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表題作砂の国の鳥籠

イドリース,ザハラム王国第四王子
ハル,記憶喪失の日本人

その他の収録作品

  • 籠から逃げた鳥
  • あとがき

あらすじ

お前の名はハル、俺達は友達だった──目覚めた時、記憶を失っていたハルに、彼はそれだけを教えてくれた。アラビア風の衣服を纏った、不遜な隻眼の男イドリース。日本人の自分が、彼の屋敷の巨大な鳥籠に囲われ、どう見ても高貴なイドリースに傅かれて暮らすことの不自然さに、他に頼る者もないハルは気づかずにいたが…。

作品情報

作品名
砂の国の鳥籠
著者
成瀬かの 
イラスト
三枝シマ 
媒体
小説
出版社
心交社
レーベル
ショコラ文庫
発売日
ISBN
9784778111878
3.4

(50)

(9)

萌々

(18)

(15)

中立

(3)

趣味じゃない

(5)

レビュー数
11
得点
165
評価数
50
平均
3.4 / 5
神率
18%

レビュー投稿数11

美しい鳥籠の中の君

目覚めればそこは、美しい装飾と植物で溢れる巨大な鳥籠の中だった。

一風変わったアラブものでした。
アラブものといえば…な定番アラブではなかったのが予想外で良かったです。
見知らぬ部屋、美しく巨大な鳥籠、痩せ細った身体、友人だと語る隻眼の褐色肌の美丈夫。
全編受けのハル視点の今作。彼が記憶を失っていて何もかもがわからない状態なので、現代物でありながらどこかファンタジーのようでいて、現実なのか夢なのかが曖昧になるミステリアスな空気を纏いながら進んでいくのは面白かったです。
設定を含め、前半部分はとても好みでした。
人間用の美しい鳥籠の中で、記憶がないハルを見守り献身的に甲斐甲斐しく世話をする攻め・イドリースの図は2人だけの閉鎖的な箱庭のようで素敵。

ただちょっと、あまりにも失った記憶の描写が少ないまま進んでいくことに途中で焦れてしまったり、物語の展開に強く惹かれるものがないままスパッと突然ブツ切りのように終わってしまったのが残念。
恋愛面でもなぜなにどうしてとなってしまい惜しいですし、この受けならではの良さがもっとほしかったです。
健気で一途なアラブ攻めは良かったのですが。
設定はすごく良いなと感じるものばかりだっただけに、もう少しバランス良くじっくりと読みたかった。

0

アラブ男性に全ての世話を委ねる快感。

成瀬かの先生の作品を読むのは二作目なのですが、
平易だけれど的を射た文章を書かれる方なので、今作もサクサクと読め、気持ちが良かったです。

今回は、記憶喪失の男の子ハルが主人公。目覚めたら美しい庭園風の巨大な鳥かごの中にいて、見知らぬアラブ人イドリースが世話をしてくれてーといったストーリー。

美しい監禁ものかと思いきや、後半は中東情勢らしい、かなり血なまぐさい展開になっていき、良くも悪くも引き込まれました。
(すこーしですがグロ描写もあるので苦手な方はご注意を)
イドリースがとても男前で格好良いです。地道に世話をしてくれて、寡黙だけれど情熱的。
それに対してハルは、記憶がないせいか、イドリースを信じたり疑ったり、逃げてみたり抱きついてみたり、忙しいです。
この主人公ハルのオロオロ、優柔不断ぶりが、どう見ても少女にしか見えないイラストと相まって、若干腹立たしく感じてしまいました。
いやいや、イドリースパダリだから大丈夫!落ち着け!と何度心で訴えたか(笑)
そして実は、ハルは立派な仕事を持つ成人男性…ええーそんなばかなー。

