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表題作ロング・ゲイン~君へと続く道~

マット・リチャーズ,警官
ジャレド・トーマス,金物店経営

あらすじ

ひとりぼっちの生活を送るジャレドの前に、気の合うマットが現れた。
友情と愛情の狭間に悩むふたりだが……。

コロラドの小さな町コーダで、親の店を継いで働くジャレド。小さな町で、ゲイとして生きるのは簡単ではない。
トラブルをおこさないように静かに暮らしながら、自分はこのままひとりで生きていくのだろうと思っていた。
マットが目の前に現れるまでは。

新しく町に越してきた彼は、警官で、ストレートで、そしてジャレドとほとんど一瞬で気が合った。
同じ時間を過ごすうち、ジャレドは自分たちが友人としての一線を越えようとしているのを感じる。
だがその先に何か望みがあるのだろうか? もしなければ二人は友人のままでいられるのだろうか?
そして迎えたジャレドの誕生日、運命の夜となったーー。

2010年Goodreads Best M/M Romance部門第一位受賞作品。この作品がマリー・セクストンの本邦初翻訳となる。
訳・一瀬麻利

作品情報

作品名
ロング・ゲイン~君へと続く道~
著者
マリー・セクストン/Sexton Marie 
イラスト
RURU 
媒体
小説
出版社
新書館
レーベル
モノクローム・ロマンス文庫
シリーズ
ロング・ゲイン~君へと続く道~
発売日
電子発売日
ISBN
9784403560217
4.1

(52)

(18)

萌々

(26)

(8)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
15
得点
218
評価数
52
平均
4.1 / 5
神率
34.6%

レビュー投稿数15

すべて共有するか、何も共有しないか

どちらが良いかはわかりませんが、違う認められ方をして生きてきた、違う環境で育ったゲイの2人のお話です。
2人とも互いに相手がとても好みなんですが、育った環境の違いからなかなか一歩を踏み出せない。
じりじりするけど、あたたかくて楽しいし、海外小説独特のユーモアも十分楽しめるお話です。

日本のBLと違うなぁと思うところは、日本のBLでゲイであることは軽く設定だよ、というノリで重苦しくならないよう作られているものも多いですが、海外小説や外国が舞台のものだとだと家族や隣人、自分の立場が周りに与えている影響や、周りから向けられる視線についてきちんと向かい合わないと先にすすめないというものが多い。
カップルになったとしてもそこで終わりでなく、周りに認められて、周りにカミングトしてこその幸せ、といった感じでしょうか。
このお話はそれがほぼ全てじゃないかな~と思うようなお話です。
なので普段小説はなるべく明るく軽く楽しいお話が好きな自分は、読もう!って意気込んで読みました^^;

主人公はフロリダの田舎で小さな店を経営するジャレドと、警官として赴任してきたマット。
ジャレドが年齢のわりには口調が子供っぽく、口癖なのか、わあ!とかうわあ!とか感嘆詞を冒頭につけるのがかわいらしいです。家族から可愛がられているのもわかる気がする。
小さな町でゲイだと知られていて、もちろん皆に受け入れられているわけではありません。でも家族には恵まれていると感じます。

マットとはこれ以上ないほど仲のいい友人になり、30を過ぎてからこんな馬鹿をして笑い合えるジョークのセンスもピッタリな友人に出会えるなんて貴重なことだと思うのだけど、同時にマットが好みのためにせつなさも味わうジャレド。
ずっと仲よくしていたい、でもそれ以上なりたい、でもでも相手はそのつもりはない。

マットはジャレドを気に入っており、ジャレドの部屋に私物や歯ブラシをおいて泊まりまくって一緒にいるときは髪や体をベタベタ触って…なんて傍から見れば明らかにストレートな男性ならしない行為だけど、そのことに気づいてないの?て思うのですが・・・こんなに友情なのか愛情なのかわからないサインを一緒くたに送ってることに気づいてないのか?とジャレドが抗議の声を上げるのもわかります。
でもマットはその感情を許容せず必死に否定してきた人生だったわけですね。

マットにとって同性への思いは、間違っている、こんなことすべきじゃない、どうしたらいいのかわからないという困惑の感情で、ジャレドはそれは間違ってないし否定しなくていいし、どうしていけないことなの?と問いかけます。
確かに家族経営のお店で働くジャレドに対し、警官であるマットはカミングアウトしない方がいいといえる立場なんですが・・。

同性への愛情が友情と両立できるか、という友人から恋人へのお話はたくさんあるけれど、ここまで丁寧に周りの隣人や家族からの思いも練り込んでつくられたお話は読みごたえがあるし、読んでよかったと思います。
一方的に好きだ好きだと告げても否定され続ける関係はジャレドが可哀相にも思えたけど、ジャレドの方が少しだけゲイとして素直に生きてきたと感じられる分だけ、マットの葛藤のほうが大きいのがわかります。

