ピアニストと謎の男―――音楽とパチンコの不思議な出会いが引き起こすブリリアント・ラブ。

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表題作旋律に抱かれて

鍵谷清司・パチンコ屋で偶然知り合った失業中らしい男
東名和貴・初リサイタルを控えて演奏に悩むピアニスト

その他の収録作品

  • ラグタイム・ラヴァーズ

あらすじ

ピアニストの東名和貴は、スランプの中にいた。決まったはずの初コンサートは、恩師から中止を命令。悩む東名は呆然としたまま、パチンコ屋に足を踏み入れていた。音と光の洪水に頭は真っ白になる――。フィーバーで呆然としている東名の面倒を見てくれた無精髭の男。「パチンコは幸運判定機。当たるときは運がいいときだ」鍵谷と名乗る男の言葉に、悩むばかりだった東名の心が少し晴れたのだ。偶然を求めて、東名はパチンコ屋に通うようになるが…。

(出版社より)

作品情報

作品名
旋律に抱かれて
著者
火崎勇 
イラスト
伊東七つ生 
媒体
小説
出版社
海王社
レーベル
ガッシュ文庫
発売日
ISBN
9784796403139
3.2

(10)

(0)

萌々

(3)

(6)

中立

(1)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
5
得点
31
評価数
10
平均
3.2 / 5
神率
0%

レビュー投稿数5

頑な感性を揺らすモノ

今回は受様がパチンコ屋で知り合った失業中の男と
初リサイタル中止の危機に瀕したピアニストのお話です。

受様視点で攻様との出会いに絡めて才能を開花させるまでと、
攻様視点での本編の裏事情とその後編を収録。

受様は3才でピアノを始め
国内コンクールでは優勝経験はあるモノの
国際コンクールでの優勝は一度だけと言う
ピアニストです。

職業ピアニストとしては生活できても
師匠には個人リサイタルで人を集めるには
何かが足りないと言われ続けていたのですが

今回、師匠の企画の元
デビューリサイタルが決まります。

受様はやっと独り立ちできると
心から喜んで鍛練するのですが

スポンサーが付いてホールの予約が済み
曲目も決まった段階で
師匠に待ったをかけられてしまいます。

受様の演奏は技巧だけで心がない
中途半端な音だと言うのです。

師匠がリサイタルを許可したのは
もっと形になるかと思ったからで
進歩がないのでは聴かせられないと言うのです。

生真面目な性格で技巧も有る受様は
譜面に書かれた音を奏でる事は出来ても
師匠のいう音を感じると言う事が理解できません。

受様はなんとか食い下がるのですが
受入れられるはずもなく…

師匠宅からの帰り道
街中に広がる音に耳を澄ませていた受様は
一際大きな音に惹かれて
目にとまったパチンコ屋に入ります。

生まれて初めて入るパチンコ屋で
受様はみよう見まねでパチンコに向かい
ビギナーズラックで当たってしまうのです(笑)

まごつく受様に助けてくれたのは
無精髭もまだらな肉体労働系の男性でした。
彼が今回の攻様になります♪

袖振り合うも縁のうちという攻様と
お茶をする事になった受様ですが
自分とはまったく違う攻様と出会えた事を
いい気分転換になったと思うだけでした。

しかし、師匠に指導を受けても
『音を感じる』事が理解出来ず、
受様の演奏が変わる事はありません。

その日の帰り道
先日入ったパチンコ屋を見かけた受様は
攻様と再会を果たします。

攻様は世界は音で満ちていると言い
何か安心する音を見つけろと言います。

現在失業中と言う攻様ですが
ピアノの世界しか知らない受様には
息抜きできる楽しみな時間になっていきます。

師匠に最終通告を出された時に
攻様に会いたいと思う程になるのですが
この段階で攻様は受様にとって
現実逃避のための口実にしかすぎません(苦笑)

悩み抜いた受様は
攻様に自分がピアニストであり
演奏に悩んでいる事を打ち明けます。

すると攻様は受様に1枚のCDを聴かせてくれます。
それはジャズ奏者によるクラシックで
譜面にとらわれない音で綴られた1曲でした。

その上、
攻様は聴き終えた受様に
身体で教えてやると言い出して?!