大筋のストーリーや雰囲気はとても良いので、惜しい…の一言です。
かわいい系の受がお好きな方であれば、違和感なく受け止められるかもしれません。

1

表紙とタイトル買い

変化球アラブ。
王子な攻が不器用健気です。
記憶喪失な受は、おどおど兎のようで、見た目は15歳くらい……。

記憶喪失の受の一人称で進むので、焦れます。
あまりにも謎が多く、ヒントも少ないので正直イラッとすることも。
どうやって記憶を失って現状に至るのかという部分がとにかくもどかしく、先を知ることに重点を置きすぎてしまい、感情移入できませんでした。
なので、物語中盤の内容などは正直あまり覚えてません。
結局最後の方まで記憶があやふやだったので、攻からの手紙で胸がキュンとしたくらいでいまいち乗れなかったのが残念です。
追い打ちが、迎えに来た受の家族が受け付けなかった……。
受の職業は医者で、兄妹全員英語堪能なのに両親は英語ダメって。
何だか育った環境を想像しちゃったというか、実は家計に余裕はなく奨学金で医大に行ってうんぬんかんぬんしたの? とか、余計なことばかりを考えてしまいました。受の環境も細かく描写してくれてたら、あまり違和感は感じなかったかも。
で、最後だけドタバタコメディっぽくなんだか現実感のない設定に撃沈。

いろんなとこで評価が高く楽しみにしてたのですが、期待しすぎだったのかも。
庇護されすぎる受が苦手なのも敗因だったと思います。
個人的にはオマケSSペーパーの話が好きでした。
アラブのお約束をきちんと入れながらも、アラブらしいアラブではないので、その辺は結構面白かったです。
もう一捻りあれば、ぐぐっと自分の中で評価があがったかなという印象。

5

こんな鳥籠なら経験してみたいかも

成瀬さんのファンタジー…ではなく、アラブ〜物です。
成瀬さんがアラブ…不思議な感じです。

まさかの一人称。
ただ『僕』なので、個人的にはホッとしています。そして、記憶喪失物です。

**********************
受けのハルは日本人ということだけで、あとの記憶はなくしている青年。
気づくと体の筋力は衰え、一人では着替えもままならない体となっていました。

攻めは浅黒い肌に隻眼のイドリース。
アラブのザハラム王の第四子で、ハルを誰にも触れさせず、自分で保護し世話をしています。
**********************

意識を取り戻した時ハルは記憶を失っていて、どうやら籠の鳥(比喩でなく大きな美しい籠)として暮らしてきたよう。
そのハルの世話をし献身的に尽くすイドリースは優しくて、なぜかハルにとっては見知らぬ人間であるにも関わらず無条件に安心できる存在でした。
この状況に、自分はイドリースに飼われているのでは?という疑問を持ちつつも。

イドリースがハルへ求愛するシーンはその後の無体へ続くものの、個人的には惚れ惚れしました。
跪いて服の裾にキス。
ああ、なんて王子様ちっく。や、本当の王子様ですけどね。
二年前までは、王位継承の最有力と言われていたイドリース。
ザハラム王国は戒律が厳しく同性愛は死刑という環境であり、さらに国民の模範となるべき高貴な身分でありながらも、イドリースはハルを求めています。
もう、献身過ぎて切ない。

ハルのこれまでの状況やイドリースの失われた左眼については後半わかってくるのですが、それは書かない方が良いかなあ。
まあ、監禁とか攫うだとかはアラブBLのセオリーだとは思いますが、ちょっとその辺りがこの作品は違うのでご興味があれば読まれて確認してみてください。
ただ、ハルの過去の記憶と現在が時折入り混じり、これはどっち?となる場面も。
これは一人称なので仕方ないですし演出なのだとは思うのですが、ちょっと分かりづらいですね。
その辺りが気にならなければ、高貴な王子が献身的に尽くす様に萌えると思いますよ。
記憶喪失前も恋人だったのならともかく、出来上がってもいなかった相手へなので。

こちらの作品、挿絵はひじょうにホワホワした雰囲気で可愛い。
が!
この挿絵のハルはどう見ても10代後半、よくて20歳くらいにしか見えません。
作中の話し方なんかも子供っぽいんですよね。
ただ実際終盤にハルの過去が判明すると、ものすっごい違和感が。
どう考えても20代後半だろうという職業設定です。
これって大学生くらいにした方が、無理がなかったのではと思いました。
そして極め付けは、本編の終わり方!
これは雑誌掲載だったらしく、文庫化にあたりその後の二人を書いたSSが収録されているのですが、これがなかったら『ええ!?ここまで読んだのに?』となります。
雑誌で読んだ方がお気の毒ではないでしょうかね…
まあ、このSSもちょっと御都合主義ではあるのですが、気持ちの落とし所は見つかると思いますので。

