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心に深い闇をもった男の過去とは? 心の救いを描いたヒューマンラブストーリー。
ボリュームも読み応えも抜群の一冊。もちろん明るいお話じゃないので、苦手な方にはNGだとおもうんですが、今回も楽しく読ませていただきました。
始まりは、ひとつの取引。行きたいと願った企画部への異動と引き換えにしたのは自らの身体。年上の上司は、自らの腹の上で自らのものをくわえ込み腰をくねらせる。恨み・憎しみ。そして時を経て再会した先に・・?!
殺伐とした雰囲気から、どう恋愛に進展するのだろうと、最後までドキドキしながら読ませていただきました。本当の最後の最後のほうまで、本当に恋愛モノとして行き着くんだろうか・・?!と思ったほどでしたww
しかし、いきついたところは、哀れみから始まった恋愛ににた感情。どうしようもなく受のことがかわいくなってしまう攻。結構このパターンが木原さんの作品多いと思うんですが、やっぱり上手いなと思うのがこういう場面だったりします。へらずぐちが多くて、しゃべるとどうしようもなくかわいくない。嘘つきで本当の自分を見せない死にたがりな受。けれども、しゃべることを制限すると、ふと見せる表情、摺り寄せるからだがかわいくて仕方がなくなってしまう。自分のことが好きかと聞けば、好きだとうなづき、エロい身体を摺り寄せてくる。赤くした耳たぶがかわいくて仕方がない。ダメだダメだと思っても身体は興奮し・・という表現がすごく読み手としても興奮しました。世間一般の常識を逸脱した行為。しかしそれも二人きりの世界では関係ない。異常とも思える過去と現在。上手く表現されてたかなとおもいます。
目が見えるようになったら夢が覚めてしまう~のラスト。これも良かったですね。目が見えるようになっていなくなってしまうという部分は、あ~基本やっぱり変わってないんだなというのが、他の作家さんの作品と違っているところで妥協がないことを感じました。
読み終わって一番キュンときたのは、好き好き・・好きといった受。
汚い部屋を「掃除しろ」といわれて、シャツ一枚で朝まで掃除していた場面。これを読み終わって一番に思い返しました。なんか好きな相手に言われたために無意識にでも動いていたのかと思うと妙にキュンとした。異常な世界で過ごしたためにわからないでいた不器用な感じがなんだかカワイイのです。きっともう一度読み返したら違う感想がみれるのかも
◆あらすじ◆
食品会社に勤務する河瀬(表紙絵右 30歳)は、過去に一度だけ肉体関係を持ったことのある上司・柴岡(表紙絵左 48歳)と再会し、彼の、有能で容姿端麗、誰からも一目置かれる会社での姿からは想像もつかない心の闇を知ることに。
自ら会社を辞め、隙あらば死のうとする柴岡を放っておけず、柴岡と2人で暮らすハメになった河瀬。
死なせるわけにはいかないという義務感で柴岡の世話をし、セックスするうちに、次第に柴岡に溺れていく河瀬ですが――
◆レビュー◆
前半はともかく、後半からが神!
前半は柴岡の行動が不可解過ぎて、少し冗長に思えてしまいましたが、後半、特に柴岡と母親との関係が明らかになって以降、俄然前のめりに読みました。
やはり母親との異常な関係性こそが柴岡という人間を規定する最大の要素で、これが分かって初めて柴岡という人間が見えてくるので――しかも、あまりにも衝撃的な事実!
前半の内容は大半吹っ飛びました。
そんなわけで、物語は河瀬の目線で進行するものの、ストーリーの重心は断然柴岡側に置かれている気がしています。
河瀬は柴岡のパートナーというよりも、「母親によって狂わされた柴岡の人生に巻き込まれた男」というポジションに近いでしょうか。
母親の愛に応えるため彼女に半生を捧げた挙句、母の愛を見失った柴岡は、表向きは完璧な会社員を擬態していますが、会社を出れば生きる屍。
ただ、医者にも本当の顔を見せない柴岡が、河瀬にだけは「死にたい」と訴えます。
といって、河瀬に死ぬのを止めてほしいわけでもない。
柴岡にとって「死にたい」とは、唯一彼の知る、愛を乞う言葉なのかもしれない(彼の母がそうであったように)――そんな気がします。
けれども、つかの間体を貪り合う愛し方はできても、河瀬が愛を確かなものにしようとすれば、柴岡はまた擬態を始め、それを頑なに拒む・・・幸せを自ら遠ざけようとするかのような柴岡の心の闇の深さに絶望させられ、もどかしさと切なさに胸を抉られる終盤。
そして、その柴岡の底知れない心の闇を、まさに象徴的に描き出した、海辺のラストシーン。
闇の中で柴岡をいざなう光の先にあるものは、やはり死しかないのか、それとも――
