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表題作羽化

中村潤一
同級生
丈部晶
女として育てられた男子高校生

同時収録作品羽化を眺めるさなぎ

山口
用務員の孫
丈部圭
保健医

その他の収録作品

  • 後日談
  • あとがき

あらすじ

“今日 僕は 僕になる”
外見不良×見かけ女子
セーラー服に閉じ込められて生きてきた少年よ、自分を取り戻せ!
自己嫌悪と葛藤を繰り返しながら成長する、17歳の物語。

作品情報

作品名
羽化
著者
山田ロック 
媒体
漫画(コミック)
出版社
ふゅーじょんぷろだくと
レーベル
POEBACKS ~ポーバックス~【非BL】
発売日
ISBN
9784893938466
3.7

(32)

(8)

萌々

(13)

(8)

中立

(2)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
9
得点
118
評価数
32
平均
3.7 / 5
神率
25%

レビュー投稿数9

変態する少年の性

「もしも」というタイトルで2011年から4分冊で発行されていた同人誌を、商業コミックスとしてまとめたもの。「もしも」から「羽化」と改題し、新たな表紙と描き下ろしが加えられています。
鮮烈なタイトルと表紙絵が魅惑的で、一度目にしてからというものずっと気になってました。

ワケあって本来の性を否定し、女のコとして生きてきた少年・晶(あきら)が、ついに女装少年という殻を突き破って、男=大人へと羽化していく瞬間を捉えた、とてもセンシティブな作品です。
まるで初めからこのタイトルだったかのように、「羽化」という新タイトルは、この作品のエッセンスをこれ以上なくミニマムに、かつ最高純度で表現している気がします。まさに魔法のネーミング。

成長期の男の子の変化のめまぐるしさは、そう言われてみれば変態を彷彿とさせるものがありますね。(「変態」という言葉がごくフツーに飛び交ってるこの界隈で言うと迷うことなく「ヘンタイ」と誤解されそうですが、今回に限っては別の「変態」ですw)
山田さんの描く、まさに劇的変化を遂げようとする直前の、男でも女でもない、大人でも子供でもない少年・晶。彼の、突き抜けてニュートラルな存在感に魅せられます。
女のコを装っている設定なので、前半の晶は髪型も制服も女のコそのものなんですが、それでも彼のしぐさや体の線がさりげなく本来の性を主張してる。その辺りの微妙な表現が、ビンビン視覚に響いて来るんです。
自分の性、ひいては存在そのものを否定して生きてきた晶が、抗いようのない男性への体の変化に直面して、戸惑い、苦しむ姿、そして彼をまるごと受けとめてくれる中村という存在に出会い、恋を知って、心の殻をも破っていく成長の一部始終が、描かれています。

作中で、晶が悩まされる成長痛の痛み。
最近の医学では成長痛が成長に起因するという説は否定されているようですが、個人的にはこのさりげなく織り込まれている「成長痛」という言葉そのものが、強く印象に残りました。成長に伴う苦しみや心身の歪みを描いたこの作品に、これ以上なくふさわしい気がして。

設定やストーリーに関しては、正直ツッコミどころ満載。いっそ清々しいほどに、リアリティーはスカッと放棄されています。
でも、ツッコミどころが致命傷と感じる作品もあれば、そんなものは作品の価値に関わりないと感じさせる勢いを持った作品もあって、この作品はまさに後者。
逆に子細なことが気になってしまう自分が、ケツの穴の小さい人間に思えてしまう・・・コトがBLだけに、読む側も後ろの柔軟性、大切ですよね(笑)

あとがきは、本編のキュートな絵柄とは打って変わった渋めのイラスト入り。
山田さんの自画像!山田寺の仏頭風のえらく四角い顔・・・と思ったら、頭自体がなんとロックグラス・・・
これほど「山田」で、これほど「ロック」な顔は他にないでしょう。や、絶対ありません(`・ω・´)キリッ 

途中ツッコミどころ満載ぶりに萎えかけた瞬間もありましたが、作品の勢いに押し戻されて、萌×2。

3

幸せになってね。

電子書籍で途中まで読みましたが、続きが気になってコミックスを購入しました。
深く考えると、家に縛られて女の子として学校に通っていた設定は手続きや学校行事などはどうしたんだろうとか、別に遺伝で黒子の位置は決まらないよなあとか、出てきてしまいますが、そこらを抜けば本当にひたすら「この二人が幸せになってくれ!」とハラハラしながら読めました。
もしかして中村くんがうっかり女子の方に行ってしまう現実的なラストになるんじゃなかろうか!?という予想は、杞憂に終わったので良かったです。
ハッピーエンドで良かった!!
本来ならDVももっと描写されるべきだとは思いますが、二人それぞれの家の問題がそこまで陰惨に描かれなかったのは、それはそれで良かったのかもしれません。

女装ネタや男の娘はそこまで好きでもないですが、そんな私でも読めました。
「スメルズライクグリーンスピリット」あたりが好きな方はいけると思います。
後日談で二人が関係持ってて、本当嬉しかった。よかったね、よかったね。

おまけの兄さん話は、個人的にそこまでツボではなかったです。

5

青い春がもたらす成長

同人誌で発表されたシリーズを、単行本一冊にまとめておられます。
描きおろしとして主人公晶の兄、圭のストーリーも収録されていますので、同人誌を一通りご覧になられた方も楽しめるのではないでしょうか。(本編では どうして圭が晶をあそこまで気にかけているのか が語られなかったぶん、その点を補完している内容です。もちろん、圭の不器用すぎる恋愛も含めて)

