母親の身代わりに嫁入りしようとする琴音。 幼なじみの篤史はなんとか助け出そうとしてーー。

小説

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薄くれないの花、流るるがごとく

usukurenai no hana nagaruru ga gotoku

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表題作薄くれないの花、流るるがごとく

峰島篤史 東京に住む幼馴染み 18歳
今泉琴音 女装で絵のモデルを務め祖父母養う 18歳

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

恋に狂う。琴音はまさにそんな過去の恋にとらわれ、身動
きがとれなくなっている。母親に恋し、やがては死へと追
いやった憎い日本画家・田之倉。だが祖父母への援助のた
めに琴音は母親の振りをして女装し、絵のモデルをしてい
る。なにもかもとりあげられ隔離されている琴音の唯一の
救いは、幼なじみの篤史だけ。あと数日で田之倉にお嫁入
りをする日、篤史と想いが通じ合った琴音は----。

作品情報

作品名
薄くれないの花、流るるがごとく
著者
吉田珠姫 
イラスト
みずかねりょう 
媒体
小説
出版社
コスミック出版
レーベル
セシル文庫
発売日
ISBN
9784774726649
2.4

(11)

(0)

萌々

(1)

(6)

中立

(1)

趣味じゃない

(3)

レビュー数
5
得点
23
評価数
11
平均
2.4 / 5
神率
0%

レビュー投稿数5

京言葉

2013年の発刊だから、今からほぼ10年前の作品。

琴音は、母の鈴音にそっくりな男子。
鈴音が一度絵のモデルを引き受けて以来、母の美貌に執着して付き纏う日本画家。
琴音が生まれても、付き纏いは止まず、とうとう一家が車に乗っている時に
画家の車に煽られて、琴音たちが乘る車が崖から転落、
両親は死亡して琴音だけが生き残る。

その琴音を祖父達の家に届けたのが、画家のパトロン。
画家の執着は、今度は鈴音にそっくりな琴音に向く。

奴隷のように琴音たちをお金で縛り、虐待を繰り返す。
琴音をモデルにした絵は、高値で売れて画家の名声だけは上がっていく。
琴音の戸籍は、女子に変更されていて、通学もできなくなっていた。

最後の最後にドン出返しが起きて、みんなが幸せになる
呆気ない結末。
これでいいのか?と、釈然としないけど、
気の毒すぎる境遇で育った琴音が幸せになれたなら、それでいいとおもうことにした。
呆気なさ過ぎて、少し物足りない。

この物語の肝は、琴音の舞子言葉 だと思う。

0

健気だけど…とんでもない設定と結末でした

この作家らしいといっていいのでしょうか。
凌辱とか鬼畜とか強調とか無理やりという場面がない分野限定ですが好きな作家さんです。甘めのお話は好きでよく読ませていただいています。

17歳の少年 琴音は、母 鈴音に横恋慕していた画家に両親を交通事故に見せかけて殺されました。やがて画家は愛する女を失った悲しみに心を壊し母親そっくりに育った息子を女装させ絵のモデルをさせているうちに区別がつかなくなります。半身不随で寝たきりの祖父と祖母が食べていくこともできないほど困窮しているのでモデル代として受け取っているお金が唯一の収入なので断ることはできません。
そして琴音が18歳になる日に画家の元に買われていくことが決まっているという衝撃の事実。
けれど琴音が思っているのは幼馴染の篤司で買われていく前日訪れた篤司から告白されお互いに思っていたことがわかるのです。
そして当日、祖父と同年代の画家に自分が『嫁ぐ』ことを知り篤司に助けを求めます。
初めは失敗するのですが、再度琴音の子供時代を過ごした町のご近所さんを味方にやってきた篤司が琴音は男子で母親は死んでいることを告げ画家を納得させることができ琴音を助け出し愛を確かめ合います。

恐ろしいのは心を壊した画家じゃなくてその感情を助長させ手助けするパトロネスの存在。
画家のためには法を犯すことも平気な女で惚れ抜いている様子。琴音を虐めで憂さを晴らす描写が怖かった。

