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表題作ぼうや、もっと鏡みて

本山俊一,21歳,幼馴染の大学生
多田望,21歳,幼馴染の調理士専門学校生

その他の収録作品

  • ぼうやの恋人
  • あとがき(&おまけSS『愛のありか』)

あらすじ

大学生の俊一は、幼馴染みでゲイの望の気持ちに応える気もないのに、望を傷つけてはその気持ちが自分にあることを確かめずにはいられない。自分の気持ちをもてあまし、戸惑う俊一だが……。
「愛はね、」から一年、俊一の出した結論とは!?
(出版社より)

作品情報

作品名
ぼうや、もっと鏡みて
著者
樋口美沙緒 
イラスト
小椋ムク 
媒体
小説
出版社
白泉社
レーベル
花丸文庫
シリーズ
愛はね、
発売日
ISBN
9784592876649
3.9

(113)

(55)

萌々

(25)

(14)

中立

(6)

趣味じゃない

(13)

レビュー数
19
得点
423
評価数
113
平均
3.9 / 5
神率
48.7%

レビュー投稿数19

た ま ら ん !

うひー、
面 白 か っ た !

前作『愛はね、』のストーリーはまるまる記憶してたので、本を入手してからすぐに読み始めたんですが、数十ページ読んでから、「うわ、これは名作になる予感」と思って『愛はね、』を読み返しました。
望の視点で綴られる『愛はね、』の物語を読みながら、ひたすら俊一の気持ちだけを考えてました。以前とはかなり違ったスタンスの読み方です。
で、自分の感想が気になってちるちるに書いたレビューを読んでみると、トンチンカンすぎて自分を殴りたくなりました。ただまあ「続編で評価が変わるかも」と書いてたので、それを予感した自分は誉めてやりたいです。ええ、まるまる変わりましたとも。

キーワードは「許し」ですね。
俊一は、なんでも許してしまう望の性質に苛立っていた。
たしかに望の許しは弱さや諦めや意思のなさの象徴ともいえるもので、誉められるべきものじゃなかった。
前作『愛はね、』では、望の許す性質を否定的に(見えるように)描いていたし、読み手はそんな望に俊一とともに苛立ったりもさせられた。
でも望は確実に成長していて、今作ではそれは望の芯の強さや優しさの象徴となっている。
べつに望の根っこの部分が変化したわけじゃなく、本質は変わらないまま少し成長したということで、私はこの見事さに感動しました。
しかも今作で許されるのは俊一なのだ。ずっと望を守り、望の許す性質を否定的に見て苛立っていた俊一が、まさにその性質によって救われるのだ。
同時に俊一は、自分が望の寛容さに甘えていたことにも、傲慢だったことにも気づかされる。

まあでも、迷った挙げ句決意してメーター振り切ったカシコは怖いね!
愛情だだ漏れで俊一がすっかり骨抜きの色ボケになってる番外編には、ニヤケ笑いが止まらなかったです。

11

鏡の中に見つけたもの

前作の『愛はね、』は望視点のお話でしたが。
今度は俊一視点で一年後のお話です。

『愛はね、』の感想を書く前に、こちらの数ページを読んでしまい。
「いかん、これを読むとこっちの話に引きずられる」と思い。
前作のレビューは、とにかく焦って書きました。
そしたら、ストーリーそのものの感想ではなく、二人のキャラクターへの感想のみになっていました。
結果的に引きずられていたからかも?


読み終えてみて思いました。
この二人は何年かかったとしても、こうなる運命みたいなものを。


『愛はね、』とはまた違う意味で、エンディング手前までず~っとイライラしっぱなしです。
もうね、とにかく腹が立って仕方がない。
どちらに、ではなく、二人ともにです。
こんなにキャラクターに対して怒りや憤りばかり感じる話、でも大好き。
その溜まったフラストレーションが、一気に解消される時が気持ち良い。
そんな瞬間が、俊一と元友人の会話、俊一が一人の時に二回起こりました。

