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愛したい < 信頼されたい < 友になりたい。愛と友情に揺れる男たちのlove story。
鳩村衣杏さんの作品は数冊読んでおりますが、本作は他のどの鳩村作品とも違う異色な魅力を放っています。
BLというよりも、作者様の意図通り『ホモセクシャルとホモソーシャルの狭間の話』であり、エロがどうこう恋愛がどうこうという物語ではありません。
舞台は戦後、男爵家の当主と盗まれた童話の原稿を探す依頼を受けた探偵、そして男爵家の執事。
童話の内容は王様と、彼の料理人と、料理勝負をする捕虜の話。
そして、探偵にはかつての恋人であった新聞記者と、戦地で命を救ってくれた戦友がいる。
「3人の男」というパターンがアラベスクのように反復して響きあう…
童話の中では、自分の愛する料理人と料理勝負の相手の捕虜が料理を介して通じ合っているのでは?と邪推する王様が描かれる。
探偵の以前の恋人は、戦友という絆を至高と捉え、自分はその輪に入れないと詮無い嫉妬に苦しみ続けた。
そして、精悍で粗野でそれでも品位のある男匂坂男爵と、父親の代から彼に仕える執事の五十嵐との絆(恋愛とは違うけれど)を傍観する探偵の神足。
原稿探しの調査を通じて匂坂の秘密を知る神足。匂坂の孤独。五十嵐の献身。
神足は匂坂に愛の感情を抱くが、匂坂との一度だけの行為(決して性交ではない)は、もはや愛というよりもやはり死にたくないという叫びであり恐怖であり、子種を残してはいけない気持ちが神足に向かった一刻の触れ合いだったのでしょう。
全てが終わった後、神足の流した涙。話をして、彼の生を自分に刻みたいというラスト。
生きていくことはただ遺されて置いていかれることではない、まだ一緒に生きることもできるのだ、と言われているような、そんな余韻を感じました。
BL以外の作品を含め、ここまで胸に刺さる小説を久しぶりに読みました。
舞台は終戦から数年が経った頃の東京。はじまりは一冊の童話「王様と二人の料理人の話」…王様と、彼が愛した料理人、そしてこの料理人と見えない絆で結ばれたもう一人の料理人の物語です。どう読むか、誰に感情移入するかでまったく違って読めるこの不思議な童話の直筆原稿を巡って、主人公である探偵・神足、原稿の持ち主である男爵・匂坂、彼に忠義を誓う執事・五十嵐、そして神足の親友である加瀬、神足の元恋人・野依――様々な人物の想いが交錯します。直筆原稿の謎を追う神足はやがて真実を突き止めるのですが、そこには悲しくも崇高な決意が秘められているのでした。
どう読むか、誰に感情移入するか。それはこの小説そのものにも当てはまります。誰が王様で、誰が二人の料理人なのか――人の想いはままならず、自分を、相手を受け入れるということはとても難しい。性愛を、あるいは生死を超えて想いを昇華させようとする男たちがとても愛おしく、王様と二人の料理人の葛藤を自分の中に抱えてしまいたいと藻掻く神足がとても健気で胸が詰まりました。
いい歳になった今でも、死ぬってなんだろう…と時々考えます。考え始めると怖くて眠れないほどで、私自身はまだ何も覚悟できていないと痛感するばかりです。匂坂が彼らしくない――ある意味では非常に彼らしい感情を吐露するシーンに共感しすぎて涙が出ました。もちろん唯一無二の答えなどは無く、前向きに言えば、無いからこそ人生は楽しいのかもしれませんが、この作品では最後に一つの答えが用意されていて、また涙が出ました(涙腺弱い)。
戦後という時代背景も含め、設定や登場人物のキャラクターに無駄やブレがなく、最後まで硬質でありながら、とても重厚かつ優しい物語でした。謎解きの面白さがちゃんと盛り込まれている点も含め非常に完成度の高い作品で、BLという枠を越えて多くの人に読んでほしいと思いました。素晴らしいお話を書いてくれた鳩村衣杏さんと、答姐トピで紹介してくれた皆様に感謝します。
鳩村さんの、固すぎないお仕事BL&しっかり心情が伝わる作品に
「おおお…!」とさせていただいてから早何作かな。
こちらは、あらすじと表紙から
今までとは違うんだろうなとわかるだけあって、
私は難しい話は苦手ですし、明るさの欠片も見当たらなかったので
購入からしばらく積ませていただいておりました…。
それが今もんのすっごく悔しい!!!