技能は充分なのに生真面目過ぎて
演奏家としての個性が出せない受様と
自由奔放な性格のままに生き
失業を期に日本に戻ってきた攻様の
恋物語になります♪

幼い頃からピアノを弾いてきて
ピアノに浸かった生活を送っていた受様は
ソリストとしてのデビューリサイタルを前に
師匠からダメだしを受けています。

生真面目な受様は
楽曲に対しても真摯に向き合い過ぎて
譜面にない音を創る事が出来なかったのです。

そんな時に出会った攻様は
失業中とはいうものの世慣れていて
同じ業界人には見えないきやすさも有り
受様は自身の悩みを打ち明けるのです。

でも実は攻様は受様と同業者♪
受様と付き合ううちにピュアな彼に
好意を持ち始めていたのです(笑)

受様に無関係だからこそ
悩みを相談できるとまで言われちゃって
自分の職業を言い出せなくなってしまい
かなり悶々としちゃうのです。

秘密な匂いがプンプンなお話は
MYツボを刺激してやまないのですが

攻様の職業がお話の鍵になっているので
最初は受様と一緒にドキドキし
全て判ってから再読すると
攻様の悶々にワクワクできるという
美味しいお話でした♪

本編は攻様の職業が鍵な展開の
続編は攻様視点による本編裏事情から
リサイタル後の2人が描かれています。

受様が天然過ぎると言ったらそれまでですが
認められるまで辛酸をなめてる攻様には
受様の言動はかなり予想外だったみたいで

受様視点では見えない
攻様の内面の葛藤が楽しかったです。

受様の生真面目さと攻様の自由奔放さは
反発するよりもそれぞれの刺激になってそうで
とっても良いカプだなと思いました。

今回は火崎さんの既刊から本作同様、
謎な攻様に惹かれる受様のお話で
『王子様じゃイヤ!』はいかがでしょう?

2

この表紙に惚れました。

もちろん、本文も面白かったです。

表紙には作中に出てきたモチーフやシーンが集約されています。
雲間に浮かぶ月光。
受に触れる攻の手の表情、攻にただ触れられている受。
イイ!

物語は受の穏やかな語り口調も手伝ってか、とても淡く穏やかな印象をうけました。
けれど、受は深く苦悩している。
ピアノひとつ筋でここまでやってきた。今後を占う大事なリサイタルがこのままでは駄目になってしまうかもしれない。
穏やかな中に一本筋をぎゅっと通した、自分というものがあるからか、そこを曲げて次のステップに進めない。
それでは駄目だと言われ、努力しているのに、上手く弾けているのに、何が駄目なのか。
それが攻との出会いで変わっていく話です。
攻には秘密があり、受が攻の手のひらの大きさを見て『ピアノ弾きに向いている手だなぁ』と思うのがヒントだったのか?と読み進めていくうちに思いました。

受で印象に残っているのは、
攻がピアノの世界を知らないという前提で「あなたはこの世界を知らないだろうから」という気持ちで、ピアノに対する悩みや今の気持ちを話す。
同業者ならいちいち説明せずとも、言葉やニュアンスでくみ取ってくれ専門用語で話ても会話が成立するだろうが、知らない相手と話す場合はいちいち説明しないといけない。
前者は専門的な会話を話すには楽だけど討論・議論になるから疲れる、後者は専門的知識が無いから説明するのは面倒だが、討論・議論にならないだろうから楽だ。
ちょっと傲慢にも感じるけれど、正直な気持ちで本心なのだろうと感じた。
その傲慢さは嫌味ではなく、生来の性格がまっすぐだからなせる技なではないかとも思った。

攻で印象に残っているには、本編終了後の短編。
攻視点での話です。
この短編があったから、本編が引き立つのではないでしょうか。
本編では受け視点だったので、攻めの気持ちというのはあまり見えなかった。
駆け足ではあるものの、受への逸る気持ちを少し持て余したり。下心むき出しで受に接したのにそれに気が付かない受にやきもきしたり・・・など出会いから恋人同士になるまでの攻の気持ちがよくわかります。