その俊一が一人の時のあるシーンでは、心の中で号泣してしまいました。
読んでいたのが人がいるところでなければ、本当に泣いたと思います。
それでも本が読めないくらいには涙が滲み。
今まで沸々とした気持ちが、一気に涙で放出されて。
すーっと穏やかに静まる瞬間を味わいました。

『愛はね、』では見えにくかった俊一の本音は想像以上に最悪で。
その自己中心的な思考が、誰しもの中にある闇の部分だなぁと思います。
結局、望の「許す」という性格は、男達の闇を引き出し拡張てしまうのかもしれない。
一番近くにいた俊一は、その闇で望を壊してしまう事が怖くて。
結果的に物凄く歪んだ関係になっていたんだなぁ、と思いました。


このお話の中では、有り得ない位周囲の人々との偶然があります。
五島とか、大貫とか、篠原とか、結城とかとのエピソード。
一~二ヵ月に一度程度しか会わなくなった二人なのに。
不思議なほどの偶然の数々でした。
そこに違和感はあるものの。
もしもそんな偶数が無かったとしても。
二人はいつかは、あのエンディングの結果になるんだろうなぁ。
そんな気がします。

こんなに早くそこへたどり着いたのは、あまりにも沢山の人達の言葉でした。
俊一のアルバイト先の編集者、河合さんもそうだし。
篠原や結城、五島だって!
この沢山の人達のくれた言葉の数々。
更に、この一冊の中には、続きのお話が二編あるんですが。
その中での、望側のある人物の一言。
俊一の脳天にガツンッ!と衝撃が走ります。
もう私自身はね、その人物に、惚れてまうわ~♪と心で叫んでいました。

…ネタばれしすぎないようにと感想を書いていたら。
やはり、ストーリーがよくわからないレビューになってしまった…。
本当にすいません。
今回は特に、自分の中の爆発寸前な何かを放出するために書いたような気がします。
この忙しい時期に、徹夜して読んだし…。
毎度ながら、自己満足レビューで申し訳ありません。

樋口先生があとがきに。
「愛はね、…」の…の部分は、この物語の中にあります。
と書いておられまして。
私が勝手にかんがえた言葉は。
“愛はね、本当の自分を映しだす鏡なのよ”
ではないかな?と思いました。
先生、違ったらすいません☆

8

愚かで愛おしい。

BLの様式美から脱線気味の話であるので好き嫌いはあると思うのですが、あとがきで著者の樋口美沙緒さんも書いてますが良い人でも悪い人でもないそういう普通の人の話でしたというのがストンと胸に落ちしっくりきました。人間関係なんて濃くなれば傷付け合うことは生きていれば往々にしてあり、理解を深めたいと思う気持ちからや、又は感情の行きようの無いところで理性を失い人は傷つける事もあります。傷付け合わずにはいられない側面があるのです。望と俊一のビジュアルだけBLの様式美に乗っ取ってますが、他は泥臭い愚かで愛おしい凡庸な2人でした。読み終えるとそこが何とも良いんです、俊一は(攻)キャラクターとしては絶対に人気薄だろうし、(受)キャラとしての望も然り。たいして魅力のないキャラなのにこんなにも物語惹かれてしまうのは、普通の人だからなのかも知れません。勿論、著者の巧みな心理描写や物語の運びとかありますが、突拍子もないものではなく様々な軋轢で苦しむ若い2人の恋は地味だけども胸に迫り来るものがありました。読みながら、何度となく涙が溢れてきては俊一に悪態を吐きながら、潔くないなと歯噛みしながらも俊一の苦悩や葛藤を思うと一方的に責める事も出来ないこのもどかしさを感じながら時折「あぁ~もうっ、、」って胸中で叫びつつの読書は正直疲れました。読み終えると涙で拭ったティッシュの山がゴミ箱を占領してました。元々、俊一の方が先に望に魅了されてたので、ラブラブになってからの愚かさ加減は可愛いですが、あまり男として器の小さい狭量な俊一は好きなキャラにはなれそうも無いけどもこの話は最大級に好きな話です。上半期は素敵な作品が幾つかありますが今のところ群を抜いて心を揺さぶられた話であります。あと今回も小椋ムクさんの画が素晴らしくて俊一と望との世界にすんなり入っていけました。心揺さぶられる話には大概素敵な絵師さんが担当してる確率が高いなとつくづく思いました。

