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表題作恋愛革命

池畑虎之介
貧乏大学生・20歳
坂口瑞希
会計士で友人(女)の兄・28歳

あらすじ

池畑虎之介は顔を出そうと駆けつけた飲み会で意外な人物に会う。昼間バイト先で彼女と別れ話をしていた男だった。彼、坂口瑞希は幹事である結の兄で虎之介を待つ間に呼ばれたらしい。完全に酔い潰れた瑞希に散々な目に遭わされた虎之介は、二度と会うことはないと思っていた。だが数日後、彼は姿を現しバイトを持ちかけてきた。携帯を預かるだけで一日二千円。苦学生の虎之介は断り切れず引き受けるが…。
(出版社より)

作品情報

作品名
恋愛革命
著者
海賀卓子 
イラスト
葛西リカコ 
媒体
小説
出版社
心交社
レーベル
ショコラノベルス
発売日
ISBN
9784778110024
3.5

(20)

(5)

萌々

(5)

(6)

中立

(4)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
7
得点
67
評価数
20
平均
3.5 / 5
神率
25%

レビュー投稿数7

その「男」はどっち?

初読みの作家さんでした。新人さんかな?と思って読み始めたものの、読んでいるうちに、確固たる個性が感じられる文体だなーと思い直しました。…結構ベテランの作家さんだったのですね。失礼しました。あとがきに「久しぶりにノベルスを書いた」とあったのがなんだか微笑ましかったです。

とある理由で貧乏学生ライフを送る20歳の虎之介と、虎之介に好意を寄せる同級生・結の兄である瑞希のお話です。婚約者に裏切られて泥酔した瑞希を介抱したことを切欠に、虎之介と瑞希の不思議な交流が始まります。綺麗でプライドが高くて意地っ張りで実はさみしがり屋…そんな瑞希に恋心を抱く虎之介ですが、一方の瑞希は幼い頃の性体験から同性に惹かれる自分を認めたくないと頑なになっていきます。複雑に拗れる二人の感情――果たして二人の恋の着地点は?

物語は虎之介(攻)の視点で進みます。内容とは関係ないのですが、瑞希(受)のことを指す際に The man も A man もすべて「男」と表現されているところが、私は最後までしっくりきませんでした。たとえば「虎之介は男が好きだ」という一文でどっちを指すと思いますか?これが He loves him の意味で書かれている箇所が沢山あるのです。どうして瑞希のことを「男」って表現するのかな…もしや瑞希は実在しない男性でホラーなオチなのでは!?と真面目に思ったほどです。

虎之介の言動がとても自分勝手でガキっぽいのは仕方ないと思うんです。実際、20歳の若者なので。その虎之介に瑞希が振り回されっぱなしなところに、萌えるか萎えるか…で評価が分かれそう。瑞希は受キャラとしてはダメなところも可愛いタイプかもしれませんが、私はもうちょっとしっかりしてほしい気がしました。すごくしっかりしたオトナという自己認識とは裏腹に、虎之介との恋愛以外の面での魅力がよく分からなかったです。

葛西リカコさんのイラストが、私の知っている感じより少し無骨な雰囲気で素敵でした。

2

葛西リカコ先生のイラストに惹かれて

カバーイラストがステキです。作中の小道具である青い携帯電話がちゃんと描かれている。かなり挿絵のイメージが手伝った感じも否めませんが、一気読みでした。

ワケあり貧乏大学生と、バイト先の利用客の袖振り合うも…的な出会いが生む、一生モノの恋とでもいうべきか。文体ゆえに重くは感じませんでしたが、終盤は結構泥沼に近いのかな、と。木原作品との類似点を挙げていらっしゃるレビューもちらほら見受けられますが、わたしは読後にその指摘を読んで、なるほど〜と思い至った次第。つまりは、あんまりそう感じなかったってことですね(汗)