いえ、読めたらそれで良いじゃないとも思うのですが;
時代は少し遡って、戦後間もない頃。
探偵として働いている神足(こうたり)が、
警視庁にいる加瀬からの紹介で、匂坂(さきさか)男爵の元を訪れ
屋敷から盗まれた直筆の童話の原稿を探して欲しいと依頼されます。
実際お会いする事と調査から、男爵の人柄が日に日に明るみになり
惹かれる気持ちが止められませんが…。
この、神足の過去や手の傷、元カレの存在、加瀬との友情、
匂坂とその執事・五十嵐の関係性、
自分でもどうにも出来ない感情の動きが濃密で
いやらしいと言えるシーンは無いのに
(それっぽい感じはありましたが)
神足が、泣く男爵の頬を撫でる場面で相当エロいと思ってしまいました!!
なんかもう…なんて言えばよいやら…。
普段読み漁っているBL小説とは違い、
気持ち良さにとろけまくる受けもいないですし
受けを溺愛してあれこれしまくってくれる攻めもいません。
ただ心を触れ合わせるような会話と態度に、
ぎゅぎゅっとさせられました!
依頼された件の真相は「…そうでございましたか…」という感じですが
大事なのはそこではなくて、
そう至ったある人物の想いでした。
恋愛としての愛情ではないかもしれないけれど
強く結び付いているもの、誰にも壊せない、付け入る隙の無さ。
すごく小説読んだ…!!と満足させていただきました!!
こちらの作品はあれこれ先入観等を介入せず、
「読めばわかるさ!」的な感じで是非!!
こういう愛もあるんだな、
体を重ねて確かめ合い、溶け合うだけじゃないんだな、と
かなり新鮮で心に刺さりました。
「ホモセクシュアルとホモソーシャルの狭間の話」と
あとがきで鳩村さんはおっしゃっていましたがまさにそうなのでは!
エンゾウさんの、ずっしりと重みのあるイラストが世界観にぴったりすぎて、
これが線の細いさらーっとしたタイプじゃなくて本当に良かった!!
早いとこ、またコミックス新刊お願いします!!
もしこちらをエンゾウさんでコミカライズしていただけたら
保存用・読書用・布教用と買ってしまいそうです…。
ちなみに、匂坂いわく、神足は良い声らしいので
もしドラマCDにして下さるならば小西さんがいいな!!!
匂坂は帝王で!!!!(帝王のお声は脳内再生しやすいw)
五十嵐は、執事と言えば賢雄さんですが、40代だから…違うか…w
誠実な、忠義の塊のようなお声の方、誰がいいかな♪
2枚組でじっくり聴いてみたいです…。
これですよ!こういう作品をCD化していただきたいんですよ!!!
エロいのも勿論好きですがw(こら!)
はー、読めてよかった…。
余韻がしばらく続いて、
私としては滅多にお目にかかれなさそうな作品だったので神です!!!
暗い!でもなんという上品な仕上がり。どこまでも硬質で淡々とした文章に、何度も表紙を見なおして、鳩村さんで間違いないよね?と確認した。
鳩村さんのお仕事ものは、どんなジャンルでも、この仕事に携わったことがあるのでは?と思うほど微に入り細に入りなんだけど、今回は登場人物たちの口調や生き様が、近現代に嵌りすぎていて、さすがだと唸るばかり。
その世界観を損なわず、しっかり描いていらっしゃるエンゾウさんもまた素晴らしいです。
影のあるイラストが、この作品にぴったり。
ラストもこれが正解としか思えないし、鳩村さん、次のステージへといった感じの記念すべき作品じゃないかな。
Krovopizza様
はじめまして!こちらこそ、嬉しいコメントありがとうございます。
お返事遅すぎてごめんなさい。
鳩村さんらしからぬ作風でしたよね。
こんな固い文章だったっけ・・・と面食らいつつ、手元にあった
「八木沼酒店~」を捲ってみたら、鳩村さんは案外訥々とした文章だったんだなと
今頃気づきました。
毎回お話が面白いので、文章の特徴にまで目が行ってなかったというか
いや、そもそも特徴がないというか。
ラストのもっていきかたも、さすがだな~と唸っちゃいましたよ~。
数多くの作品を出されてる作家さんだからこそ、新たな扉を開かれたようで
嬉しい一冊でしたよね(^^)
はじめまして!