画家とパトロネスは琴音の祖父に鈴音の居場所を聞くために痛めつけ半身不随にさせ、両親を殺し、琴音の性別を女と公文書を偽造、そして琴音を脅迫し自由を奪い義務教育も受けていないという犯罪のオンパレードなのに、訴え出ることはしません。これまでよくしてもらったからきっと母も許してくれるって。
どこをどう贔屓目に見てもかけらもいいところはありません。
今後も日本画の大家として居続けるのですから許し難いです。
いくらフィクションでお話の上とはいえ犯罪に目をつぶり、どうでもいいことみたいにして大団円にしてしまうのはどうかと思います。
読んでいて生活に困っているなら生活保護の相談に行くとか働くとかあるでしょうになど、現実に戻されてしまい楽しめませんでした。

せめてもの救いは祖父母が事実をよく知らず、連れて行かれる時に必死に止めようとしたことと進んで孫を売ったのではなかったことです。

呆れた設定に読んで損した気分ですが、みずかねりょうさんのイラストだけは最高にいいのでもう反則といった気分です。もったいないです。

0

昼ドラにBLがくっついてるような

BL的なアレコレよりも、
過去に囚われる年長者たちの異常性や
彼らに振り回される可哀想な主人公の描写に力が入っていて、
昼ドラを見ているような感覚でした。


不憫な境遇でも健気にがんばる主人公。
主人公をいびる、敵役の女性。
主人公を救い出すのは
好きな子をいじめちゃう系のやんちゃで格好良いヒーロー。

まるで昼ドラか一昔前の少女漫画か、韓流ドラマのような?
思わず頭の中でキャストを考えてしまいましたw


十歳の時から想い合ってきた幼馴染との再会愛。
やんちゃな少年だった琴音が、母の身代わりにされ
古風な京言葉の少女として生きることを強いられた悲劇。
このへんが情に訴える部分だと思いますが、
幸せだったであろう過去の描写がすっ飛ばされているせいか
現在との対比ができず、いまいち真に迫ってきませんでした。
(そもそも男の子に『琴音』って…;)

BL成分が薄いかわりに
田之倉(琴音の母に執着する画家)のパトロネス・薫子さんが
敵役として頑張っています。
琴音の手を踏んづけたり、女の身体に「改造」しようとしたり、すごく分かりやすい悪役としてハッスルした挙句、ラストは田之倉への一途な恋心が判明してお涙頂戴の展開にもっていく…。ほぼ彼女が美味しいところ総取りでしたw

(個人的な希望を言うと、もっとネチネチやってくれた方が
祖父母を養い気丈に振舞う琴音のいじらしさが際立って
ドラマとして面白かったかも…)

田之倉も薫子も、一途さが空回りした哀しい人ですが
この年長者二人の勘違いに振り回された琴音を思うと
イイ話だな~では済まされないものがありますね( ̄◇ ̄;)


色々書きましたが、評価は萌です。
ラストのあまりに都合の良い大団円まで、ツッコミながら読むのが面白いというか、コッテコテの世界観に存外引き込まれ楽しく読めました。

琴音は、本人のキャラも篤史(攻)からの扱われ方も完全に女の子。
しかし、京言葉でツンデレってなかなかの破壊力で
BL的萌えとは別のところで不思議な魅力を感じる主人公でしたv

2

狂愛妄執そして安らぎの幸せ

二世代に渡ってしつこく言い寄られる受けがお気の毒なお話なのですが、
悪役になる側が最後に憐れにも思える展開と、本当の愛を得たものは心が優しく
なるのではと思える内容でした。

吉田先生の作品は毎回楽しみにしているのですが、今回の受けの言葉遣いが
かなり古風な言い回しで、それだけで妙な色気を感じましたね。
内容はかなり痛くて怖い設定なのですが、ラストの方で余りにも簡単に全て丸く
治まってしまったので、思わず犯罪なのにそれでいいのかっ!とツッコみもしました。
まぁ、綺麗に終わった感じもまた人の優しさとして受け止めましたけどね。

