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池玲文先生は本当に引き出しの多い作家様なんですね〜!今作もバラエティに富んでいて、圧倒されます。
「涕涙まくら」
ガチ兄弟もの。全然似てない兄弟で、お互いに執着しあって。いま、完全に両想い。でもいつかは別れが……その切なさを言外に読むのでしょうか?
「指喰い、月の色人」
ホラーですね。だけど哀しい。
自分が何故そんな衝動を抱くのか、自分は一体何者なのか。何もわからずに今恋を失おうとしている。
竣は消え、亜希生は一生消えない何かが刻み込まれたまま。
作画が美麗なので、口の周りを血で染める竣の描写など、非常に耽美的です。
「シューカツ」
打って変わってコミカルな。?いやグロい?。何気な〜く残酷描写あり。
就職の決まらない壇田27才がスカウトされたのは、なんと地獄の鬼役!
こちらは美麗画であるがゆえに、よりシュールです。エロより笑い。
「宵越しルーガルー ザ・本能」
人狼のH場面のみの超短編。アレが抜けない!というコミカルテイスト。
「夏に死にゆく物語」
池先生のイマジネーションの世界は、宇宙に届くほど広いのですね!
不寛容で規制ばかりの世界に、ユーモアでNOを叫ぶ。深いけれど笑いで包んでくれるのです。
表紙だけでは計り知れない作品たちが詰まった一冊です。
ご自身は「少々カオスな作品集」とあとがきで仰られているんですが、私はこの短編集結構気に入ってます。
コミカルだったり、シュールだったり、切なかったり、ファンタジーだったり、直球エロだったり、ビアズリー的耽美だったり…様々な作風のBLを描かれる池玲文さんの魅力が少しずつ詰まっていて、1冊で色んな池さんを楽しめます!
唯一ここに足りていないのは、媚シリーズのような甘々のお話かな。
「涕涙まくら」
実兄弟モノ。兄×弟。切ない。
「指喰い、月の色人」(全2話)
ダークホラー風味のファンタジー。
「シューカツ」
閻魔×鬼に就職した人間。コミカル。BL未満。
「宵越しルーガルー」(4ページSS)
人狼村、今宵も元気に発情中!
「夏に死にゆく物語」
あの条例への痛烈な風刺または疑問提起。
一番好きだなぁと思うのは「指喰い、月の色人」。
『No.99:人間玩具』収録の「雪ぐサディズム」、『Geofront』収録の「女帝の首狩り」と並んで、萌えとは別のところでお気に入りの池作品です。
池玲文さんのこういうエロスとタナトスを潜ませた耽美な作品すごい好き。
中村明日美子さんや座裏屋蘭丸さん同様、広い意味でアーティスティックな方なのだろうなぁ。
ビジュアル的には、「シューカツ」の閻魔様と「夏に死にゆく物語」の国家権力様が非常に美しく、眼福です。
改めて、池玲文さん好きだー!!!と思った1冊でした。
5つの話が入った短編集。あとがきでも書かれていますが、少々カオスな作風で、東京都の条例が変更される前と言うことで、漫画家として色々と考えて描かれた作品のようです。表題作と、『指喰い、月の色人』が好きでした。
・『涕涙まくら』
2つ違いの兄と弟。容姿端麗で勉強も出来る弟と、優しいだけが取り柄の兄。兄は全てが平凡で自らを「出来そこないの方」と言う。けれども自嘲しているわけではない。
優しい兄は弟を犯し、弟は優しさの見返りに体を与えている。兄の優しさは全ての人に向けられるけれど、犯す対象は自分だけだ、だから僕だけを見ていると思っていたのに・・・。兄が女生徒と遅くに帰宅したところを見て、自分の方こそ、兄弟以上の感情を抱いていたと気付くのです。自ら兄の上に乗り、「好き」と言いながら涙する弟を見て、兄は雨の如く涕涙します。兄の複雑な涙がいいのですよ!禁忌の苦しみと恐れ、弟への申し訳なさ、兄としての責任感、けれどもそれらのすべてを上回る幸福感に「嬉しい」と何度も言いながら、まくらを濡らすのです。兄の嗚咽が聞こえるようで胸がキリキリ痛みます。兄目線の話とか、子供の頃、そしてこの先の話も読んでみたいと思いますが、最後の「不安で不安でただ、しがみついた」というモノローグに、ハッピーエンドが想像できなくて、それならここで終わるのがやはり一番いいのかなと思いました。
