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闇夜に迷う心を照らす、一等星の恋。
受けの太陽が5才のときに、隣の家にお姫様みたいな美人な母親とハーフの息子の母子が引っ越してきます。そこからの幼馴染。流星の父親はアメリカ人で、両親はかけおちしてアメリカに行きましたが、離婚したため母子だけが日本に戻って来たという設定でした。母親の実家がかなり裕福らしく、かけおちしたけど母は祖父の遺産を受け継いでいるので、お金にはかなり余裕のある暮らしをしているようです。家も大きいし、母親が仕事をしているという話も出てきませんでした。
流星の母が何か病気があり長期入院することになったため、太陽の家でなにかと世話を焼くことになります。別々の高校に進学したけど、流星のお弁当を太陽の母が作ってあげているので、毎朝お弁当を取りに来るときに顔を合わせる、という感じでかなり家族に近い関係性でした。
流星の母が亡くなり、流星がそれを報告に来た際に太陽は感情のままに、それまで母親の病状について詳しく話してくれなかった流星を責めます。太陽は母に叱られ、流星にも謝って、流星をひとりにしないと心に決め、同時に、彼への特別な感情を自覚します。
その後、流星のアメリカ人の父が現れ、一緒に暮らそうと誘います。流星の父は日本人と再婚していて子供も二人いましたが、離婚の理由は浮気とかではなく気持ちのすれ違いが原因だったので、ずっと別れた妻子のことは気にかけていました。
太陽は父と暮らすことを流星に勧めて、流星は父の住むハワイに行くことを決め、二人はお互いの気持ちを確認し合って、一夜を過ごします。
その後は、流星が旅立った八カ月後に流星に会いに太陽がハワイに行く話。こちらも太陽視点でした。
直木賞を受賞された作家様、ということは存じ上げていて、初読みでしたが、心に刺さる表現が随所に散りばめられていて、本当にすごい作家様なのだなぁと改めて思いました。
BLと関係なく、誰もがその年代で抱いていたであろう脆くあやふやな感情をこれほど深く美しく言葉にできるのは、本当にすごいです。
とても面白かったです。
文章がとにかくすっと頭に入ってきます。色々なセンテンス、言葉が短めでわかりやすい表現で、回りくどさがない簡潔さがあるのに、様々な情景が美しく脳裏に浮かんできます。
すごい、大好きな文章でいくらでも読んでいたい。
内容も良かった。今となっては流星の身の上話もよくあるかもしれませんが、それでもこれだけ美しく表現されて、太陽との対比も眩しい。そして太陽が生き生きと学生らしい若さに溢れてるところも魅力です。特に太陽の弟が妙に現実味のある存在で、それもまた良いです。
前半のお話、後半のお話、それぞれ印象が変わります。前半は両思いがわかるまでの多幸感と切ない別れ、後半はやっと再会できて幸せいっぱいなのに、お互いの不在を感じてしまう切なさ。登場人物それぞれが素敵で、共感する部分が多くて、良いお話を読めて幸せです。後半はめちゃくちゃ泣きました。これから大人になっていく二人に思いを馳せて。
高校生同い年、幼馴染、両片想い。
個人的萌えを煮つめて煮つめて、きれいな結晶にしてもらったような作品。
幼少期の回顧で流星の母、奏さんがおおきな洗濯物を干していたときに交互に洗濯ばさみをわたした……というくだりがあるのですが、かっわいくないですか~幼馴染ならではのエピソードにキュンキュンです!