波にさらわれる砂のように、脆くて壊れやすいままの2人の関係。
確かなものは何一つない中で、ただ今この刹那2人の間にある、研ぎ澄まされた愛の一形態(それは愛なのか性愛なのか分からないけれど、紛れもない純粋な魂の結びつき)を描こうとした作品のように、私には思えました。
それにしても、柴岡の纏う、ぞわぞわと鳥肌立つようなエロス・・・何なんでしょうね?このオヤジは。
自ら全てを捨て、視力も失い、暗闇の中で河瀬の体だけを求め続ける柴岡の姿には、48歳のオヤジにはありえないほどの儚さと色気があって、不覚にもゾクゾクさせられます。
それは、彼が30年近くも「母親の夫」を演じていた(彼の「擬態」の原点はここ?)という、背徳の過去を背負っているせいなのか、それとも眼の見えない柴岡に庇護欲をそそられている河瀬の目線がエロいのか、はたまた48歳の容色褪せた体が、逆に彼に唯一残された淫欲の業の深さを際立たせるのか。
柴岡が食事をしている時の表情さえ「発禁並みにいやらしい」と感じてしまう河瀬の感覚にも、すんなり共感できる・・・白髪頭のオヤジなのに。
ああ、また木原マジックにやられた! 悔しいような、有難いような(笑)
しかも、河瀬の帰りを裸で待つ柴岡、その柴岡に喘ぎ声以外の声を出すことを禁じる河瀬・・・って、当人同士は無自覚でも、やってることがSMプレイめいてるんですがw
これってやっぱりオヤジ萌えが裏の主題なんじゃないかと、ひそかに思ってしまいます(笑)
ラストシーンでの河瀬の決めゼリフも、オヤジ受け仕様・・・かどうかはともかく、冒頭の頃の河瀬からは想像もつかない温かい言葉に不意を打たれて、涙がこぼれました。
河瀬の温もりに縋って生きたいという想いが、柴岡の中に芽生えてくれることを祈ります。
何回も読んでいるので初心でレビュー出来なくなっているのですが・・・。
一番初めに読んだ時は終盤号泣した記憶があります。目が腫れるほどに(恥)
先が気になって②ちゃんと読んでいるようで読んでいないような・・・そんな感じだったのか、読み返してなるほどなあと思うこともありました。
今回再読して、やっぱり涙が出ました。
雨の中、柴岡が1人で出て行ったのを後から河瀬が追いかけて引き戻すあたり。
ソファーまで河瀬を探しにいって居なかった時の柴岡。
「君の匂いがするから」「犬のように紐で引っ張られたくない」
最後の目が見えてるのに目隠しするといつもの柴岡になるところ。
言い出したらキリがないですが。
お話の中で何度も置かれている立場が(精神面でも)逆転している?!のに最終的には河瀬が追いかける方に!
想い合った後に別れがくるこの感じ。木原節炸裂ですね(勝手に言ってます(笑))
あとエチシーンがあんまりエグくないと言いますか、セクシーではあるんですが、サラッと読めてしまうのも木原さんならではなのかな?とも思います。
この作品は木原さんの中でもエチ回数かなり多い方では?!
最後に「月の船を拾いに」というセリフがあるんですが、タイトルの中にある言葉が出てくるとなぜか「タイトルきたーーーー」ってちょっとテンションあがるんです(笑)
初回はあまり思いませんでしたが今回はきたーーーってなりました(笑)
初めから最後まで重めで暗いお話ですが私にはこれが最高なのです。
日高ショーコ先生の素敵なイラストと、美しいタイトルに惹かれて手に取りました (⌒-⌒*)v
読み終えてまず思ったことは、ハピエンで良かったなあと言う事 ( *´艸`) 決してバッドエンドが嫌というわけではありませんし、「救いのない終わり」と言うのもありだと思うのです。
でもこの小説の柴岡(受)は心に深刻な闇を抱えています。年は40代後半。このまま放っておけば必ずや自殺あるいは孤独死するのは間違いなく、それではあまりにも悲しすぎます。だからラスト近くになって、ようやく柴岡(受)を理解し始めた河瀬(攻)が、柴岡(受)の頑なな心を突き崩そうとぶつかっていく姿が頼もしく、嬉しい気持ちになりました。
実は物語の序盤・中盤とも、河瀬(攻)が柴岡(受)を大層気持ち悪がっているため、この二人が最終的には恋人同士になることなど有り得ないのではないかと懸念しておりました。また終盤では柴岡(受)の自殺願望が強すぎて、河瀬(攻)が自身の気持ちの変化に気づく前に、柴岡(受)がこの世を去ってしまうのではないかと冷や冷やしました。
読後は収まるところに収まったとホッとしながらも目尻に涙が浮かび、柴岡(受)の境遇や自殺願望に至った経緯などを思いやっては、いつまでも鼻をグズグズいわせておりました。甘々のハピエンも好きですが、本書のようにしっとりと余韻のある終わり方も大好きです 人*´ー`*)スキスキ♪