初出が古いようなので、同性愛の葛藤をテーマにした本作はもはや古臭く感じられるかもしれないけれど、二人の恋愛心理においてはギュンギュンさせられます。虎之介(攻め)の気持ち、瑞希(受け)の気持ち両方に共感できる、不思議な感覚を味わいました。

好きすぎて、傷つく前に終わりにしたい。大切だから、もう二度と会いたくない。どうせ男同士なんて不毛だから。お互いに気持ちが自分にあることをどこかで自覚しながら、何度も二人は離れようとする。終いには「大嫌い」と言いながら、「大好き」を伝えてくる矛盾…。

死ぬ時は、瑞希さんの姿を思い浮かべて死ぬよ。
お前が死ぬ時に少しでも俺のこと思い出してくれればそれでいい。

身体は離れても死ぬまで思いが繋がっている関係なんて最強じゃないですか。決定的に二人は別れたかと思いきや、最終的にどうなるのかは…控えておきましょう。瑞希の妹で虎之介の大学の友人、結がその名の通りキーパーソンです。

虎之介が瑞希のことを終始「男」と表現する点、読んでいて気になっていましたが、わたしは恋愛対象として恋してしまった相手が同性の「男」であったことの強調と、その「男」の真意が見えない心理的な距離感を出すためのものだったのではと感じました。個人的にはこういうウェットでジットリした恋愛もの、嫌いじゃないです。。

0

独特の個性

葛西先生の挿絵に惹かれて手に取った、初読みの作家さん。
ちるちるでの評価も高く、期待をして読んだのだが……。

貧乏学生の虎之介は、バイト先の喫茶店で男の別れ話を聞いてしまう。
実は彼は同級生の兄で、うっかりと再会してしまい
無茶な飲み方をする男との最悪の出会いだったが……

美貌で優秀、傍若無人、
でも実は傷つきやすい内面を抱えた可愛い受け……
というのは、大変好みです。
男同士の葛藤というのも、これまた好みです。

ですが、この本はいただけませんでした。
二人が付き合い始めるまでの日常の描写は、
傍迷惑な受けの不器用で突飛な言動も
それなりに面白く読んでいたのですが、
まとまってからの攻めの言動に冷たい気分に……

同性に嵌っていく不安から
自分の心を嘘で守ろうとしたところ、それが相手を傷つけ
最後は心のみじゃなく体をも傷つけてしまう。

20歳なんて子供なんだから仕方ないよね……と思いながら
ぐずぐずズルく行ったり来たりしている攻めに呆れ
素直じゃなくてやっぱり行ったり来たりしている受けにも呆れる。
どっちも面倒臭すぎる。

結局ドロドロの挙句の別れ、そして再会。
これも好みの展開なのだけれどなぁ……。

好みのモチーフや面白い設定がちりばめられながら
それをまとめている何かが、根本的にピンとこない。
文章もあまり好みじゃなかったこともあって、気持ちが乗れずに読了。
攻め視点で描かれるのだが、受けを「男」と表現しているのも
違和感があった。
クールで客観的な感じを出すには効果的かもしれないけれど
全然そういう話じゃあないので。

独特の持ち味の作風だと思うので、合う方には合うのだろうと思う。
残念ながら、私にはそうではなかったということで、評価は「中立」に。

2

どんどんかわいくなってくる。

初読みの作家さんです。
いやー、読んでよかった!!
非常に満足です。

大学生の虎之介はある日バイト先で別れ話をしている男女を見かける。
その夜、駆けつけた飲み会で同級生の兄としてその男・瑞希と再会する。
酔い潰れた瑞希に散々な目に遭わされた虎之介はもう会うこともないだろうと思っていたのだが、あるバイトを持ちかけられて…。

