向きな気持ち、辻との再会と寄りを戻そうと多少強引に迫られた事、
鴻島の、愛されている家族に本当の事を言えない罪悪感と
また留学したいと言っていたのに繋ぎとめてしまう怖さ、
じわじわ染みてきます。
“──この幸福はどこから欠けていくのだろう”
大切な人々を失ったことで感じてしまうのでしょうね。

高校時代、辻と付き合ったのは
辻の家が金持ちで成績優秀でなんにでも恵まれているはずなのに
周囲の期待に応える事に疲れていて
全て受け止めてくれるような楓に執着したのです。
当時は辻が高校卒業後壊れた関係でしたが
辻は結局それ以来本当に好きになれる相手が出来なかったと。
当て馬は強引なくらいが丁度良いと思うので
楓が断っても「十年後にまた口説かせてもらうさ」と
アメリカ本社に異動になった辻……良い男じゃないですか…!!

楓が(私もww)ベタ惚れの鴻島は、
楓と初めてするキスは触れるだけの優しいもの。
肌を重ねる時も、キスと触りっこだけの熱の交換だけ。
何日もゆっくりかけて挿入に至る描写は
「どんだけ優しくて甘いんだお前は────!!!!」って叫びたくなるくらいですw
楓は辻以来、12年振りの行為ですし…って、
鴻島はそれを聞かされていなくて
後々楓の妹・菜桜(なお)にポロッと言われて
その晩、いつもより意地悪く楓を抱くんですが!!
そういうのも全部愛おしくなっちゃうんですよ!!!

辻と鴻島が直接対決で言い争いになった時
辻ならば楓を全部包み込めるくらいの財力も将来もあるのに
鴻島はまだ何者でもない、
楓を絶対的に幸せに出来ると実証できるものが何もない、
ただ好きだと言う気持ちだけだと突きつけられたのが切なかった…。

作中の、楓のところの塾長というか室長が良い感じにくだけていて
「女の子と書いて好きと読むんだぞ」とか
「良い女と書いて娘だぞ」とかおっさん全開な事を普段言うくせに
「子供なんてもんは、誰か一人でも大人がちゃんと自分を見てるってわかってたら
歪まないもんだろ。教育は愛だってそういうことだよ」と
いつも生徒達に声を掛けたりする姿がじーんとしました。

鴻島を好きになってしまった、
周囲に溶け込まない派手な服装と化粧までする14歳のミチルが
家庭内の悩みを抱えて誰かに必要とされたかったが為に
大人みんなに心配をかけてしまったけれど
結果的に鴻島と楓をしっかり繋げるきっかけだったわけなので
ナイスな脇でした。

菜桜も、寂しい想いを幼い頃分け合ってきたからこそ
兄にはちゃんと幸せになって欲しくて
電話で発破をかけてくれた男前さがありましたし
全体的に、周囲が鴻島と楓を人として愛してくれていて微笑ましかったのです。

楓も健気と言えば健気でしたが
なんといっても鴻島亮平が好みの年下攻め過ぎてどうしよう!!!!!
たぶん(というか絶対)穂波さんのイラストのせいもありますがww

色んな攻めタイプがいますが、受けを大事に想って
時には頼もしく、時には年相応に甘えたりな年下攻め、
たまらないです……!!!
「あなた」って呼んじゃうのがもう………。

7

ゆっくりと育む恋

元々、両想いなのにこうも時間がかかるとは!
カップルになってからも始めは良かったのに
楓のネガティブな思考が元カレや塾の生徒にハラハラさせられ
妹がいなかったらどうなっていたことか!

それにしても、かわいいカップルです。
この二人が20歳と27歳だなんて・・・。

そして、何気に楓が天然でエロかわいいです(笑)
エッチ中の二人なんて読んでて恥ずかしいくらいで。

こういうじれったくってかわいい話は私には大好物です。

2

塾講師の受・楓は、アルバイト講師でカナダに留学中の大学生・鴻島(攻)に、片想いをしていました。
やがて1年間の留学期間を終え、鴻島が帰国。
告白するつもりのない片想いを抱えながらも、以前と同じ穏やかな日々が戻ってくる・・・と思いきや、突然現われた、楓の高校時代の先輩で元恋人の辻(つじ)の存在がきっかけとなり、予想外にも鴻島から好きだと告白されてしまいます。

恋人同士になるものの、二人の恋愛はとてもゆっくり。
鴻島は本当にとてもかしこい良いワンコで、丁寧に丁寧に、それはもうじれったいほど丁寧に鴻島を大切に愛します。Hもいきなりなだれ込んだりしないんだよ(笑)。
ひとつひとつ段階を追って、日にちをかけて、ゆっくりゆっくり慣らしていく。気持ちの上でも身体の上でも本当に大切にしようとしているのが伝わってきます。
しかし、ただそれだけなら甘くて優しい恋で結構だけど、そうはいかず、楓の後ろ向き思考が二人にブレーキをかけます。

楓は両親を小学生の頃に事故でいっぺんに亡くしています。
その後、楓の妹・菜桜(なお)とともに祖父母に育てられますが、やがて祖母が亡くなり、菜桜は外国に嫁ぎ、そして祖父が亡くなって、家族で暮らした家に、楓はひとりきりになります。
家のそこかしこには暖かい思い出が満ちているけれど、そこにいたはずの人たちは皆、楓をひとり置いて通り過ぎていきました。
残っているのは幸せな思い出だけで、その経験が、楓に「幸せもいつか終わるもの」という“達観”を植えつけてしまったんですね。
それに加えて、妹を嫁に出し、祖父母も無事送り出して、自分のやるべきことは全部やった、ともう完全に余生を送る老人みたいになっちゃってる。

なんだか楓は後ろ向きというより心に大きな「空洞」を抱えているという感じがして、たやすくは埋められないそれを読んでいる間ずっと感じていて、楓がそこまで臆病なのが、なんだか辛くて悲しかった。
だけど、ワンコ鴻島はあくまで一途に優しく暖かく石田をメロメロにしてくれるし、石田も穏やかで優しい、可愛らしい人なので、とても甘いお話でもあるんですよね。
ゆっくりゆっくり愛を育んでいく過程が、さすが厚みがあるだけあって丁寧に書かれていて、とても良かったです。

脇役陣も素敵でした。
兄を叱咤激励する妹はもちろん。
そして楓の元カレの先輩・辻、塾のオーナーで40代の須藤(すどう)がどっちも捨て難い。
穂波さんのイラストも大好きなので、これは満足の一冊でした。

3

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