パピレス限定特別版
綺麗な王子様俺に触れてはいけません
2010に雑誌掲載された作品の再編集。
不憫受の「黒鬼=夜」の物語。
姐さんがたのお薦めに従い、電子特別版を購入。
元々遠島流刑地だった島に、たまに生まれる黒髪の子は、鬼の子だと忌み嫌われていた。
名を持たない黒髪の少年は「黒鬼」と呼ばれて、島中から忌まれる存在。
黒鬼を産んだ両親は既に死亡しており、薬師だった祖母も死亡した。
祖母の死亡後、薬草を強奪されることが増え、家が荒らされていく。
ある日、黒鬼の家を島人に焼かれた日、何処から来たのかわからない王族兄弟がやってきて、島中を焼き払い、黒鬼を探し出し島から連れ去る。
村長の息子だけが、黒鬼を止めようと暴れるが、村長が「厄介払いだ」と止める。
月日が経って、兄王子の恋人になった黒鬼は「夜」という名を貰う。
実は、第一王子の初恋は双眼鏡で観た「黒鬼」だった。
その双眼鏡で、夜は、島で黒鬼の家の跡地を護る村長の息子を見つけて、涙する。
嫉妬深い第一王子は、島に行くことを赦さない。
代わりに村長の息子宛てに、ガラス瓶にいれた手紙を海に流すことを提案する。
村長の息子が、浜辺でその瓶を見つける場面で終わり。
なんとも鄙びたメルヘンで、情景がありあり思い浮かべられる描写が素敵だった。
ドンデン返しのような、第一王子の「実は・・」の後に続く、村長の息子の淡い恋の思い出がちょっと切ない。
★あとがきに有りましたけど、「黒鬼=夜」以外の登場人物の名前がない、御伽草子風の構成。
モチーフは桃太郎で、第二王子がソレなのだそう。
最後まで受けさん以外の名前が全く出てこないお話というのも新鮮で、あとがきを読んで絵本やお伽話風に…との事だったので、「あーなるほどね!」と改めて納得し読み直すほどに面白かったです。
受けさんの黒鬼(後に、夜と名付けられますが)が、黒髪持ちという事で迫害を受けて育つのですが、それも当たり前だと受け入れて生きている様が不憫で…でもそういう設定が嫌いでない自分としてはワクワクと読み進めました(^^;
攻めさんの第一王子(兄殿下)によって連れ去られた先では、黒髪も忌避されることなく受け入れられるので、本業の薬師として働け、職場での友人も出来、徐々に明るく成長していく姿は読み手として嬉しいの一言に尽きます。
言葉の通じない・一般常識の知識も乏しいといった弊害での友人達とのやり取りも、可愛くて中学生の会話だなー…と思わせられる場面もあり、クスッと笑えるほんわかさもありました。
第一王子こと兄殿下は、ストーカー…?と最後の最後でびっくりしましたが、ほぼ一目惚れで夜を見守っていたと分かった時は、連れ去ってきてからの兄殿下の考えている事が全く分からずモヤモヤしていたので、一気に好感度が上がったというか…。兄殿下も健気で不器用で一途なんだなあ…と。
王位継承や後継者問題など難しい話はファンタジーなので一旦置いといて、この2人がくっついて2人共に幸せがやっとやってきて、心底安心しました。
ただ気がかりなのが、村長の息子と第二王子(弟殿下)で。
村長の息子は立場上影で支えることしか出来ず、夜の身に危険が及ぶかもしれない段階まで村民の前で動けなかったという難しい立ち位置がこれもまた不憫で。
いつかこの子にも幸せになってほしいと思える好きなキャラでした。
弟殿下は、最初は「なにくそ!」と思うほどイライラしますが、徐々に浮き彫りになるブラコン具合…。
分かってくるとこの弟殿下も好きになってしまうんです。
弟殿下による鬼畜攻めというのも密かに気にはなりますが…笑。
最後までお伽話のファンタジー感に惹き込まれながら読める、寝る前の1冊にオススメです( *´︶`*)
クロスノベルスさんで出されていますが、こちら本来は他社さんの雑誌掲載作品だったとのこと。
ただ栗城さんはクロスノベルスさんでは妖怪物を前回書かれておりますし(そちらも激しくお勧め)、童話と昔話が合わさったようなこの作品は二冊目に相応しく感じました。
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受けは、漆黒の髪を持つ夜。