>何度も表紙を見なおして、鳩村さんで間違いないよね?と…
いつもの作風と全然違ってビックリですよね!
私もイサヲさまと全く同じ行動をとっていた記憶が…ww
お話の素晴らしさはもちろんのこと、
鳩村さんの引き出しの広さにも感服した作品でした☆
お仕事モノも大好きですが、こういった方向性のお話も
もっと読んでみたいですね~~
イサヲさまのレビューきっかけで、
この作品を初めて読んだときの驚きや感動が蘇りました。
ありがとうございます♪(*ゝ`ω・)
何か変わったお話が読みたいなぁ、と思い。
積み本の中のホリーノベルズを物色。
私の勝手なイメージですが、ホリーノベルズは変わった作品が多い印象なもので。
いや~期待を裏切らない、BLとしてはかなり変わったお話でした。
好みはわかれそうですけれど。
私の中では、これぞBL(男の世界)と思う一冊です。
鳩村先生の本は多分、何冊か読んだ事があるんですが。
ちょっと毛色が違いました。
購入時は、お屋敷から消えた童話の原本探しというあらすじを読んで。
大変興味を持ちました。
大先輩レビュアーの皆様が挙って高評価ですし、これは期待出来そう!と。
しかもエロなしと情報欄にあり、さらに興味を持ちました。
戦後間もない時代。
その中で語られている内容は、普遍的なテーマです。
恋愛、友人、恩人、師弟、家族、主従…などなど。
人の繋がりや情、その絆は様々で。
そんな絆の関係を、このお話では「三人」という形でいくつも絡めて表現していました。
物語の中心人物の三人。
主人公で元ヤクザ、戦後から探偵をしていて、童話探しに雇われた神足巽(こうたりたつみ)。
童話の所持者で、元医者でもある没落寸前の華族、匂坂志重(さきさかゆきしげ)男爵。
男爵の忠実な執事、五十嵐(いがらし)。
もう一つの三人。
まずは主人公の神足巽。
神足の元恋人で、新聞記者の野依香一(のよりこういち)。
戦時中に神足の命を救った、刑事の加瀬慎之助(かせしんのすけ)。
そして、童話の中の三人。
幾度もの戦に勝ち続けてきた王様。
王様のお気に入りである料理人。
料理人と料理の腕前で対決する捕虜。
過去の人物では二人。
匂坂の祖父、八鍬秀典(やくわひでのり)。
祖父の友人で童話の作者、真宮楠生(まみやくすお)。
このお話の中には、様々な種類の愛と絆の形が描かれていました。
そして、自分とは違う関係に、人は嫉妬する事。
自分には無いもの。
相手と自分とでは、築けないもの。
そんなものに人は嫉妬し、自分しか持っていない関係さえも壊して失ってしまう…。
怖いですね。
BLの世界では、恋愛こそ究極の愛と絆として描かれる事が多いですが。
恋愛をも越える絆の怖さと素晴らしさを、このお話は教えてくれました。
主人公の神足は、二つの立場に立っていて。
童話の中の人物達の失敗を教訓に、匂坂男爵との究極の関係を模索していました。
好きだから告白する。
愛しているから独占する。
恋愛対象同士だから嫉妬する。
人と人との関係は、それだけじゃ無いんだなぁ、と。
愛は色々なものがあるのだなぁ、という部分もですが。
童話の原本の在処を探す謎解きだとか、童話の中の謎解きもあり。
推理小説としても楽しめます。
そして、確かにエロは無いのですが。
何とも不思議なほど、エロティシズムを感じるシーンが有ります!
エンゾウ先生の挿し絵がまた、素晴らしかった~♪
鳩村先生とエンゾウ先生、素晴らしいお話をありがとうございました。
※
ネタバレがあるか微妙な、何が言いたいのかわからん、かなりヘンテコリンな内容のレビューになりましたが☆
一応ネタバレ有りにしておきます。