でも、ただラブラブなだけじゃないところが…流星の母の死後のどしゃぶりの雨☔のなかの一世一代の告白シーンは、ときめけるはずなのに「重い、重いよ流星……」ってつらくなるし(褒めてます)、ビリーさんの登場には肝が冷えるしで感情のアップダウンぶりはまるでジェットコースター並み。
後半はバイト代貯めて、ひとりでハワイ行っちゃう太陽に炎のごとき本気を感じました。べた惚れじゃない…って感じよ……。
好きと萌えをクリーンヒットされた、永遠のバイブルです!!!スピンオフのムーンライトマイルも好き〜
少し前の作品ですが、ソムリエコンシェルジュさんからの紹介で読みました。
今日、レビューを書こうとして初めてスピンオフがあることがわかったので、早速買いに行きます。
どんな好みの方が読んでも微笑める作品だと思いますし、いい意味での、ある種の物足りなさが魅力的な作品だったと言うのが、読後最初に感じた印象です。
等身大の眩しさ全開の高校生と対照的に大人びているように見える高校生、幼馴染2人の甘酸っぱいでは片付けられないみずみずしさや様々な葛藤に、応援したくなる気持ちが終始止みませんでした。
言葉選びがセンセーショナルで、とても美しかったです。読み終わった直後は、日常生活の何気ない瞬間にもあの美しい文章が蘇ってきました。
ちなみに、「オールトの雲」は、簡単に言うと、太陽系の1番遠いところ、冥王星のもっと奥で、太陽からオールトの雲までが1光年らしいです。流れ星の故郷とも言われています。とはいえ、未観測なのに、"ある"と信じられているものらしいです。読んだ方はわかると思いますが、2人の関係を象徴するにふさわしいタイトルですよね。
読み終わった後には、少し夜空を見上げたくなる、星みたいな小さなキラキラが散りばめられた作品でした。ぜひ、色んな方に読んでいただきたいです。
自分には珍しく電子書籍で読みました。イラスト、あとがき、ありました。
一穂さんの作品は、これまで私が知らなかった知識が盛り込まれていることが多く、それが物語の展開に絶妙に重ねられているので、読んでいて心が躍る気がします。
本作品は宇宙がモチーフになっています。
高校生の流星と太陽は10年来の幼馴染。母子二人で暮らし、ハーフで美しい容姿を持ちながら人づきあいが苦手で孤独な流星を、誰よりも傍で見守ってきた優しい太陽。天体観測がライフワークの流星が語った星々の話に、やがて太陽が二人の恋を重ねていく描写が、ロマンチックなだけでなく、普遍的な恋のはかなさ美しさまでも感じさせて、胸が熱くなります。
最初に心をつかまれたのは、太陽が流星の天体望遠鏡で月を見せてもらう場面。流星は月面の『虹の入り江』を一番きれいなところ、と言うのですが、太陽にはそれが荒涼として見えたこと。代わりばんこに望遠鏡を覗いても、共有できない景色。今まで一緒だと思っていたものが、違うと感じること。きっとそれが恋の始まりなんだと伝わってきます。
流星の母親の死をきっかけに二人は想いを伝えあいますが、ハワイに住む父親が流星を迎えに来て、太陽の心は揺れます。いつか流星が教えてくれた真昼の金星のように、夜空の小さな星のように、確かにそこにある流星と父親が互いを想う気持ち。寂しさを抑えて、太陽が流星に「幸せになって」と背中を押す場面に、涙が溢れます。太陽の強さと優しさが尊いです。
別れの前夜、初めて体を重ねた二人は、流星群を目にします。太陽系の果てにある流れ星のふるさと『オールトの雲』。人の寿命よりはるか遠くから来た流れ星に、嬉しくて切ない恋心の不思議さを重ねる太陽。ちょっと壮大過ぎない?と思わなくもないですが、恋のはかなさと美しさが瑞々しく伝わってきて、胸を打たれます。こんな気持ち、すっかり忘れていました。
八か月の後、ハワイで再会した二人は少しだけ大人になっていて、嫉妬や誤解ですれ違い、でも気持ちを確かめ合って、また別れていきます。その想いの輝きがまるで流れ星のようです。
きれいごとだけでは生きていけないこと、やがて二人を分かつ死が訪れること。それでも何度でも会いたい、という気持ちは祈りなんだと伝わってきて、読み返すたびに心が洗われる気がします。