最初は虎之介にしてみれば単なる迷惑な人でしかないんですよね、瑞希って。
酔ってダウン駄目にされて、面倒みてあげたのにお礼もなくて。
発せられる言葉も少しも優しくないし。
ツンというかどこか尖ってるような感じで。
けれど、瑞希のバイトをするようになって。
少しずつ距離が縮まっていくようで。
そうすると、その言葉とか態度の持つ意味みたいなのも見えてきて。
徐々に徐々に瑞希の方も気持ちが虎之介に寄っていくというか、振り回されていくというかそういうのも見えてきて。
そういうことに振り回される自分に対する不安とかを口にする瑞希がかわいかった。
デレではないんだけど、自分の感情をストレートに口にできるのっていいな。
中盤からは別れる別れないというような話になっていくんですが、そう言いたがるのが場面によって虎之介だったり瑞希だったり。
でも、瑞希が言うのは虎之介のためでもあって。
虎之介の不安やなんかを読み取っての言葉で。
そういう意味では瑞希の方が深く虎之介を想っているように感じられました。
よりを戻す戻さないの段にしても、瑞希が最終的に吐き出す不安がとても切なくて。
一度よりを戻したら、次に別れても、また戻れるんじゃないかと待ってしまう、とか。
虎之介につけられた傷を見るたび、虎之介が別の誰かと抱き合うことを思って胸を痛める、とか。
はっきりと「好き」とはなかなか言葉に出来ない人なんだけども、違う言葉でどれほどが虎之介のことが好きなのか語られていて。
もうホント最後まで素直になれない瑞希がかわいくて仕方なかったです。
瑞希には幸せになって欲しいなぁ。

3

恋愛のマイナス部分もエグってくる

普段あんまりショコラは買わないレーベルなんだけどジャケ買い。
こういうシンプルだけどお話の重要なモチーフ(携帯)がさりげなく描かれているのって好き。
表紙で手に取って内容も当たりだったわけだから新規開拓に一目惚れもたまには良いものです。
お話はなんとなくだけれど木原さんの書きそうな話に感じました(悪い意味ではなく)。

徹頭徹尾恋愛小説。
制御不能な感情のベクトルとしての恋愛は読んでいて息苦しいくらい。
「振り回されたくない」と男(受・瑞希)が何度も言うけれど振り回し振り回されてしまうのは結局それこそ恋ゆえなんだろう。

絶対好きにならないような最悪な出会いから少しずつ恋に落ちて行く。
顔はいいけど高飛車で傲慢でそれでいて臆病な男にハマってしまう。
そして恋愛の醜い部分と言うと言い過ぎだけれど、恋の最中の見苦しくてみっともない部分をどんどん浮き彫りにしていく。
人を好きになると自分の嫌な部分を沢山見ることになる。そして若さゆえ下手に取り繕って悪足掻きする。
虎之介の心情はなんかすごく身につまされました。
“好きだから弱くなる”そんな部分が書かれていて、読んでてなんかいろいろキッツくて小説としては面白いけどすごく消耗する。

だから情熱だけで熱病のように突っ走った二人が壊れてしまうのは必然だったと思う。
臆病な男が見せた最後の勇気が別れだった。

寂しがり屋の正直者。どんどん発かれていく男の本性が愛しい。
好きなものノートとか「mother(○テレドラマ)」かっ! と、ツッコミつつ泣いた。
男が傷のことで虎を気遣ってたのが分かったときまた泣いた。
…本当は泣くようなBLって好きじゃないのに(笑)。萌え重視なのに。

読んでいて年をとったり他のことで満たされているときに「運命の恋」に落ちにくいのは感情に手綱を付けられるからだなと分別臭いことを考えてしまいました。
だって虎が転がるように恋に落ちてしまったのって貧乏にも一因があったと思うの(笑)。
そんなところもリアル恋愛だなあと思いました。

10年振りのノベルスということだけれど、地の文で瑞希をずっと「男」と表現していて、あくまでも攻・虎視点の三人称を貫いていて文章にこだわりがある人なんだなという印象を受けました。

話変わるけど萩野シロさんといいひちわさんといいこの人といい…作家買いしたいほど面白い!って思った人の新刊(新作)が出ませんがッ!
なんですか、この放置プレイヽ(`Д´)ノウワァァァン!!

5

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