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表題作裁かれる日まで

長篠京也(33歳),義兄で画廊社長
祥英(はな),才能ある仏師で義弟

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

新進気鋭の天才仏師──その正体は義弟のはなだった!? 長篠京也(ながしのきょうや)は、日本屈指の老舗画廊の青年社長。招待された仏師・小野里祥亮(おのさとしょうりょう)の作品展で見たのは、死んだと聞かされていたはなの仏像だった。はなは祥亮によって地下牢に幽閉され、その才能を利用されていたのだ!! 幼い頃からはなを想い続けていた京也は、救い出そうと画策するが…!? 無垢な才能を守りたい──シリアス・ラブ!!
出版社より

作品情報

作品名
裁かれる日まで
著者
水無月さらら 
イラスト
カズアキ 
媒体
小説
出版社
徳間書店
レーベル
キャラ文庫
発売日
ISBN
9784199005107
3.5

(11)

(4)

萌々

(2)

(2)

中立

(2)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
6
得点
36
評価数
11
平均
3.5 / 5
神率
36.4%

レビュー投稿数6

裁きがあるとしても

ほーー……
なんか凄かったです。事前情報無しで読んだので、こういう流れのストーリーとは思わなかった。
一言で言うと、サスペンスホラーとでもいうか。
ホラーと言ってもオカルトとかじゃなくて、ひとの心の業というか…
ある家の積み重なった「罪」がやがて大きなゆがみになって、最期は地獄とわかってその業火の中で生き続ける。

主人公は、老舗画廊の若き社長・長篠京也。
小学生の時に母親と著名仏師・小野里祥玉が再婚し、3人の義兄弟ができる。
小野里の長男祥太郎、次男祥亮、そして祥玉の妾の子で自分よりも小さな祥英。
だが祥英は実の母親から虐待されて舌を切り取られ、引き取られた祥玉からもネグレクトされている悲惨な子供。
そんな祥英(愛称はな)を京也だけが可愛がっていたが…
…という設定がまずあって。
祥玉の死後、継いだ祥太郎と母が事故死。祥亮には「仏師」としての才能は無く、なのに突然素晴らしい作品を世に出し始める…
はなに作らせて賞賛を横取りしているのだ。
なんとしてもはなを助け出す、という京也の想いは…!と続くんだけど、徐々に物語は不穏な色を帯びてきます。
読んでいくと見えてくるざわつき。果たして真相は予想通りなわけだけれど。
この真相。
昔々、大好きだったホラー漫画の「聖ロザリンド」(レジェンド・◯たなべまさこ先生作)を思い出しました。
無垢が引き起こす惨劇。
京也とはなは手を取り合って芸術と名声の高みへ登っていきます。いつまでも若いはなと、何もかもを理解して彼を護る京也を「魔王のように妖しく」と描写するラストに身慄いしました。
神寄りの「萌x2」で。

0

バロックロマンス

水無月さらら先生のダークモード。

京也と祥英、二人で踊りながら向かう破滅、音楽でいうなら「仮面舞踏会」なんだそう。
ここまで描くか、というくらい残酷な展開という書評があったけど、そうでもなかった。
いつもの水無月先生の作品と比べたら、お花畑じゃないだけ。

仏師の小野里祥玉の子供達。
有名な仏師;小野里祥玉の子供は3人の男子。
三人の兄弟の長子と末子は死亡。次男が仏師を継承、天与の技量に恵まれていない。

小野里の愛人が生んだ祥英(はな)は三男。
泣き声がうるさいと母親に舌を斬られ、地下牢で養育される英は、表向き、死亡したことにされている。
英は、天才と言われるほどの技量を持つ。
英の作品を自分の名で公表している次男の小野里祥亮。

長篠京也は、後添えに入った母の連れ子。成人して実父の姓を継いでいる。
離別前から英(はな)が気になっていた京也は、英の造った仏像を観て生存を知り、助けたい。

全てを京也が整理した後、祥玉と祥英が造った像の中から胎内物が発見され、京也が読んで青ざめる。
・・京也だけを愛している美しい英。英の無垢な純粋さが生む悪意ない残酷。
京也は、「裁かれる日」が訪れるまで英と運命を共にする決意をする。

innocentを訳すと「悪意無い残酷さ」だったりするし。
芸術がテーマの、暗い喜びを秘めたバロックロマンスでした。

★舌切り雀を連想してしまった、残酷な女を母に持った英。英の母親は、医学に詳しかったんだと思う。
・・舌を斬っても死なない。 失血死をする場合や、舌が気道を塞いで窒息しない限り、死に至らない。

★浅田真央さんが使用した曲、
https://bit.ly/35UhPfD
ハチャトゥリアン : 組曲『仮面舞踏会』
物語は帝政ロシア末期のころの貴族社会が舞台。作者はこの作品でロシアの貴族社会の特殊性を描き出し、批判しようとした。

1

シリアスどころじゃない!!