2

箱入り生真面目なピアニストの恋

自分の演奏に自信が持てなくなってしまった箱入りでピュアなピアニストの受け様と
失業中で、どこか自由奔放で普通の人には見えない攻め様とのラブストーリー。

受け様は心待ちにしていた単独リサイタルを目前に控えていたのに、現在の師匠に
ピアノに心が無いと言われ、リサイタルを許可出来ないと言われ落ち込む。
生真面目で頭で全て考え込んでしまう受け様は、感情を込めた心を揺さぶる音が
理解出来ずに、ただ悩んでしまうのです。

そんな時に音を感じる事だと師匠に言われた事で、町の中の音を拾いながら
パチンコ屋に立ち寄る事に、そこで初めてのパチンコの経験で間誤付いている時に
隣に座っていた攻め様に親切に教えられ、流れでお茶を共にする事になる。
今まで受け様の周りにはいなかったタイプの攻め様に興味を抱く受け様。
そして、何の約束も無いままに別れ、攻め様にもう1度逢いたいと思った受け様は
パチンコ屋へ出向いてしまう。

再び会えた事で、攻め様はからは運命だと言われ、一緒に食事をするように・・・
そして、受け様は自分がピアニストで、これまでの悩みを打ち明ける。
そして攻め様に突然連れて行かれた録音スタジオで音を身体で教えると言われ
初めて肌に触れられる経験を・・・

普通なら、そんな指導方法なんて無いと分かりそうなのに、受け様はピュアで初心過ぎで
攻め様のその時の行動をなぞるように引いたピアノが師匠に認められ、リサイタルの
道が再び開かれる事になるのです。
攻め様の下心が全然わからない箱入りちゃんの初心なピアニストの受け様は
純粋培養されたような感じなのですが、この手の受け様にありがちな、自分の思いを
自覚した途端、結構イケイケ状態になる素直なタイプなんですよね。

受け様の為に力になろうとする攻め様も謎な感じで素敵なんですが、
下心があったのに、受け様に感謝されて、ドギマギしてる姿は可愛いです。
後半はもちろんハッピーエンドで、タイトル通りの展開です。

書下ろし部分は攻め様視点での出会いから受け様を欲する気持ちになった感情が
赤裸々に描かれているお話です。

1

安心安定の品質

なんだかとても安心するんですよねー、火崎先生の作品って。
もちろん、質や好みがありますから「きゃー、コレ最高ー!」ってモノから「…うん、まあ、…うん」ってモノまであるんですけども。
でも、印象がブレないんです。

話は、変に回りくどいところがなくて。
攻めはワイルドで、優しくて甘い。
受けは不器用で頑張り屋さん。
そして、収まるところにキレイに収まるエンド。

それを「マンネリ」と評す方もいらっしゃると思いますが、私は好きです。
ほっとします。
心や身体が少し疲れ気味の時にも、するする読めるんです。

こちらの作品もそうでした。
攻めの鍵谷は、自称無職。
パチンコ台の前での出会いからして、ちょっぴり怪しい男です。
受けの東名は初のリサイタルを控え、迷走中の新進ピアニスト。
素直で無垢な彼が悩み迷う道を、鍵谷が飄々と甘やかしながら導く、というストーリーは、とくに大きな山場もなく(失礼)完結します。

でも、読み終わって「火崎先生の作品だー」と実感できて満足したんですよね。
そして、また火崎先生の本を読もう、読み返そう、って思うんです。
タバコと無精ひげの似合う攻め、好きなんですよ。
鍵谷も、まさにソレ(笑)。

1

うーん


パチンコ……行ったことないけど、東名のように初パチンコで4万も貰えるなら、本の大人買いが出来るなと思ってしまった。

だけど、一人で行く勇気は全くありません。でも、一度くらい行ってみたいかも……。

ピアノの話より、パチンコの話が多いけどこれはこれで面白い。
ピアノの単語もパチンコの単語も全くわからない私には???なんだけどね。

東名の第一印象は民族衣装が似合いそうでした。

ただ、恋愛に発展するまで東名がちゃんと鍵谷が好きだと伝えるまでが長い。
最後まで読んだ感想として、恋愛の話が少なく話の山がないというかんじでした。評価も迷ったけど中立。

2

この作品が収納されている本棚

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