4

閉ざされた世界

作品が持つ雰囲気と世界観が、とてもとても好みな小説です。

主人公のハルは、ある日気付くと美しく緑豊かな鳥籠の中に居た。
傍らには、まるで海賊のように片眼に眼帯をした褐色の肌の美情夫がいたが、眠りから目覚めたハルは彼のことはおろか自分のことも忘れていたーー
記憶がないまま、友人だというその男ーイドリースと鳥籠という狭い空間の中で幸せに暮らしていくが、ふとした瞬間、イドリースの自分を見つめる瞳に狂おしく狂暴な色が宿ることに気付きーー、というお話です。

ハルが記憶喪失で何も分からないままも、一緒にいて何故か安心できるイドリースと閉ざされた空間で二人で過ごす前半部分はとても良かったです。
多少冗長的な部分はあるにせよ、成瀬先生の柔らかく繊細な文章と美しく緻密な三枝先生の絵が神がかり的に上手く溶け込んでいて、作品の魅力を倍にしてくれていました。
表紙も凄く色使いが鮮やかでお気に入りなんですが、挿し絵もどれも素晴らしく、中でもハルが猫脚のバスタブで入浴しながらイドリースに髪を洗ってもらっている場面は、思わずうっとりしてしまう程、美しく素敵な一枚です。

正直、ハルの記憶が戻らないまま二人の世界が続いていく、という商業作品としてはあり得ない展開でも良かったと思うくらい、この閉ざされた世界観は好みでした。
それだけに、後半にかけて、二人以外の登場人物が出てきて記憶が少しづつ戻っていくと共に夢のような世界が壊れて現実に戻っていく描写は、仕方がないとはいえ残念な気持ちになってしまいました。

特に終盤、若干急速にお話が畳まれていく感じがしたので、もう少し記憶が戻っていく過程を人伝ではなくハル自身で体感して欲しかったのと、二人の甘い後日談をもうちょっと味わいたかったという気持ちはありますが・・、これは好みの作品故の我が儘でしょうか。
--それにしても、読み返す度にイドリースのハルへの愛情の深さがとてつもなく強いということがよく分かります。

1

書き下ろし部分あって良かった

はぁ(*´Д`*)ポポンッ
良かったぁっていうのが読み終わった時の気持ち。
これは書き下ろしが無かったら、涙涙で終わってたよね。
ほかの方が書かれてるけど、記憶のないハル同様、何があったの?どうして?って読んでいくうちに惹き込まれてしまった。
記憶のないハルもそんなハルを見守り続けたイドリースも辛かったろうなと思いつつ、幸せになれそうで良かったε-(´∀`*)ホッ
さらにそれを見続けてたハサンはイライラしてたんだろうなw
書き下ろしはハルの兄妹に笑わせてもらった。
特典の小冊子読んでみたかったなぁ。
<追記>
電子書籍で買ったんだけれども、特典の「神様お願い」があとがきとか奥付の後にひっそり収録されてたw
嬉しいサプライズ(なのか?)
目次とか説明にも収録されてるって書いてなかったから、付いてるとは思わなかったよ!

2

一風変わったアラブモノ

帯『何も思い出さずに俺の傍にいてくれ―。』

アラブテンプレではなく、一風変わったアラブモノです。
何故ならこの主人公、ハル〔受〕はアラブの宮殿に軟禁されてはいるけれど記憶喪失なのですな。
記憶喪失だから何だどうなっているのか分からない。
その導入部分から、徐々に記憶を取り戻して行く過程が書かれています。

イドリース〔攻〕もアラブにありがちな強引な俺様攻めではなく、傍らについていてくれるといった攻で、隻目な点も気になりますがそこも含めて過去が明かされます。

アラブテンプレは苦手な方もこれはいけるんじゃないかな。

4

読者も記憶喪失感覚

レビューなどの事前情報を得ずに、
まっさらな状態で読んだ方が、より楽しめるかも、と思いました。

というのも、記憶喪失の受が目覚めてから得る情報が
とにかく少なくて、読み手が理解するのも一苦労。
でもそれが、受の心理状態と一体化できる要因になっていて。

つまり、【記憶がない=情報がない】という状況を
受と同様な気持ちで、模索していくワケです。
なぜ?
どうして?
なんで?
とまどいや不安、安堵したり、疑心暗鬼になったり。
そういった様々な感情を、受と共有し、謎を解明していく・・・。
まるでミステリーを読んでるような感じでした。

そして、記憶をすべて取り戻した時。
すっきり爽快!
というだけじゃなく、複雑で、切なくて・・・泣きました。


王道な拉致・監禁も、テンプレとは一味違うし、
政治や宗教のダークな部分も盛り込んだ深みのある作品でした。
他にも、萌え要素がギッシリてんこ盛り♪
受の職業がイメージに合わなくて違和感を感じたのと
受の家族がなんか微妙だったな~ということ以外は
すんごくヨかったです!