7

グルグルしながら到達した愛の話

『愛はね、』の続きの話

幼馴染を思いながらそのむ割れない思いを受け入れ前向きに生きようとしている望と、そんな幼馴染から思われながら同じ気持ちを返せない自分の気持ちを持て余す俊一の成長物語。

前作に引き続いて俊一のイライラがひしひしと伝わってきます。
何度だまされてもまた信じてしまう。
殴られても強姦されても、優しいときもあったし悪い人じゃないとから、心から謝っているのだからと簡単に許してしまう。
だから、過去に望に酷いことをしながら元サヤを狙って望の周りをうろつく輩が許せないんでしょうし、嫉妬心もたっぷり含めてついつい望にきついことも言っちゃうんですね。
そのくせ望は自分には会いに来ないし…
そばで見ていると歯がゆいし怒りが湧いくる来るでしょうね。

俊一のじれじれした気持ちと望に対する自分の気持の折り合いがつかずにイライラをぶつけてしまう俊一の荒れた気持ちも、それを向けられる望の悲しみもよく分かるだけにこのすれ違いが切なかったです。

あっちこっちと寄り道しうんと遠回りしながら、やっと自分の気持ちと向いあって遠くの地に就職してしまった望に会いに行く決心をした場面で思わずやっとだよ、おっそいよ!と本のページに向けてつぶやきたくなりました。

3年後の『坊やの恋人』
遠距離恋愛を経てやっと帰ってきた望望と同居話の顛末。
守ってあげたい幸せにしてやりたいとの思いは本心からでも、どこか俊一は望を下に見ていた部分もあるんだなというお話。
好きになったほうが負けっていうじゃないですか。
ずっと好きでいた望に対して、一緒に住むと言ったら大喜びですぐにでも来ると思ったら親の許可が…とかいうのを聞いて、むっとする。
望の兄に「幸せにします」といった時に「君も幸せにしてもらうんだろう」というのがよかった。
一方通行じゃなくてお互いが一緒にとかお互いが甘えたり助けたりして幸せになっていくんだということに思い当たった俊一でした。

4

苦しかった……ラスト数十ページのために読みました。

「愛はね、」があまりにも苦しい終わり方だったのでそちらを読み終わって即購入しました。望の気持ちにはどうしても共感し辛く、あまりにもお人好しすぎて理解不能でした……でも俊一の「俺を好きにならなければいいよ」という言葉はあまりにも残酷で、しかも望からの好意をわかった上でというのがまた酷いなと思いました。でも、BLを長く読んでるせいで『ノンケ ほだされ』などのワードが結構当たり前で、どのBLを読んでもノンケの人が結構簡単に体を許してるのに気付きました。本当はそんなに簡単なものではなく、もっと悩み、それこそ俊一のような選択をするしかないのかもとも思いました。同性と交際するのはそれくらいハードルが高い、体だけでなく交際することで圧倒的マイノリティに属されてしまう訳ですから。日本ではまだ考えが古い部分も多いですし。そう考えるとやっぱり俊一のことが憎めなくて、でも望のことも好きだから、すごく葛藤しました。人一倍読むのが苦しかったです(笑)この巻で交際始めることがわかってたから、二人の幸せが見たいから何とか最後まで読み進められました……付き合い始めてからは、今までの苦しみが全部昇華するくらい甘々で読んでて楽になりました……泣
樋口先生の作品は昨日パブリックスクールを全巻読破してからの二作品目です。「虫」シリーズのイメージが強くて、何となく読むのに抵抗があって手をつけるのが遅れました汗
「虫」の擬人化BLがどうしても想像出来なくて、、評価がいいので良作なんでしょうが……
他のはどうか分かりませんが切ない、苦しい、だからこそ切実なお話を書かれるのが上手な方だなと思いました。虫シリーズ……食わず嫌いせず手をつけてみようかな、、

3

この作品が収納されている本棚

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