シリアスというよりミステリーホラーみたいでした!!
暗いのが苦手な方は絶対読まない方がいいと思います。

話を簡単に言うと祥英にかかわった人がどんどん交通事故で死んでいきます。
最後は罪を隠して死ぬまで2人で生きていく事を選ぶそんな話です。ここが「裁かれる日まで」とタイトル通りですね。

人間関係も複雑ですし、まともな人間はほとんど出てきませんでした!!
出てきても死ぬ。そして癒しの存在である犬も死ぬ・・・・。
祥英の舌がなく話せない理由も実の母親が原因ですしとことん明るい要素はなかったです!!
評価は迷ったんですが好き嫌いはっきりとわかれると思ったので中立にしようと思います

0

愛と狂気

攻・長篠京也(33) 長篠画廊の社長
受・小野里祥英(28) 大仏師小野里の三男

はな(祥英)は大仏師小野里の三男ですが、妾の子です。
愛人が自分の子供が泣くのを煩がって舌を切り取ってしまった。
それが原因で言葉を話せない「はな」。

言葉が話せくても、知能は正常です。
人々の会話やラジオを聞いて知識は持っていますが…存在を忌まわしいものとして隠し通した小野里家は、家から一歩も出さず教育も受けさせずに育てました。
ですから「はな」は無邪気で無垢なまま大人になっています。
偏った知識と経験だけしかありません。

義理の兄である京也は子供の頃ははなを可愛がっていました。
しかしあることがきっかけで小野里の家を出て長篠の家(母の実家)で暮らすように。

小野里祥亮(次男)の作品展で仏像を見て、それが死んだといわれている「はな」の作品であることを見抜きます。
狂った小野里の家にはなを置いてきたことを悔やみ、祥亮の不在を狙って迎えにゆく京也。

辛い目にあっている受を攻が迎えに来てハッピーエンド、ではなくて。
ここから物語が始まるんです。

仏師・小野里の一族は、全員が狂気にのまれています。
はなの実母もそうだし、父親も、3人の息子達も。
そして京也も、ある意味。

何も教えられずに無垢なままの「はな」には、善悪がありません。
生と死の意味も実感もない。
父も兄も亡くしているのに、肉親の死を「痛み」として感じる経験がなかったんです。
だから京也の婚約者が自分を邪魔に思って排除しよう(はなを自立させよう)としたとき、はなは、はなの知る唯一の方法で婚約者を排除しました。

はなにとって京也だけが存在の理由です。
京也も何をおいてもはなだけが大切。

はなを京也に奪われて、追い詰められた祥亮が京也の不在時にはなを追い詰めます。
部屋に閉じこもっているはなでしたが、怯えた愛犬が吼える…。

自分には舌がない。
けれど生きている。
舌がなくなって死んでしまうなんて、知らなかったんです。

そして愛する存在の死がどういうものなのかも、知らなかった。

お互いの存在だけが重要で、それ以外は屑同然。
犯した罪もまた愛しい。
そういうお話でした。

読後感は…もの凄く割れるのではないでしょうか。
私は「やられた~」と神評価。
萌評価だけは違う感じがするので。
他の方の評価も割れてるので、この作品は本当に難しいですね。
BL作品ではない、と思います(じゃあ何だと言われると分からないのですが)。

3

うっ、苦手…と感じる人は多いかも

ストーリーは悪くないんですが…。
本妻の子、妾腹の子、後妻の連れ子、いろんな人物が絡み合ってもう…。
監禁されてた妾腹の子、はなを救出し幸せにする話かと思いきや…。
途中からどんどんミステリアスに変化して、最後には「ええっ!」と驚く結果が待ってます。
それがどうにも後味の悪いラストでして、苦手な方はとことんダメでしょうね。
私は大丈夫でした。
ただ、地下牢の汚い描写や、はなの口の中を想像すると、ちょっと嫌な気持ちになっちゃいました。
本人に悪気が無いだけに、憎めないし悲しめない…。
読者としても、やり場の無い感情に翻弄されます。
読み終わって「良かった~」とは言えなかったですが、インパクトがあって忘れられない衝撃の作品として記憶に残りそうです。


6

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