紆余曲折をへて恋人になるまでの第一段階もとてもいいけど、それで終わりでなく、社会的にどうしていけばいいかを描いた後半がほんとに素敵!
こういうの読みたかった!って思うんですけど、なかなかこんなにP数を割いてゲイカップルが幸せになるには…なんて書かれたお話はないような気がします。

最後に行き着くまで本当にこの2人は何度も何度も喧嘩して何度も何度も話合い、互いを否定して傷ついて涙を流します。お互いの正しいと思っている事をどうしても捻じ曲げられなくてぶつかりあい、このまま別れを告げられるのでは・・・なんてシーンも何度もあります。
本当に社会の逸脱を恐れているのはどっちなのか、周囲に保守的でいることと立ち向かうことのどちらが良いのか、いっぱい考えさせられたしすごく感動をもらいました。

ゲイとして、風当たりの強いカップルとしてこの先ずっと在るのなら、とことん最後までつきあうというマットの台詞と、厳密な関係でありたいのならすべて分かち合うか、その覚悟がないのならまったく分かち合わないかのどっちかだという母親のセリフがホントに素敵だと思いました。

行為はねっとり濃いようなシーンはあまりないなと感じたのですが、リバシーンがあります。そのあたりも海外小説独特の「ベッドでは楽しむもの」というスタンスが効いていてそれほど気になりませんでした。
やはり毎度思うけど、日本人のように(受ける側が)恥らうのが美徳、のようなものがないからでしょうか。

さらりとシチュエーション萌えやキャラ萌えがよみたい!って方には向かないどっしりしたお話ですが、読み応えのある感動が欲しい!って方には是非是非読んでもらいたい作品です。

16

じっくりじんわり

マット~この"腹黒くていやな野郎"!!!!!

唯一無二相思相愛なのに!!
居心地がよく、離れがたい存在なのに!

どうしようもなく惹かれてるのに認められないマットと
それを見守るしかないジャレドの
友情を大事にしたい、でも踏み込みたい踏み込めれないって関係がすんごくじれじれした。
ユーモアたっぷり爽やかな2人の友情が尊い分、恋愛への葛藤にぎゅっとなる。
M/Mならではの語り口調や軽快な掛け合いも心地よく、
家族の優しさにじーんと来たり、生きづらさにぐぐっとなったり…

マットは陥落しないんじゃ…ってくらい頑ななのに
無意識にジャレドの髪をいじっちゃうところがたまらなく可愛いいい!!
行動と見せかけの気持ちが合わず、混乱しちゃうのとか。
それはないだろ~~~と掴みかかりたくなるけど、マットも苦しい。
無理強いせずに距離を測ってたジャレド、どうしようもなくなったジャレドもせつない。
日常でぶつかり合って分かち合って、じっくり関係を築いてくのが良かった。

男前なマットの何が可愛いって
兜合わせがお気に入りなのも可愛い。多幸感いっぱい。

兜合わせで満足してるのは可愛いなぁと思う反面、
ボトムなのかトップなのかを気にする姿と合わせて
これまでしてはいけないことと自分を思い込ませてた分、
アナルセックスに抵抗があるからとも感じられ複雑。
染みついた価値観をなかなか崩せないマット…苦しい。

でも、未開のことすぎて本当にジャレドが満足しているのか
気持ち良いのか不安になるは愛ですね。
そこから、ジャレドの気遣いと巧みさで経験してみたら
マットの価値観が一変!!ってのが悶えた!
身をもって実感して、すごく気持ち良いから、
気持ち良いことしてあげたい、してもらいたいって!!!
お互い求め合って与え合うリバ大好き!!!
心も体も屈強なマットが身を預けて、悶える…最高でした。

ジャレドはジャレドで、男前でキュ~~~ト!
いちいち反応が可愛い。負けん気が強いとこ、
無理じいせず待ってるけど、押すとこは押す。
カラっとしてるようで実は臆病なところもあり…
頑なだったマットの変化にたじたじなジャレド。
可愛さと葛藤具合が絶妙。ジャレドも懸命に生きてきたんだな…
その葛藤をほぐすお母さんの言葉が温かく、
男前度が上がったマットによって前に進めて世界が広がる。良い関係です。

自分の気持ちと折り合いがついてからのマットは
男前度が爆上がりして逞しさ増してるのに、まだまだ不安もあり、
そんな時にジャレドに「きみは正しい」という言葉を求めるのは可愛かったり…
ジャレドの一言が強い力になっているのを感じられる。
その言葉を得るためのお決まりのやりとりや、
親友の延長線な関係がすごく好き!
パッと見は特別な親友なのに、あれ?って距離感。
マットもジャレドも強くて明るくて頑固なとこもあって
それを認め合って、大好きなのが伝わってくる。
とっても幸せな気持ちになりました!!!

