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いつもは色々頭の中で整理してからレビューを書くけれど、今回は頭に浮かんだことそのまま書き連ねていこうと思います。
というのも、この作品は理屈では語れないものが多すぎます…
“愛”という漠然としたものを漠然としたものとして描ききっている。それなのに読む前と後だと“愛はね、”というタイトルから感じる“愛”というものへの感じ方が全く変わります。小説だからこそ成せる技というか、はっきりとした結論はなくても読者が色々と考えを巡らせていく。読後こんなにも考えさせらせれたのはBL作品で初めてです。お気に入りの1つになりました。
他の方も書いている通り、この話には続編がでています。ただ、私はこのままの終わり方が正直好きで、続編を読もうかどうか迷っています…個人的には攻めの俊一は受けの望に対して恋愛感情としての愛を向けることができないままでいてほしいです。(本編の最後でのキスシーンからするとそれは難しそうですが…)
今のところ樋口先生の作品は全て大好きなので、迷ってると言いつつ結局読んでしまいそうな気がします。そして感動して、読んでよかったなんて思っている自分がいるような笑
樋口先生に愛の話を書かせたら、右に出る作家さんはいないんじゃないでしょうか。
お恥ずかしながら、子供を育てながら私自身が愛ってなんだろう、なんて悩むことがありまして。
無償の愛とは?
愛しているなら何でも許してあげるべきなのか?
いつだって全力で存在を認めてあげるべきなのか?
そんなふうに出来ないなりに、そんなことを悩んで、けれど、ちゃんと受け取れなかった愛情が後々にまで自分の中に小さな穴になって残ることを知っている。
だからこそ悩んで悩んでぐるぐるしてしまうんですが、望の心情ととてもシンクロしてしまって、なんだか本当に切なかったです。
『ブラックホールのような孤独の穴、
どんなに愛情を与えられても蓄積されず満たされない。
寂しさを感じ続けている』
そんなふうに、望は自分の心を作中で表現している箇所がありましたが、望の心の中にある穴は、多分、どんな人にも存在しうる穴で、どんな人もずっとその穴を埋めたいと切望していると思うんです。
たからなのか、望の弱さや狡さ、そういうところは共感できないなぁ、なんて部分も多々ありながら、先を読まずにはいられず、あっという間に一気読みしてしまいました。
正しいことをらいつでもできるのなら、こんなに迷うことも泣くこともない。
まさに、これなんですよね。
泥の重さも知らないで、さっさとあがってこいっていう。俺だってそうしたいよ!できないから苦しんでる!
この言葉、本当にグサッときました。
望も俊一も、ただの普通の人なんです。
だからこそままならないことか沢山ある。
大切に思っていても、通じ合えない気持ちがある。
中盤、2人が言い争っている最中、お前がすきなんだよ!と言葉にした俊一ですが、こんなに好きの違いが辛い告白なんて、今までにあったでしょうか…
泣けて泣けて仕方ありませんでした。
死ネタは大の苦手で、小説で泣く時ってだいたい死ネタの時が多いんですけれど、この作品は、ずっと鼻をズルズルさせて読んでいました。
そのくらい、心にくる作品です。
終盤の家族のやりとりも本当に泣かされました。
それぞれの立場、それぞれの思い、でも綺麗事や優しさだけではどうにもできない家族間の問題。
距離が近いからこそ、甘えもでて相手を傷つけてしまう。
それが、やっと少しだけ傷の修復に向かった場面。
どの人物の気持ちにもリンクしてしまって、辛くて苦しくて、けれどやっと少しだけほっとできました。
この作品は、BL作品に出てくるかっこいい攻めや、愛らしい受けが繰り広げるような壮大なお話ではないんですけれど、よく居る普通の人が、よくある悩みを抱えて、そうして乗り越えて、愛を見つける、愛のカタチがたくさんつまったお話でした。
俊一と望の「ぼうや、もっと鏡みて」 を先に読んでしまったので、
内容に新鮮さを感じられなかったのが残念。
実家は総合病院を経営、父も兄二人も医師。
末っ子の望は、母を早く亡くし、長兄に面倒を看てもらいながら育つ。
いつもちょっとトロイ望は、いじめられっ子。
そんな望を俊一は保育園に通う頃から仲良くしていた。
望はゲイだと親に告白、親が怒ったままなので家に戻れない。
望が大好きなのは俊一。 でも俊一に道を外させたくない。
望は、他の人と付き合って別れる都度に怪我をする。俊一に泣きついて抱き着く唯一の瞬間が、望の至福。