・『指喰い、月の色人 』前後編
ミステリー仕立ての物語。愛しあっていた幼馴染は実は指喰いだったというお話なのですが、結局その正体はわかりません。本人にすらわからないのですから、池先生にもわからないのでは?と思います。謎を謎のまま放りだすミステリー、私は嫌いじゃないです。むしろ真相を求めてあれこれ考えるのが楽しくて好きなのです。まぁいくら考えてもわからないし、わかったとしても確かめることが出来るわけでもなく。それでも、想像するのです。竣が指を食べ始めたのは亜希生と出会ったからなのかな?とか、地元の子供たちの中で一人離れたところで遊んでいた竣は、その頃からすでにみんなとは違う子供だったのでは?とか、体の成長や亜希生との関係が飢えのサイクルと関係があるのか?と、そして姿を消したのは亜希生を本当に愛していたからなのだろうと確信すると、満月の夜に、亜希生が窓を開けて眠るのを、やめられない気持ちがよくわかる気がするのです。
私の記憶では「月の色人」は羽衣伝説だったと思います。確か羽衣を返してもらった天女が、天に帰る姿が月のように美しい様を、月の色人と呼んでいました。亜希生も月を見るたびに思い出すのでしょうか。自分を魅了した美しい色人の姿を・・・。
・『シューカツ』
就活で苦労する学生が地獄に就職するお話なのですが、研修生の制服が鬼のパンツって!小さなツノに鬼のパンツにスニーカー。笑えます。
・『宵越しルーガルー』
獣さながらに致すお話
・『夏に死にゆく物語』
池先生がきょとんとするという予言付きのお話。・・・という漫画を描くゲイの漫画家、というオチの後に、それを描く池先生という再オチがあり、カバー下に更なるオチがあるという、カオスな作品。
耽美な池先生と、シュールなギャグの池先生が楽しめる短編集でした。
『涕涙まくら』でハッピーエンドが想像できないとレビューしましたが、池先生のブログでその後の二人の甘く愛しあう姿が見られます!
5作品収録の短編集。
表題作「指喰い、月の色人」「シューカツ」「宵越しルーガルー」「夏に死にゆく物語」
兄弟もの、吸血鬼?もの、地獄もの、獣人もの、そして最後はメッセージ漫画か。
池さんの絵は相変わらず美麗で、カバーそでのカラー画が表裏とも頗る好み。
表は「指喰い、月の色人」から、裏は「夏に死にゆく物語」から。
地獄物はBLテイストの結構エグイけれどコメディ、
獣人もの(あっという間に終わるけれど)はほぼエロのみ。
表題作は、美しく出来のよい弟と平凡な兄の物語。
弟を甘やかし溺愛するどこまでも優しい兄。
弟はそんな兄を結果的に誘うような行動を取ってしまい、二人は関係を持っているのだが、
ある日兄が女子と仲良くしている姿を目撃し激しく動揺する……
ここからのそれぞれの言葉で語られない気持ちの動きが、やるせなくていい。
刹那の幸せ。
「夏に死にゆく〜」は、あらゆるものが規制されている世界に生きるゲイの漫画家と
彼の恋人のロッカーの話。
後書きで東京都の条例の影響で急遽予定を早めての発刊されたことも書かれており、
この作品は作者の抵抗であり声明であることはハッキリうかがえる。
ナンセンスなSFのようなストーリーなのだが、話としてはあんぐりぶっとびで、
内容的には面白いとは言えないのだが……
表題作が「18歳未満の兄弟物」であるこの本に、この作品を載せたところに、
意味があるのだろう。
「涕涙まくらオマケ。」のちっこい禁忌キッズが、可愛かった♡