原作者さんのHPのSS(AtoZの後の話)もすごくすごくすごく良かったです。
マットの無骨だけど真っすぐジャレド大好きなとこ…良い。
マットとジャレドの関係ってなんて素敵なんだか…幸せいっぱい胸いっぱい。
2人を延々と見守りたいので、原書を全て翻訳出版してほしいです。

2

世間の目と真実の自分との擦り合わせ

翻訳物では多い、一人称物。
国産BLの一人称は苦手ですが、翻訳物はあまり気になりません。
基本、キャラが自立していてウジウジしてないからかな?一人称でウジウジされているときっついですからね(苦笑

**********************
受けのジャレドは、ゲイをカミングアウト済みの三十代。
小さな町で兄夫婦と共に、金物や車の部品などを扱う店を営んでいます。

攻めは長身で逞しい体躯を持ち、町の警察へ勤めることなったノンケのマット。
軍人一家でありながらその道へ進まなかったことで、父親とは不仲に。

リバありですので、攻め受けと書くのはおかしいかもしれませんけどね。
**********************

舞台はアメリカのコロラド。
ひじょうに自然味溢れた情景が、読んでいて目に浮かぶ表現をされています。
ゲイのカミングアウトは日本よりアメリカの方が多いでしょうが、それは都会に限られています。
ですから、ジャレドは小さな町では異質な存在。
教員免許を持っていても、あらぬ疑いを立てられることを考え自重しているような。
そんなこと何でもないことのように普段ジャレドは振る舞っていますが、『ゲイである自分』というものを過分に意識していることが伝わってきます。
ただ読んでいてとても心地良いのは、ジャレドの家族が彼の味方で、彼のことを心から愛していることがこちらへ染み渡ってくるところです。
翻訳物では主人公は生活も意識も自立した大人であることが多いですが、家族との絆がとても深くえがかれていることが多く、暖かい気持ちにさせられます。
この作品も例外ではありません。
特に兄嫁のリジーはジャレドの一番身近な理解者で、彼の幸せを一身に祈り応援しています。
BLに女性キャラはいらないと考える方もいらっしゃると思いますが、この作品にはリジーはなくてはならない女性でした。
まあ、マット父は目も当てられない酷さですけどね(苦笑
でも、この辺りもリアルかなー。南部の保守的な人はこんな感じだろうと思いますし。
笑ったのはこの父親と二回目に会った時の、ジャレドの逃亡したい気持ちの比喩でした。
すっごい的確さだと思いますね、逃げ出したい時の。

先にもリバありと書きましたが、個人的にはリバは苦手要素です。
良く言われる地雷という程ではありませんが、好んでは選びません。
ただそれは国産物に限りです。
海外物は男性×男性という意識が作品内で大きいので、お互い気持ち良くなって楽しもうという雰囲気がすごくあるんですよね。
どうしてもBLは受けが女性的なポジションになりますが、どちらかが優位でどちらかが受け身だというものでは本来はないんだろうなあと海外作品を読むと思わされます。
積極的にリバを読みたいわけではないのですが、今回も話の流れでそういうことがとてもスムーズで、しかもそれはマットの愛ゆえなのでとても良かったです。

この作者さんも翻訳者さんも初読みです。
翻訳者さんは別の方ですが、文体の雰囲気はジョシュ・ラニヨンさんの『アドリアン・イングリッシュ』シリーズと似ています(一人称だから?)ので、あちらをお読みになったことのある方には馴染み深いかも。
アドリアンのように大きな事件に巻き込まれる(多少警察沙汰はありますけど)というわけでもなく、J.L ラングレーさんの『狼シリーズ』のように人狼が出てくることもなく、アヴァ・マーチさんの『貴族の恋は禁断の香り』のように19世紀でもない。
本当に、片田舎での家族や現実世間との葛藤しか書かれていません。
目新しいことは特にはないんです。
先が気になってページをめくる手がとまりません!とか、そういのではないんです。
ただ、すごく爽やかな気持ちにさせてくれる作品でした。
文体に抵抗がないならば、内容は癖がないのでお勧めしたいですね。
どちらかで試し読みをしてみてはいかがでしょう。
中のイラストもとてもお上手で、カラーとモノクロでの差はありません。

最後にアメフトネタが多くて嬉しかったー!というのが感想です。
『デンバーといえばブロンコス!』とか『マット、チーフスってまじ?』とか『テールゲートパーティは死ぬまでに一回はするぞ』とか、アメフト単語に食いついてしまいました。
そして耽美ファンの方には申し訳ないですが、『ゲリ理髪店』にも…
お下品なBLファンですみません(汗