育った島では黒髪の者は凶事とされていたために、一家ごと迫害されていました。
そんな夜を救い出し側へ置き愛した、輝く髪に真っ青な瞳の麗しい第一王子が攻め。
自分自身は民の側に立った王にはなれないと、弟を王位へつけようとしています。
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名前も持たない忌み嫌われた存在だった夜は、触れることも憚られていた自分を抱き上げ名を与えてくれた第一王子へ、なんというか雛の刷り込みに近い愛情を抱くわけです。
王子の方は夜を求める理由がラストに明かされるのでなるほど感なのですが、夜の側の気持ちの移り変わりは刷り込みに尽きるかなといった風。
ただ彼の育った環境では王族なんて雲の上のそのまた上の存在ですから、頷けるとも。
わたしはこういうタイプの攻めは大好物で、しかも第一王子の話し方がとてもソフトなのもメロメロンでした。
弟の第二王子へのたしなめ方も好き。
諦めることに慣れた彼が、夜だけは諦め切ることが出来なかったのが良かったです。
ファンタジーBLは数あれど、この作品の肝は名前なのかもしれません。
夜以外は『第一王子、第二王子』『村長の息子』『友人』というように、台詞にも地の文にもまったく名前は出てきません。
最後まで夜以外の名前は不明でした。
この辺りが、ただの甘々ファンタジーとは一線を画していました。
設定自体は攻めが受けを救出するというBLでは珍しくないものではありますが、素晴らしい構成で唸ってしまいました(苦笑
電子書籍版を購入。
挿し絵あり、あとがきあり。
表題作とその後の二人を兄殿下視点で描いた「幸ひ人」、島の村長の息子視点でその後の島の様子を描いた「特別版」が収録されています。
「特別版」は、電子限定なのでしょうか?
これが、切なくて、私的には一番萌えました。
村長の息子。
当て馬ですらない少ない出番ながら、存在感があり、本編で一番気になっていました。
「幸ひ人」でも、ちらりと登場し、その健気な様子に、私の心は鷲掴みにされました。
そして、「特別版」でとうとう、主役に!
ボトルメッセージの行方も含め、ここまで読んで初めて物語は終わりをつげます。
絶対に「特別版」を読むべし、そう感じました。
コメントありがとうございます。
なんと、コミコミさんの限定特典だったのですね。
それは、どう考えても勿体ない。
特別版に収録され、読むことができて、ホントに良かったです。
読むのと読まないのでは、読後の印象がかわりますよね。
ここでの評価も、きっと随分ちがうと思います。
初めまして。
私は書籍で購入したのですが、電子書籍の「特別版」はどう特別なのかな?とずっと気になっていました。収録されているショートストーリーのタイトルを記載して頂いてとても有り難かったです。ありがとうございます。
村長の息子視点の話は、コミコミスタジオさんで購入した場合に付く特典として書かれたものでした。あのお話を読むか読まないかで 村長の息子のイメージも変わりますよね。コミコミさんの限定特典ではなく、本編に入れて欲しかったくらい重要な後日談だと思っておりましたので、電子書籍では入れて貰えていて嬉しくなりました。
王道のシンデレラストーリーですね。
他の方があらすじを書いて下さってますが、恐らく皆様が想像している通りの流れと結末です。
私は、コウキ。さんの挿絵も含めて結構好きな一冊です。
攻めの第一王子は、金髪碧眼で物腰が柔らかく一途で、我儘も滅多に言わない絵に描いたような、まさに王子らしい王子。
一方受けの夜は、下層の平民出身で、村八分にされていた過去があり、可哀想なくらい自己評価が低く初心。
身分違いの恋があっさり認められた点や、ボトルメッセージがちゃんと夜の手に渡っていた点なんかは出来過ぎな気がしなくもないですが、まぁ…ストレスなく読めたので、それはそれでいいか。
夜が放ったボトルメッセージも、村長の息子に届くといいですね。
コウキ。さんの描いたちみっこ王子とちみっこ夜のイラスト…見たかったです。