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表題作罪の海に満ちる星

男子高の寮生 高殿義久・17歳
大叔母の養子 遊美学・17歳

その他の収録作品

  • 恋人の時間
  • あとがき

あらすじ

高校二年に進級した春、高殿義久は大伯母から、養子の遊美学の面倒を見て欲しいと頼まれる。
転校してきた学は明るく人懐こく、予想に反してすぐ同級生たちに馴染むが、寮に夜の帳が下りるとじゃれ合いというには過剰すぎるスキンシップを求め同室の義久を困惑させるのだった。
学はかつて実母に捨てられ、兄と二人きりで生活していた過去があった。

作品情報

作品名
罪の海に満ちる星
著者
森田しほ 
イラスト
竹美家らら 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
幻冬舎ルチル文庫
発売日
ISBN
9784344823983
3.1

(6)

(0)

萌々

(3)

(2)

中立

(0)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
2
得点
18
評価数
6
平均
3.1 / 5
神率
0%

レビュー投稿数2

兄だけが全てだった受けさまに・・・

運命の出会いのように過去に囚われている受け様と
困惑ともどかしさを抱えながらも傍に寄り添い二人の
未来を掴もうとする攻め様との悲しく切ないながらも
再生への一歩を踏み出す愛情物語でした。
ストーリーの構成自体はかなり重めで暗くなりがちかも知れません。
受け様の精神的に成長しきれていない無邪気さが却って
その重さを助長するんです。

親に捨てられ、残された10才と17才の兄弟、身勝手な
母親の残した借金に追われ食べる事もままならない日々
日雇いで仕事をし幼い弟と懸命に生きる兄
弟は学校へも行けずに外部との接触も無く壊れそうなあばら家で
兄の帰りだけをひたすら待つ、兄弟は飢えと寒さを凌ぐため
身を寄せるように抱き合いいつしかそれが禁忌に
そして、追いつめられた兄は弟と二人海へ・・・・・・
著者のサイトでアップしていた「兄の手」の続編とでもいうか
その後の弟がどうしているかのお話になります。

入水自殺を図って生き残った受け様は病院で目覚めるが大人たちの
兄を悪く言う内容を言われ誰にも心を開かなくなっていく。
そして学園を経営する老夫人の養子になりそこで攻め様と出会う。
誰にも心を開かなかった受け様が初めて懐いたのが攻め様。
そして数年後攻め様の学園に前の学校で問題を起こした受け様が
編入して来ることになる、受け様の義母になる大叔母の頼みで
攻め様が受け様の面倒を見る事になるのだが昼は無邪気なのに
夜になると攻め様に無邪気なエロスで抱いてと・・・
兄が迎えにこない寂しさと不安から兄と覚えた温めあう方法を
攻め様に求めてしまう受け様。
受け様は過去に囚われ兄の死を受け入れられず兄を一人にして
しまった事に無自覚で苦しんでいるんです。
そして攻め様と一緒にいる事を望みながらもその為に兄を忘れて
しまいそうになる受け様の混乱が切ないです。
初めは動揺していた攻め様ですが次第に受け様の事が理解出来
誰にも受け様の事を話さずに自分が味方でいようと思い始める。
大叔母が語った、受け様は半分涅槃にいるのだと言う言葉は
確かにそうなんだろうと思わせる内容でした。
受け様への思いを自覚してからの攻め様は受け様の傍に寄り添い、
全てを承知で受け様兄弟が辿った道を一緒に歩いたりします。
怯える受け様に自分は離れないからと・・・
攻め様が自分の傍に、現在生きている自分の元へ受け様を
引き上げる、二人で共にいる未来の為に。

ショートは、本編の暗さを払拭するような甘い感じでした。
高校を卒業して4年たった二人の恋人時間です。
二人が掴んだ幸せを堪能できるお話でステキでした。

1

半分涅槃にいる子

作者さんのサイトで綴られた「兄の掌」というお話の弟のその後編ということになるそうです。
文中に入れられた、その過去のお話は非常に辛く厳しく
育児放棄された兄弟が身を寄せ合って、二人だけでしのぐ姿が垣間見られます。
この弟にはどうしようもない救い難いものがあります。
重く苦しく、果たしてこの関係が進展したこの終わりでいいのだろうか?
確かに救われたハッピーエンドの形をとって、ラブ度の高い後日談としての短編があるのですが、”愛があれば”な結末は・・・?
しかし、その後というのはおいておいても、この弟が兄から解き放たれるその姿を描いた作品だとするならば、この展開もアリなのです。

資産家でボランティアにも理解のある大伯母が施設から引き取った子供・学。
彼には問題があり、学校を退学になった為に伯母の取り計らいで、義久の通う学校へ転入し、そして一緒の遼生活をすることになります。
過去にたった2回あっただけなのに、名前で義久を呼び懐いてくる学。
一体どこに問題があるのか?とおもいきや、義久は学の行動に悩まされる事になるのです。
それは、一緒に寝ようといってはセックスを求めてくるのです。
それは、学の兄との過去に関係してました。
学と仲好くなり、一緒につるんでいる西村という存在もあり、次第に学にかすかな欲情を覚える義久は、ついに学を拒否することができず自ら彼の身体に触るようになるのですが、学はその先を求めます。
そうしなければ、心と体の奥の寒さがなくならないと。
そして、とうとう義久と学は身体を繋げることになるのですが、学が不安定になりだします。

学は兄を求めていたのです。
兄が亡くなったことを認められない。
義久に兄の代わりを求めていたものが、学の欲求が満たされると、今度はだんだんと義久の事を考えて兄の事をわすれそうになり、自分を無意識に攻めて不安定な状態を見せる。
学は病んだ子供です。
義久が非常に客観的で冷静で、時に勢いで流されしまうこともあるけれど、それでも、事後にきちんと冷静に考えて判断して、学と接することができる。
学はカウンセリングを受けていましたが、大人は信用していない。
大人達は、何となく学と兄の関係を知っていたような気がします。
しかし、伯母は義久の性格を見込んであえて託したのでは(人身御供?)
そんな感じがします。

「義久があたためてくれるから、もう寒くないよ」
そんな学の言葉は、明らかに兄の代用。
兄と決別させるために、義久は学が兄と行った海に連れて行きます。
伯母のいう「半分、涅槃にいる子なの」
その涅槃から学を引き返させるため、それは役にたったのでしょうか?

学と仲好くなり、義久が軽い嫉妬を覚えた同級生の西村。
彼はほんとうは義久が好きだったようです。
しかし、義久は気が付かない鈍感w
学のほうが敏感だったようですね♪
そんな部分はちょっとクスっとさせられて、重い話の少しの息抜きではありました。

冒頭に描いたように重くて苦しいお話です。
それに涙をさそわれるかというと、感動したかというと、、、
熱を抑えめにして描かれたこのお話。
なかなか浮上せずラストまでいきましたので、痛い作品大好きな自分でも、緊張が続いて少し読むのに疲れてしまいました。

2

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