13

ココナッツ

こにしそるさま

コメント、ありがとうございます(*^^*)

国産BLの一人称はほぼ日記のようで、苦手なのですよね。
なのでそういうことを感じさせない上手い方に当たると驚いてしまうくらい(^^;;
海外物は一人称多いような気がしますが、そこまで気になりませんねー。
翻訳者の力も大きいのでしょうが。

Krovopizzaさまも書かれてらっしゃいますがアドリアンシリーズと文体が似ていて、あちらが大丈夫ならば問題ないのでは…と思います。
あくまで個人的な感想ですが(^^;;
爽やかな表紙ですし、もっと手に取る方が増えると良いなあと思ってレビューさせて頂きました。
わたしはハーレクイン社さんの翻訳物よりモノクロームさんの方が作品も合いますし、何と言ってもサイトも驚くほど地味なので勝手に販促しております(*^m^*)

こにしそる

ココナッツさま

この御本、買おうかどうか迷っていたんですが、ココナッツさまのお墨付きでしたらハズレなさそうですね 笑
アドリアンに文章体が似ているなら楽しめそうです。狼シリーズもそうですが、海外訳ものって何故か文章自体がエンターテイメントで楽しめますよね。

日本のBLの一人称は苦手、というのは分かります。苦手というか日本のものだと幼い文章の印象になる気がします。(一人称は書きやすいと書いてる作家さんもいましたし)海外訳だと逆に卓越した感じになりますね。不思議~。リバも共感です。海外モノって恥ずかしがったりしないで、2人ともすごく楽しそうに事に及んでますね。

参考になるレビューありがとうございました。

ゆっくりと育まれる愛

自分がゲイであることは受け入れているものの、大学で学んだ専門分野を活かすこともなく、家業の金物屋を義姉と営んでひっそりと暮らしているジャレド。
そこに現れた警官のマット。とても魅力的で、ジャレドとは意気投合するのだが、マットはストレート。そんな二人の友情を壊すまいとジャレドは気を使う。その心の動きに共感できます。
マットも、自分がゲイではないというものの、ジャレドに惹かれている。どう考えてもそれは友達以上だろうと思える行為があって、ジャレドも戸惑う(そりゃそうですよ、あれだったら・笑)。
その二人がどうなるのか、繊細に描かれているなあと思いました。

コロラドの小さな田舎町の自然とそれを満喫する様子、家族や周囲の人々の反応も細やか。
アメリカの田舎ってこんな感じなのかなあと想像してみるのも楽しかったです。一般小説を読んでいる感じでした。
マットとジャレドを取り巻く人々…応援する人、受け入れている人、拒絶する人と様々。マットとジャレドに影響されて変化する人もいます。
ある事件も起こりますが、それがメインのミステリものではありません(が、後の伏線となります)。

一本の主軸となるストーリーがあるというより、日常と心情の変化、成長を描いた作品と言えるかもです。
なので波乱万丈の物語を求める方にはちょっと物足りない?
同じレーベルから出ているジョシュ・ラニヨンさんのミステリものに比べると淡々としている印象ですが、穏やかです。あれほど心が痛くなる経験はしなくても、この先どうなるのだろうと思いました。

ラブシーンはなかなかホット。
リバありで、私自身は、基本的にはリバが苦手な方ですが、この作品ではとても自然に思えました。
マットの、ジャレドに対する思いやりがそこここに感じられます。
途中からマットの決心による行動が素適。

そして結ばれ、数度目かの営みの後で、ジャレドがどう感じているのかがマットには気になっている様子。自分は果たしてジャレドを歓ばせることができているのだろうか、無理をさせていないだろうかと。それと受になることの好奇心もある感じ(笑)。
で、ジャレドが施す行為へのマットの反応にドキドキしました。ここらへんは男前受けが好きな私のシュミかもしれません(笑)。

BLというより、やはり男性同士のロマンスという印象。
ほどほどリアルだけれど、甘さもありで、このバランス加減がいいのかも。
この作品の舞台、コーダという町のシリーズ(主人公とそのパートナーは作品ごとに変わるようです)、続きもぜひ読みたいです。

8

重い軽さ

当事者にとっては背中を押す一冊に
なるかも知れないし、あるいは今一度の
熟考を促す一冊になるかも知れない。
そう言う存在ととりあえず受け止めました。
軸となる二人のバランス感覚故に
ただ重いだけの話からは免れていますが、
選択肢の表し方にも色々あるのだと諭す様な、
そう言う物語です。
そう言う世界観ですので穏やかな物言いで
あってもその意味する所には容赦がありません。
そこを乗り越えてこその大団円だと言う事でしょう。

彼等のその後に、幸あれ。

6

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