本書は全編通して河瀬(攻)視点でした。よって柴岡(受)が何を考え、何を欲し、何をしようとしているのか皆目分かりません。柴岡(受)の行動も言動も謎ならば、なぜ死にたいと思うのかも謎です。受けの心の行方すべてがミステリアスで、そこが面白く夢中になって読みました。
通勤電車内で読むのが常ですが、幾度か下車駅を通過しそうになり、慌てて降車するということを繰り返しました。それほど私にとっては興味をかき立てられる作品でした。オジサマ受けが地雷というのでなければ、いえ地雷であっても是非多くの方々に読んで頂きたい作品です。
まあ、それにしても!河瀬(攻)があれ程までに柴岡(受)を嫌い、「気持ち悪い」を連発するのには驚かされました。確かに河瀬(攻)の気持ちは分かるのです。人事異動を楯にセックスを強要されたのですから。でも単に「嫌い」とか「嫌な奴」くらいなら、その後の展開で恋愛として十分成り立つと思うのです。が、そこまで気持ち悪がられると、BLとして成立するのだろうかと心配になりました (・・;)
でも柴岡(受)はナイスミドルで見た目は若いのです。そして「嫌よ嫌よも好きのうち」と言う言葉があるように、河瀬(攻)は柴岡(受)を嫌悪し殺したいとまで思いながら、無視することが出来ません。無関心ではいられない、つまりは関心があると言う事。これって大きな意味での「好き」の一部分。惚れた腫れたで結ばれた後、徐々に相手の悪いところを知り嫌悪感を抱くカップルよりも、最悪な部分を知りつつも好きになる方が、長続きすると聞いたことがあります。
もしも河瀬(攻)が柴岡(受)を嫌いなまま、何の接点もなく遠く離れ離れのままだったなら、そこで終わりになっていたことでしょう。でも一時は離れ離れになった二人が6年後には再会を果たすのです。そして、偶然な成り行きとは言え何度も接触していくうちに、嫌いが好きに変化していく。その様は読んでいて楽しい展開でした。
まず再会して驚いたのが、柴岡(受)の髪の毛の色。染めるのが面倒だからと真っ白なまま。次に凍り付いたのが運転の速度。高速道路でもないのに120キロ超えで走ろうとするのですから。そして唖然としたのは汚部屋。柴岡(受)のきっちりと清潔そうな外見からは想像出来ない散らかりよう。これらは皆、柴岡(受)の心の底からの「救って欲しい」という訴えだったのかなあ、と全てを読み終えた今は感じています。
魔性系オジサマの柴岡(受)は、河瀬(攻)を傷つけるような酷い言葉ばかり吐くし、ホント可愛くない。それなのにラスト近く、だんだん可愛いと思えてくるようになるのです。河瀬(攻)の言葉に顔を赤くしてみたり、恥ずかしがったりと、柴岡(受)が意外な一面を見せるせいかもしれません ギャップ萌ぇ――――(p〃д〃q)――――!!
河瀬(攻)はあらゆる面で翻弄されっぱなしでしたが、最後はようやく主導権を握ります。どうか河瀬(攻)が柴岡(受)を甘やかし、心の闇の部分を忘れるお手伝いを一生かかってして下さいますように、と祈るような気持ちで最終のページを捲りました。もっともっと小説の続きを読みたいと放心状態になりながらも、物語の終わりを飾る日高ショーコ先生の挿絵イラストが素晴らしく美しく、あたかも二人のその後の未来の姿が見えるようで救われました (ノд・。)
木原さんの作品を読むぞ。読む。読むんだからね。と覚悟して読み始め、ものの5ページで決心は挫けそうになりました。体調も万全だったのに。
約1年半振りに読む木原作品ってのもあると思う。
いくら覚悟はしてても、そうだ、こういう感じだわよ。と、忘れてる部分も多かったですもの。
パンチが重くて、喰らったときにも相当な衝撃があるのに、あとからまたじわじわボディブローのように効いてきて、どうしようもないです。
結局最後まで救いがなかったなあ。
どうしてBLなのに、こんな作品を読まされなきゃいけないんだろうと思いながら、いつも進んで読んでしまう。なんなんでしょうかこの常習性。
こんな世界、知りたくないと思いながらも、最後までノンストップで読まずにはいられない。
コールタールが胸に溜まってしまったようになるってわかってんのに、また新しい作品が出ると、読まねばと思うのですよ。悔しい(笑)
そして、木原作品のいちばんすごいところは、キャラを忘れられなくなるというところです。日頃3歩進むと物事を忘れる私が。
この二人もずっとこれから心の中に棲み続け、なにかの折に思い出すんだわ~。
でもそれが不快というわけでは、けっしてないんですよ。
やっぱり麻薬なんでしょう。甘い毒です。
それとね、この作品は、一人称を使わずに主人公を河瀬にするために、柴岡のことを「男」と表記していて、その手法がかっこいいな~と思いました。