初読は受視点。
そして改めて、攻の立場になって再読すると、二度おいしいです。
不器用で健気な執着攻が、とても愛おしかった!!
私、こういうの大好きなんです♪
その後のラブラブな話とか攻視点での話とか、もっと読みたいな。
成瀬先生、一生ついていきます!

4

ちょっと入り込めなかった・・・。

今回はちょっと内容が難しいというか、中々入り込めないんだけれど、先が気になってしまう。
アラブもので、しかも記憶喪失もの!
記憶喪失だから謎が多いし、どうしてそうなったのか?前の二人の関係は?って気になってドンドン先に進んで行くんだけれども、そのせいなのか?私の理解力が足り無いのか、中盤あたりはあまり覚えていない。

ただイドリースのハルへの想いだけがすごく苦しくて切なくて、っていうイメージのみ残っています。


怖い夢を見ていて目が覚めたら豪華な部屋で眠っていた・・・。
腕には点滴が刺さっていて、それを外して立ち上がろうとしたけれど、立つことも出来ない・・・。
それに気付いた、部屋の主が『ハル』と話しかけてくるけれど、
それが自分の名前なのかも分からない・・・、そしてまた眠りに付いてしまった。


記憶喪失ものなのですが、何か事件が起きてそれに巻き込まれてしまったハルは、その後2年もの間、眠り続けていたのです。

2年も眠り続けていたのだからもちろん体力なんてものはなく、自分で立ち上がる事すら出来ないです。
すべて世話をしてくれているイドリース。
彼はハルの友達だといいます。
一日の半分以上は眠っているのですが、外に出てみようと扉に触れた時に、鍵がかかっていて出れなかったのです。よくよく部屋を見て見れば、鳥籠のような部屋。

もしかして自分は監禁されているのだろうか?と疑心暗鬼になるハル。
そう思っていると、食事に外へ連れて行ってくれるイドリース。
庭に食事を用意されてその日からは、外で食事をすることになりました。


監禁されているわけではないけれど、毎夜みる怖い夢と過去に起きた出来事が関連していることは分かる。
そしてイドリースのことを信じきれないハル。

そしてある日イドリースにキスをされてしまう。

イドリースはあまり感情を表に出さないタイプみたいなので、余計にハルの事を思っている気持ちが切なくて苦しく伝わってきました。


イドリースの国では同性恋愛は罪とされていて、かなり思い罰を受けるみたいです。
そして彼は王子なのです。その事を聞いたハルは余計に彼の思いを受け入れる事は出来なくなりました。
記憶も戻っていなし、自分を助けてくれたのはイドリースだろうとは思っているけれど、恋愛とかそこまでの余裕はないハル。


てな感じでなかなか記憶が戻らないし過去の事件のキーワードはチラホラ出てくるものの核心がつかないで、ラストが気になって気になって、ゆっくり読めなかったのが正直な感想です。


