これが恋なら、私は喜んで落ちていこう

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表題作えとがみ-干支神-

百艶、干支神で寅神の皇子
北原瞬、祖母と惣菜店を営む対人恐怖症の青年、23

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

祖母と総菜店を営む瞬は、過去のトラウマによる対人恐怖症を抱えながらも、日々仕事に励んでいた。
そんな瞬の前に、村が祀る干支神の一柱である寅神の皇子・百艶が現れる。
天界を追われたという百艶は、瞬を気に入り世話係に任命すると、家に転がり込んできた。
奔放な彼に振り回される瞬だったが、次第にその心根に惹かれていき、百艶もまた、瞬を溺愛するようになる。
ところが、雷鳴と共に思いもよらぬ出来事が次々と起きて……!?

作品情報

作品名
えとがみ-干支神-
著者
犬飼のの 
イラスト
yoco 
媒体
小説
出版社
笠倉出版社
レーベル
クロスノベルス
発売日
ISBN
9784773089844
4.3

(134)

(73)

萌々

(39)

(17)

中立

(1)

趣味じゃない

(4)

レビュー数
18
得点
573
評価数
134
平均
4.3 / 5
神率
54.5%

レビュー投稿数18

この先、何十年でも何百年でも、二人が一緒に居られますように

新作になります。
干支の寅神様と、対人恐怖症を抱える青年との、超甘くて可愛い和風ファンタジーになります。

こちら、ファンタジーではあるんですけど、二人の恋愛模様としては至って等身大と言うか、平凡なんですよね。いい意味で。
偶然巡り会った二人が少しずつ少しずつ距離を縮め、優しい恋に落ちる。
これがもうひたすら甘くて可愛くて、キュンキュンしどおしと言いますか。
また、実は主人公(攻め)成長ものとしての側面もあるのが、とても素敵でして。
尊大で自分本位だった神様。
そんな彼が受けと共に過ごす毎日により変化して行くのが、とてもあたたかい気持ちにさせてくれるんですよ。
愛する相手の笑顔を守りたいと純粋に望む姿に、胸が熱くなるんですよ。


内容ですが、天界を追われた寅神の皇子・百艶×対人恐怖症の青年・瞬による、甘くて優しい和風ファンタジーになります。
基本的にはラブコメテイストながら、思いがけない衝撃の展開も訪れます。

干支神信仰が息づく小さな村で、祖母と共に惣菜店を営む瞬。
いつもように神社にお供えに訪れた所、明らかに人間では無い不思議な青年に出会います。
実は寅神の皇子でありながら、わけあって神通力を奪われ天界から追放された若き神・百艶なんですね。
彼は瞬を気に入り、自分の世話係として任命しますがー・・・と言うものです。

で、こちら、個人的に楽しくて仕方なかったのが、百艶のオトボケな言動だったりします。
そもそもですね、彼は「わけあって天界を追放され~」とか言ってますが、要はヤンチャをやらかしただけなのです。
えーと、雌神にフラれた腹いせに、その雌神の婚約者を誘惑して自分に夢中にさせた。
で、大神の怒りをかって追放された。
こう、わりとしょうもないヤツと言うんですかね。

そんな百艶のお相手となる瞬。
彼はですね、生真面目で大人しいのですが、芯の強い美人受けになります。

で、百艶がかなり世間知らずな言動を繰り広げてくれるんですよ。
「そなたにこの私の面倒を見る誉れを授けよう」てな感じで。
でも、彼のこの尊大な態度ですが、嫌味が無いと言いますか、言動そのものに妙な愛嬌があって笑いを誘われてしまう。
えーと、やたら偉そうなのにちゃんと思いやりがあるのも素敵で。

また、瞬がですね、信仰している神様である百艶をちゃんと敬いながらも、間違った事は指摘して反省を促すんですよ。
そんなワケで最初こそ偉そうに世話を焼かれっぱなしだった百艶ですが、瞬の惣菜店で汗を流して働きと、どんどん変化して行く。
ついでに、そんな日々の中、恋に落ちた神様は、瞬を溺愛するようになるんですね。
瞬また、そんな心根が真っ直ぐであたたかい神様に恋心を抱いて。