18才の琴音は男なのに、女装をして絵のモデルをしながら辺鄙な山奥で祖父母と
暮らしている、両親は事故で既に亡くなっているのですが、ある意味殺されたも同じで
その憎むべき相手の絵のモデルをして生計を営んでいる皮肉。
母親に一方的な横恋慕してストーカーを繰り返し事故にまで追い詰めた画家は
精神的に狂っていて、全ての判断が正しく出来ていないようで、
男である琴音を亡き母親の鈴音と思い込みモデルをさせて間もなく嫁にする流れ。

琴音には片思いしている同性の幼なじみの篤史がいて、何度も山にこもっている
琴音に会いに来てくれていて、心の拠り所にしているのです。
仇とも思える相手に嫁ぐ数日前に現れ、全てを話して助けて欲しいと思いながらも
好きな相手が両親のように酷い目に遭う事を恐れ、篤史からの好きだと言う告白を
胸に抱いて仇の元へ行くのです。

しかし、琴音が考えていた事よりも酷い展開が待ち受けていて、
篤史に助けを求めながらもやはり相手に迷惑がかかることを恐れ素直になれない、
それを篤史が溢れる情熱で琴音を助ける展開です。
妄執の老齢たちに負けないパワーで愛する者を守り奪い返すようなストーリー。
最後がやはり甘いのではと思えるけれど、若い二人には過ぎた過去なんか
振り返っても仕方ないくらい素晴らしい未来が広がっていると感じる作品でした。

3

解き放つ若い力

一応恋愛の物語ではあるのだけど、どちらかというと一人の画家の強い思いにガチガチに囚われて身動きできなくなってしまった当人含め主人公と周囲の人々が、
主人公を想う若い一途な力によって、そこから解き放たれる。
そして誰もが誰かを思いやっているといったお話だと思います。

展開としては、囚われてしまった人々が身動き出来ないでいる姿や、主人公の姿にイライラ感を抱きもしたりしたのですが、結末が訪れた時、
その決着の付き方のあっけなさにその程度の簡単な事がどうして?と思うよりも、
それぞれの想いと、人が囚われてしまった時に視界が全くなくなってしまうという心理的な姿の描写にドキドキハラハラ感を呼ぶものがあり、
全てをあきらめて従順にする、ともすると地雷になりそうな主人公なのに、全体が中和されて程良いモノを感じてしまったのでした。


画家の田野倉の執着から逃げる為に、住まいを転々とし、祖父母とも縁を切らなければならなかった琴音の両親。
しかも彼等に追われて車の事故で両親は亡くなってしまった。
収入のない田舎暮らしの祖父母の為とはいえ、祖父母の命も危ないと思い琴音が犠牲になるよりほかになかったと言う設定は、当事者の恐怖のなにものでもない、恐怖で凝り固まってしまった思考の何ものでもないですが、怖いです。

その恐怖の源は田野倉のパトロネスの薫子なのです。
琴音や家族に向ける憎々しい態度から何気に予感はできるのですが、彼女もまた悲しい片想いの執着があったのだとわかります。(でも許せないですよ、その所業は)
田野倉は、恋に狂って頭がおかしくなってしまった人。
この二人、ほんとうはとっても憐れな人達です。

攻めになる篤史はあまり登場しないので、恋愛展開物語には・・・?なのでありますが、琴音は好きと思っているし、篤史も好きじゃなきゃこんな山奥まで会いにきたりしないし最初から好意はありきなので、、、
ただ琴音の事情は知っていても、そこは当事者じゃない第三者。
だからこそ冷静に客観的な立場で登場して、琴音や田野倉や薫子の囚われているモノがいかにバカらしいか目を覚まさせてくれるのです。

人を恋う思いががちがちに人を縛りつけてしまう怖さ。
しかし、それは傍からみたらとても滑稽な姿である。
そんな対比を見せた作品なのだと思います。
ただ、琴音の良さというのはちょっとわからなかったな~、、、

3

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