江戸川乱歩傑作集 (1) 孤島の鬼

kotou no oni

江戸川乱歩傑作集 (1) 孤島の鬼
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神7
  • 萌×24
  • 萌1
  • 中立0
  • しゅみじゃない3

--

レビュー数
5
得点
54
評価数
15
平均
3.8 / 5
神率
46.7%
著者
江戸川乱歩 

作家さんの新作発表
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イラスト
咎井淳 
媒体
小説
出版社
リブレ
レーベル
発売日
ISBN
9784799726280

あらすじ

どうか僕から逃げないでくれたまえ。
そして僕の友情だけなりとも受け入れてくれたまえ。
僕が独りで思っている、せめてもそれだけの自由を僕に許してくれないだろうか。

表題作江戸川乱歩傑作集 (1) 孤島の鬼

諸戸道雄・帝大医科大学卒科学者
蓑浦金之助・商社員・25歳

レビュー投稿数5

鬼とは誰か

―「君の頭はまっ白だよ」
道雄はそういって妙な笑い方をした。
それが私には泣いているように見えた。

私こと蓑浦が白髪になってしまったのは、自分の所業によることを悟った諸戸の描写です。

「生地獄」の章で、
「地上の世界の習慣を忘れ、地上の羞恥を棄てて、今こそ、僕の願いを容れて、僕の愛を受けて」
という諸戸の台詞がありますが、地上の一般社会が諸戸にとっては地獄で、彼は「不幸」だったと思われます。

目前で緑に恋していく蓑浦、どう足掻いても愛する人に受け容れてもらえない現実をつきつけられた諸戸、その結末からいろいろと妄想すると、はたして鬼とは誰かと考えさせられます。冒頭でも白髪鬼は地下で死をくぐりぬけた者の末路として引用されています。

なぜこの物語に同性愛者が登場するのか、自註自解で少し述べられていますが、効果としては諸戸と彼の父との対比がうまくなされていると思ってます。マイノリティである事の受け容れ方が父とは異なる諸戸の生き様(育った環境とか相違点ありますが)に、心が痛みます。

咎井さんの表紙もとても綺麗で、この表紙のふたりのimageで物語を読み進められたのもとても良かったです。脳内で諸戸と蓑浦がいちいち格好いいw
ほんとに大好きな作品です!
同性愛を扱った一般作品を今回のように素晴らしい絵師様とのコラボで他にも出してほしいな〜と思いました。

4

蛇と最後の一節

タイトルのみ既知、前情報なしの初読み。世のあちこちに深い考察が溢れている作品だと思うが、書き散らした初読の感想を置いておく。

まず一番驚いたのは、これが90年以上前に書かれたこと。差別表現が多く時代を感じる。とはいえ人間の本質はあまり変わらないんだな、とも思った。
一人称で、主人公が読者に語り掛ける形で進む物語。すぐに引き込まれ、一文字も読み漏らしたくない心持ちで気合いが入った。特に後半は一気読み。言うまでもなくすごい!面白かった。

BL的メインキャラは蓑浦と諸戸。容姿端麗・高スペックな様子が描写され、テンションが上がる。諸戸の片思いは、ときに歪みながらも一途で、初々しく切ない。蓑浦視点のみなので察するしかないところも多く、序盤はそこまでやる男だったのか?と疑ってしまった。
(個人的推しは深山木。早々に退場してしまい、辛かった……)

最大の山場は洞窟内にて。カバーイラストの蛇が気になっていたが、あのシーンでなるほど、となった。心象風景にしてはとても生々しく、改めて考えると蓑浦はちょっと酷い。だが規制ラインの異なる時代に書かれた心理描写は、ありのままを伝えている。
欲の対象にされ嫌悪を示す蓑浦の反応は、自己の生理・本能に従った素直なものだと思う。現代だって知識に基づく理性で言わないだけで、感情だけなら変わりない。そして恐怖に戦く蓑浦は、諸戸の性欲を受け入れない。

諸戸の恋に必死になる情けなさは応援したくなるし、死に直面し初めて願望を表に出すのに泣ける。同時に蓑浦の拒絶反応も当然と思う。その結果の白髪は衝撃で、さらにそれを見つめる諸戸の描写も心が苦しかった。

諸戸の過去から現在に救いはなく、どれだけ辛く蓑浦という希望しか無い人生だったとしても(だからこそ?)、幸せは訪れない。この諸戸の人生の理不尽に言葉を失い、堪らなく心惹かれる。「萌え」という言葉だけじゃ足りない。

ラストの一節は、これで物語を締める意味を考えたくなる。余韻がいつまでも続き、この一節だけで十分泣ける。
読後しばらく諸戸のことが頭から離れなかった。このやり場のない気持ちをどうしたら良いか分からない。素晴らしき悲恋ならではの読後感。

気になったのは、蓑浦が「道雄さん」と呼んだり「諸戸さん」と呼んだりしてたこと。この呼び分けにどんな意味があるんだろう?

