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表題作女王陛下と跪く男

受様の下僕を自任する穏やかで大人な会社員・海野
某所で女王陛下と呼ばれる魅惑的な販売員・八尋和希

その他の収録作品

  • 国王陛下と臆病な猫
  • あとがき

あらすじ

八尋は気位の高い超美人。自由を重んじる恋人・海野との関係に満足していたのに、突然、海野に一緒に暮らしたいと言われ・・・。
(出版社より)

作品情報

作品名
女王陛下と跪く男
著者
成瀬かの 
イラスト
北沢きょう 
媒体
小説
出版社
オークラ出版
レーベル
プリズム文庫
発売日
ISBN
9784775517932
3.4

(35)

(1)

萌々

(21)

(8)

中立

(2)

趣味じゃない

(3)

レビュー数
7
得点
115
評価数
35
平均
3.4 / 5
神率
2.9%

レビュー投稿数7

思わず共感を呼ばずにいられない主人公でした

成瀬さんのいつも作品に潜むイタイ部分が主人公を形成するトラウマとなって特徴的に現れた作品。
彼のトラウマは深く、酷く、その結果作られた自分という姿、そして抱える依存症。
この主人公の姿は、まるまる女性にもあてはまる事が多く、自分的にも思わず共感をよんでしまいました。

八尋はものすごく自分の外見にこだわり、訪れるバーで女王様のように振る舞い、周囲にちやほやされることが好きだ。
それは、本編中にたびたび挿入される八尋の過去に関係する。
3人兄弟の真ん中として、兄と比較され、兄と妹と明らかに差別された待遇。
彼の女王様の姿は、全て親からもらえなかった愛を、自分を見て欲しかったその欲求の裏返しだったのです。
綺麗な顔だけではなく、常に男達に注目される為に衣類につぎ込む額も半端ありません。
それはもう依存症ともいえる域なのですが、
八尋が唯一長く付き合って心を乱される海野という男と別れた時は、食べるものも、家賃もままならない程に酷い症状になるのですから。
小説であるが故、八尋の女王様ぶりは極端でデフォルメされたものかもしれませんが、ただのワガママでとても酷いというわけではなく、割と店の中の盛り上げシチュエーションとして認められていて、いわゆるエンタメ的になっているのは、八尋も計算していたからでしょう。
ただ、付き合う男に容赦ないのは、それは彼の裏を返せば自信のなさと、臆病さゆえなのです。

海野は、最初友人との賭けで八尋と関係を持った男です。
彼の忠実なしもべぶりに、一体本気なのか?愉しんでる遊びなのか?
測りかねる部分もあるのですが、八尋の元カレと会ったと言い、切迫した面持ちで八尋のアパートを訪ねるシーンから彼の本気が見えてきます。
それは、『国王陛下と臆病な猫』において、海野視点で回想されるので、そこで補完される形になります。
八尋が恐怖と意地とで海野を振ったあと、2ヶ月程合わない時期が発生するのですが、、
その後、彼等がまとまる段に海野が海外出張へ出ていたという話になっていて、
ああー、よかった、八尋は見捨てられたわけじゃなかったんだ、とほっとしたものでした(汗)

こんな捻くれた八尋を好きでいるのは、海野もモノ好きとしかいいようがないですが、
八尋の本質を知ったからこそ、それは自分だけが知っている可愛さに変化して、手放し難いものになるのでしょうね。(やっぱりモノ好きw)
八尋は最強のビビリ野良猫だと思いました♪

プリズムだけにエロもちょっと多めです。
最近エロが食傷気味で飛ばして呼んでしまうことがおおかったのですが、久々にじっくり見てしまいましたヨv
やっぱり成瀬さんの作品はどれも魅力的です!

6

高貴なネコみたいに傲慢、ホントは?

自分の美貌を最大限生かして男を侍らすくらい遊びなれた
受け様と、そんな受け様を女王のようにエスコートし
なんでも言うことを聞く攻め様・・・
初めはどんだけ傲慢な受け様なんだろうかと思ったのは一瞬
虚勢だらけで寂しがり屋で愛される事、愛する事にとっても
臆病な子猫ちゃん的な受け様でした。
それに天の邪鬼だし、捻くれ具合もハンパないし(笑)
それもこれも家族に対しての屈折した感情から来てるんです。
年子の兄と2歳下の妹の3兄妹、そしていつも自分ばかりが
家族に阻害されて手ひどい言葉に傷つけられすっかりネガティブ
思考が出来上がってしまってる、そしてダメ出しのように
大学時代酔ったはずみで付き合った相手に裏切られ余計に
本気で人を好きにならないと・・・

暖かさの無い家庭で育って可愛くないと親に言われ
そんな受け様が初めて好きだ、綺麗だといってくれた相手から
裏切られて余計に捻くれ具合に磨きがかかってしまう。
ホントの自分を隠して強気で気軽に男と楽しむ受け様。
綺麗な受け様を落とせるかの賭けを仲間内でしていた攻め様と
それを承知で相手を翻弄してやろうとしていた受け様とが
本気の恋に落ちてしまうお話です。

受け様は酔ってしまうと本当の姿になってしまうんですよ。
ネガティブで自信がなくて泣き虫で・・・
かなりのギャップ萌えさんなんです。
攻め様は見た目通りの人なんですが初めは受け様の美貌に、
次第に傲慢な様子は無理をしているのではと思うようになり
受け様に対する違和感が次第に興味になり深みになり
すっかりハマってしまうのですがその気持ちを受け様に
告白しても拒絶され・・・
受け様もホントは好きなんだけれどまた捨てられるのではと
思うと攻め様の言葉を信用できないんですよね。
そして寂しさからバカみたいにブランド服を買いあさり
食べるのにも事欠くようになってしまう。
でも受け様の本質を知っている友人がキューピット役に
酔っている時は素直全開の受け様ですが攻め様の本気を
信用しても最後まで素面で素直になれない受け様。
でも攻め様は全てを理解して受け様を可愛がる。
かなりギャップ萌えが前面に出てるお話で面白いです。