と、互いの気持ちを確かめ合い、恋人になる二人。
しかし、過去に同性の友人から襲われた経験により、触れられるとパニックを起こしてしまう瞬。
二人はなかなか、本当の意味で恋人の関係になれないんですね。
更に、百艶が天界を追放される原因となった、彼に「夢中になった婚約者」が現れー・・・と続きます。

こう、ここまでひたすらほのぼの甘々テイストでしたが、ここから驚きの展開。
一応ネタバレ無しにしときますが、とりあえず普通ではあり得ないと言うか、完全に予想外の方向にお話は転がります。
いや、ほのぼの甘々テイストだと油断していた為、「嘘でしょー!Σ( ̄□ ̄;)」みたいな。
「どうなっちゃうの・・・」みたいな。

う~ん・・・。
ただ、ここで百艶の見せる行動に、すごく心を打たれちゃって。
彼はですね、瞬と出会った当初、自分が中心だったんですよね。
いや、自己中と言うよりは、人間(?)として未成熟で相手を思いやる事に欠けていたと言うか。
が、瞬と出会い共に過ごした日々により、大きく成長した。
自分勝手すぎて天界を追放された彼が、今度はただただ愛する人の為だけに行動するー。
瞬の笑顔だけを望むその姿に、すごくグッと来ちゃって。
くっ、神様、いじらし過ぎるよ!
そして、健気すぎるよ!!

そんな感じの、甘くて可愛くてクスッとさせてくれて、最後は驚きの展開で読ませてくれる、とても素敵な作品でした。
この先、何十年でもなんなら百年でも、二人が一緒に居られますように・・・。

30

笑いあり、萌えあり、そして飯テロに注意。

作家買い。

犬飼さんの新刊はファンタジーもの。
犬飼さんは時にめっちゃ痛い作品も描かれますが、この作品はすんごく優しいお話でした。でも、優しいだけでもない。犬飼さんらしい、一捻りも二捻りもある、そんな作品です。

主人公は祖母とお総菜屋を営む瞬。
祖母の影響もあり、干支神を信仰する信仰深い青年。日々お参りを欠かさず、お供え物もきちんと用意し、祠も綺麗に掃除している。

ある日いつものように祠にお参りに行った際に寅神である百艶と出会い―。

百艶という寅神さまが、爆笑必至です。
めっちゃ偉そうなの。
干支神の中でも上位層に位置している神さま、という事もあって、常に不遜。

が、そんな百艶を瞬と彼の祖母ははきちんと敬うので彼らの間に軋轢はなし。
彼らのやり取りが非常にコミカルで面白いんです。

百艶は、瞬たちが信仰する干支神さま、ということでパッと見は百艶に傅く瞬たち、という構図になっています。

なっていますが、でも、彼らが共に生活していくなかで築きあがっていく関係は、百艶が瞬に成長させてもらっている、という関係。卑屈でもなく、無理やりでもなく、彼らは信頼関係を築き上げ、そしてその想いが恋愛感情にまで育っていく。

この展開が無理のないストーリーで、さすが犬飼さんといった感じ。

イケメンで、神さまたちの中でも上位に位置していて、だからモテモテだった百艶。
ゆえに他人の感情の機微に疎かった。
が、彼は決して愚鈍ではない。
だからこそ、瞬とともに暮らすうちに、感情面が育っていったんでしょう。

百艶、という神さまが人間界に降りてきた理由が、これがまた外道なんです。
でも彼に悪気は全くなかったんですよね。
瞬たちと暮らすようになっても、彼の天然ぶりは変わらず。でも、瞬の様子を見て自分で自分のダメなところに気づく聡さもある。
だから、憎めない。

瞬はとある理由から対人恐怖症になっていますが、百艶と少しずつ乗り越えていこうとするシーンに萌えが滾りました。

百艶の破天荒な言動に爆笑し、瞬の健気さに萌え滾り、このままほっこり終わるのかな~、と思いきやそうはならない。犬飼作品だからですね。

瞬を大きなアクシデントが襲いますが、そんな中、瞬とともに生きる事を決意した百艶のカッコよさに悶絶しました。この作品は瞬の健気さを描いた作品かと思いきや、百艶の想いの深さにキュン死する作品なのです。