1

どうか僕から逃げないでくれたまえ

江戸川乱歩の世界観と咎井淳さんの惹き込まれるイラストとが絶妙にマッチしていて感動しました。
読んだ後に、改めて表紙を見ると様々な意図が読み取れて感慨深くなります。

「孤島の鬼」リブレ出版さんからBL乱歩と銘打たれて出版された1冊。
主人公の回想という形で語られる、奇怪至極な物語。至るところに伏線、話の核が散りばめられているので淡々とした筆致ですが最後まで展開が読めず夢中になってしまいました。愛する初代の死、異形の秀ちゃん。そして自分に並々ならぬ好意を寄せる諸戸。

この先は文学的な感想ではなく「BL乱歩」という視点からの感想を少し書かせていただきたいと思います。
まず完全なる一方通行のまま始まり一方通行のまま終わっても、BLとくくることはできるのでしょうか。諸戸が、本当に健気で報われなくて切なかったです。
きっと、出会ってからずっと、爆発しそうになる主人公への愛情を押し込んできたんですよね。「好き」「愛することだけは許して」「友達でいて」なんて許しを請う姿が、健気で健気で。
そんな一途な男ですが、物語中盤までは諸戸がどう考えても怪しくて、犯人と思わせるように巧みに書かれていて……軽率に疑ってごめんなさい。
そして、極限状態に陥った孤島の地下で、主人公への愛欲が爆発した。
しかし絶体絶命に陥るその瞬間まで大蛇のように絡み付きたい欲を押さえ込んできた諸戸は本当に理性的な男です。
結局最後まで、主人公の気持ちが揺れることもなく、名を呼びながら逝った諸戸。きっと今の時代にBL作家が同じ話を書いていたら結末は違ったのかなという「たられば」を考えてしまいました。彼の心中を思うと胸が押しつぶされそうです。

15

さすが乱歩というべき作品ですが

小学生のころ読み漁った乱歩作品。咎井淳さんのイラストでリブレさんから発売されると聞いて喜び勇んで購入しました。大人になった今読み返すと、子どもの頃に感じた感想とはまた違った感想を持つ、非常に感慨深い作品でした。内容はすでにご存じの方が多いかと思いますがざっくりと。

主人公の蓑浦は30歳にもならない青年ですが髪は白髪。彼の体験したある恐ろしい出来事の恐怖のために髪が一晩にして真っ白になってしまったのです。さらに彼の妻の体にはなぜこんな傷跡が?という傷跡があり、人から不審がられます。その過去の経験を文章にして回想する、という形で始まります。

蓑浦には大学時代の友達の諸戸がいて、彼から求愛され続けていますが蓑浦は見目麗しく、有能な彼から求愛されることで優越感を感じながらも彼の愛情を受け入れることはなく過ごしています。その諸戸は「女性とは関係を持つことができない」と公言していたにもかかわらず、突然蓑浦の恋人に求婚してきます。そんな中、蓑浦の恋人が殺されるという事件が起こり…。

という話でした。

さすが乱歩というべきか、伏線、ストーリー展開、ミステリーとしてのトリック、どれをとっても素晴らしい。話に奥行きがあり、読むほどに引き込まれてしまいました。

しかし、この作品がBLか、と問われれば答えは否だと思うんですよね。諸戸は過去のとある事情から女性を愛することができずに蓑浦を一途に想っていますが、そこから二人の間に恋愛感情がうまれることは最後までない。蓑浦が彼の愛情を受け入れることがないからです。
良くも悪くも蓑浦はこの時代の「男性」の象徴のような人物で、あまり好きにはなれないのですが、対して諸戸は非常に健気でキュンときました。

そして腐目線で見るとあらびっくり、かなりの萌えがそこにあふれています。諸戸が可哀想で健気で泣けてきました。子どもの頃は分からなかった彼の一途な想いに思わずウルっときてしまいました。

タイトルといい、表紙の絵柄といい、もう最高に素晴らしかった。そしてこの作品をリブレさんで出版するとか…。やられたなあ、と。

しかし、私は言いたい!

せっかく咎井淳さんを起用しながら、なぜ挿絵がない…!表紙の美しい彼を頭に描きながら読むことで萌え増強でしたが、咎井さんの美麗な挿絵を期待していた私はがっかり感半端なかったです。

乱歩作品の再版ということなら分からなくはない。しかし、リブレさんが発行し、かつ咎井さん挿し絵と聞いたら、そりゃ腐妄想爆発するよね。と思ったのは私だけではないはずだ…orz

久々に乱歩作品を堪能できてうれしかったですが、何度も言います。咎井さんの挿絵が無いならあえてこの高いリブレ出版の作品でなくても、他社出版の文庫本でも充分ではないのか?と思ったので☆4つで。


13

原作は大好き! でも…

没後50年を経て、著作権保護期間が切れたので刊行されたもよう
皆さん仰っていますが、リブレ公式に『挿画:咎井 淳』とあるにもかかわらず挿絵がないので……結局、図書館にある既刊と変わらないです
この値段ですが、ハードカバーでもないです

個人的には本作、特に諸戸は笠井あゆみさんあたりの耽美系絵師さんにも描いてほしいなあ

3

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