5

女王陛下の素顔はね・・・

成瀬さんのお話は必ずと言っていいほど、受けにトラウマありで、あまり痛々しいものは好きではないものの、それを期待しつつ読んでしまうってのもあるのですが。
内容は詳しく他の方が書かれてるので、思ったことなどの感想のみ。

こちらの作品の『痛い』部分は、自分の中の「うーわーこれは無理!」と「これぐらいのガチガチトラウマは物語のスパイス」と感じれる狭間でした。
危うかった。
特に後半に語られる受けのトラウマともいえる、家庭でのみじめな境遇や学校生活。具体的に書かれている部分が結構痛々しい。
おまけにハジメテノオトコの存在。これがまたなんとも『存在が痛いオトコ』で。受けにとっては消し去りたい過去でしょう、と思わずにはいられなかった。

女王陛下と呼ばれる受けの、内心抱えるもの。
今があるのは、過去の自分が抱えていたコンプレックスからくるトラウマ。
それを乗り越えた、克服した(とは言い切れない気もするけれど)という強みのような、弱みのような。
張り詰めている風船が、つつけばすぐに割れちゃうように、受けの『女王陛下』という仮面はちょいとつつけば取れちゃうような脆いものに感じました。
兎に角、メンタル部分が弱い。
女王陛下は全くの仮面で、実は心の奥底の本心では臆病な小動物のようにぷるぷるしてる受け。
買い物依存もあったりして、兎に角弱い。
弱いからこそ、虚勢を張るのでしょうがそれがまた哀れで。
攻めに対して、素直になれない、心から甘えられない、はっきりいって面倒くさい!
攻めによく捨てられなかった。
いや、攻めはそんな面倒な受けだからこそ好きになったのかなぁ。
女王陛下として傲慢に振る舞う受けの、素の部分をなんとなく感じ取っていた勘の鋭い攻め、男前ですね。
宥めすかして、煽てて、褒めて、大事に慈しんで。
素直になりきれない受けを、可愛がってあげてほしいです。

クライマックスの、酔っぱらって女王陛下の仮面が剥がれ落ちた時の素直さの可愛さは飛んでもありませんでした。

3

すごいギャップ。でもそこがよかった。

私、特に『女王様』が好みではないのですが(『女王様』がすべてダメなわけではないですよ)、これは厳密には『女王様』じゃないんですね。

八尋(受)は、我侭で傲慢な『女王様』を演じてるだけなんですよね。ホントは根暗で後ろ向きで、自分に自信なんかこれっぽっちもない。かなりのダメ人間です。
こういうキャラクターって、一歩間違うと(私は)ただうっとうしいだけになりかねないのですが、『なぜそうなのか』がとても丁寧に(でも、うるさくはない程度に)描写されていて、そして八尋の本質もきちんと伝わってくるんです(たとえ、一般的には『よさ』とは言えなかったとしても、ですよ)。

きわめて個人的にですが、(これはフィクションに、というよりラブストーリーに対するツッコミとしては邪道だと承知の上で)八尋のコンプレックスの大元の『家族関係』とりわけ『親』のやり方に、どうしても我慢なりませんでした。あ、作家さんや作品に対する嫌悪ではないですよ。
BLには、『ありえない親・親族』なんて珍しくもないですが(それどころかひとつのパターンですらありますが)、この八尋の親は『ありえない』『こんな親いねえよ!』ではなく、『正直いて欲しくない』けど『いないとは言い切れない』『いや、いるだろうな・・・』というあたりが、妙にリアルに感じたんです。実際に『親である自分』の目で、この八尋の親を見てしまったんでしょうね。こういう読み方は間違ってると思うんですが、どうもいかんなあ・・・

もうひとつ、八尋の元彼も最低でした。成瀬さんって、ダメさ・ヒドさの描写が容赦ないですね。

それでも、八尋はとても魅力的なキャラクターでした。ホントに、この上なくダメダメなんですけどね(それに実際自分の傍にいたら、『こんなうっとうしいヤツ嫌だ!』と思うでしょうね)。
でも、だからこそあの『騎士』たちの存在が生きるんだと思います。見返りのない(友情ってそういうものだよね)関係でも、自分をちゃんと見て思いやってくれる、それは八尋自身にいいところがあるからこそでしょう。それがただ上辺の言葉だけで、読み手に伝わってこなければ、騎士たちが薄っぺらにしか見えない。この2人は、ホントにいい味出してましたよ。

ありゃ、なんかすっかり海野(攻)を忘れてましたよ。海野がどうこうじゃなくて、とにかく八尋(と騎士2人)がインパクト強過ぎて、後回しになってしまいました。

海野は、最初よくわからない、掴めないキャラクターだったんです。八尋に『本気』なのか『遊び』なのかもわからなかったくらいに。でも、本当の気持ちがわかって来ると、海野も結構いいキャラクターでしたね。私の好みのタイプとはちょっと違うんですが、八尋を理解して大事にしてくれそうなので、ポイント高いです。

3

あまあまです

こじらせにこじらせまくった女王様
まあ、こんな家族の中で成長したら自己評価も地に落ちちゃうよなあ
と、絵に描いたような王子さまと自分を守ってくれる2人の友だち
女子夢をてんこ盛りにしたお話
安易で読みやすい、そしてそこが浅かろうが私はこういうお話が好きなのです

0

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