今回は、なんとなく入り込めにくい雰囲気というのかな?でも原因が気になる。
だから先を急いでしまうっていうか悪循環にはまってしまいました。

でもイドリースの気持ちって言うのが、切なくてイドリースの乳兄弟が眠っている間のイドリースの行動や、
最後の手紙なんかはすごく愛おしく感じました。


3

アラブ物だけどアラブじゃ無い

前半部分ではハルが目覚め、全ての記憶が無くなっているのに初めて目にした相手を
まるでヒナの刷り込みのように無条件で子供の様に懐きまくるハルとまるで姫にでも傅くがごとく
甲斐甲斐しく世話をするイドリース。
目覚めてからは砂漠の砂が水を吸収するような速さでイドリースと会話し次第に体力も戻ってくると
自分が寝起きする家がまるで鳥籠のような部屋でイドリース以外の出入りは無く、
不自然に感じはじめ外に出ようとして鍵が閉まっていて閉じ込められているのではと思うようになっていきます。
このお話のポイントになるのが時間だと思いますね。
ハルが目覚めてからのお話なのですが、前半には語られることのない時の流れがイドリースにあります。
ハルには目覚める前の記憶がないので目覚めてからのイドリースとの時間が唯一。
それによって、感情や思いの違いに大きな溝があります。
ハルの記憶が戻れば・・・
しかしイドリースはハルの記憶が戻る事を望んでいないのです。
ハルもまた日々悪夢に苛まれるように・・・
それが記憶を呼び戻すのを阻害しながらも反面断片的な
記憶の欠片が浮かんでくるようになります。その記憶にイドリースが現われる事で
今の自分の不自然な生活が全てイドリースの仕業ではないかとまで思い詰める。
記憶がないので仕方ないけどあまりにもイドリースが可哀そうでしたね。
最後はハッピーエンドなので切ないばかりのストーリーでないですしアラブ物特有のギラギラBLとも違うのでお勧め出来るお話でした。

2

アラブ苦手でも、このアラブなら大丈夫!

待ってました!成瀬かのさんのアラブもの。
実はとっても不安だったんです。
あらすじを見ても、内容はほとんど伏せてあります。
彼等の性格も見えないし、これが傲慢俺様の攻めで、ラストに向かってベタコテになったら・・・というアラブもの王道展開への苦手要素が頭をかすめて。
しかしですねー、やっぱり成瀬さんでした。

目が覚めると自分は部屋の中の鳥籠の中で寝ていて、身体がいうことをきかない。
自分が誰なのかも、どうしてここにいるのかもわからない。
世話をしてくれる、左目に眼帯をつけた隻目で顔に傷のある男はイドリースだと名乗り、自分はハルという名前で友人だという。
ハルは夢でアラブ服の男に襲われる怖い夢をいつも見て、多分それが自分の過去に関係あるのだと思うが、イドリースもそれに関係あるのだろうかと思うが何もわからない。
体力も戻らず、逃げたいのに逃げられない。
イドリースは親切にしてくれるが、自分を外へ出してくれず、食事の時以外は部屋に閉じ込めて鍵をかけてしまう。
親切にしていてくれるイドリースが突然キスをして、ハルを襲う。
怖くて拒否をすれば、それ以降無理強いはしないイドリース。
二人の気持ちは全く平行線で、寄り添う気配もなく・・・
一体二人にはどんな関係が?

とにかく、このハルの記憶に全てがかかっています。
彼が記憶を失っていたのも、寝ていた時間というのも、重要な要素です。
ほとんど後半まで、ハルの囚われた生活が続き、少しずつではあるけれど、その中でまずイドリースの事があかされていきますが、ハルについては一進一退で、イドリースを悪くは思わないのに、無意識に拒否をしてしまう何かがある、という展開がなされていき全く甘さがありません。

イドリースは、その身分からというかアラブの特徴的な俺様部分もあったりしますが、基本健気でちょっとヘタレであったりします(途中暴走してしまいますが)
ただ、そのアラブの展開の中で、そのアラブの気質というか国家の在り方とか(テロの事を例にあげて)、罪へ対する容赦ない罰とか、そういうものをきちんと置いていて、都合良く西洋化されていない民族性を重んじている部分が、簡単に”花嫁”とかいうもっていきかたをしていないのが、自分的に受け入れられるアラブな面だったのだと思います。

ひどい部分は容赦なくひどい、
ハッピーエンドではあるのだけど、成瀬さんの過去作品のように、完全に甘いとはいえず、主人公が何かしら背負ったハッピーエンドである、という部分がかなり特徴的なんだと思い、それが好みな部分でもあると思います。
謎が解かれることによって、そうだったのかー。
という部分、そこへ至るまでが実に長く、ともすればじれったくイライラモヤモヤしてしまう可能性もあるかもしれませんが、あまあまラストでないことでそのエンドのあっけなさに、拍子抜けしてしまう危険も含んでいるかも?と客観視できないこともないです。
『籠から逃げた鳥』があって、初めて安堵が訪れます。
そうなって初めて、やっと二人のこれからがはじまるんだな、とそういう構成だったのだと思われます。

このお話も番外とか同人とかで、ラブ甘が楽しめそうな、ちょっと惜しみ出しだな~イケズ!と思ってしまったりww

3

この作品が収納されている本棚

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