イラスト付き
僕はただ、あなたの愛が欲しかっただけ……。
傲慢で無知な愚かな王子。
願いが叶うという魔法の水鏡に、唯一手に入らない護衛騎士の愛と忠誠を願うと、翌日から世界は一変してー。
と言う、主人公成長ものになります。
六青ファンには想定内だと思うんですけど、始まりから約1/3、およそ文庫1冊分くらいはですね、もうめちゃくちゃ痛いし苦しいです。
主人公・シオン(リュシオン)が偽王子として追放の憂き目にあう事から始まり、ならず者達に捕まっての凌辱強姦。
これが六青作品ですので、もう容赦無いんですよ。
殴られ、骨を折られ、代わる代わるの輪姦に、犯しながら中への排泄と、身体を便器代わりみたいな。
更に、ようやく護衛騎士・グレイルに助けだされるものの、下僕として徹底的に冷たく接せられる。
また、下僕としてささやかな日常を手に入れたかと思えば、お使いの最中に人拐いにあい、またまた性奴隷の日々。
もうこれでもかと、主人公を過酷な運命が襲う。
これ、六青先生の怖い所なんですけど、これほど過酷でありながら、どれ一つとして無駄な出来事は無い所なんですよ。
序盤のシオンなんですけど、甘やかされ放題に甘やかされ、鼻持ちならない傲慢な人間なんですよね。
ただ読み進めるうちに、それがシオンの本質なのでは無く、政治的思惑によって歪められたイビツな姿なんだと分かってくる。
こう、傀儡の王にすべく、知識や教育を与えられないままに育った、哀れな子供なんですよね。
何も知らない。
それがこれらの出来事により、まずは身体の痛みを知り、心の痛みを知り、自分の頭で考える事を学ぶ。
そう、徹底的に、主人公の成長を追った物語なのです。
で、上手いのがここから。
これらの過酷過ぎるエピソードは、主人公の成長に必要な痛みです。
とは言え、延々と続くのでは、主人公が幸せになる前に読者の心が折れてしまう。
いや、ガチで50ページ読み進めただけで、既に心が折れかけましたもん。
が、ここからが待ちに待った主人公救済ターン。
更に、二人の恋愛パートが本腰が入っての始動。
更に更に、ちょっとした攻めザマァまで味わえちゃうと言う!
いや、シオンの祖国・ローレンシアが侵略され、更に攻め込んで来たロッドバルト軍ですが、実はグレイル達だったんですね。
腐敗したローレンシアの中枢にメスを入れ、改革して行くロッドバルト軍。
そしてシオンですが、グレイルに連れられて、ロッドバルトへと住まいを移す。
ここから、ロッドバルトの館で、書生として過ごす事になるシオン。
実は彼が王子時代からグレイルに拘る理由ですが、誰も彼もが自分に追従する中、唯一正しい事を言ってくれたからなんですよね。
冷たい態度でも、誰一人手をさしのべてくれなかった自分に、彼だけが救いの手を差し出してくれた。
しかし、助けられた時にいい放たれた「散々汚されたあとの身体なんて触る気にもなれない」と言うセリフが深い心の傷となり、自身の恋心を封じ込めてしまう。
で、グレイルはグレイルで、最初こそシオンを毛嫌いしてたんですよ。
それが、いくら嫌いでも見捨てる事は出来ずに助けて「育て直す」うちに、シオンのあまりにいじらしい姿に、何故か心が痛むような切ないような心地になる。
しかし、髪を直してやろうと手を上げただけで、シオンに身体を震わせて身構えと言った具合で怯えられ、ショックを受ける。
いやね、いくら成長させる為とは言え、グレイルはスパルタすぎると、若干腹が立ってたんですよ。
受け贔屓の私としては。
それが、シオンに触れようとしたら怯えられ、近くに行けば逃げられと、その事でショックを受けてるグレイルにニヤニヤとしちゃうんですよ。
そもそも彼は、まさに軍人と言った感じで、言い方一つとっても厳しすぎるしキツイのです。
それが、シオンを怯えさせないよう一生懸命優しく穏やかに話そうとかしてるのに、もう笑いが込み上げてきちゃうと言うか。
いや、これも攻めザマァの1種だと思うけど、最高だよね!と。
また、シオンですが、この時点では完全にいじらしい健気受け。
自分は嫌われてるけど、グレイルの役に少しでも立ちたい的な。
もう健気で健気で、尊すぎて涙が出るわ!って感じなのです。
最初は「げえっ」と思ったのに。
いやもう、この二人のジレジレの恋愛、萌えすぎですよ!!