俊一が、アルバイト先で知り合ったカメラマンに望を紹介。やっぱり殴られて別れてくる。
・・・ここから先は、「ぼうや、鏡をよくみて」に続く。
望は、馬鹿ではない。性格が変わっている。
鈍くて、怒りが沸かない。すぐ赦しちゃう。懲りない。
赦してしまう望に「お前は強いな」と誰かに言われる場面が何回も出てくる。
望は、強い人なんだろうか?? よくわからない。
あー、辛っ。
あまりに主人公の望が弱くて苛ついたのですが、実は全然弱くなかった。
むしろ、ものすごく心が強い……
まぁでも許すのも愛だし、許すことは強い人にしかできないことなんだろうなあ。
ダメな男に好かれるのか、男をダメにするのか。
ダメ男ホイホイの望はゲイで、幼馴染の俊一が好き。
しかし、俊一にゲイであることを打ち明けた望は、彼から「俺を好きにならないなら別にいい」と言われてしまいーー…
予防線を張られてしまった望は、もう俊一に気持ちを打ち明けることができません。
誰よりも望を否定し、見下している俊一。
そのことに、本人すら気付いていないから罪深い……
こいつ、望のこと好きでしょ?と思わせるほど過保護で執着心の強い俊一ですが、その気持ちは抑え込んだまま。
恋愛の意味で愛せないし抱けないのに、望を手放ししてやることもできない。
そんな俊一が紹介した年上の男が、これまたクズ。
これには驚いた。
数いるダメ男の中で、最もダメ。キングオブダメ男。
優しさと暴力の繰り返しにゾッとしました。
執拗に望を追いかけてきては殴る蹴るの暴力。
悲しくて悔しくて泣けた。
数少ない光は、望の次兄・康平と、予備校の竹田。
この2人に救われたよ。
人として素敵な2人でした。
さまざまな困難を乗り越えて諦観の境地に至ったかのような望には、吹っ切れた強さを感じました。
これから追いかけるのは俊一になるんだろうなあ。
ある意味ザマァだわ。
『愛のはなし、恋のこと』がまた秀逸!
「愛されることは不自由、愛することは自由」
……この言葉の意味に納得。
でも、愛を失いたくないと思っている時点で、きっともう愛しているんだと思うんだけどな……
ハッピーエンドとはいえないけど、すごく刺さるお話でした。
続編も読みます!
なんだろう……すっごい憤りを感じるし、イライラするし。
読んでいて、決してハッピーになったわけじゃない。
ひたすらやるせなさを感じていたのだけど、どうしてか最後まで引き込まれるように読んでしまいました。
報われない恋をする望、応えてやれないが離れることもできない俊一。
自分がゲイだと言った瞬間に築かれた壁。
だけど好きになってしまった。いや、打ち明けたときにはもう惹かれていた。
報われない恋をしながら、俊一以上に好きになれる人を探す望のことを、否定はできない。
苦しいなら、誰かに助けて欲しくなる。
だから、好きじゃないのに体を許してしまうのは駄目だとは、わたしは思えないんです。
だけど、俊一ばかりを見る望は他者には鈍感で、その無神経さが仕方のないことだとしても、なんだか辛い。
他の人を好きになれたらラクなのにとは言うけれど、恋って決してラクじゃない。
ラクさを求めるうちは、俊一からは逃げ出せないんじゃないの?と。
一方俊一ですが。
大事な幼なじみが傷つくのは許せないのは、分かる。
けれど、俊一からはズルさを感じます。
『望が最後に頼ってくるのは、俺なんだ』というような。
いっそのこと、望をこっぴどく振ってやれよ!となる。
望を選んであげるの?と期待してしまう瞬間があって、だからこそ余計に辛い。
暴力は絶対に駄目。
だけど、手をあげていないだけで、俊一も望を傷つけてる。
言葉や態度も、立派に暴力です。
心を傷つける。
許してくれるから、傷つけていいわけじゃない。
すべてを許してしまえるのは望の美徳かもしれませんが、許してはいけないものもある。
だから望、怒りなよ。と思うシーンもしばしば。
これは一般的なハッピーエンドじゃない。
だけど、望はようやく『さみしさ』に足掻くことはやめ、うまく付き合えるようになりました。
望としては、良い方向に向かった結末。
果たして俊一にとってはどうなのか。
急に変わってしまった望に、俊一は戸惑いはじめます。
巻末のおまけにある、俊一の変貌の片鱗。
そこから、また期待してしまう。
どうかその期待が裏切られることのないよう祈りながら…次に行きたいと思います。
非常に評価が難しかった。結局真ん中をとって萌。
印象に残る話ではあったけど、やるせない。
自分のその時の気持ち次第で、変わりそうな一冊でした。