作中、晶が「女に生まれていたら、なにか変ったのかな」と呟く言葉に含まれる思いは複雑です。
・女であれば丈部の家に縛られることはなかった、自らを偽らずともよくありのままでいられた
・女であれば中村の好意も受け入れることができた、初めからそういう関係を望むことは容易くできた
女の子になりたいとか、女の子の心を持っているとか、そういう類のお話ではありませんでした。しいて言うならば女装要素アリですが、女装とくくるにはずいぶん意味合いが違います。女になることが晶の身を守る術だったのですから。
晶自身も、自分のことを不思議に思っているのでしょう。
「女」でなければいけなかったから、女として生きている。晶は『女でも男でもない』。だからタイトルが羽化なのかと納得しました。いまだ彼は蛹であって、男であるはずなのに、女のようで、でもやっぱり体は男で、これから一層男になる。
男性への変化と、丈部家に対する感情の変化、中村との出会いによる晶自身の内面の変化、それぞれが羽化なのだと感じます。

水野の目元にはホクロがあるのでしょうか? あとがきのそれには、あるように見えるし、でも作中の水野にはナイような気がするし…そこがどうしても気になってしまいました。
跡目争いだとか、そうして足を引っ張り合う大人たちに埋もれて巻き込まれる晶や圭のことだとか、物語のなかでも丈部家の内情や晶を取り巻く諸々がどうしても気になり(豪家っていうのはこういうものなのか!? や、そもそも二次性徴が本格的にはじまったら騙すのは無理だろう!? や、なにより学校でも性別を偽ってるの!? など、など…)、中村との恋愛事情をしっかり見つめられませんでした。
中村だけを見れば、彼の家庭事情や抱えるものの重さや、それなのに実にまっすぐそして嫌味のない人間に育っていてかっこいいなぁと思うのですが、いかんせん丈部家にばかり気がいってしまって…。

お兄さん、圭くんの話はさながら懺悔のようなだなと思いながら読み進めました。
圭の、懺悔です。いや告白、…告解?
行為のはざまはざまに訥々と語られることや事実が静かな寂しさを呼び寄せました。
赦されている、放たれている、育っていた蛹は蝶となったのですから、圭は正巳と幸せになってほしいです。

その後の彼らのなかでは、チンピラーーンな中村が一番好きです。それぞれの[大きさ]を気にするのも可愛いですがね(笑)また、お姉ちゃんお兄ちゃんなの!? も可愛い!
個人的に疑問に思うことや腑に落ちない点が大きく、萌えるに至らなかったのですが、内容自体に非はなく、様々な要素を取り入れた少し風変わりな作品でした。
羽を得て空を飛び回る晶のことを、中村がずっと支えて守っていてほしいです。もちろん晶も、目の悪い中村を気遣ったりもして。
祐太くんと3人、末永く仲良くすごしていてほしいな。

4

希望ある読後感

表紙に惹かれ、皆様のレビューに惹かれ、手に取った作品。

恵まれない家庭環境にがんじがらめになっていた高校生晶、
問題は別だがやはり痛ましい家庭環境に育った中村。
二人が惹かれ合い、新しい生き方へと脱皮していくまで。

愛人の子として生まれ、家の跡取り争いから身を守る為に女として生きる晶。
異母兄の圭が保健医をつとめる保健室で、彼と出会った中村は
母親のDVに晒されながら、幼い弟を必死で守りながら生きていた。
傷が絶えず不良のような風貌から、周囲から恐れられている中村だけれど
実は心優しく誠実で真面目。
自らが惹かれた晶が実は男と分かり、彼に去られた後追いかけて行くラストがいい。

描き下ろしは兄の圭の話。
脅されるようにして始まった関係だが、圭にとって大切な人になっていた様子。
兄もまた幸せになってほしい。

描き下ろしでは、後日談がいくつか描かれている。
ニヤッとしたのは、晶に身長を越された中村が
晶の◯◯◯の大きさチェックしてホッとしてるところ(笑)かわいい!
虐待で傷めた目の保護の為サングラスをかけているとチンピラに見えちゃって
すっかり警官を仲良くなっちゃっているエピソードとか、
中村絡みの話は可愛いな。

リアリティを求めると色々と思う所はあるのだけれど、
まるでおとぎ話を読むように、少年達が軛を逃れ、羽ばたいて行く……
そんな物語は美しくて心に沁みる。


9

これも不憫

山田ロックさん2冊目のコミックスは、商業未発表同人誌をまとめた作品だそうで、
絵のクオリティは確かだけれど、ストーリーの設定そのものは同人誌ならではとも言えるような、、。

母親からDVを受け続けているせいで女性が苦手になっている中村。
いつものように傷の手当と安静を求めた保健室で出会った晶は、女子にしては楽に話せる相手だったが、それは実は晶が女装した男子だったから。
何故晶が女装していたかというと、、。
このヘビーなネタのぶっ込み加減、扱いが同人誌っぽい。
とりあえず、お話のメインは、この二人の恋愛の成就なので、中村母のその後がどうであろうとそれはそれ、
それより恋愛成就した二人に置いて行かれてしまった、晶の異母兄で保健医の圭には、ちゃんとBL的な救済が用意されている。

最後に二人のその後が見られて,なんだかホッとした。

4

この作品が収納されている本棚

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