この後ですが、更にもう一波乱あります。
これまたシオンが健気すぎて、泣いてしまいましたよ。
だってさ、愛する人が幸せで笑っていてくれればいい。
そこに自分の姿が無くてもって、あまりに切なすぎる。
ついでに「汚らわしくて触る気にもなれない」ですけど、自分が腹立ちまぎれで言ったセリフで、逆に痛い目を見るグレイルにスカッとしちゃいましたよ。
いや、ちゃんと萌える感動的なシーンなんだけど、攻めザマァが好きだから。
と、とにかく面白いし読み応えがあるし、感動的な素晴らしい作品でした。
本当に痛いんですけど、それ以上に大きな感動と萌えを得られましたよ。
魔法の水鏡は、真実、願いを叶えてくれましたね。
最初に:
痛くて切なく苦しく萌える作品を読みたい人はぜひ手に取ってほしい作品。
護衛騎士 x プリンス
ある目的でローレンシア王国にいる北の大国ロッドバルトから来た護衛騎士 x ローレンシア王国の傲慢無知なプリンス
先に書いておくが、モブの強姦・陵辱2回ありなので、苦手な人は注意。
ただし、六青先生のファンは予想の範囲だろう。
事実私はそれも含め先生の作品のファンだから、今回もまあすごいなと思いながら、そこにもエモさを感じ、これぞ六青作品!と唸った。
通常のノベルス三冊分のボリュームは読むのに半日かかるほど。
だが飽きさせることなく一気読み!(もうここで神作品なのがいうまでもない)
設定とキーワード:
1)ある目的を持って北の大国ロッドバルトから親善大使の一員としてやってきた男グレイル(攻)20代後半→30代突入
2)我儘放題に勉強もしなく読み書きも出来ないほど甘やかされて育った傲慢無知な金髪碧眼超ウルトラ美人な王子シオン(元エリュシオン)(受)10代後半→20代
3)運命を変える水鏡
4)下克上
この4つが軸となって物語は悲劇から始まって、長い深いシオンとグレイルの成長物語が始まる。
傲慢で無知なエリュシオン王子は自分の言うことを唯一聞かないグレイルに興味を持ち、心のどこかで惹かれていた。
グレイルは初めてエリュシオンに会った時は一瞬でその美しさに魅了されたが、あまりの根性の悪さに、見下げて嫌悪感しかなかった。
傲慢無知な王子が《運命を変える水鏡》にグレイルの想いを願ってから、エリュシオンの運命が一変する。
偽の王子だったことが判明し(王子自身も知らなかった)一夜にして追放され、その後悲惨な状態だったエリュシオンを偶然見つけ助け、自分の下僕とするグレイル。(その時名前をエリュシオンからシオンに)
願いの通りに向かう道は残酷で悲惨で、何度あんた死にかける?とツッコミを入れたかわからない(笑)このツッコミはグレイルも何度か違う側面からシオンに突っ込んでるけど(笑)
グレイルも同時に水鏡に取り込まれ、実は二人一緒に願いをすることになったのだが、果たしてグレイルは何を鏡に願ったのか。ある目的の成就を願ったのか。
地位と名誉をなのか。それとも。。。
実は、甘やかされた風で、理由があって学ぶことを教えてもらえず、愛情も受けず育ったことが分かるのだが、それもまた切ない。
そして、グレイルの放った一言にずっと苦しみ萎縮していくシオン。
二人の切ないまでの食い違い等も六青先生ならではの展開で、大満足!
読み進むに従って、私の大好きな先生の作品の一つ『騎士と誓いの花』を思い出した。
そこで描かれた萌えの要素が今回の作品にも散りばめられていて、萌えの満足感と充実感が半端なかった。
*先生をこの作品で初めて知って、この作品が好きだと感じたら、ぜひ『騎士と誓いの花』も読んでほしい。
見所は傲慢で無知だった王子がどのように成長し無垢な輝きを開花させるのか。
そして、グレイルもシオンを救い育てることで彼も過去の生い立ちから救われまた成長していく。
展開は何重にもあって、読者を飽きさせない!