笑いあり、萌えあり。
そのバランスが絶妙で、序盤から最後までページを捲る手が止められませんでした。

しかし。
さらにプラスされるのは飯テロ。
お総菜屋を営んでいる青年、という事で、出てくるお惣菜が美味しそうで…。

これ、夜読んだら飯テロにあうこと必至です。
今、猛烈に肉巻きおにぎりが食べたい…。

18

序盤・中盤・終盤と、変化する味の違いにやられる。

楽しみにしていた犬飼のの先生の新刊。
表紙とタイトルから、しっとりとしたシリアスな和風ファンタジーを想像しましたが、帯にある〔神様はバイト中⁉︎〕という一文が示す通り、非日常的な設定でありながらも人間と暮らす神の日常を描いた、親しみやすいファンタジーでした。
ほのぼのしたテイストの前半、予想だにしない怒涛の展開と愛の深さに胸を熱く震わせられた後半。
そして「読んでよかった!」というあたたかい余韻が残る読後感。
いろいろなものが詰まった一冊ですが、全編を彩る「愛」が本当に優しく、大きな柱となっていたのが印象的でした。

干支神信仰が残る御多神村で、祖母と2人、総菜屋を営みながら質素に暮らす対人恐怖症を抱えた青年・北原瞬と、大神の怒りを買い、天界を追放され人界に落ちてきた美しき寅神の皇子・百艶の恋物語。

ファンタジー小説を読み慣れていないせいもあり、最初は神社での2人の出会いから、百艶をもてなし世話するために家に連れ帰るまでの展開や、2人のコミカルな会話が、あまりに葛藤なくスムーズなことに少々拍子抜けしたのですが、そのおかげですんなり物語の世界へ入っていけた気がします。

尊大で俺様な百艶と、美しい寅神様の世話が出来ることが嬉しくて仕方ない健気な瞬。
ですが、百艶の求めに従い無理なもてなしを続ける日々は、仕事をする瞬の体力を奪い、北原家の財政も圧迫し始めます。
百艶にずっと家にいて欲しいからこそ、もてなしに限界があることを正直に伝えないといけないジレンマを抱え、悩む瞬。

そんな中、百艶が天界を追放された理由が、大神である辰神の皇子・翠綺を色恋で弄んだためだと知った瞬は、意を決して、労働の尊さを教え、翠綺や大神に反省を示すためにも、人界で遊んでばかりいるのではなく、汗水流して働くことを勧めます。
そこからしばらくは、人間の姿に変身して総菜屋で働く百艶の様子などが描かれ、ほのぼのと楽しい♪
賢い百艶は、労働の中で様々なものを学んでいきます。
そして、生活を共にするうちに、童子のように愛くるしく、健気で優しく、神の自分に対しても苦言を呈したり叱ったりと、いろいろな表情を見せてくれる瞬に恋をしてしまうのです。

一方瞬も、神を相手に恐れ多いと知りながらも、百艶に惹かれていく心が止められない。
そんな2人が想い通じ合って、身も心も結ばれようとするのですが…。

中盤からは、学生時代に同性の友人に襲われた恐怖から、肉体関係への強い拒否反応が出てしまう瞬のトラウマを2人で克服していく様子が、とても優しく描かれています。
天界で多くの浮名を流してきた美貌の神が、辛抱強く瞬の心を癒し、ゆっくり大切に体に触れていく様が本当に優しいのです。
我慢出来ずに瞬のほうから誘い結ばれるシーンは、めちゃくちゃエロいのに愛に溢れていて、たまらなく滾りました。

この蜜月が続いていけばいいな…

というところで、雷鳴と共に翠綺が百艶を迎えに人界に現れます。
ここから、思いもよらない怒涛の展開が繰り広げられ、後半は息つく暇も与えてくれません。

ネタバレは控えますが、
「え!?」「嘘でしょ…」「何故こんなことに」「やめて!」「どうなってしまうの…?」

ショックと喪失感の連続で、本当に最後の最後まで先が見えず、不安定な気持ちのまま読み進めました。
そんな中、深くまっすぐで頼もしい百艶の愛と、それを信じる瞬の健気な想いがただただ救いとなり…。

