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表題作琥珀色のなみだ~子狐の恋~

鐵 都を離れ山里に暮らす武士
琥珀 鐵が山中で拾った子狐で狐神様

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

都から逃れ、人を避けて暮していた鐵は、子狐を拾い琥珀と名付け育てる。無邪気に懐いてくる琥珀に、忘れかけていた愛情を取り戻していく鐵。だがある朝、琥珀は人の姿へと変化し、里人から狐神と奉られるようになる。自分には神の力の片鱗もないと落ち込む琥珀を鐵は慈しみ、やがて琥珀も鐵の孤独と優しさに恋心を抱いていった。そんな時、狐神の噂を聞きつけた帝が兵を放ち??…。

作品情報

作品名
琥珀色のなみだ~子狐の恋~
著者
成瀬かの 
イラスト
yoco 
媒体
小説
出版社
フロンティアワークス
レーベル
ダリア文庫
発売日
ISBN
9784861346156
4.2

(62)

(35)

萌々

(20)

(1)

中立

(1)

趣味じゃない

(5)

レビュー数
10
得点
259
評価数
62
平均
4.2 / 5
神率
56.5%

レビュー投稿数10

おもいっきり泣いちゃいました

泣けるからいいってもんじゃない、感動したからいいってもんじゃない。
「神」評価の基準はいつもあいまいで、その時のメンタルにもよるのだが、何か心の琴線にふれるどころかかき鳴らして乱されても、その評価がでるわけじゃなく。
では、何がよかったのか?
こういうときばかりは言葉にできないものなのです。

とてもとても作者さん言う所の「一番ピュアな話」エッチもエロもありません。
深い心の結びつきです。
なので簡単に言ってしまうとBL臭のある、というところであるが、やはり「愛」というものを描くとき、そこに性別は関係なくなってしまうのです。
BLって男同士の恋愛云々とは思うけど、ある種のファンタジーで、そこには男ならでは、というあこがれの部分と、男という形を借りた性別を超越したものが存在しているとは思っていたのですが、こういう形で提示されると、それをやはり認めざるを得ないのです。
「愛」を描く物語として、とても心が動かされて、ちょっぴり懐かしさもともない、思わず童心にかえってしまったような、そんな純粋さを与えられた ”喜び” なのかもしれません。

敬愛してあがめていた主である皇子に裏切られ逃げ延び、里の山でひっそりと身を隠し厭世的な生を過ごしている時に拾った狐の子。
彼が成長と共に人型をとったことから里に豊饒をもたらす「狐神」としてあがめられるのだが、その存在が自分よりも優れている者を認めない非情で冷酷な帝の耳に入り、追わることになる。

このストーリーの中で描かれる子狐の琥珀。
彼は純真無垢でただひたすらに自分を育ててくれた鐵を慕う、一人の小さな幼子であり、神としてなにができるわけでもない。
しかし、彼が「神」という存在であること自体が少年の形をとっていても、すでに性別を超越した存在と思えたのです。
ですから、この結末が非常に心を打つモノになりました。
そうなのです。
たとえ実体はなくなっても、彼の存在自体がいつも鐵と共にある。
実体がないのは寂しいことですが、この「愛」のカタチはステキなものだと思います。

琥珀が育って行く様、育って行く感情。
鐵の心の変遷。
そして時代設定だからこその里人の様子と信仰の姿。
忘れてならないのは、帝が生きた鬼のような人間である其の描写も。
つきなみな表現が非常に言いづらいのだが、心が洗われたような、そんな作品でした。
イラストは多分初見の方?カラー扉が山本タカト風の色遣いとタッチでひきこまれますし、白黒の中のイラストも素敵でした。

13

与える「愛」に感動

ケモミミに惹かれての購入でしたが、想像以上に切なく良い話でした。
限りなくプラトニックで自分のことより相手を思いやっている、
恋より愛の気持ちが強いような関係を描いた作品です。

訳あって山里に暮らす武士・鐵(くろがね)が、山中で拾った子狐・琥珀。
やがて琥珀は人の姿に成長し、里の人々から狐神様として崇められるようになるが
心は子どものまま、自分を拾い育ててくれた鐵を一心に慕っている。

少しずつ成長していく琥珀が本当にかわいく、読んでいてほっこりします。
童子の姿にケモミミ(+尻尾)という外見も愛くるしいですが、
鐵への想いがとにかくいじらしい。
鐵と一緒にいたくて、言葉の意味も分からず「嫁」になりたいと言ったり、
役に立ちたくて必死になったり…
はっきり「恋」と自覚しないまま一途に行動する姿が健気です。

鐵もまた、琥珀によって孤独な心を癒され、美しく成長した琥珀に強く惹かれている。
しかし琥珀は狐神様であり、自分のような人間が手を出していいはずがない…と踏みとどまります。

ある日、狐神の噂を聞いた帝が山中に兵を送り込み、そこに鐵が都を追われた過去も関わり、危険にさらされる鐵。
それまで秘められていた力を発揮し、山里の人々や鐵を助ける琥珀。
山々の「気」が作った神様である琥珀の癒やしの力や、その存在の儚さが感じられる
印象的なシーンです。鐵と琥珀の気持ちを思うと悲しい結末ですが、しかし時を越えるような強い絆を感じさせるラストはとても感動的。