六青先生の世界観が一杯詰まった究極の切なさを堪能出来る1冊。
久しぶりの先生の痛く切ない新作が読めて感無量。
稲荷家房之介先生の美しい挿絵と共に、ぜひ堪能してほしい作品。
内容についての詳しいあらすじなどはほかの方のレビューをご参照ください。
インタビューにはちらっと書かれていますが、もとは秋山みち花先生とご一緒に出された同人誌がベースの商業出版版だと思われます。原型をとどめていらっしゃるのかどうかは同人誌未読のため何も言えないのですが(多分違う)、お二人とも同じコンセプトで書かれた『運命を変える水鏡』に望みをかなえてもらう王子と騎士のお話で、六青先生分の本が出版されるのをずっと待っていました。
ちるちるのサイトを閲覧されるような猛者の方にしてみれば説明不要なのかもしれませんが。
秋山先生分は2016年にクロスノベルスさんから出版されているので、ご興味がある方はそちらも読んでみるといいかもしれないです。そちらも傲慢で愚かな王子が水鏡に運命を翻弄され奴隷の身に落とされるストーリーでなかなかハードではありましたが、六青さんの書かれた内容よりずいぶんとライトだったなあと今になって思います。
文章量もさることながらハードな内容で、読みごたえがありました。
受の受難パートは覚悟していましたが、これまで書かれてきた中でも最高峰の悲惨さで、前半部分は読み進めるのが随分としんどかったのです。読了した今は人生というロードストーリーを垣間見たようなそんな読後感です。
新書3冊分のボリュームで読み終わるまで丸一日かかりました。
モブ姦がありますが余りにも酷すぎてシオン(エリュシオン)の意識が飛んでいるので、大まかな描写に終始していたので私は平気でした。
王太子時代のシオンは性格が悪く傲慢ですが、すぐに可哀想になって嫌なキャラには思えなくなりました。
むしろ頑ななグレイルに、素直になれば良いのにとヤキモキしながら読みました。無口で不器用にも程があります。健気なシオンに肩入れしながら読みました。
ロッドバルド皇国に来てからは、本来ならそうであっただろう性格や美しい容姿で人々を魅了します。重要な取引国の大使がシオンを見染めた事からロッドバルド皇帝からシオンを差し出すように言われ、ようやくシオンへの愛を確信したグレイルが断って国外追放になるのです。
ざっと内容を辿っていますがとても丁寧に物語が綴られているので書ききれないです。
エリュシオンという孤独で誰にも愛されなかった王子が、産まれた時にすり替えられて本人にはなんの罪も無かったのに、無知故の傲慢さで庇う者も無く追放されます。そして死ぬような酷い目に会いながらも人として大事な事を学び直して行く物語でした。
グレイルとのエッチの描写は1度しかありません。でも壮大なシリーズを読み終わった読後感があります。
発売記念ペーパーはロッドバルドを追放されるグレイルとシオンを見送る皇太子エイナルとライマール王国の第二皇子ラディフの様子、グレイルの留守を任されて3年後、ラドウィック邸を守る執事のヨナスとその様子を伺いに来るグレイルの親友のイザークのお話でした。
そしてコミコミさんの小冊子はロッドバルド皇帝に呼び戻されたグレイルが、シオンと家臣を連れてローレンシア総督として赴任するお話です。
エリュシオン王と王宮で会ったシオンは、運命を変える水鏡の所に行きたいと言われます。記憶を頼りにグレイルと皆で森に向かいますが、そこにはありませんでした。怪しげな神殿従者に五色の泉だと言われ一行が向かうと不思議な光に包まれてエリュシオン王と神官が見えなくなります。王が何を望んだのかは分かりませんが、大神殿に移住する事が決まりました。
最後は幸せそうにキスする2人でした。
帯文は 「二つの運命 一つの愛」??
・・意味不明ではっきり言ってセンスを感じないキャッチコピー。
稲荷家房之介 さんの美麗な挿絵が素敵です。絵に惹かれ、帯文の意味不明を解消したくて、「六青みつみ先生インタビュー」を読みました。 意味不明な帯の推薦文は、紹介記事へ誘導する戦略だったんだろうか?
そして、電子版を讀みました。
この作品にもモフモフした兎が登場します。
【シオン(元エリュシオン)】(受)
……「金髪碧眼超ウルトラ美人」「アホの子」「金髪」「10代後半→20代」
【グレイル・ラドウィック】(攻)
…「男前」「俺様」「騎士」「黒髪」「20代後半→30代突入」
紹介文によると、
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メインテーマは「シオンの成長と恋の成就」。
冒頭:
約70ページ分の初出は同人誌(合同誌)
テーマは「騎士と奴隷」「運命を変える水鏡」
「受=金髪・碧眼で王子、攻=黒髪・青い瞳で騎士」
今作の着想:
昔見た童話(寓話)アニメ。シオンの成長物語として書きはじめ、次第にグレイルの(主に恋愛方面での)成長物語に。BLなので恋愛の成就を軸に、シオンの成長物語として書いた。
必然的にページが増え、書きはじめた当初はノベルス一冊に収まる分量と思っていた(読みが甘い)。
冒頭部分は同人誌でリミッターを外して好きなように書いて、書き下ろした続きの分は「好きなように、書きたいだけ書く!」
「商業出版を前提とした制約」のせめぎ合いの結果、にクロスノベルス初の四六判で出版になりました。
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・・と、あとがきにありました。
その分、可愛いシオンが素敵な大人に成人していく過程を、次作発刊を待たず完結まで一気に読み進めていくことが出来るので、読者側のストレスが無いです。
イラストが素晴らしくて、作品のイメージ通り、綺麗で丁寧な作画で、物語の盛り上がりを添えています・・紙版も買う予定。
運命に選ばれた二人が水鏡の前に立ち、願いを唱える
・・・二人の願いを叶えるために起きる色々な激変、とくにシオンにとって過酷な試練が続きます。
グレイがうかうかしていられないほど、魅力ある人物にシオンが成長しても、素直になれないグレイ・・あんなグレイにシオンは勿体ない。