その分ラストは、これ以上ないくらいの、幸せな結末が待ち受けています!
もうね、こんな「出来過ぎでしょ!!!」という完璧なハピエンは他にないのでは?
羨ましくてよだれ垂らすほどですよ、これは。
神の力を最大限に発揮した非常に都合のよい結末なのですが、心からエールを送りたい2人(神?)なので、
「だって神だもん!いーよ!とことんどーぞ♡」
と、一緒になって遠慮なく甘さに浸らせて頂きました。

yoco先生の挿絵も大変素晴らしく、美しさがより引き立ちます。

18

お見事です!

ガラッとそれまで読んでたトーンが様変わりしていく、予想もつかない展開が面白かったです。

天界を追放され、神通力をほぼ失ってしまった寅神の皇子様・百艶をお世話することになった人間・瞬。
この百艶は天界では知らぬものがいないというほどの美貌の持ち主で、自分の容姿には自信があるというナチュラル俺様。
尊大なんだけどどこか子供っぽいところもあって憎めないんです。

ちなみに追放された理由も、雌神を狙うもフラれてしまい、雌神の鼻を明かしたい一心で、雌神の婚約者(おまけに幼馴染)を寝取った……というおいたが過ぎるやつ。
おまけに追放されても反省の色を見せずに地上で好き勝手している百艶の姿に、これではいけない!と思った瞬は恐れ多くも神様である百艶を諌めちゃうんです。

「懸命に働いて反省を示しましょう」と瞬から説得され納得した百艶は、駿と祖母の店である惣菜屋で働くことになるんだけど、ここがとっても好き!

神様とお惣菜屋さんという組み合わせの意外さ、そして厭わずに一生懸命働き、褒められて得意げになる百艶がめちゃくちゃ可愛い。

そして地上に来た当初は湯水の如く金を使おうとしていた百艶が、少しずつお金の価値をわかって、神様なのに「日給四万円の仕事があったぞ!」とか喜んじゃうところも好き。

二人の恋愛もほのぼの&着々と進み、あと残り半分どう展開するんだろ?と思ってたら、後半は予想もしない怒涛の展開になって、ページを捲る手が止まりませんでした。

あらすじに「ところが、雷鳴と共に思いもよらぬ出来事が次々と起きて……!?」とあるけど、前半のほのぼの具合だと、ちょいコミカルなドタバタ劇程度かと思ってたら、思いもよらなすぎるよー!!!と叫びたくなりまいた。

読んでて目が点というか、え?!え?!え?!…嘘でしょ?!の連続。
ここは是非読んでお楽しみいただければという部分。

それにしても百艶が凄まじく成長したこと!
最初のナチュラルボンボンっぷりはどこへやら。
瞬と共に過ごしたおかげで愛を知ったんだなぁ、愛の力ってすごいなぁと思いました。

そして結婚式で「死が二人を分かつまで」とよく言うけれど、「死ですらも、私達を別つことはできない。」というところまで持っていった犬飼さんの伏線の巡らせ方と回収の仕方が素晴らしくて、いいファンタジーを読んだなぁという気分でいっぱいです。

ファンタジーものはそれほど好んで読まないのだけど、良いファンタジーはいいもんだなぁと思いました。
文句なしの神です。


ーーー
電子版にはコミコミ特典のSSが収録されています。

5

美しい

十二支がそれぞれ神となっている天界と、人間の世界をつなぐ和風ファンタジー。
村はずれに祖母と暮らす瞬は、日頃から干支神を祭る神社の世話を自主的にしています。
その日も神社にお供えをしに行くと、そこに現れたのはなんと寅年の神様、寅神の太子で百艶と名乗る異形の美しい青年で、、、。
瞬の心根の美しさと、百艶の素直さに、このままほのぼのとほんわかケモ耳ファンタジーで終わるのかと思いきや、意外な所に物語が展開。
このドキドキとワクワク、そして美麗な挿絵。
全部まとめて神です。

2

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