設定や展開は違いますが、新美南吉の、きつねの童話を思い出すようなお話でした。
人ときつねの心の交流が温かい、少し切ないけど愛に溢れた作品。
あまりBLを読んだ気はしないのですが、読んでよかったと思えます。

10

萌える悲しさってあるのよね

大好きなもふもふ、でも中身はシリアスに切ないファンタジーでラストのもしかしての
余韻で救われる気がするストーリーでした。
簡単に言ってしまえるようなハッピーエンドの展開ではないのですよ。
沢山の人が理不尽にも命を奪われるし、主役のはずの二人まで・・・・
狐神様の琥珀の初めてのピュア過ぎる恋心に、過去から逃げて傷ついた攻め様が癒される。
神と人間の純愛な雰囲気で、でも悲恋傾向な雰囲気の内容でかなり切なかった。

個人的にはどんなに痛くても残酷でも切なくても、ファンタジーならではの甘いラストを
切に希望してしまう性質なので、物凄く心に染み入る話でも神評価は付けられなかった。
甘ちゃんの私には目に見える確かな未来が見えないとその後か気になってしまう(笑)
そして、1番個人的に悲しかったのが狼犬の雷鳴の結末!!
お願いだから助けて~~なんてジタバタしてしまいました。
いつもはダラダラ内容を書くのだけど、出来ればあらすじさらりでじっくり堪能して
欲しいかもと思った1冊です。

6

テッシュ必須

とってもピュアなお話なのですが、普段から小説にエロを求めて止まない私でも満足するような一冊です。

前半は、ニヤニヤするような癒しのシーンが多いです。
その一番の要因は何と言っても攻めの鐵が拾った子狐、琥珀。
この琥珀が、生まれたての無垢すぎるくらい無垢な存在で、本当に可愛いんです。
あまりにも可愛いとあざといなと穿った見方をしてしまう私から見ても可愛い!
例えば、鐵が大好きすぎて、彼が少し留守にするだけで大泣きするシーンがあるんです。こうやって文章にすると少しウザいと感じられてしまうようなシーンでも、キュンときてしまうので不思議です。
読者がここまで琥珀にメロメロなんです。作中の鐵が落ちないはずがありません。
今までつかえていた主人に裏切られ、生きる意味をなくし、まるで廃人のように暮らしていた鐵。
そんな彼が一途に鐵を想う琥珀に癒されて、己も琥珀を愛していく……その過程で本来の自分らしさを取り戻していく姿が私は好きでした。
この作品は、そんな彼の成長の記録と言ってもいいのではないでしょうか。
この作品を読んでいると、愛情っていろいろあるんだなぁと分かります。
琥珀と鐵の間にある愛情は、親子愛のようで恋人に対する愛のようで、形は変化していきましたが、根源にある「お互いを大切にする思い」「絆」がよく伝わってきて、じーんときます。

しかし、そんなほのぼので終わってくれないのが本作。
後半は、とにかく急展開!
敵として、鐵の前の主人が琥珀を狙って彼らが住む村を襲います。
息つく暇もないといいますか、どうなるの??二人はどうなるの??!!とハラハラドキドキしながら読み進めることになりました。
結構平和?なBLを読んでいることが多いので、ここまでの禍々しい「悪」はある意味新鮮かもしれません。
鬼気迫る描写が、大変面白かったです。

ただ、ラストは賛否両論でしょうね。
勧善懲悪がやはり好きなので、そういった意味ではスッキリしました。
だからこそ、ラストは完璧なハッピーエンドであって欲しかった願望はどうしても出てしまいます。
終わりに余韻があるので、そこに希望を見出すか、もやもやととるかははっきりと分かれると思います。
ただ、エピローグの鐵の描写が個人的には好きなので、そこだけは救いだと思ってます。
鐵の成長の物語と記録と書きましたが、全てが終結した後の鐵が前半のような廃人に戻らず強く生きている。それが何より、琥珀のおかげに思えて、変化を楽しめました。

5

切なく哀しい

タイトルと表紙の通りモフモフ。
子狐の神様と、都落ちした武士の恋。
というよりも、子育てものです。
恋愛と言うよりも、愛です。
愛の中でも、家族愛とか、そっちに属するような雰囲気なので、BLかと言われると首を傾げてしまうところですが……。

前半は完全に子狐育成ものできゅんきゅんします。
モフモフ好きには悶え狂うほどの可愛さでした。
むっちりした赤子バージョンのままでもよかったくらい、もう攻じゃないですけど、この子が愛しくて愛しくて。
後半は帝が受の子狐を手に入れるたびに襲撃してくるんですが、こっからは怒濤の展開で息つく暇もありません。
ラストに向かい、え……まさかのバッドエンド??
とヒヤヒヤしながらページを捲る手がびくついてたんですが、これはこれで綺麗な終わり方だと思います。
ハピエンではないけど、こういった希望を匂わせてのエンドは大好物。
妄想が膨らみます。

ただ、1点、神評価にしなかった理由が……。
雷鳴の結末だけは、受け入れがたかったのです。
確かに美談かもしれませんが、わざわざあの結末にする意味が見いだせなかった。
この部分だけは悲しくて悲しくて涙があふれ出てしまったんですが、それが切ない涙でなく、やるせなく悲しいものだったので、満点評価は無理でした。
あのシーンがあったために、そこから盛り上がってせつなく感動の展開なんでしょうけど、私の中では感動半減。

挿絵のシンクロ率は凄いです。

5

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